習作:マブガル世界にTS転生した一般レイヴンのお話 作:ぱんそうこう
『羽音、今から会えるか?』
自室でごろごろしながら次のアセンブルについて考えていると指揮官さんから連絡が来た。
どうしたんだろ、珍しい。
『デートをしよう』
ひゅっ、と変な声が出た。
いやいやいやいや、待ってほしい。こんなことある????
いや確かにもうちょっと話したいなーとか思ってたけどさぁ!こんな火の玉ストレート投げてくると思ってないよ!!!
『……すまん。ちょっと急すぎたな。実はこの前君の試合映像を見たんだが、あれについてちょっと感想を共有したくてな。◯日の午後から、大丈夫か?』
……なんだ。感想戦か。それはそれでなんだかちょっと肩透かし食らった気分。
とにかく返事をしよう。アセンブルはどうせ話してる間にもできるし、それ以外の予定はノーノーだ。それなら指揮官さんの方を優先してもいいな。
『分かりました。今からでも大丈夫ですよ』
『カフェテリアに集合でいいですか?』
『了解だ。ありがとう』
◇ ◆ ◇
「お待たせしました。待ちました?」
「いいや、今来たところだ。悪いな、急に呼び出して」
「大丈夫です!暇してたので!」
お決まりのようなテンプレの会話。ホントにデートじゃん……と思いながら、向かい合って座れる席を探す。
場所が場所だ、当然歩いていれば他の生徒とすれ違うこともある。だが私の場合そうはならない。私が他の生徒に近づくと、皆身体を震わせてこちらを見て、そそくさと離れていく。見慣れたいつもの光景だ。そんなに怖いわけじゃないのに……と思っても皆はそうは思わないのだろう。
「大丈夫か?」
「いつものことですから」
「いつものことであることと、それが大丈夫かどうかは別だ」
くっ。なんでこんなイケメンなんだ。ちょっとクラっと来てしまったぞ。
……まぁ、私にはカオスメイデンの皆がいるしぃ?シリウスシュガーの皆とかカラフルブーケの皆もいるしぃ?別にぼっちじゃないしぃ?気にしないよ、それぐらい。
「指揮官さん……女たらしの噂はどうやら本当のようで」
「何故そうなる!?」
じとーっとした視線を彼に向けるも、何も分かっていないようだった。
もしかしてマジで気付いてない?やばいぜこの男。エロゲ主人公か???
ちょっと気を抜いたらそのままルート入ってベッドへ直行してしまいそうなレベルだ。これを
あまり人の邪魔にならないよう、端っこの席を選んで座る。向かい合って指揮官さんが座ると、端末を取り出して二人で見れるようにテーブルの脇に置いた。
「俺は基本的に勉強は一人でするタイプなんだが、今回は羽音の意見も聞きたくてな。素人質問で恐縮だが、ここの挙動の意図について———」
「ああ、そこは———対面の挙動が———」
「なるほど。つまり———だが–——–というプランではダメなのか?」
「———なのでしんどいかも。だから一度距離をリセットして———」
「そういうのもあるのか。興味深いな」
「でしょ!?ただ———で、使い所が———多対多に応用するには———」
「だがそれだと–——戦術的優位性においては———」
うおっ、楽し。一つ一つすごい細かいところまでコメントしてくれる。これが噂の教導指揮官。明らかにそういう教育を受けた人間のそれすぎる。記憶喪失になる前は軍人でした、とか言われても驚かんぞ。
だから私もACで培った思考と思想をフルオープンする。下手に取り繕うと逆襲されるからね。「
「しかし、いつ見ても美しい機動だ。会長が『自由に空を舞う鳥のよう』と言った理由もわかる」
「?会長、そんなこと言ってたの?」
「ああ。羽音の戦い方をかなり研究してるみたいだった。———教えてほしい。羽音はなんでそんなに強いんだ?」
「そりゃ、いっぱい練習したからね。機体の特徴、推進剤の使い方、弾の撃ち方、ブレードの振り方、武器の切り替え、何から何まで全部一つ一つ私の身体と機体に教えたんだよ。間接思考制御だったっけ?元々ちょっとした覚えはあったから、心と身体で理解できるまでひたすら反復反復。何もない日もずっとイメトレ、出来そうなことはどんな馬鹿馬鹿しいことでも全部やってみる。ブレード4本持ち、逆に突撃砲4挺持ち、あとは両手シールド、武器禁止の拳のみ、パイルバンカー限定……あらゆる場面で、あらゆる状況でずっとずーっと戦い続けるの。そしたらある日、『壁越え』ができた」
「私と機体が一つになった。私のやりたいこと、何でも出来るようになった。……何もかもが自由になった」
「社会で生きてればいろんなしがらみが出来る。会長みたいにどんな凄い人でも、それこそ指揮官だってそう。私もそう。できないことが増えて、しなきゃいけないことができて、しちゃいけないことが生まれる」
「でもコクピットの中にそういうのは何もない。心のままに戦って、心のままに欲求を満たせる。何にだってなれるし、どんな化け物とだって戦える」
「私はMGが好き。ずっとずーっと、きっと生まれる前から好き。心のままに戦って、心のままに空を飛ぶ。その歓びは何者にも代えられない。ここが私の魂の場所だって、そう信じられるくらいに」
「戦い続ける、歓びを」
ああ、全部言っちゃった。思ったより私、この人に心を許してる。
学園に入る前、養成学校の私は別に成績がいいわけじゃなかった。ACと同じ感覚でMGを動かそうとして、機体に無理させすぎて、何機も何機も壊しちゃって、教官に何度も怒られて。慣れてきてようやく面白さが分かってきて。学園に入って、ビビッときた名前のチームに入って、それで——–—。
おっといけない。おセンチになりすぎた。
「結局のところ、『好き』って気持ちは大正義ってこと!おっけー?」
……指揮官は何も言わない。口を情けなく半開きにしながら、ぼんやりした顔で私を見ている。え、ちょっと何この雰囲気。口から魂抜けちゃってない?
「指揮官?おーい、指揮官、おきろー?」
◇ ◆ ◇
すごく楽しい。
一回羽音とはこういう時間を取りたいと思っていたが、いやこれは予想以上に面白い。本人がかなりMGが好きなのがあらゆるところから伝わってくる。
機体に対する理解、そして性能限界への挑戦も本人の熱意の賜物だ。
おそらく、彼女の最大の武器である足を止めない機動力の根源はこの経験なのではないか。どれほど推進剤を利用すればどれぐらい飛べるのか、この武器はどう使うのが最も効果的なのか、どう動けば相手の意表をつけるのか。それを経験として身体に叩き込んだからこそ、あんな羽ばたくような機動をしながら最後まで戦い抜けているのだろう。
凄いと思っていたが、流石にこれは予想を超えてきたな。
気持ちはすごく分かる。俺も「霞光」を受領した時はワクワクが止まらなかった。今すぐにでもメイズに潜りたいと思った。きっと彼女も同じだ。それも、俺の感情よりもずっと強く、ずっと深く。
……でなければ、これほど狂気的な訓練はできない。
確かに今の機体を使い続けていれば自分に合った形にできる。だがそれをあの領域にまで到達させるには膨大な時間が必要になる。何度も何度も、
だけど。
だけど。
それを語る彼女の表情には後悔なんかなくて。どこまでも、どこまでも自分の好きなものに真剣な、綺麗な女の子の顔しか映ってなくて。
少しでも彼女の力を怖い、とか。そんな風に思った俺自身が馬鹿みたいで。
「戦い続ける、歓びを」
きっとそれが彼女のコミュニケーションだ。だからそれが合致したユリアは彼女に惹かれた。
記憶を失う前の俺にもあったんだろうか。これほど心の底からやりたいことが。これほど好きになる何かが。
その時、脳裏に◼️◼️◼️が映ろうとして——————––。
「指揮官?おーい、指揮官?おきろー?」
◇ ◆ ◇
あ、戻ってきた。
「羽音」
「?」
「敬語、崩れてるぞ」
…………………あっ。え?この流れでそれ言う??????人の話聞いてた??????
ていうか、え。
「あ、あ、あああああ」
「いや、責めてるわけじゃないぞ?ただ、そっちが『素』なんだなって」
がたーん!と顔を隠してテーブルに突っ伏す。
うわあああああああああああああああ!やらかした!MGの話に夢中でこんな、こんなぁぁぁぁ。てかなんだよ!調子に乗って余計なこと言いすぎだ私!「戦い続ける、歓びを」じゃないんだよ!カッコつけすぎ!レイヴン基準の価値観は普通の人から見たらドン引きなんだよ!!!
……ダメだ。誰かのせいにしたいが私の顔しか思い浮かばない。……そりゃ、同級生とはいえ尊敬できる相手だし?友達がお世話になったし?敬語でお話しした方がいいかな?とか思ってたわけで?って、私は誰に言い訳してるんだ?
「落ち着け!俺はそっちの方がお前らしくて好きだ!」
「あばばばばばばばばばば」
すすすすすきぃ!?嘘だろ私こんなちょろかったっけ!?
……やばい。顔真っ赤だ。多分目もぐるぐるしてる。メス堕ちしそう。てか、しかけた。れれれ冷静になれ。私は大丈夫。大丈夫だから、高鳴るな私の胸。
「はい……黒鉄羽音、落ち着きました……」
「あーなんかその、すまん」
「いや、その、初対面からずっとカッコつけてた私が悪いから……」
「そうか。じゃあこれからはカッコつけなくて良くなるわけだ。いいじゃないか。そっちの方がかわいい」
「うん………たぶんそう。部分的にそう」
「部分的にって何だ??????」
うわーん!また恥ずかしい目にあわされたーーーー!!!
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