習作:マブガル世界にTS転生した一般レイヴンのお話 作:ぱんそうこう
あーーー楽しかった!!!!企業を襲撃しつつテロリスト相手に自由に暴れられるのってすごく気持ちいいね!!!遠足の会場は最終的に穴ぼこだらけになったけど、楽しかったのでヨシ!!!
そうして「怖いもの知らずども」とみんなで仲良く風紀のお世話になりながら、充実感とともに愉快な遠足は終わったのである。
結論を言うと、コトハ……例の不審人物にして双頭の斧のリーダーのことは仕留め損ねた。クソわよ。
あのどこから来たかも分からない砲撃が邪魔すぎ。あれ座標指定で撃つタイプの精密射撃だったからさ、そのせいで追撃にいちいち余計な機動挟まないといけなくなって結果として取り逃した。おまけに取り巻きが数機がかりで彼女を逃がすために体当たりまで仕掛けてきて……いや、言い訳はよくないね。全部私の実力不足だ。まだまだ練習が足りなかった、それに尽きる。
全体的に酷使しまくった黎明もオーバーホール必須になったし、ここらで一回シミュレータに籠って修行するっていうのはありかもしれない。カラフルブーケの皆には練習に付き合った分、今度は私に付き合ってもらうっていうのも悪くないね。
一方でトレブル・クインテットの方がどうなったかというと、なんと驚き。トリニティ・ジュエルが増援に来ていた。風紀で拘束されてたんじゃなかったっけ?って思ったら、なんでもリリーが指揮官の依頼で一時的に外へ出すことに成功したんだとか。ヒーローの力ってすごい。素直にそう思った。
そうして圧倒的な数的不利に苦しんでいたトレブル・クインテットは一時的に戦線を押し返し、その後指揮官とエヴィちゃんも合流したことで無事に相手を撃退する事に成功。アークライト・ダイナミクスの不正なデータ入手の証拠も無事抑えられて万々歳!……って感じで大団円になれば良かったんだけどね。
後から到着した風紀委員会。小花さんがカンカンに怒っていて、私や指揮官、リリーも含めた「愉快な遠足」参加者全員が連行されてしまった。まあ、企業襲撃って風紀からしたら取り締まり対象だもんね。あの時の小花さんの「また貴女ですか……」って感じの冷たい視線は今もまだ記憶に新しい。ごめんね、「また」なんだ。反省も後悔もしてない。
で、事情聴取の結果、私は無事に「テロリストの相手をしただけ」っていうのが認められて無罪放免。指揮官から企業襲撃の一番槍の名誉を賜ったトレブル・クインテットは始末書の提出、首謀者の指揮官も同じく。アークライト・ダイナミクスと双頭の斧による犯行が立証されたおかげで、企業襲撃に伴う破壊行為とか地区間のあれこれの責任をあっちにブン投げるパワープレイで会長が解決してくれたのである。やったね。
……まあ、その代わり謎はたくさん残ったままなんだけどさ。
まず「双頭の斧」。あいつら、推定ORCA旅団でいいかもしれない。表向きは反動勢力、裏では何か別の目的を果たそうとしてるって意味でね。その裏の目的も、「自由」にまつわるものだと思う。少なくとも、コトハの戦いぶりからはそれが本気だってことが読み取れたし、敵ではあるけど全部そうとは言い切れない部分がある、ぐらいには信用できるね。彼女の気迫も、その執念も「本物」だったから。
私にとっていいことかは別として、戦うことで少しでも彼女のことが理解できた。それは収穫としては考えていいかもしれない。
指揮官も彼女のことを気にかけてるみたいだし、案外再会は近いような気がする。
……私の力をどう振るうか、ね。私のやることは変わらない。私は私の心のままに力を振るうだけ。結果はその後から着いてくるものだよ。その時、私の足元に何が転がっているのかも。
そして問題はあの砲撃。どこのものか不明、何処から撃たれたかも不明、おまけに精度も意味不明と来て、分からん案件の詰め合わせ。
……心当たりが、無いわけじゃない。コトハの言うことが正しいのなら、私の感覚が正しいのなら、きっとあの戦場を監視していた奴がいる。そしてそれが私とコトハの戦いに水を差し、おまけに撃墜ないし殺そうとした。
私の頭の中で、「管理者」のワードが現実味を帯びてきた。
もしこの島が本当にその管理者の「箱庭」だとすれば。
多分これから私には何らかの手が伸びてくるんじゃないだろうか。コトハはいつだって行方不明だからね。所在が分かりやすい私をどうこうしようってなるのはそりゃ必然だよ。
……いや、そうだとしても私の前に立ちはだかるなら全部破壊するだけだ。私は自分の翼で飛びたいだけだけど、その障害になるっていうなら何もかも焼き尽くしてみせる。
とはいえ警戒はしておこう。いつ、どんな形で、何が来るか分からないんだ。ナインボールみたいに戦場で排除してくるタイプならまだしも、場外戦術でやられちゃたまんないしね。
どうあれ、これから考えることは多いしやることも多い。オーバーホールが終わるまでにまた鍛え直して、終わったらまた鍛え直そう。
指揮官は仕事でもう少しLOCだけど、私は機体のこともあってもう柊に帰ってきてるしね。次会う時までにもっともっと強くなっていたい。
そのために今は、ゆっくり休もうか。
◇◆◇
「おはよう。黒鉄羽音」
朝起きたら、ナビAIが進化していた。
完全な人型美少女の姿を手に入れていて、流暢に受け答えをしてくる。
頭に白い被り物、青色の髪、生真面目そうに見える顔立ちで、無表情のままベッドで寝転ぶ私の顔を覗き込んできている。
「いやどういうこと?」
「この姿ではお初にお目にかかる。私の名は『ラン』。今後も貴女の補佐を担当させてもらう」
「いやどういうこと?」
「見ての通り、貴女の過去における種々の行動を学習した結果だが」
「いやどういうこと?」
「よもや、それしか言えなくなったのか?言語中枢が悪いなら病院にかかることを勧める」
うわああああああああああああ!!!!
私のAIがおかしくなった!!!!!!!
助けて指揮官!様子おかしいよ!!!
「指揮官!指揮官!?ちょっと、ナビAIがおかしくなっちゃった!」
『ど、どうしたいきなり!?おかしくなったってどういうことだ?』
電話の向こうから指揮官の慌てる声が聞こえてくる。
どうもこうもないよ!こんなのどうしろって言うのさ!自分の専用AIがいきなりワープ進化してましたとか厄ネタの匂いしかしないんだよ!!
「初にお目にかかる。黒鉄羽音のナビAIの『ラン』だ。よろしく頼む」
ひょこっ、と私の隣に来て端末を覗き込む彼女。通話中の指揮官に礼儀正しい自己紹介をしている。お辞儀までしてるよこの子。
『あ、ああ。よろしく。何というか、ピコみたいだな。性格は全然違うが』
『ピンポーン!正解ですマスター!羽音さん、彼女は別におかしくなんかありませんよ!』
うわっ!やたらテンション高いのが割り込んできた!
なんか衣装とか雰囲気とか被り物とかがランにそっくりだぞ!これ同型機なんじゃないの!?
『うわっ!急に出てくるなピコ!というか何か知ってるのか?』
『もちろんご説明しますね!ナビAIは各個人のパーソナルデータに合った姿になりますが……ランは長い間羽音さんと一緒にいることで他のナビAIよりも遥かに濃密な内容の学習を続けていました!結果としてサーバー上の羽音さんのパーソナルデータの更新に合わせてこの度、ボクの同型AIとして生まれ変わったのです!』
『いやAIが生まれ変わるってなんだ???』
「ていうか今更新しいのとかいらないんだけど」
『なんですとぉ!?ランは実質ボクの妹ということになるのですよ!?羽音さんだってボクみたいな超高性能AIは欲しいですよね!?』
「いや、別にいらないかな。そもそもピコ……だっけ?節々からオマちゃんみたいな匂いがするからちょっとね」
『誰ですかそれ!?』
「円グラフすらまともに作れないポンコツ」
『ボク今表計算ソフト以下って言われました!?』
「あとハッキングで人間に負けるAI」
『それもうAIじゃないですよね!?!?!?うわーん助けてくださいマスター!羽音さんがいじめてきますー!!!!』
『検索……『お前を消す方法』』
『何で今AIネグレクトするんですかーーー!?』
『だって今の聞く限りお前『オマちゃん』ってのと同レベルっぽいし……』
うわ、おもしれーAI。ネタ度と芸人っぷりじゃオールドンマイに勝るとも劣らないね。そのうちポンコツのやらかしで指揮官にものすごい尻拭いさせそう。
『うう……ラン、ランはボクの味方ですよね……?』
「味方、かどうかは不明だ。しかし同じAIとして同情する。あなた方はもう少し自らのAIに優しくしても良いのではないか?」
お、おう。印象通りの生真面目っぷり……若干の罪悪感がががが。
『うううう……その優しさが身体に沁みます……ラン、ボクのことはお姉ちゃんって呼んでくれてもいいんですよ……?
「……?理解不能。その必要性を感じない。同型機であるならそこに序列は存在しないのでは?」
『がーん!?ボクに味方はいないんですかー!?』
「『そこになければないね(な)』」
おお、息ぴったり。最近指揮官とこういうことが増えてきたの、友人としてちょっぴり嬉しいね。
『まあピコ弄りはこの辺にしておくとして、自分のナビAIの性能が良くなるならそれに越したことはないんじゃないか?』
「そりゃそうだけどさ、脈絡なさすぎて困るよ」
あとタイミングがタイミング過ぎるんだよ。ピコが高性能なのは知ってる。例のハッカー、「ファルファッラ」だっけ?あれとのハッキング対決に勝てたのはピコのおかげらしいしさ。従来のナビAIとは明らかに一線を画してるよ。
じゃあその姉妹機を私が手に入れる理由は、何?AIが生まれ変わる?そりゃ構成するプログラムを書き換えれば生まれ変わるよね。
これ絶対「管理者」の仕込みでしょ。明らかに私のこと監視しようとしてない?
何?ラナ・ニールセン枠なの?ナインボールフラグじゃん。それならわくわくしてくるからまだいいけどさぁ。流石にプライベートまで監視されるとなると、戦場の外で殺される可能性は否定できないでしょ。無粋もいいとこだよ。
こうなるとそのピコだって怪しく見えてくるよ。オールドンマイだってやることなすことポンコツだっただけでやってる事はだいぶヤバかったし。
……はあ。困ったことになった。黎明のコクピットが恋しいよ……。
ちょっとこれからは私の言動が「管理者」に筒抜けになってる可能性を考えた方がいいかもしれない。いっそ戦場に出てきてくれるなら楽なんだけどなぁ……そしたら心置きなくぶっ潰せるのに。
『まあ別にいいんじゃないか?俺もピコに頼ったことは殆どないしな。頼る必要がないからと言って要らないってわけでもないだろうし』
『マスターはもっとボクを頼るべきなんです!!!!』
「むう……まぁ、入っちゃったからには使うしかないかぁ……クーリングオフする方法も無さそうだし」
『スルーしないでくださーい!!!』
『そうだぞ。それに俺はなんだかお揃いみたいで嬉しいしな』
おおぅその不意打ちはずるいぞこのエロゲ主人公!!!!
クソッ!やられた!今私の耳がすごく熱い!せ、せめてなにか抵抗を……!そうでなくても平常心を保たないと……!
「あはは。それ絶対シリウスシュガーの皆の前で言わないでね」
『?俺は素直な感想を言っただけなんだが……』
本当に!!そういうとこだよ!!!指揮官って人はさぁ!!!!
やることは多い。考えることも増えた。一緒に厄ネタも積み上がってきてる。何か大きなものが動き出してるような感じが増してるけれど……今は、今だけは考えないようにしよう。
「案ずるな。誰か何と言おうと私は私の役目を果たす。それだけのことだ」
ああ、うん。そうだね。君がその厄ネタの筆頭候補なんだけどね。
だが彼女の言葉も一理ある。全貌が見えないものをいちいち考えたところで仕方がない。
私は私のやりたいように。
私は私のやるべき事を。
それはやっぱり、戦いの中にこそある。
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