企画のレギュレーションの仕様上センシティブ版にて寄稿させていただきましたが、明確な性描写が無いのでR-15で投稿いたします。
※Pixivにも投稿しています
身長160センチ以下の結華からしても、この浴槽は狭い。ましてや身長180を大きく超えるプロデューサーからすればかなり窮屈なのだろう。よく普段使いできるものだ。
ましてや2人1緒だなんてこれは浴槽に対するいじめであり、使用者達にとっても疲労回復ではない別の目的として利用しているのはもはや明白である。
「Pたんってさ、貧乳好き?」
「そんなことはないはずなんだけどなぁ」
「なるほど……ずっと揉んでいるのは三峰の胸を大きくするためかぁ」
「………」
「黙って揉むの止めたのは何で?」
「期待されたらイヤだし……」
「もとより期待してないし! それにいつものようにプロデューサーらしく『俺が支え導いてあげよう』みたいなこと言ってよ!」
「今はオフだし……」
そういいながら彼は結華を抱きしめる力を強くした。膝の上に乗っているが、20分前まで何戦か交えていたせいか臨戦態勢の様子は感じ取れない。
左耳が彼の吐息が近づくのを感じ取る。彼の唇が自身の耳を咥える前に結華は彼の顔の前に掌を見せて止めた。
「キスのほうが良かったか?」
「耳舐められると、もう1回ヤりたくなるし……。それにキスマークっぽくはないけど、片耳だけ赤いのってすごく変だからね」
結華はそういうと、彼は眼前にあった彼女の唇に音を立ててキスをした。
三峰結華はキスが好きだ。奪うのも好きだけど、奪われると嬉しくなっちゃう。
何度も互いの唇の角度を変えてキスをする。彼の腕や脚は彼女が逃げないように細い体を制圧し、お湯に触れることすら嫌うように密着する。
「――っ……。キスマークは厳禁だけど体に跡つくぐらい強く抱きしめるのもだいぶ問題だって分かってるでしょ?」
「放したら、どこか行きそうだし」
蛇の交尾はこんな感じに互いの体を絡めて行うと中学生の時に読んだ本に書いてあった。……しかしこれは交尾というよりも執着や依存に近い。
「私の体、そんなに好き?」
「結華が好き」
「もぉ~……痛いからね?」
軽くたしなめるとようやく体に絡みつく拘束の力が少し緩んだ。
彼の左手を右手で恋人つなぎをして、彼の胴体に思い切り体重を押し付けため息をつく。
「重くない?」
「重いよ」
「意外とはっきり言うよねぇ」
まぁ「軽い」なんて言われても一切信用しないが……ここまではっきり言わなくてもいいではないか。
少しだけ不機嫌になったのを察したのかそれとも偶然か、彼は結華の頭を撫で始めた。相変わらず、さりげない優しさが下手である。だから次に出た言葉は気遣いの言葉だった。
「……そろそろ湯冷めしない?」
「そうだな」
「……」
「………結華が先に上がってくれないと出れないんだけど」
「お姫様抱っことか」
「風呂場で出来るか」
「え~Pたんのケチ~」
口ではそんな風に言ったが、本当に危ないのは分かっていたから結華は大人しく浴槽から抜け出すことにした。
*
プロデューサーはアイドルの髪を乾かさない。たとえそれが恋人相手だったとしても。
下手につついてダメージを与えるとかなりまずい。……結華に対して行っている様々な行為を考えると、どうも嘘くさくなるが。
ちなみに彼は結華がお泊りの時は髪を乾かさない。結華優先である。だから彼の微妙に乾いた頭を一応ドライヤーに曝すのは結華の1つのルーティーンになっていた。
「ドライヤーあてるぐらい自分でできるでしょ」
「結華がやると、なんか髪質が良い気がするんだ」
「本当に違いが分かるんだったらうれしいんだけどねぇ」
彼の髪だ。刈り上げられており、丁寧に乾かしても2分もかからない。
窓のカーテンを開けると太陽の光が目をくらませる。2人とも午前休であることを良いことに、時刻はすでに10時を超えていた。
「朝ごはんは?」
「家にパンのストックがないから……竹屋の朝定食」
「……Pたんってさ、三峰と一緒にいるときどうしようもない大学生みたいな感じになるよね」
「嫌だったか?」
「ぜんぜんー。だって根っこの部分ではいつものプロデューサーだって知ってるし」
メイクは簡単に。レッスンですぐ崩れるし、なによりも「アイドル三峰結華」の印象を少しでも外したいという狙いがある。
白い帽子にはせめてもの独自要素に缶バッジが2つ。つい先ほど乾かした髪を隠すように優しく被った。
「Pたーん、カギは?」
「持ってる。給湯器は――」
「切ったよー。一応コンロも見たから」
玄関で靴を履く結華の後ろで彼はスーツのジャケットを着た。
「結華」
「ん――」
彼女が振り返ると彼が少し屈んで触れるだけのキスをしてきた。薄くとはいえ、口紅塗ってるんだけどなぁ……
(ま、いいか)
自分だけ満足して離れようとした彼の肩をやや強引に抑えて結華はキスを続ける。彼は少しだけ驚いたように肩を動かしたが、すぐに大人しくなった。
最後に彼の唇に移ったはずの紅を舌で舐めとって彼を解放した。
「……やり返されるとは思っていなかった」
「そりゃあいっつも、いーっつも愛されてばかりだと、三峰がPたんのこと愛していないみたいじゃん?」
「……よく言うなぁ」
その言葉を背中で受けながら結華は狭い玄関から外へ出た。
いつもの日常の始まりだ。
「おまたせ」
「うん。じゃあ行こっか」
革靴を履いたプロデューサーが出てきた。
「朝食の後の予定は?」
「1時まで打ち合わせで、そこからは大学。大学終わったら事務所に戻ってレッスンやって……って感じだったかなぁ」
「車出すか?」
「原付事務所の駐車場においてあるから大丈夫……鍵は閉めた?」
「え、閉めてなかったか……⁉ あっぶな……」
慌ててポケットから家の鍵を取り出す彼を、結華はそそっかしいなぁと思いながら微笑んだ。
(なんでこんなに事前とか事後とか書き慣れてるんだろ……)