イナズマイレブン 英雄たちのヴィクトリーロード:ゲートバトル 勇者御一行たち-ファンタジーイレブン- 作:一般ヴィクロプレイヤー
原作:イナズマイレブン
タグ:オリ主 AI本文利用 英雄たちのヴィクトリーロード 原作モブ アバターキャラ 原作ネタバレ注意 ヴィクトリオ・アルノ 究極化身イレブン
その中にちょっとだけスパイスを加えたチーム。
作者がヴィクロのコンセプト大会でも使っていた思い入れあるチームと究極化身イレブンをクロニクルモードで戦わせたかっただけのSSです。
独自解釈や脳内設定など大いに含まれていますのでご了承ください。
制作補助として生成AIを使用しています。
文章の推敲や表現調整などにAIを活用しています。
なお、基本的な設定やキャラクター、ストーリー展開・演出は作者自身が考案・構成したものです。
AIによる補助を含む作品であることをご理解いただいたうえで、お楽しみいただければ幸いです。
時空を超越した空間──クロニクル対戦ルート。
そこには、数え切れないほどの歴史が刻まれていた。
一つ一つのクロニクルポイントには、かつて確かに存在した「アツい瞬間」が眠っている。
円堂守が仲間たちと共に戦った日々。
松風天馬が未来を変え、地球を救った戦い。
稲森明日人が世界を相手に挑んだ試合。
笹波雲明が復活させたサッカー部の物語。
そして──数多の英雄たちが残した、サッカーへの想い。
ヴィーこと、ヴィクトリオ・アルノは、それらの歴史を巡っていた。
時空を超えるマシン、イナズマVキャラバンと共に。
まだ見ぬ英雄を探し。
まだ知らない「アツい歴史」を追い求めながら。
その日も、いつものようにクロニクル対戦ルートを進んでいた──。
「……あれ?」
ヴィクトリオが足を止めた。
目の前に広がっている景色が、いつものルートとは違っていた。
どこまでも続くはずの道の先に、新しい空間が広がっている。
見覚えがない。
少なくとも、ヴィクトリオの記憶にはなかった。
「ここ、今まで見たことのない場所だけど……」
「見たことのないエリアだな」
隣にいたワンダバも周囲を見渡す。
「笹波雲明のようなケースか?」
ヴィクトリオはもう一度、目の前のルートを見つめた。
何かがある。
そう思わせるだけの、不思議な雰囲気がそこにはあった。
すると、その時だった。
ヴィクトリオの通信装置が光を放つ。
空中に小さな光が浮かび上がり、やがて一人の人物の姿を映し出した。
「ヴィー!」
「じいちゃん!」
そこに映っていたのは、ヴィーの祖父―クロスワード・アルノ。
普段と変わらぬ声だが、その表情はどこか真剣だった。
「どうやら、お前たちも到達したようだな!」
「これは……新たなクロニクルルートか?」
ワンダバがすぐに尋ねる。
「そうだ。つい先ほど、このルートの存在が確認された」
「でも……今までこんな場所はなかったぞ?」
「それが問題なのじゃ」
「問題?」
ヴィーは眉をひそめた。
新しいルートが見つかった。
それだけなら問題ではないはずだ。
「このクロニクルを解析してみたんだが……どうにも不可解な点がある」
「不可解な点?」
クロスワードの声には、普段とは違う慎重さがあった。
ただ新しいルートが見つかったというだけではない。
ヴィーとワンダバは、その先に何か尋常ではないものがあるのだと感じていた。
「このクロニクル、ルート自体は短い。しかし──確かに一つのアツい歴史が刻まれておる」
「だったら、普通のクロニクルじゃないか」
「ところが……記録を調べたところ分かったことがある……」
クロスワードはすぐに言葉を続けなかった。
ヴィーも、ワンダバも黙って次の言葉を待つ。
そして──。
「―その歴史を歩んでいる者たちが、そのような歴史を歩んだ事実は存在しなかった」
「え?」
ヴィーが目を見開く。
「存在しない?」
「うむ」
クロスワードはゆっくりと頷いた。
「正確には──」
一度、言葉を区切る。通信の向こうで空気が張り詰めた。
「持っているはずのない歴史を、持っておる」
「……!」
「そんなことがあるのか!?」
ワンダバの声が響いた。
ヴィーはすぐには言葉を返せなかった。
歴史が存在する。
だが、その歴史を歩んだ者たちは、本来そんな人生を送っていない。
そんなことが、本当にあり得るのか。
「本来なら、ただそこに存在していた者たちじゃ」
「ただ、そこに……?」
「大きな歴史を残した英雄でもない。ましてや、世界を滅ぼそうとした者でもない」
―いわゆる名前はあるが設定の薄い"モブ"である。
しかし―
「このクロニクルの中では違う」
ヴィーは、無意識のうちに未知のルートへ視線を向けていた。
その先には、一体どんな世界があるのだろう。
「一人の少年は──世界を救う勇者となった。
一人の英雄は──星々を守るために戦った」
勇者。
英雄。
そして──。
「一人の魔王は、世界を統べるために立ち上がった」
「勇者に……英雄……魔王……?」
ワンダバが呟く。
その言葉を並べただけでも、普通の歴史ではないことが分かる。
それはまるで―
「まるで……ゲーム……"ファンタジー"の世界みたいだ」
「そうじゃ」
頷くクロスワード。
「―これは、我々の知る歴史ではない」
「じゃあ……どうして、そんな歴史がクロニクルに……?」
「もしかすると──『もしも』の可能性が発現したのかもしれぬ……」
ヴィーは、その言葉を聞いて思い出していた。
クロニクルに刻まれている歴史が、必ずしも一つの世界だけのものではないことを。
例えば、稲森明日人たちが歩んだ歴史。
それは円堂守たちが生きた世界から分岐した、もう一つの可能性の歴史だった。
同じように、もし歴史のどこかで違う選択がなされていたなら。
もし、そこにいた者たちが別の人生を歩んでいたなら。
そんな「可能性」から生まれた歴史が、存在していたとしても不思議ではないのかもしれない―だが―
「だが、細かいことはまだ分からん」
分からない。
クロスワードにも。
そしてヴィーにも。
それでも──。
「一つだけ確かなことがある」
「……?」
ヴィーは顔を上げた。
「この先には―」
一瞬、空気が静まった気がした。
「―アツい歴史が存在しておる」
「……!」
「アツい歴史……」
その言葉を聞いた瞬間。
ヴィーの胸が、少しだけ高鳴った。
「お前たちがこれまで巡ってきた英雄たちの歴史にも、決して劣らん」
クロスワードは続ける。
「いや……もしかすると―我々がまだ知らない、新たな可能性の歴史なのかもしれん!」
「新たな……可能性……!」
ヴィーは、もう一度未知のルートを見つめた。
勇者。
英雄。
魔王。
本来なら、ただそこにいたはずの者たち。
しかし、この先では。
彼らはそれぞれのアツい歴史を歩んでいる。
──どんな歴史なんだろう。
考えれば考えるほど、知りたくなった。
「行こう」
「行くのか、ヴィー?」
ワンダバがヴィーを見る。
ヴィーは迷わず頷いた。
「うん。クロニクルルートを解明すれば、マインドイーターに消された人を取り戻せる可能性がある。それに──」
そこで言葉を止める。
未知のルート。
まだ誰も知らない歴史。
その先にあるものは分からない。
けれど―ヴィーの顔には、いつの間にか笑みが浮かんでいた。
「そこにあるアツい歴史を、俺は見てみたい!」
「その意気だ、ヴィー!」
クロスワードが力強く笑う。
「よし、分かった!」
ワンダバも未知のルートへと視線を向けた。
「次のクロニクルは、勇者と魔王の歴史……といったところか?」
「まだ分からないよ。でも―楽しみだ」
ヴィーはそう答えながら、腕に装着した装置へ手を伸ばした。
ボタンを押す。
小さな機械音と共に、ゴーグルが展開された。
ヴィーはそれを手に取る。
未知のクロニクル。
誰も知らない歴史。
しかし、その先には確かに、
まだ見ぬ誰かの想いがある。
まだ見ぬ誰かの戦いがある。
そして──。
まだ見ぬ「アツい瞬間」が待っている。
ヴィーはゴーグルを装着した。
「じゃあ行くよ!」
未知の世界へ向かって、一歩を踏み出す。
「"冒険の世界"に!」
―最初に感じたのは、「風」。
「……ん?」
ヴィーはゆっくりと目を開ける―
目の前に広がっていたのは―
「……すごい……!」
思わず、声が漏れた。
青く澄み渡る空。
遠くまで続く草原。
そのさらに向こうには、巨大な山々が連なっている。
森があり、川が流れ。
遠くには、石造りの建物が見える。
ヴィーがこれまで訪れたどのクロニクルとも違う。
まるで──。
「本当に、ゲームの世界に来たみたいだな」
「おいおい。さっきも同じことを言ってなかったか?」
ワンダバが呆れたように言う。
ヴィクトリオは苦笑しながら、もう一度周囲を見回した。
「どちらかというと、この世界は天馬たちの行っていたアーサー王の世界に見えるな」
「確かに……」
ヴィーの脳裏に、あるクロニクルの記憶が浮かぶ。
天馬たちが訪れた、『アーサー王と見習い騎士』の世界。
そこもまた、現代とはまるで違う世界だった。
けれど──そこで暮らしていた者たちにとっては、それが現実だった。
この世界も、きっと同じなのだろう。
「しかし……どこへ行けば―」
「うおおおおおっ!」
突然、咆哮のような声とともに響く、サッカーボールを蹴る音。
「この声は……?」
「あそこで何かやっているみたいだな」
ヴィーはワンダバが指を差した方へと走り出す。
そして、丘を越えた先。
二人の視界に、その光景が飛び込んできた。
「……!」
広々とした草原。
そこに、一つだけ簡素なサッカーゴールが置かれている。
そして、その前には二人の少年がいた。
一人は、青い髪をした少年。
もう一人は、その少年と対峙する赤髪の少年だった。
「いくぜ……ブレイブ!」
青髪の少年が声を上げる。
その足元にあるボールが、軽やかに動き出した。
ドリブル。
「来いよ、勇!」
それを止めようと、ブレイブと呼ばれた赤髪の少年が前へ出る。
勇と呼ばれた青髪の少年が右へ。ブレイブが追う。
今度は左へ。
それでも、ブレイブは食らいつく。
二人の間に、大きな実力差はない。
片方が抜けば、もう片方が追いつく。
片方が仕掛ければ、もう片方が応える。
まるで互いの動きを、誰よりも知り尽くしているような―
そして。
「ここだ!」
勇はボールを後ろ足で蹴り上げる―そして、自身の身体を一回転しながらブレイブを突破した。
「なっ……!」
「ヒールリフト……!」
完成度の高い勇のヒールリフト。
少年は目の前に落ちたボールへ足を振りかぶるー
「いっけー!」
ズバンッ!
少年の鋭いシュートはそのままゴールネットへと突き刺さった。
「……凄い」
「いい動きだな」
思わず声を漏らすヴィー。
「あのシュート、かなりの実力者と見える」
「うん。ドリブルもシュートもすごかったけど、あの赤い髪の人も食らいついていた」
二人は、少年たちのプレーについて話していた。
その時。
「……?」
ヴィーが気づく。
青髪。
そして赤髪。
二人の少年が、こちらを見ていた。
「誰だ?」
ブレイブが、鋭い視線を向ける。
先ほどまでの笑顔とは違う。
突然現れた見知らぬ相手に対する当然の警戒。
勇もまた、ヴィーたちを静かに見つめている。
「さっきから、そこで見ていたみたいだけど」
青髪の少年―勇が尋ねた。
「君たちは誰なんだ?」
「俺はヴィクトリオ・アルノ」
ヴィーは、自分を指差す。
「訳あって、ここに来てるんだ」
「クラーク・ワンダバットだ」
続いてワンダバが名乗る。
「へえ……獣人か。珍しいな」
「じゅ、じゅうじ……!?」
ワンダバが予想外の反応に思わず声を上げる。
ヴィーは、その反応を見て少し驚いた。
普段なら。
ワンダバを見た相手から返ってくる言葉は、「クマが喋った!?」でだいたい決まっている。
しかし、この少年は違った。
驚くどころか、まるで普通のことのように受け入れている。
予想外の反応にワンダバも戸惑っていた。
「それで……お前らはどこから来たんだ?」
ブレイブが尋ねる。
「そもそも、その『訳』って何だ?」
「それが……」
ヴィクトリオは困ったように笑った。
クロニクル。
別の歴史。
存在しないはずの歴史。
それを初対面の相手に説明したところで、簡単に理解してもらえるとは思えない。
「説明すると、長くなるんだけど……」
一度、言葉を止める。
そして。
先ほどのプレーを思い出した。
二人の動き。
ボールへの情熱。
そして何より──。
そこには、間違いなく「アツいサッカー」があった。
ヴィーは笑う。
「……君たちと、サッカーがしたくてね」
一瞬。
風の音だけが、草原を通り抜けた。
「……は?」
最初に反応したのは、ブレイブだった。
「サッカー?」
勇も、少し意外そうな表情を浮かべる。
「ああ」
ヴィクトリオは頷いた。
「さっきのプレーを見た。二人とも、すごく強い。だから──一度、戦ってみたいんだ」
ブレイブの表情が、少しずつ変わっていく。
警戒心。
疑問。
そして──。
「……いいじゃねえか」
口元に、笑みが浮かんだ。
「いきなり現れて、何を言うかと思えば」
ブレイブはボールを拾い上げる。
「サッカーがしたい、か」
その言葉を聞いた勇も、少しだけ笑った。
「君もサッカーが好きなんだね」
「ああ。大好きさ」
ヴィーの返事に、勇は嬉しそうに頷いた。
「だったら、断る理由はないよ」
「おいおい、待てよ」
勇がブレイブを見る。
「二人だけでやるつもりか?」
「え?」
「せっかくなら──」
ブレイブは、ヴィーたちの後ろ―フィールドへ視線を向けた。
「11人でやろうぜ」
ブレイブは楽しそうに笑った。
「11人……ということは!」
「ああ。当然、試合だ」
その言葉にヴィーの目が輝いた。
「……いいね。やろう!」
力強く頷くヴィー。
「俺は
「俺は
勇者に―ブレイブ。
まさに、この世界の「
「そうと決まれば、仲間を呼んでくるよ」
「待ってろよ!」
遠くに見える城のような建物へと駆け出す二人。
「それで、チームは何で行くんだ?」
「当然……俺が集めた最強のイレブン……『究極化身イレブン』だよ」
―そして暫く後。
広大な草原に、十一人の選手たちが集まっていた。
ヴィクトリオがこれまでのクロニクルを巡る中で出会い、その力を認めた者たち。
数多の歴史を駆け抜け、世界の脅威を退けた者たち。
GK 1番 円堂 守
DF 2番 野坂 悠馬
DF 3番 神童 拓人
DF 4番 灰崎 凌兵
MF 5番 フェイ・ルーン
MF 6番 鬼道 有人
MF 7番 円堂 ハル
MF 8番 稲森 明日人
MF 10番 松風 天馬
FW 9番 豪炎寺 修也
FW 11番 剣城 京介
監督 笹波 雲明
一見すると本職のDFが居ない、バランスの悪すぎるイレブンと思う者も居るかもしれない。
だが、ここに集まったイレブンは、ポジションという枠だけで測れるような選手たちではなかった。
それぞれが世界を背負い、時代を象徴する選手たち。
そして全員が、サッカーを愛する者たち。
間違いなく、「最強」に相応しいメンツが集結した。
「全員揃ったみたいだね」
ヴィーが集まった仲間たちを見渡す。
「おう!」
円堂が拳を握る。
「で? 今回はどんな相手なんですか?」
明日人からの疑問。
―ヴィーは草原の向こうへ視線を向けた。
「……来たみたいだよ」
風が吹いた。
草原の草が、一斉に揺れる。
その向こうから、いくつもの人影が、こちらへ向かって歩いてきていた。
先頭を歩いているのは、ヴィーたちが最初に出会った二人。
「お待たせ!」
勇が手を上げる。
「仲間を連れてきたよ!」
その後ろには、見覚えのない者たちが並んでいた。
騎士の兜を被った大柄の青年―ナイトこと鎧守 騎。
杖を手にした魔法使い―メイジこと銘慈 魔子。
口を包むマスクをした少年―シーフこと椎府 盗人。
優しげな表情の僧の帽子をかぶった少女―僧侶こと僧侶 安心。
そして、鍛え抜かれた肉体を持つ武闘家―ぶとうかこと武闘 拳。
勇と共に、長い旅を続けてきた仲間たち。
さらに。その後ろには、別の一団がいた。
どこか神秘的な雰囲気を持つ魔女―ウィッチこと初市 詠美。
神官の冠をかぶった男―ビショップこと福音 堅司。
狩人のようなハットをかぶった少年―ロビンこと品田 載。
かぶっている兜で口元以外が隠れている青年―パラディンこと原田 定蔭。
そして、顔に大きな傷跡をこしらえた格闘家―モンクこと門久 主税。
ブレイブと共に旅路を歩んだ英雄たち。
その後ろから、3人の選手。
鎧守と同じように兜を被った少女―キリィこと早乙女 キリエ。
海賊の帽子を被った、荒々しい表情の男―キャプテンこと歌舞天寺 洋。
黒い魔女の帽子に紫色の髪といった装いの女―黒魔女こと玄間 嬢子。
それらが、同じユニフォームを着てここに居る。
15人の選手が、ここに集結した。
「随分と個性的なチームだな」
剣城が相手チームを眺めながら呟く。
「歴史も時代も、俺たちとはまるで違うみたいだね」
天馬は興味深そうに目を輝かせた。
「……これが勇者たちのチーム……随分と、多いんだね」
「まあ、こっちは控えもいるしな。ただ、一人来ていないんだよな」
ブレイブが、どこか呆れたように肩をすくめた。
「一人?」
天馬が首を傾げる。
すでに十五人。
控えを含めたチームとして見れば、十分すぎる人数にも思える。
しかし──。
「その人も、試合に出る予定なの?」
「ああ」
勇者が頷いた。
「本来なら、彼女もここにいるはずだったんだけどね」
「彼女?」
明日人が反応する。
すると、ブレイブが苦笑した。
「まあ……ちょっと事情があってな」
「事情?」
「本人が言ったんだよ」
ブレイブは、仲間たちの後ろへ視線を向けた。
まるで、まだ姿を見せていない誰かがどこかにいるかのように。
「『先に始めておけ』ってな」
「……随分と自由な人だね」
天馬が苦笑する。
「いつもあんな感じなのか?」
灰崎が尋ねると。
「まあな」
海賊姿の男──歌舞天寺 洋が、ニヤリと笑った。
「だが、心配はいらねえ。来る時は、ちゃんと来る」
その言葉には妙な確信があった。
黒い魔女帽子を被った女──玄間嬢子も、小さく笑う。
「我らの主は、そういうお方ですもの」
「……主?」
鬼道が眉を動かした。
一瞬だけ、空気が変わる。
「まあ、こうして折角集まったんだ!」
ブレイブが前へ出る。
「ああ、俺たち―『ファンタジーイレブン』の力、見せてやる!」
勇もボールを手に宣言した。
その手には、先ほどまで勇と二人で蹴っていたサッカーボール。
「―ああ、そろそろ始めようか」
―突然、穏やかでありながら、よく通る声が草原に響いた。
ファンタジーイレブンの選手たちの後ろ―そこから、一人の人物が現れた。
「……な……何だと!?」
「えっ!?」
その姿を見た究極化身イレブンの面々が、一斉に驚きの表情を浮かべる。
―彼らは知っていた。その人物の名前を。
どこか神々しさすら感じさせる美しい容姿。
そして、まるでこの場のすべてを見通しているかのような、静かな微笑み。
「―アフロディ……!」
円堂の口から、その名前が零れた。
アフロディ―亜風炉 照美。
―円堂たちが知っているものよりも大人びた姿だった。
が、円堂たちは知っていた。
その雰囲気を、佇まいを、その名前を。
だが―
「……どうして君たちが僕の名前を知っているんだい?」
「え?」
アフロディは不思議そうに首を傾げた。
「僕は君達と会うのは初めての筈だけど」
「初めて……?」
円堂が呟く。
―すると、
「……いや、俺たちはお前を知っている」
静かに口を開いたのは鬼道だった。
「正確には―お前によく似た人物……かもしれないがな」
「僕によく似た……?」
アフロディの視線が鬼道へ向けられる。
「……亜風炉照美」
鬼道はその名を口にした。
「かつて世宇子中のキャプテンを務め、『フィールドの神』と呼ばれていた選手だ」
思い起こされるのは、美しく圧倒的なプレーの数々。
「フットボールフロンティアで俺たちと戦い、エイリア学園との戦いでは俺たちのチームに加わった」
鬼道の脳裏にも、数々の戦いが浮かんでいた。
敵として出会い。そして後には、共に戦った仲間。
「その後、FFIでは韓国代表として、再び俺たちの前に立った」
鬼道は一度言葉を切る。
「──もっとも」
その視線が、隣にいる明日人へ向けられた。
「明日人たちの世界では、また違う歴史を歩んでいたようだがな」
「はい」
明日人が頷く。
「俺たちの世界では、日本代表の追加メンバーとしてチームに入っていました」
「僕が……?」
アフロディが、わずかに目を細める。
「ああ。俺たちにとっては、忘れられない選手の一人だ」
「それだけじゃありません!」
今度は、松風天馬が前へ出た。
「俺たちの時代では、木戸川清修中の監督にもなっていました!」
「監督……か」
アフロディは少し驚いたような表情を見せる。
暫くアフロディは何も言わなかった。
―ただ、穏やかな表情のまま鬼道たちを見つめていた。
「―なるほどね」
やがてアフロディは、小さく笑った。
「別の世界の僕、ということかな」
「……!」
その言葉に、ヴィクトリオが反応する。
別の世界。それは、このクロニクルを説明する上で、最も近い言葉だった。
同じ人物でありながら、違う歴史を歩んできた存在。
円堂守の世界。
稲森明日人の世界。
そして──。
今、自分たちが立っている、この未知の歴史。
「僕たちと君たちは、お互いに違う歴史を歩んできた―そういう事だね」
「別世界の監督か……ちょっと会ってみたくなってきたな」
アフロディは、どこか納得したように頷き、勇はアフロディを見ながら呟く。
自分と同じ姿をした。けれど、自分とは違う歴史を歩んだ存在。
それはこの世界のアフロディにとっても、決して他人事ではなかった。
「―でも、今ここに居るのは、君たちの知るアフロディじゃない」
その言葉と共に、ファンタジーイレブンの選手たちに視線を向ける。
「―『ファンタジーイレブンの監督』、アフロディだ」
「アフロディが監督か……! すげぇチームになってそうだな!」
円堂は、目の前に立つアフロディを見ながら、ワクワクしたような表情を浮かべていた。
あのアフロディが監督を務めるチーム──。
円堂にとって、それだけで十分に興味を惹かれるものだった。
「──上等です」
究極化身イレブンの後方からも、もう一つの声が響いた。
全員の視線がそちらへ向く。
そこにいたのは。
白いジャージを身に纏った、青髪の少年だった。
「雲明」
―彼と戦ったことのある円堂ハルが、その名を呟く。
──笹波雲明。
廃部となっていたサッカー部を復活させ。
仲間たちと共にフットボールフロンティアを戦い抜き、優勝へと導いた少年。
それが今。
究極化身イレブンの監督として、この場に立っていた。
雲明は、目の前のアフロディを真っ直ぐに見据える。
「──相手が神であろうと」
一度、言葉を切る。
その表情には、一切の迷いがなかった。
「勝つのは、僕たちです」
強気の姿勢。
究極化身イレブンの監督として、このチームを率いて戦う覚悟は―すでにできていた。
「……面白い」
アフロディは、雲明の言葉を聞いて小さく笑った。
「随分と自信があるんだね」
「ええ」
雲明は即座に答える。
究極化身イレブンの選手たちが、それぞれ笑みを浮かべる。
雲明は、そんな選手たちを一度見渡した。
「……まあ」
その時。少し離れた場所から、小さな声が聞こえた。
「本来の監督は、私なんだがな」
「ん?」
ハルが振り返る。そこには、腕を組みながら、小さく呟くワンダバの姿があった。
「いや……何でもない」
今のチームの指揮は、そのほとんどを雲明に任せている。
―ワンダバは雲明とハルから目を逸らした。
アフロディは、少し楽しそうに微笑む。
「なるほど。君たちも、面白いチームのようだね」
すべての準備は、整いつつあった。
「それでは」
雲明が、静かに口を開く。
「──始めましょうか」
草原を、一陣の風が吹き抜ける。
その瞬間、両チームの選手たちの表情が変わった。
今、この瞬間から彼らは、サッカー選手になる。
「……さあ……」
「サッカー、やろうぜ!」
フォーメーション紹介
究極化身イレブン
3-5-2 フリーダム
| 9 豪炎寺 | 11 剣城 | |||
| 8 明日人 | 10 天馬 | 7 ハル | ||
| 5 フェイ | 6 鬼道 | |||
| 4 灰崎 | 3 神童 | 2 野坂 | ||
| 1 円堂 |
ファンタジーイレブン
4-3-3 トライアングル
| 13 キリィ | 9 ブレイブ | 12 ナイト | ||
| 10 勇者 | ||||
| 15 武闘家 | 8 ウィッチ | |||
| 4 シーフ | 2 モンク | 5 パラディン | 3 メイジ | |
| 1 僧侶 |
―全ての選手がピッチにつく。
ファンタジーイレブンの11人。究極化身イレブンの11人。
ピッチ中央では、豪炎寺と剣城がキックオフの笛を待っていた。
―そして―
ピーッ!!!
キックオフを告げる笛が、広大な草原に響き渡った。
豪炎寺が剣城へとボールを渡し、前方を駆け出した天馬へとボールを送った。
「行くぞ!」
パスを受けた天馬が一気に走り出す。
その表情には、隠しきれないほどの高揚が浮かんでいた。
──こんなプレイヤーたちと、戦えるなんて。
前方に立ちはだかったのはブレイブ。
天馬はスピードを緩めることなく、その横を駆け抜けた。
「なっ!?」
「まだまだ!」
そして、その先。
今度は勇者が立ちはだかる。
「絶対に負けないよ!」
「来い! 天馬!」
二人が向かい合う。
天馬はスピードを落とない。そのまま勇者へと突っ込んでいき―
「"そよかぜステップ"!」
天馬の風を纏った軽快なステップ。
勇者が気づいたときには、天馬はその横をか駆け抜けていた。
「速い……!」
「豪炎寺さん!」
ボールを蹴り出す天馬。その先に居たのは―
究極化身イレブンのストライカー、豪炎寺修也。
その瞬間。豪炎寺は、足元へ落ちたボールを巧みに蹴り上げる。
高く舞い上がったボールを追うように、豪炎寺自身も宙へと跳び上がった。
「"ファイアトルネード"!」
振り抜かれた足。その一撃と共に、ボールへ激しい炎が巻き付いた。
燃え盛る炎を纏ったシュートが、凄まじい勢いでゴールへと迫る。
ファンタジーイレブンの守護神──僧侶は迫る炎を見据えている。
「護ります……!」
僧侶が右腕を掲げる。
「"ホーリーゾーン"!」
その右手が地面へ触れた瞬間、眩い光がフィールドへと降り注いだ。
光はゴール前一帯を包み込み、激しく燃え盛っていたシュートを飲み込む。
やがて勢いを失ったシュートは、僧侶の両手へと収まった。
「ナイス!」
「やるな」
勇と豪炎寺がそれぞれ声を上げる。
僧侶はすぐに顔を上げ、前方を見た。
「メイジさん!」
迷いのないスロー。
ボールは中盤にいたメイジ―銘慈 魔子のもとへ。
「勇くんお願い!」
「任せろ!」
ダイレクトでそのボールを蹴り返す。
パスを受け取ったのは勇者。
その前に立ちはだかっていたのは天馬。
「今度はこっちの番だ!」
天馬と向かい合った勇者は、右手に眩い光を宿す。
そして、その光は一振りの剣となり勇者の両手へと握られた。
「あれは!?」
天馬の表情が変わる。
それはかつて自分も戦いの中で使ったことのある力。
「まさか……!」
「"王の剣"!」
勇者が剣を振り抜く。
天馬を弾き飛ばし、勇は進んでいく。
「武闘!」
放たれたパスが武闘家―武闘 拳へと渡る。
「抜かせない!」
ボールを奪おうと稲森が足を伸ばす。
しかし、武闘家は止まらない。
「どけぇぇぇっ!」
力強く地面を蹴り、前へと走り出す。
その圧倒的なフィジカルに押し切られ、稲森は突破を許した。
「くっ……! 何てパワー……!」
「行け!」
武闘家から鋭いパスが放たれる。
ボールは前線に居たブレイブのもとへと渡った。
「この距離なら……!」
ペナルティエリア手前―ブレイブの足元に光が集まっていく。
そしてブレイブは大きく飛び上がり足を振りかぶった。
「食らいやがれ……!
"流星ブレード"!」
上空から蹴り出された一撃。
それは燃えるような赤き流星となり、ゴールに向かっていく。
「……!」
そのシュートを見た瞬間、円堂の脳裏にかつて共に戦った仲間の一人―ヒロトの姿が過る。
「まだだ!」
赤い流星の先―そこに一人の少年、剣持勇が走り込んでいた。
円堂が反応するより早く、勇者は赤い流星に向かって飛び上がる。
その足元には、青い光が集まっていく。
「"流星ブレード"!」
青い流星が、赤い流星と重なる。
二つの流星ブレードが一つになったボールが、勢いを増してゴールへと迫った。
「させるか!」
神童が前へ飛び出す。
「"アインザッツ"!」
神童がタイミングを完璧に合わせてシュートを受け止める。
シュートの勢いは確かに弱まったが、なおも止まらない。
「円堂さん!」
「任せろ!」
ゴール前、究極化身イレブンの絶対的守護神―円堂 守が右手を掲げた。
「"ゴッドハンド(EV)"!」
掲げられた右手。
黄金に光り虹色の波動を放つ巨大な右手が現れ、迫るシュートを正面から受け止めた。
「ぐっ……!」
円堂の巨大な手が大きく震える―
「おおおおおおおっ!」
踏ん張る円堂。
最後には、ゴッドハンドが勇者たちの一撃を掴み取った。
「へへ……! すげえシュートだったぞ!」
「止められたか……やるな」
ボールを確保した円堂が笑顔を浮かべる。
勇は悔しそうに呟きながらも、楽しそうな笑みを浮かべていた。
「ゴッドハンド……『神の手』か……」
アフロディが笑みを浮かべる。
未知の強敵に喜びを感じているのは、円堂だけではなかった。
「みんな! 気を引き締めていけ!」
「おう!」
円堂のパントキック。究極化身イレブンのメンバーが一斉に動き出した。
ボールは神童のもとに渡る。
ファンタジーイレブンの選手たちも、すぐさま守備態勢へと移行。
前線へのパスコースを塞ぎ、究極化身イレブンの進行を阻もうとする──。
「ここで行きます……!」
―究極化身イレブン監督、笹波 雲明が立ち上がる。
フィールドの空気が、変わった。
「必殺タクティクス、『天空のタクト』を実行開始! 神童さん! 野坂さん! お願いします!」
雲明の声が響く。
「わかりました!」
「行こうか」
静かに頷く二人。
神童が両手を上げる。まるで壇上に立ち指揮をするかのように。
その背後に立つのは野坂悠馬。
二人の司令塔を中心に、究極化身イレブンの選手たちがそれぞれの位置へ散っていく。
「"天空のタクト"! 天馬!」
神童の声と共にボールが蹴り上げられた。
蹴りあげられたボールはまず天馬のもとへ。
瞬間、究極化身イレブンの選手たちが一斉に動き始めた。
「何だ!?」
ファンタジーイレブンの選手たちが周囲を見回す。
その迷いを、見逃さない。
「明日人!」
「はい!」
神童が指揮するかのように手を動かしながら指示を飛ばす。
天馬から送られたパスは走り込んだ明日人の足元へ吸い込まれた。
「何!?」
ナイトこと鎧守 騎が反応する―が、すでに遅い。
明日人はボールを受けた瞬間一気に加速した。
「"イナビカリ・ダッシュ"!」
稲光のような軌跡を残し、明日人がナイトを抜き去る。
「く……!」
「追い込め!」
ブレイブが叫び、守備陣形を取らせる。
「前だハル! 明日人! パスだ!」
響く神童の指示。
明日人が中央へボールを送る。
そこには既にハルが走り込んでいた。
「やらせない!」
武闘家がハルの進路へと回り込む。
完全に道を塞いだ―
「……甘いね」
ハルはそのボールに軽くワンタッチ。
誰もいないように見えた中央へと、ボールが転がる。
「何!?」
振り返るナイト。そこへ―
「フェイ!」
「任せろ!」
走り込んできたフェイがボールを受け取った。
だがフェイだけではない。天馬が、ハルが、稲森が、明日人が、灰崎が、剣城が、豪炎寺が。
それぞれが最適な場所へ移動し、分かっているかのような最適なルートでパスを出す。
「何だ……この動きは!?」
ファンタジーイレブンの選手たちが翻弄される。
一人を追えば、別の場所に穴が開く。
穴を塞げば、今度は別の選手がフリーになる。
「そんな……!」
ウィッチが呟く。こんなに完璧な連携があるのか。
一見バラバラな動き―だが、それはまるで一つの生き物のような連携が取れた動き。
まるで神が天空からフィールドを見下ろしているかのように。
どこに空いたスペースがあるのか、どこに最適なパスルートがあるか。
神童が描く道筋。野坂が指示する位置。
その全てを把握した連携がチームを前へと進めていく。
「よし!」
ボールを受け取った明日人。
シュートチャンスー
「通さない」
ゴール前に立ちはだかったのは、パラディンこと原田 定蔭。
城壁のように立ちはだかる原田を見据え―
「行くぞ……!」
稲森はボールを高く蹴りあげた。
稲森自身もそれを追いジャンプし、身体を反転させ足を振りかぶった。
「"シャイニングバード"!」
オーバーヘッドキック。
蹴り出されたボールは輝きを放ち、太陽のように輝く鳥となり飛翔していく。
光の鳥は原田の上空を悠々と通り過ぎ―ゴールの上へとそれていく。
「なっ……!」
「ナイス」
その先に一つの影―『サッカーモンスター』と呼ばれた円堂ハルー円堂守の息子である少年が空中へと跳び上がっていた。
ハルは飛んでくるボールを見据え、身体を大きく捻る。
次の瞬間──その身体に炎が宿った。
「──ひとつ」
炎を纏ったハルが、ボールへと迫る。
それは豪炎寺の放った必殺技、ファイアートルネードを彷彿とさせる一撃。
だが、同じではない。
それは流星のように、空から落ちていくシュート。
暗闇の中もがいた少年が、たどり着いた必殺の一撃。
「―"メテオッド・ファイアートルネード"!!!」
轟ッ―!!!
炎が爆ぜる。
ハルの足がボールを捉え、炎の渦となった流星が地上へと落ちていく。
「"ホーリーゾーン"!!」
ゴール前に聖なる光が広がった。
光はゴール前を包み込み、迫る流星の炎を真正面から受け止める。
「ぐっ……うううう!」
炎と激突した光の壁が激しく揺らぐ―
―そして、炎の渦がそれを食い破り、貫いた。
「きゃあああっ!」
ズドォォォン!!
ボールがネットへと突き刺さる。
なおも消えない炎の渦がゴールを包み込み、紅蓮の光がフィールドを照らし出した。
──ゴール。
先制は、究極化身イレブンだった。
ゴールネットに残っていた炎がゆっくりと消えていく。
「……やった!」
拳を握りしめる明日人。
「ナイスシュート、ハル!」
「ああ!」
ハルも笑みを浮かべ、仲間たちと拳を合わせる。
「……一本、取られましたね」
その一方、ゴール前で立ち上がる僧侶。
悔しさを滲ませながらも、その視線はすでに前を向いていた。
「見事なシュートだったな」
パラディンのその言葉に、僧侶は小さく頷いた。
「ええ、あれが究極化身イレブン……。
でも、まだ終わってません」
フィールド中央へと選手たちが戻っていく。
ボールを手にしたのは、ファンタジーイレブン。
勇者がボールを見下ろす。
「……先を越されたな」
隣に立つブレイブが、ニヤリと笑った。
「へっ。だったら──」
赤髪を揺らし、ブレイブは前を向く。
「取り返しゃいいだろ!」
「……ああ!」
勇者も笑う。
そして──二人の視線が、ゴールへと向けられた。
そこには、先ほどのシュートを決めたハル。
そして、その背後には──究極化身イレブンの選手たち。
強い。だが──。
「面白くなってきたじゃないか」
勇者の口元に、笑みが浮かぶ。
その様子を、ベンチから見つめるアフロディもまた静かに微笑んでいた。
「ふふ……」
そして、フィールド中央。
審判が笛を構える。
ピィィィィッ!!
高らかなホイッスルが、フィールドに響き渡った。
ファンタジーイレブンのキックオフ。
先ほどの失点をしても、誰一人として俯いてはいない。
「行くぞ!!」
キックオフでボールを受け取った勇者。
その視線の先―ベンチに立つアフロディが、穏やかに頷いた。
「必殺タクティクスー『トライダイブ』」
―アフロディ監督の号令。
それと共にMF、FWの6人が一斉に走り出した。
左サイドにキリィと武闘家、中央にブレイブと勇者、右サイドにナイトとウィッチ。
三方向へとまるで三本の槍が突き刺さるように展開していく。
「なっ……!」
究極化身イレブンの面々が一斉に反応する。
「散った!?」
「どちらを止める……!」
一瞬の反応の遅れ。それをファンタジーイレブンは逃さない。
「キリィ!」
中央にいた勇者から、左サイドへ鋭いパスが飛ぶ。
「もらったよ!」
キリィこと早乙女キリエが走りながらボールを受け止める。
すぐさま相手がキリィへと寄せてくる―が、
「ナイト!」
ボールを奪われる直前。逆方向へ蹴り上げる。
ボールは選手の頭上を越え逆サイドへ。
「はい!」
走り込んでいたナイトがそれを受け取り即座に前へ。
駆け抜ける6人。
ボールが強烈な勢いで行き交い、守備を次々置き去りにしていく。
「速い……!」
「ボールを追うな! パスコースを読めばカットは出来る!」
食らいつく究極化身イレブンの選手たち。
が、高速で動く6人を前にボールはその先を行く。
「くそっ!」
「ディフェンダー! ゴール前だ!」
鬼道の指示が飛ぶ。
究極化身イレブンのディフェンダー3人が一斉にゴール前へ戻る。
そこに走り込むはファンタジーイレブンのFW、ナイト。
「行きます!」
ペナルティエリアの外。
ナイトが胸に手を当てる。
瞬間、胸の中心から赤い光が溢れ出しボールへ集まっていく。
「―"ロイヤルハートショット"!」
天馬たちの歴史でもとある惑星の騎士団長、サージェスが放っていた技。
赤い光が一直線にゴールへと突き進む。
「ゴールさせるか!!」
灰崎が前に飛び出し右足を振りかぶる―
「"デーモンカット"!」
振り抜いた足から黒い衝撃波が放たれる。
悪魔の顔を思わせる巨大な影が浮かび上がり、シュートの真正面から激突した。
―ドゴォッ!
赤い光が大きく弾ける。
ロイヤルハートショットの勢いが明らかに削がれた。
だが──完全には止まらない。
「まだだ!」
瞬間、シュートの前へ、二人の選手が走り込んできた。
勇者、そしてブレイブ。
「チェイン!?」
「しまった!」
天馬、鬼道が気付き声を上げる。
その瞬間、勇の身体を青い光が包み込んだ。
「化身―!」
背後から巨大な存在が姿を現す。
「"聖騎士アーサー"!!」
「アーサー!?」
天馬が目を見開く。巨大な聖騎士が、悠然と姿を現した。
かつて自分が戦った強敵―シュウと白竜の二人で生み出した化身。
それを今、勇者一人の手で発現させていた。
その横に、ブレイブが並ぶ。
「勇!」
「行くぜブレイブ!」
二人が互いを見て頷く。言葉は必要ない。
誰よりも互いを理解する、最大のライバルにして―親友。
「「おおおおおおっ!」」
二人が同時に踏み込む。
構えられた剣に、激しい稲妻が宿された。
「これが―」
「俺たちの……!」
「「"ソードエクスカリバー"!!」」
それと共に二人が同時にボールを蹴り抜く。
振り下ろされる巨大な剣。
それはまるで、無数の光を収束させた聖なる斬撃。
「円堂さん!」
「止める……!」
ゴール前。円堂守が両足を踏みしめる。
右手に黄金の光が集まり、黄金の翼が広がった―
「"ゴッドハンドV"!!」
巨大な右手が迫る斬撃を受け止める。
「ぐううう……!」
円堂の身体が大きく後ろへ押し込まれる。
亀裂―破られた。
「うわぁあっ!!」
吹き飛ぶ円堂。その横を光の斬撃が駆け抜ける。
そして、シュートはゴールネットへと突き刺さった。
「よっしゃああ!」
──ゴール。
1-1。試合を振り出しに戻した。
「ナイスだ勇!」
「流石です!」
武闘、僧侶たちも喜びの声を上げる。
二人の勇者は互いを見つめて拳を合わせた。
「―すごかったぜ……! お前のシュート!」
ゆっくり立ち上がる円堂。
その顔には悔しさとは違う笑みを浮かべていた。
「次はぜってー止める!」
「……ああ!」
そんな笑顔に勇もまたまっすぐに応えた。
その様子を見ていたウィッチが、少し呆れたように口元を緩める。
「へえ……敵を褒めるとはね」
「相変わらずのサッカーバカだな」
鬼道も小さく息を吐く。
円堂のその姿を見て、ファンタジーイレブンの選手たちも改めて円堂を見つめた。
―この男は、強い。勝敗を超えてサッカーそのものを楽しんでいる。
―そして究極化身イレブンのキックオフ。
キックオフでボールを受け取った剣城からのパスでボールを持ったのは鬼道。
鬼道は前方を見渡す。
「行くぞ!」
短い号令と同時に、鬼道が中央を駆け上がる。
それに呼応するように、その左右から、明日人、ハル、そして天馬が一斉に走り出した。
「天馬!」
「はい!」
鬼道から天馬へ。
天馬は迫り来るブレイブを前にして、一瞬だけ身体を沈める。
「"そよかぜステップ"!」
風のように体を躱しすり抜ける。
その先にはさらに二人。
「明日人!」
「はい!」
迷わず明日人へパス。
明日人はボールを受け取りそのまま加速。
「イナビカリ・ダッシュ!」
稲妻のような加速で勇を置き去りにする。
さらに前から別の選手が寄せてくる。明日人は無理に突破しない。
その動きを見た瞬間、横へパス。ボールはハルへ渡った。
「任せて」
受け取るや否や中盤へと切り込むハル。
そこに武闘が真正面から突っ込んできた。
「うおおおおっ!」
激しいタックル。
「いいタックルだね。でも―」
ハルは軽く跳躍する
「―"スカイウォーク"」
まるで空中に見えない足場があるかのように、ハルの身体が空を駆ける。
「なっ……」
武闘の頭上を飛び越え着地。
「止めきれねえ……!」
天馬、明日人、ハル。
三人が次々と進路を変えながら前へ進み、卓越した個人技でファンタジーイレブンの守備を翻弄していく。
そして──その動きによって中央に大きなスペースが生まれた。
「剣城!」
鬼道の声が飛ぶ。
その瞬間、剣城京介がペナルティエリア前へと一気に走り込んだ。
そして、ハルが右足を振り抜き剣城へとセンタリング。
待っていた剣城が跳ぶ。その身体から、黒いオーラが噴き上がった。
「行くぜ!」
剣城から溢れ出す黒いオーラ―
ファンタジーイレブンが息を呑む。
剣城の背後に、巨大な騎士の姿が浮かび上がった。
「化身か……!」
「来い……!
"剣聖ランスロット"!」
そして次の瞬間―
剣城はその化身を―"纏った"。
「アームド!」
姿が―変わった。
「化身―アームド!?」
「何……! あの姿!」
背中に赤いマントを着けた騎士のような姿―
ランスロットを彷彿とさせる鎧を纏った姿へと変化した。
「決める―!」
身体を大きく反らしながら飛び上がる。
「"バイシクルソード"!」
──ズガァンッ!!
センタリングに合わせた豪快なバイシクルシュート。
アームドの力を得た強烈な黒い一閃がゴールへと突き進む。
「させない―!」
モンクが前へ出て腕を振り上げる。
「"グランドクエイク"!」
地面に拳を叩きつける。
大地が激しく揺れ、地面から衝撃波が噴き上がりシュートの勢いを留めた。
そこにパラディンも続く。
「"ザ・タワー"!」
天高く聳え立つ聖なる塔が出現。
雷撃がシュートへと向かって降り注ぎ、迫るシュートを真っ向から迎え撃った。
「ぐっ……!」
ボールの勢いが二つのブロック技で大きく削がれた。
ボールはなおもゴールへと迫る。
しかし、その威力は明らかに落ちていた。
「これなら……!」
ゴール前で待ち構えていた僧侶が、両手を広げる。
そして──。
パシッ!
迫ってきたボールを、しっかりとその手中へ収めた。
「……止めました!」
「ナイスだ二人とも!」
パントキック。ボールはメイジへ。
ここから勇へボールを出してもう一点―その時だった。
「今です」
―雲明が動いた。
「必殺タクティクス"ブロック・ザ・キーマン"を実行! 勇を止めてください!」
「「ああ! (はい!)」」
野坂、フェイ、鬼道。
三人が勇を囲み始めた。
「これはっ―!?」
―孤立。
これによりファンタジーイレブンはチームの核である勇にパスを出しても通らず、勇もボールを持ってもパスができない状態。
「チームの核は勇者だということははっきりしています。それを止めれば、攻撃力は大幅に減る」
「くっ……! だけど!」
メイジが長いパスを出す。
パスの先にはもう一人の勇者であるブレイブ。
灰崎がそこに迫る―
「押し通る!」
ブレイブの両手に宿った光。
そして、それは巨大な剣へと変化した。
「"アトラスソード"!」
思い切り、振り払う。
振り払われた剣に灰崎は吹き飛ばされた。
「ぐっ……!」
そしてブレイブの背から、赤いオーラが立ち上る―
―化身だ。
「来い……!
"魔帝グリフォン"!」
大きな翼を宿した黄金の戦士。
神々しき勇者の化身がそこにあった。
「魔帝グリフォンまで……!」
「しかも一人でだと……!?」
本来天馬、神童、剣城の三人で合体させて生み出した化身。
それと同じ名を持つ存在を──舞嶺は一人で呼び出した。
神童、剣城は驚きを隠せない。天馬も、言葉を失っていた。
舞嶺がボールを蹴り上げる。
その瞬間、魔帝グリフォンが両手を合わせ、焔の剣を創り出した。
そして、振り下ろされる炎の刃とともにその一撃を―放つ。
「"ソード・オブ・ファイア"!」
──轟ッ!!
炎を纏った一撃が、ゴールへ向かって放たれる。
巨大な炎の剣が空を裂き、灼熱の奔流となって迫っていく。
「円堂さん!」
「ああ!」
円堂がゴール前で身構える。
右手を大きく掲げると、黄金の光が溢れ出す。
そのエネルギーは、次第に一点へと圧縮されていき―
その右手は──眩いダイヤモンドの輝きを放ち始めた。
「"ダイヤモンドハンド"!」
──ズドォォォン!!
ダイヤモンドと化した円堂の右腕が、炎の剣を真正面から受け止めた。
「ぐううっ……おおおおおおお!」
その右手が燃え盛るシュートを押さえ込み―
炎が、消えた。ボールは、円堂の手の中。
「よし……!」
「マジかよ……!」
円堂は手中に収めたボールを大きく投げる。
「行け!」
力いっぱい投げられたボール。その先に居るのは野坂。
「―行くぞ!」
野坂がボールを受け取る。
そして―ゴールを見据えた。
距離にして約七十メートル。
野坂は、振りかぶった。
「まさか―!?」
息を呑む勇者。
野坂の背後から巨大なオーラが立ち上る。
そこに現れたのは──玉座に腰掛けた騎士。
右手には、鋭く巨大な槍。騎士はその槍を振りかぶった。
「"キングス・ランス"!」
―ズガァン!
蹴り出されたボールが一本の巨大な槍に変わった。
鋭く尖った光が空気を切り裂きながら、ゴールへ一直線に突き進む。
「マジかよ……!?」
ファンタジーイレブンが驚愕する。
「止めます……!」
キリィが前へ出た。
両足を踏みしめ、迫り来るキングス・ランスを真正面から見据える。
「"ホワイトハリケーン"!」
白き聖なるオーラがキリエの右足を包み込む。
そのままボールへ向かって飛び出した。
「──っ!」
白い竜巻と、巨大な槍。
二つの力が真正面から激突する―が。
──ズドォォォン!!
「きゃあああっ!」
キリィの纏った白い風が一瞬でかき消され、身体が吹き飛ばされた。
キリィの守りを突破した一撃は、なおもゴールへ迫る。
「させない──!」
僧侶が両手を広げる。
その背後から、眩い光が溢れ出した。
「……!」
光の中から姿を現したのは──。
巨大な女神。その神々しい姿がゴールを包み込むように聳え立つ。
「"女神大陸"」
女神がゆっくりと両腕を広げる。
迫り来るキングス・ランスを──。
その胸へと、優しく抱きしめた。
──ズドンッ!!
激しい衝撃がゴール前を揺らす。
だが。
女神の姿は──揺らがない。
槍のようなシュートは、その胸の中で完全に勢いを失った。
僧侶はほっと息をつき、ボールを抱きしめる。
そして、少し離れた場所で倒れているキリィへ視線を向けた。
「ありがとうございます、キリィさん」
「……へへ。どういたしまして」
──僧侶は一礼すると、すぐさまボールを前方へ蹴り出した。
再びのパントキック。
ボールを受け取ったのは、メイジこと銘慈 魔子。
「ここでブロック・ザ・キーマンを破る……!」
メイジが前方を見据える。
その先では、依然として勇が灰崎、フェイ、鬼道の三人に囲まれている。
「ウィッチ! 協力して!」
「オッケー!」
並び立つメイジとウィッチ―初市 詠美。
二人の魔法使いが、勇を囲む三人へ向かって駆け出し―
「「"ブリタニアクロス"!」」
二人が同時に跳び上がった。
空中に二つの魔法陣が展開され、ボールがそれを包み込む。
二人がボールを蹴って地面にたたきつけると、十字型の衝撃波が炸裂した。
「うわぁっ!」
「ナイス!」
鬼道が吹き飛ばされる。
その瞬間、勇を囲む包囲網に穴が生まれた。
「勇くんお願い!」
「任せろ!」
勇が駆け出す。
メイジから送られたボールを、確実に足元へ収める。
「よし──!」
だが。
「──おっと」
「させるかよ!」
左右から二つの影が迫った。
フェイと灰崎。未だ二人によるマークは外れていなかった。
「く……"王の"……」
勇は王の剣で包囲網を突破せんとする―が、遅い。
「フェイ!」
「オッケー!」
灰崎とフェイは勇を中心に周回しながら走り始める。
その動きに合わせるように、勇の足元に水の大渦が生まれた―
「"サルガッソー"!」
「うわああっ!」
勇の身体がバランスを崩し、芝の上へ倒れ込む。
ボールが足元から弾き出された。
「勇くん!」
メイジが叫ぶ。
「鬼道さん!」
「ああ!」
弾き出されたボールを、鬼道が素早く拾い上げる。
そこへ──。
「……ここは通しません」
鬼道の前に、シーフ―椎府 盗人が立ちはだかった。
姿を消すように身体を揺らし、気配を薄める。
「"ステルスウォーク"!」
「……!」
次の瞬間、シーフの姿が視界から消えた。
ボールを奪いに接近するシーフ―だが。
「無駄だ!」
鬼道と灰崎が向かい合う。
そして、二人は同時にボールを挟み込むように蹴った。
「「"キラーフィールズ"!」」
蹴られたボールはその場で猛烈に回転。
紫の渦が巻き起こり、姿を現したシーフが吹き飛ばされた。
「うわあっ……!」
いくら透明で近づこうと、全方位に衝撃波が巻き起これば意味はない。
そのまま鬼道がフリーでシュート体制。
その左右へ、灰崎と神童が並ぶ。
三人の視線が交わった。
「行くぞ!」
「ああ!」
「はい!」
三人が一斉に跳躍する。
鬼道の指笛が、空中で鳴り響いた。
ピィィィッ!
その音に呼ばれるように、どこからともなく五匹の紫色のペンギンが姿を現す。
五匹のペンギンが、ボールを中心に空中を泳ぎ回る。
その動きによって巨大な渦が生まれた。
紫色のエネルギーが渦の中心──ボールへと次々に集まっていく。
これこそ一号、二号を超えた最強の皇帝ペンギン。
三人が、エネルギーが限界まで膨れ上がったボールへその足を振り下ろした。
「「「"皇帝ペンギン3号"!!!」」」
―ドゴォォォン!!
五匹の紫色のペンギンとともに、極限までチャージされたエネルギーが解き放たれた。
紫色の奔流が、巨大な渦を巻きながらゴールへ突き進む。
「くっ……!」
僧侶がゴール前で両腕を大きく広げる。
その背後から再び、巨大な女神が姿を現した。
「"女神大陸"……!」
女神が両腕を広げ、迫り来る皇帝ペンギン3号を、正面から抱き止めようとする。
―ズドォォン!!
紫色のエネルギーが、女神の胸へと激突する。
女神の身体が揺らぐ。
「ううううっ……!」
離さない―だが―
皇帝ペンギン3号は止まらない。
五匹の紫色のペンギンが、荒れ狂うエネルギーの中を縦横無尽に飛び回る。
女神の力を──真正面から食い破っていく。
「そんな……!」
女神の身体に亀裂が走り―砕け散った。
「きゃああああああっ!」
そのまま皇帝ペンギン3号が、ゴールへ突き刺さった。
──ズドォォォン!!
―ゴール。
1-2。究極化身イレブンが勝ち越しのゴールを奪った。
「ナイスです、鬼道さん!」
天馬が駆け寄る。
「前半終了間際によく決めたな」
豪炎寺も、静かに頷く。
「ああ。みんなのおかげだ」
鬼道が短く答える。
一方、ゴール前では──僧侶がその場に座り込んでいた。
「大丈夫か?」
勇が駆け寄る。
「はい……。ごめんなさい……」
「気にすんな」
勇は手を差し出す。
「絶対、取り返すからよ」
「……はい!」
僧侶はその手を取り、立ち上がった。
──そして。
前半終了を告げるホイッスルが、フィールドに響き渡った。
──前半終了。
選手たちが、それぞれのベンチへ戻っていく。
ファンタジーイレブンのスコアは1。
対する究極化身イレブンは2。
大きな―見た目以上に大きな1点差。
それでも、ファンタジーイレブンの選手たちの表情に、焦りはなかった。
「……強いね。究極化身イレブン」
メイジがフィールドの向こうを見つめる。
そこでは、究極化身イレブンの選手たちが言葉を交わしていた。
「特に、ブロック・ザ・キーマンは厄介だったね」
アフロディが選手たちに視線を向ける。
「勇や舞嶺を止められると、こちらの攻撃力が一気に攻撃力が落ちてしまう。後半はより広く攻めていこう」
「ああ。俺も全力で動いてやるよ」
勇が拳を握る。
「お前は最初から動いてなかったか?」
「うるせえ!」
口を挟むブレイブとそんなブレイブをにらみつける勇者。
そして笑いあう二人。
その様子を見ながらファンタジーイレブンの面々も自然と笑みを浮かべた。
「今度は守ります。皆さんも……力をお貸しください」
「ああ、任せろ!」
僧侶の言葉に、勇者、そしてメイジが頷いた。
一方、究極化身イレブンのベンチ。
「前半は上出来だな」
豪炎寺が呟く。
雲明はフィールドを見つめたまま答えた。
「はい。特に『ブロック・ザ・キーマン』は有効でした。勇を自由にさせなければ、彼らの攻撃は大きく制限できます」
「だが―」
神童は真剣な表情でフィールドを見る。
「―向こうもかなり強い」
「はい……特に……あの二人の化身……」
天馬の視線の先には、勇と舞嶺。
「聖騎士アーサーに、魔帝グリフォン……」
「……俺たちや、白竜たちの化身を一人で……」
剣城が目を細める。
それは、単なる「化身を使える」という話ではない。
かつて自分たちが仲間とともに繋ぎ合わせ、ようやく引き出した力。
それと同じ領域の化身を──あの二人は、一人で使っている。
「あの化身―あの二人が本物の『勇者』であるからこそ―あの化身なんだ」
ベンチから試合を見つめ続けていた少年──ヴィクトリオ・アルノが、静かに立ち上がった。
その顔には──隠しきれないほどのワクワクが浮かんでいる。
「ヴィー?」
振り返る明日人。
ヴィーは、フィールドの向こう。
ファンタジーイレブンの二人へ視線を向けたまま続けた。
「―彼らの辿った歴史―ファンタジーイレブンの辿ってきた歴史は、僕たちの辿ってきた歴史とは違う」
「そういえば……あのアフロディも……」
豪炎寺が呟く。
ファンタジーイレブンの監督。
自分たちが知るアフロディと同じ顔、声をしながら、全く異なる歴史を歩んできた、もう一人のアフロディ。
「……彼らは、『もしも』の歴史の中の人物。勇は、邪を打ち破る風の勇者として、ブレイブは、星を守る勇者としてそれぞれの歴史を生きてきた……」
「―あの化身は、その歴史の中で生まれたという事?」
天馬が目を見開く。
「……聖騎士アーサーも魔帝グリフォンも、彼らの生きてきた歴史そのものなんだと思う」
「……そう考えれば……他の選手たちも……」
―確実に……持っている。
まだ見ぬ必殺技、まだ見ぬ力を。
そんな確信が彼らの中にあった。
「上等です」
雲明の静かな声が響く。
その目は、まっすぐフィールドを見据えている。
「あの人たちが本物の勇者なら―僕たちも勇者」
マインドイーターという、世界そのものを脅かした強大な敵。
それを打ち倒した者たち。それが―究極化身イレブン。
「僕たちもまた──マインドイーターという強大な敵を打ち倒した勇者だ」
雲明の声に、迷いはない。
「なら──負ける道理はありません」
強気な言葉。
けれど、その表情には──ほんの少しの笑みが浮かんでいた。
彼もまた。
──サッカーが、大好きなのだ。
「ああ、やろうぜ雲明!」
円堂ハルが笑いながら答える。
「―ヴィーも、準備していてください」
「オッケー!」
ヴィーが笑う。
彼もまた──このチームの一員。
「いよーし! 最後まで全力で―」
その時だった。
―ゴゴゴゴゴ……。
「……?」
フィールドの中央。
何かが軋むような音が響いた。
選手たちが、一斉に振り向く。
「なんだ……?」
剣城が眉をひそめる。
空気が──重い。
まるで、フィールドそのものが何かを恐れているようだった。
「これは……」
野坂が目を細める。
「エネルギーが……急激に増大している?」
「え?」
ヴィーの声に天馬が聞き返した、その瞬間。
──ドォォォォン!!
フィールド中央から、黒い衝撃波が噴き上がった。
「うわっ!」
選手たちが腕で顔を覆う。
黒い霧が渦を巻き、瞬く間にフィールドを覆い尽くしていく。
「何だ、これは!?」
「凄まじいエネルギー……!」
鬼道が叫び、神童も警戒する。
だが、ファンタジーイレブンは──違った。
「……!」
勇者が目を見開く。
ブレイブも、ゆっくりと顔を上げる。
「この感じ……まさか……!」
黒い霧の向こう。
一人の影が、ゆっくりと歩み出す。
ザッ。
ザッ。
ザッ。
足音が、静かに響く。
そして──。
霧の中から、一人の女が姿を現した。
白い髪。
ファンタジーイレブンのユニフォーム。
その身から放たれる、圧倒的な威圧感。
彼女はフィールドを見渡し―ゆっくりと口元を吊り上げた。
「──随分と楽しそうなことをしているな」
「……!」
ファンタジーイレブンの面々が、一斉に反応する。
勇者が拳を握る。
「来たか……!」
「やっと来たな!」
ブレイブが不敵な笑みを浮かべる。そして―
その女の前へ、勇者とブレイブが並び立った。
「「魔王!」」
勇者が呼ぶ。
女―"魔王"は、二人を見て静かに笑った。
「待たせたな」
その声は、低く。
確かな威厳を帯びていた。
「我がいない間に、随分と苦戦していたようだな」
「苦戦って言うなよ!」
ブレイブが食ってかかる。
「俺たちはまだ負けてねえ!」
「そうだな」
魔王は静かに頷き、フィールドの向こうへ視線を向ける。
そこにいるのは究極化身イレブン。
「分かっているだろう? 後半はー我らが行く」
その言葉を受け、ファンタジーイレブンの中から二人が立ち上がった。
キャプテン―歌舞天寺 洋。
黒魔女―玄間 嬢子。
「来られると信じておりました、魔王様」
「いつもお前は遅いんだよ!」
黒魔女が笑みを浮かべながら恭しく一礼をし、キャプテンが獰猛な笑みを見せる。
魔王は二人を一瞥すると──。
「ふっ……」
小さく笑う。その瞬間だった。
魔王の身体から、漆黒のオーラがゆっくりと立ち上がる。
―ゴォォォォ……!
フィールドの空気が、一変した。
「……!」
円堂が身構える。
「なんだ……この威圧感……!」
鬼道が目を細める。
「ただ者じゃない……」
野坂も警戒する。
魔王は一歩、究極化身イレブンに向かい踏み出した。
「我が名は―"逢魔 統華"」*1
漆黒のオーラが渦を巻く。
逢魔 統華の宣言に、フィールドが静まり返る。
「この世を統べる──魔王だ」
その姿はまさに、世界を統べる王。
魔を率いる、絶対者。
そして──。
かつて勇者たちと剣を交え、その果てに互いを認め合い、共に戦うことを選んだ──もう一人の英雄。
魔王と勇者。
本来なら交わるはずのなかった二つの存在は──今や、同じ仲間としてこのフィールドに立っている。
―後半戦。
ファンタジーイレブンに、最後の一人―『魔王』が加わった。
────―
―後半戦。
ファンタジーイレブンはメンバーを変更した。
FWのナイトとキリィ、そしてMFの武闘家がベンチへ下がる。
ブレイブはFWの右ウイングへ移り、左ウイングにキャプテン、そしてトップには―魔王。
そしてMFには黒魔女が入った。
魔王を中心とした、新たな布陣。
その配置を確認すると―魔王が、キックオフのボールを持つ勇へと歩み寄った。
「勇よ」
「―逢魔」
勇は魔王を見つめる。
「面白い前半戦を見せてもらったぞ」
「―ああ」
魔王、そして勇者はフィールドの向こうへ視線を向ける。
そこに立つのは―究極化身イレブン。
「知っての通り俺たちは一点ビハインド。あいつら相当だ」
「分かっている―」
ニヤリと魔王が不敵な笑みを浮かべる。
「お前たちの力は、こんなものではないのだろう?」
「逢魔……ああ、もちろんだ」
勇者が、拳を握る。
「ここからが、本番だ!」
「ふっ……勇ましい者よ」
逢魔は小さく笑った。
「勇」
「ん?」
「──我らは、かつて争った」
その言葉に、勇は一瞬だけ目を見開く。
―脳裏に、かつての光景が蘇る。
魔王城の玉座の間。
その中央で、三つの影が向かい合っていた。
「うおおおおっ!!」
剣を振り抜く勇者。
「おらあああああ!」
巨大な剣を振り下ろすブレイブ。
「―はあっ!」
漆黒の力を纏った槍を突き出す魔王。
──ガキィィィン!!
二本の剣と一本の槍が激突する。
勇者と魔王。
互いに一歩も譲らず、何度も、何度も刃を交えた。
そして―
幾度もの戦いを経て、双方は互いの信念を知った。
魔王が掲げた力による統治。それを以って作り上げる平和な世界。
そして、二人の勇者が掲げた「誰かを護る力」という信念。手を取り合い作り上げる平和な世界。
―敵だった勇者と魔王。
それはいつしか、互いを認め合うようになり、同じ道を歩むことを選んだ。
「けど……」
勇が拳を握る。
「今は違う」
「ああ」
逢魔が頷く。
二人が並んで、フィールドを見据える。
「……行こうぜ、逢魔」
「―ああ。楽しい戦いにしようではないか」
──ピィィィィッ!!
後半開始のホイッスルが鳴り響いた。
勇者の蹴り出されたボールを、魔王が受け取った。
「―逢魔!」
勇者が叫ぶ。
魔王は前を向いたまま、ボールを、静かに蹴り上げる。
―瞬間―。
漆黒のオーラが一瞬でその身体を包み込んだ。
「……!」
魔王の纏う只ならぬ気配。
究極化身イレブンが、一斉に身構えた。
「いきなりシュート!?」
「当然だ」
驚きの声を上げる天馬。
魔王は静かに応え、両足にボールを挟み込む。
黒いエネルギーが、ボールへと集束していく。
渦巻く闇が、一点へ―。
「止めるぞ!!」
鬼道が叫ぶ。
その号令と共に、究極化身イレブン選手たちが一斉にゴール前へと引いた。
「究極化身イレブンよ―」
魔王の瞳が、ゴールを射抜く。
「我が力を見るがいい!」
──ドォォォォン!!
魔王がボールを撃ち出した。
猛烈な回転を起こすボールはやがて、巨大な漆黒の槍へと変化する―
「―"デススピアー"!」
──キュイイイン!!
巨大な黒槍がフィールドを切り裂き、猛烈な回転を以ってゴールへ突き進む。
迫る強烈な一撃。究極化身イレブンのメンバーたちが次々と吹き飛ばされていく。
「"アインザッツ"……!」
「"デーモンカット"!」
「"エアーバレット"!」
神童、灰崎、野坂の必殺技によるシュートブロック―だがボールは止まらない。
三つの必殺技をものともせず、槍はゴールへと突き進む。
「絶対に―止める!」
ゴール前。
円堂が、真正面からデススピアーを見据える。
円堂は体を大きく捻り、背を向ける。
―円堂の"心臓"に強烈な"気"が溜まり―最大となった瞬間、解き放たれる。
──ゴォォォォォォン!!
その気は、円堂の背後で巨大な黄金の魔神へと姿を変えた。
「"マジン・ザ・ハンド"!!」
──ズドオオオオン!!
魔神の突き出された黄金の右手。
その手がデススピアーと激突し、それを押しとどめる。
「ぐううううっ……!」
円堂が歯を食いしばる。
巨大な黒槍と、黄金の魔神。
二つの力が激しくぶつかり合う。
「うおおおおおおっ!」
円堂は一歩も退かない。
デススピアーもまたゴールへ突き進む―
永遠にも感じられる拮抗の末──。
黒い槍が消え、円堂の手にはボールが収まっていた。
「はあ……はあ……!」
円堂は荒い息を吐く。
そして、ボールを握った右手を見る。
「……!」
右手が──ビリビリと痺れていた。
「これが……魔王……」
円堂が、魔王を見つめる。
そして──。
「……すげえ……!」
その目には、驚きと同時に──純粋な興奮が宿っていた。
円堂は荒い呼吸を整え、再び前を向く。
「よし―いけぇ!」
大きく振りかぶり、ボールを投げ出す。
ボールの行く先は──明日人。
明日人が、ボールを受け取ろうとした──その瞬間。
「させないよ」
「!?」
目の前に一人の黒い影が飛び出した。
黒魔女―玄間 嬢子。
「"ディメンションカット"」
黒魔女が自らの足を黒いオーラへと突っ込む―
―シュンッ!
その足が、明日人の死角から飛び出した。
「なっ……!?」
まるで空間をワープしたような技に、明日人はボールを奪われた。
「魔王様、お受け取りください」
黒魔女が迷いなくボールを送り出す。
「任せろ」
飛んでいくボールの先、魔王が静かにボールを受け取った。
その前には野坂、灰崎、神童。三人のディフェンダー。
「―やらせな―」
「遅い」
静かに言い放つ―瞬間。
身体を包む漆黒のオーラが、一気に膨れ上がった。
「これは……!?」
黒い闇が三人を飲み込んでいく―そして。
「邪魔だ。
"オールデリート"」
パチンと指を鳴らす魔王―
同時に守備陣三人の姿が、魔王の遥か後ろへと消えていった。
「うわっ!?」
「なっ―!?」
「くっ……!」
そして―一対一。
ゴールを阻むのはキーパーのみという絶好のシュートチャンス。
「来い……! 全力でお前を止めて見せる!」
円堂が構えを取る。
その言葉に―魔王が、口元を吊り上げた。
「円堂守よ。闇に沈みゆく瞬間―貴様は何を見る?」
瞬間―魔王の背後で漆黒の炎が渦を巻き始めた。
ただの必殺技ではない。
もっと巨大な力。
もっと禍々しい存在。
闇の奥底から、何かが姿を現そうとしていた。
「まさか……化身!?」
「来たれー混沌より生まれし我が力よ―!」
―ゴォォォォン!!
混沌が、姿を現す。
六つの赤き翼、禍々しき角、悪魔を思わせる異形の顔。
圧倒的な存在感を放つその姿が、魔王の背後へと降臨した。
「"混沌の王 アスタロト"!!」
大地が震える。
混沌が広がる。
その中心で、魔王がボールを蹴りあげた。
アスタロトの力、そして魔王が纏う混沌のエネルギーが、ボールへと凝縮されていく。
無数の闇が渦を巻き、ボールは一つの"闇"へと姿を変えた。
「我が力のもとに―砕け散るがいい!」
魔王がゴールを見据え―蹴り落とした。
「"カオスメテオ"!!」
―ドゴォォォォン!!
それはまるで、闇を凝縮して作り上げられた巨大な隕石。
それが、円堂守の守るゴールへと落ちていく―
相対する円堂。
右手が眩いダイヤモンドの輝きを放つ。
「"ダイヤモンドハンド"!」
──ズドォォォン!!
激突―
凄まじい衝撃に包まれるゴール前。
「ぐうううううっ!」
円堂の身体が大きく後ろへ押され、ゴールラインがすぐ背後に迫る。
抑え―きれない。
──ズドォォォォン!!
混沌の隕石が、円堂ごとゴールへ突き刺さった。
―ゴール。
2-2。
後半開始五分足らずで、同点。
魔王が静かに踵を返す。混沌の王の姿がゆっくりと消えていく。
「―これが、我が力だ」
──円堂に駆け寄るチームメイトたち。
「円堂さん!」
「大丈夫!?」
神童、ハル、明日人たちが一斉に駆け寄る。
「……ああ」
円堂はゆっくりと立ち上がり、拳を握った。
悔しさが滲む表情―だが。
「大丈夫だ! 次は止めて見せる!」
「円堂さん……!」
天馬が一瞬驚いたように目を見開き、笑みを浮かべた。
「そうこなくちゃね!」
「同点に追いつかれたなら、再び勝ち越すまでだ」
―ハル、剣城も不敵な笑みを浮かべた。
円堂が、仲間たちを見渡す。
「みんな! ここからが本番だ!」
「「「おう!」」」
選手たちが、一斉に応えた。
ボールが中央へと戻される―。
―キックオフ。
天馬がボールを受け取ったその瞬間―
「もう一度行くぞ! "天空のタクト"!」
神童の号令が響き渡る。
それと同時に究極化身イレブンの選手たちが一斉に動き出した。
「またアレが来る……!」
身構える勇者。
再び始まる究極化身イレブンの連携。
フィールド全体を天空から見ているかのような指示。
その指示に合わせ、選手たちは寸分の狂いもなく動く。
パス。
カット。
ワンタッチ。
ボールが縦横無尽にフィールドを駆け巡り、ファンタジーイレブンにボールへ触れる隙すら与えない。
「やれやれ……! こうも完璧に連携されているとなると―!」
黒魔女が苦々しく呟く。
だが──。
「なに、手はあるだろう?」
魔王が、ニヤリと笑った。
やがて──ボールはゴール前へ。
そこに待ち構えていたのは、究極化身イレブンが誇る二人のストライカー。
豪炎寺修也と──剣城京介。
「行くぞ剣城!」
「はい!」
二人が同時に駆け出す。
高々と舞い上がるボールに向かって、二人は宙へ舞い上がった。
そして全身に炎を纏い──互いの動きを完全にシンクロさせながら空中で回転。
そして──。
「「"ファイアトルネードDD"!!」」
二人が、同時にボールを蹴り抜いた。
轟ッ!!
放たれたのはハルの"メテオッド・ファイアートルネード"をも上回る凄まじいシュート。
渦巻く炎が巨大な竜巻となり、ゴールへと襲い掛かった。
「決めさせません―ここに居るのは、私だけじゃありませんから!」
迫り来る炎を見据える僧侶。
その瞬間、メイジと勇者が僧侶のもとへ駆けつけてきた。
「―行くわよ、僧侶!」
「俺たちで守るぞ!」
「はい!」
メイジと勇者から放たれた力が、僧侶へと注ぎ込まれる。
すると―僧侶の周囲に無数の盾が展開された。
一枚、また一枚と連なり、やがてそれはかまくらのような巨大な"結界"となった。
「「「"KAMAKURA D"!!!」」」
爆炎を纏ったシュートがその中に入った瞬間、シュートが内部で乱反射していく。
乱反射を繰り返したシュートはやがて、僧侶の守るゴールの前の地面に落ちていった。
―究極化身イレブンのストライカー二人による渾身の必殺シュートが、三人の連携によって完全に封じ込められた。
「なっ……! ファイアトルネードDDが……止められた!?」
天馬が目を見開く。
着地した豪炎寺、剣城も驚きを隠せない表情だった。
―完全に封じられた。
究極化身イレブンの誇る最大級の一撃が。
「……やるな。三人で撃つキーパー技とは」
「はい……」
目を細める豪炎寺と剣城。
「勇さん、お願いします!」
「任せろ!」
僧侶が勇者へとボールを渡す。
勇はボールを受け取ると──迷うことなく駆け出した。
その姿を見て、アフロディがゆっくりと立ち上がる。
「では―こちらも行かせて頂こうか」
そして、ファンタジーイレブンの選手たちへ号令を放った。
「必殺タクティクス"無敵の槍"発動!」
瞬間、ボールを持った勇者を中心にファンタジーイレブンの選手たちが陣形を組み始めた。
勇者の前に魔王、右にはブレイブ、左にはキャプテン。
四人は勇者を守るようにY字の隊列を形成した。
そして―
「行くぞ!」
4人が同時に走り出した。
凄まじい衝撃波が、四人の周囲から絶え間なく放たれる。
「まずい! あのタクティクスは!」
「下がれ!」
豪炎寺、鬼道が叫ぶ。
世界との戦いで、彼はこの"無敵の槍"を知っていた。
究極化身イレブンの選手たちが、一斉に後退する。
しかし──間に合わない。
「うわあああっ!」
「くっ……!」
逃げ遅れた選手たちが、次々と衝撃波に弾き飛ばされていく。
それでも──『無敵の槍』は止まらない。
フィールドを一直線に貫きながら、ゴールへと迫っていく。
そして──ゴール前。
「ここだ!」
その瞬間。
究極化身イレブンの守備陣が、一斉にカットへ飛び出した。
鬼道がボールへと迫る。
「シュートを放つその瞬間──それが『無敵の槍』の弱点だ!」
ボールを奪う。
──そのはずだった。
「ほう……貴様は"無敵の槍"を知っているようだな。だが―」
魔王の声。
その身体から漆黒のオーラが立ち上る。
「"これ"はどうするかな―?」
「なっ……しまっ……」
鬼道が気付く。
だが──もう遅い。
「"混沌の王アスタロト"」
混沌の力が爆発する。
衝撃波と共に発動すた化身が、鬼道たちを吹き飛ばした。
「させない!」
そこに立ち塞がる天馬、神童。
二人もまたその身に化身のオーラを纏わせた。
「"奏者マエストロ"!」
「"魔神ペガサスアーク"!」
四本の腕を持つ指揮者と、巨大な白き翼を広げる戦士。
二人の化身が、魔王へと迫る。
「誰が、我"だけ"と言った?」
「!?」
魔王の前へ、二つの影が躍り出る。
「行くぜブレイブ!」
「ああ!」
勇者とブレイブ。
二人もまた──その力を解き放つ。
「"聖騎士アーサー"!」
「"魔帝グリフォン"!」
聖騎士の姿をした化身。
黄金の翼を広げる戦士。
そして、恐るべき力を纏う魔王の化身。
「うわぁぁっ!」
「くっ……!」
天馬と神童が、化身ごと弾き飛ばされた。
道が開く―やがて、魔王がボールを天高く打ち上げた。
「行くぞ―勇者たちよ!」
「ああ!」
「決めるぞ……逢魔!」
三人の身体から、凄まじい力が迸る。
風の勇者
星の勇者
魔王
三つの力がフィールドで渦を巻いた。
「「はああああああっ!」」
魔王とブレイブが跳躍する。
浮かび上がったボールへ、ブレイブと魔王が踵落としを叩き込む。
赤と黒の光がボールに纏わりついた。
そしてその先―勇者が、走り込んでいた。
「俺たちの力を―一つに!」
右足を振り抜く。
瞬間、三つの力が絡み合い一つの巨大なエネルギ―へと変わった。
それは―本来相反するはずの力を合わせたことで完成した、彼らの"進化"の形―
「「「"エボリューション"!!!!」」」
──ドォォォォン!!
爆発的な力が、フィールドを駆けた。
ゴール前、身構える円堂。
だが―その目に映ったシュートの威力に思わず息を呑んだ。
「なんだ―この力は……!」
円堂が両手を構える。
迫り来る「エボリューション」。
赤。
黒。
そして青。
三つの力が絡み合い、巨大な渦となってフィールドを突き抜けてくる。
「止める……!!」
円堂守が全身の力を解き放つ。
心臓を経由して生み出された気。
そして──決して諦めない闘争心。
それらが黄金の稲妻となり、円堂の背後へと集約されていく。
―瞬間、巨大な"魔神"が円堂の背後に降臨した。
これぞ、円堂 守が誇る最大・最強の必殺技。
「"ゴッドキャッチ"!!」
両手を突き出す円堂。
それとともに魔神もまた―荘厳なる黄金の両手を突き出した。
―ズガアァァァァンッ!!
凄まじき轟音。
フィールド全体を衝撃が揺るがした。
「がっ……!!! お、重いっ……!!!」
ボールを受け止めた円堂の身体が、大きく後ろへ押される。
円堂守―"最強"の必殺技。
相対するは、ファンタジーイレブン三つの歴史を掛け合わせて生み出された"進化"の一撃。
「ぐっ……! うおおおおおおっ!!」
円堂が踏ん張る。
両腕に力を込める。
「いっけええええええええええええ!」
勇者の叫び―フィールドの向こうから、勇者の叫びが響く。
その声に呼応するように、三つの力がさらに激しく渦巻き―
黄金の魔神を真正面から打ち砕いた。
「ぐあああああっ―!」
ボールが、そのままゴールへ突き抜ける。
──ズドォォォォォン!!
ゴールネットが大きく震える。
あまりの威力に、今にもネットを突き破らんばかりにボールが突き刺さった。
──ゴール。
ファンタジーイレブン、逆転。
スコアボードには2-3の数字が刻印された。
究極化身イレブンの“最強”のゴールキーパーを、
三つの歴史が重なり合った“進化”の一撃が、真正面から打ち砕いた。
「……やった!」
勇者が拳を握る。
ブレイブも、魔王も──そしてファンタジーイレブンの選手たちも、勝ち越しのゴールに沸き立った。
だが──。
「まだだ……!」
ゴール前。
円堂守が、ゆっくりと立ち上がる。
先ほどの『エボリューション』を受け止めた両手には、まだ痺れが残っている。
それでも──円堂の目に、闘志は消えていなかった。
「まだ……終わってない!」
「円堂さん……!」
天馬が振り返る。
その横では、神童もフィールドを見据えていた。
「……強いな」
鬼道が、シュートを決めた三人を見つめる。
「あの"ゴッドキャッチ"を正面から破るとは……」
静かに拳を握り締める。
―そして。
「―雲明」
一人の少年が立ち上がり声をあげる。
声をあげた少年の視線の先に居るのは、笹波雲明。
雲明はじっとフィールドを見つめていた。
そして──。
「……そうですね」
雲明が立ち上がる。
「ここで、切り札を切ります」
「―ああ!」
ヴィクトリオ・アルノ。
これまでベンチから戦いを見つめていた少年が、ゆっくりとフィールドへ向かっていく。
「フェイ・ルーンに代わって──」
雲明が、フィールドへ向けて告げる。
「ヴィクトリオ・アルノを投入します」
「……了解!」
ヴィクトリオが笑う。
そして──フィールドへ駆け出した。
入れ替わるように、フェイがベンチへ戻ってくる。
「フェイ、お疲れ!」
「うん。あとは任せたよ、ヴィー」
「任せて!」
ハイタッチを交わす二人。
ヴィーはそのままフィールドの中央へ。
そして──ファンタジーイレブンを見渡した。
「―アツいな、やっぱり」
その顔に、自然と笑みが浮かぶ。
目の前にいるのはファンタジーイレブンの選手たち。
風の勇者。
星の勇者。
そして──魔王。
これまでの戦いで、ヴィーは彼らの「アツい歴史」を感じ取っていた。
ただの技だけではない。
それは彼らが歩んできた歴史そのもの。
だからこそ―
「戦いたい」
胸の奥から、抑えようのないワクワクが込み上げてくる。
ヴィクトリオは拳を握った。
「行こう!」
究極化身イレブンの新たなる切り札、ヴィー。
試合終了が近づく中、試合は大きく動き出そうとしていた。
―ホイッスルが鳴り響く。
究極化身イレブンのキックオフで試合は再スタートした。
豪炎寺から剣城へ、剣城からヴィーへ。
「行くぞ!」
ボールを受け取ったヴィーの前へ、魔王が走り込む。
「さあ、お前の力を見せてみろ」
「ああ! 行くぞ!」
ヴィーが右へ。
魔王が、その動きを読む。
ならば──左。
魔王も身体を切り返す。
「……!」
ヴィーは、さらに踏み込んだ。
フェイント。
一瞬だけ生まれた隙。
ヴィーはそこへ身体を滑り込ませ──。
「なっ……!」
魔王の横を、一気に抜き去った。
「──!」
魔王が振り返る。
だが、もう遅い。
ヴィーは、そのままボールを運んでいく。
「やるな……!」
魔王の口元に笑みが浮かぶ。
だが―まだ終わらない。
前方には、ファンタジーイレブンの守備陣が立ちはだかっている。
ヴィーは、ボールを足元へ引き寄せた。
「それなら──これだ!」
瞬間、ヴィーの身体が一気に加速する。
ヴィーの全身から風の渦が生まれ、渦の中へと自身の身体を飛び込ませた。
「"風穴ドライブ"!」
風の渦を貫き、まるで風穴を潜り抜けるかのように、一瞬で守備陣の間を駆け抜けた。
「なっ──!」
「速い……!」
守備陣を突破。
ヴィーはそのまま前線へボールを送り込む。
「天馬!」
「任せて!」
ボールを受け取った天馬。
その左右へ神童と剣城が並ぶ。
三人が、ゴールを見据えた。
「行くよ!」
「「ああ!」」
三人の身体から、化身の力が一斉に溢れ出す。
フィールドを覆うほどの、凄まじいオーラ。
魔神ペガサスアーク。
奏者マエストロ。
剣聖ランスロット。
三対の化身が三人の背後に姿を現し、
そして―神童が指揮をするかのように手を掲げた。
「化身よ、一つになれ!」
神童の叫びと共に。三対の化身が光に包まれていく。
光は重なり、三つの姿が一つへと融合していく。
黄金の光。
大きく広がる翼。
その姿を目にしたファンタジーイレブンの選手たちが、息を呑む。
「これは……!」
その中でも──ブレイブの表情が変わった。
「まさか―俺の……」
見間違えるはずがない。
その姿、そしての名。
自分が持つ化身と、同じ存在。
だが──違う。
纏っているオーラも。
放っている力も。
何もかもが異なっている。
黄金の化身が、大きく翼を広げる。
その姿は──まるで、三人の力そのものを体現するかのようだった。
「これが、『俺達』の!!」
「「「"魔帝グリフォン"!!」」」
―ブレイブの魔帝グリフォンが"勇者"としての証ならば。
天馬たちの魔帝グリフォンは、三人の究極の"絆"そのもの。
黄金の化身がゆっくりと両手を合わせる。
その掌から焔が噴き上がり、それは瞬く間に一本の大剣へと姿を変えた。
グリフォンが焔の大剣を大きく振り上げ、振り下ろされた刃とともに、巨大な一撃が放たれた。
その光景は──ブレイブが放った『ソード・オブ・ファイア』と、よく似ている。
だが―決定的に違う。これは―一人ではない。"三人"で放つ灼熱の一撃―
「「「"ソード・オブ・ファイア"!」」」
「イグニッション!!!」
轟ッ―!!
響く天馬の叫びと共に、ボールは巨大な炎を纏いながら凄まじい勢いでファンタジーイレブンのゴールへと飛んでいく。
──だが、それだけでは終わらない。
「行けぇ! ヴィー!」
「シュートチェインですって!?」
僧侶が目を見開く。
ボールの軌道上―そこにヴィーが走り込んでいた。
―そして、ヴィーの瞳が強く輝く。
「さあ―行くぞ!」
ヴィーの背後から、眩い光が溢れ出す。
勇者が目を見開く。
「ヴィーも化身を!?」
光は次第に形を成していく。
人の姿。
背負った神々しき環。
そして全てを包み込むような、暖かな光。
ヴィクトリオだけの化身が──降臨した。
「"ゴッデス・ヴィクトリア"!」
女神が、静かに両手を広げる。
そこから放たれるのは──神聖で、どこか温かみのある光。
やがてヴィクトリアは、祈りを捧げるように両手を組んだ。
すると―燃え盛るボールを神聖な光が包み込んでいく。
強い思いを力と変えた光は巨大な球体となり、ゴールを勝ち取らんとヴィーはその技を撃ち放った。
「"ルミナス・インパクト"!!」
光を纏った一撃。
炎と光が溶け合い、太陽のようなエネルギーとなってゴールへ突き進んでいく。
「力を貸してください―勇くん、メイジさん!」
「ああ!」
「行くわよ!」
ゴール前。
メイジと勇者が僧侶へと力を注ぎ込む。
僧侶の周囲に無数の盾が展開され、巨大な結界が形成されていく―
「「「"KAMAKURA D"!!!」」」
強大なエネルギーが、結界へと突入した。
乱反射を繰り返すボール。
―だが、ボールが乱反射を繰り返す度、無数の盾に少しずつ罅が入り始めた。
「そ、そんな……!」
僧侶が目を見開く。
それでも、まだ止まらない。
亀裂は限界へと至りそして―
「うおおおおおおおっ!!」
ヴィーが叫ぶ。
結界が―粉々に砕け散った。
──バリィィィィン!!
結界が、砕け散る。
「きゃあっ……!」
僧侶の身体が弾き飛ばされる。
シュートは、そのままゴールに突き刺さる。
──ズドォォォォォン!!
──ゴール。
究極化身イレブンが―再び追いついた。
「……よしっ! よおおおし!」
ヴィクトリオが拳を握る。
「追いついた……!」
「ナイスだヴィー!」
天馬が息を弾ませながら、笑みを浮かべる。
神童も、剣城も。
そして──円堂も。
ヴィーを中心に集まり喜びを爆発させた。
スコアボードに刻まれた数字は──。
3―3。
試合開始から、ここまで。
互いに一歩も譲らなかった。
追い越し、追い越され、追い縋り―
残された時間は、もうほとんどない。
「……ここまで来たか」
フィールドを見渡しながら、魔王が呟く。
その視線の先には──究極化身イレブン。
勇者もまた、彼らを見つめる。
「……ああ」
ブレイブが拳を鳴らす。
「だったら―次で決めるだけだ!」
「そうだな! 最後まで全力で行こうぜ!」
「無論だ」
勇者が笑う。
魔王の口元にも、僅かな笑みが浮かんだ。
一方、究極化身イレブン。
誰の顔にも、疲労はある。
それでも──その瞳には、まだ闘志が燃えていた。
「これで振り出しだな」
鬼道がフィールドを見渡す。
「だが―残る時間はもう少ない」
「ああ」
剣城が頷く。
「だったらやることは一つだ」
「ああ、俺達で次の一点を取る!」
豪炎寺、ハルが笑みを浮かべた。
「ここまで来たんだ!」
全員の視線が、円堂へ集まる。
「最後の最後まで俺たちらしく、全力で行こうぜ!」
「「「おう!!」」」
声が重なる。
両チームの選手たちが、それぞれの位置へ戻っていく。
ボールが、中央へと運ばれる。
そのボールの前に立つのは──勇者。
そして、その隣には──魔王。
究極化身イレブンも、全員が自陣へと戻った。
円堂がゴール前で、ゆっくりと拳を握る。
「……最高だ」
ヴィーが、小さく呟いた。
次の一点が、試合を決める。
勝つのは──どちらか。
フィールドに、張り詰めた空気が満ちていく。
勇者が、ボールへ視線を落とす。
そして──顔を上げた。
「行くぞ」
審判が笛を構え―
最後となるキックオフの笛を吹いた。
──ピーッ!!
最後のキックオフを告げる笛が、フィールドに響き渡った。
勇者が、ボールを蹴り出す。
「行くぞ!」
まずはファンタジーイレブン。
勇者からブレイブへ。
ブレイブから魔王へ。
三人を中心に、ボールが素早く回されていく。
「来るぞ!」
究極化身イレブンの選手たちが、一斉に守備へと切り替わる。
だが──ファンタジーイレブンは止まらない。
勇者が中央を駆け上がる。
ブレイブが右へ展開する。
魔王がその間を縫うように前へ出る。
三人の動きに合わせ、周囲の選手たちも連動して動いていく。
「……!」
ベンチからフィールドを見つめていた雲明が、静かに口を開いた。
「──あの三人です!」
雲明の視線が、勇者、ブレイブ、魔王を捉えた。
「これまでの攻撃──そして先ほどの『エボリューション』。あの三人が、ファンタジーイレブンの攻撃の中心です!」
そして──。
雲明が、フィールドへ向けて声を飛ばした。
「だからこそ、勇者、ブレイブ、魔王の三人を徹底してマークしてください!」
「「「ああ! (はい!)」」」
究極化身イレブンの選手たちが、一斉に動く。
勇者には鬼道、天馬。
ブレイブには──明日人、ヴィー。
そして魔王には──剣城、ハル。
それぞれが三人の周囲に配置された。
「……!」
勇者が足を止める。
目の前には鬼道。
「させない!」
ブレイブの前には、灰崎。
「今度は自由にやらせねえ!」
魔王の前には、剣城。
「……魔王。次は止める」
「ほう……」
魔王が、口元を僅かに吊り上げる。
「面白い」
フィールド中央。
ファンタジーイレブンの攻撃は、三人を中心に組み立てられている。
その三人へ、究極化身イレブンは人数をかけて徹底的に食らいつく。
自由に動けず、攻めあぐねる三人。
雲明の指示通り、究極化身イレブンは三人へ集中し自由にさせない。
ファンタジーイレブンの三つの歴史を象徴する存在。その三人を封じることができれば──。
「……なるほど……」
魔王が周囲を見渡す。
「これなら化身を使おうとその隙を突かれる―か」
そして──小さく笑った。
「ならば──我ら以外を見てみるがいい」
その瞬間。
三人へ集中していた守備陣。
その僅かな隙間を──一本のパスが切り裂いた。
「なっ―!」
魔王から放たれたボールが、空いたスペースへ一直線に飛んでいく。
そこにいたのは──。
「へ……任せろ!」
歌舞天寺 洋。
海賊のキャプテンたる男がボールを受け取った。
そのまま誰にも阻まれることなく前線へ駆け上がる。
「……!」
円堂がゴール前で身構える
キャプテンはフリーでシュート体制。
「お前ら……! 行くぜぇ……!」
キャプテンが鋭い口笛を吹いた。
瞬間、五匹の漆黒のペンギンたちが地面から射出される。
空を舞い、ゆっくりと振りかぶったキャプテンの右足に次々と嚙みついた。
「"皇帝ペンギンX"!!!」
蹴り出された赤黒いオーラを纏うボール。
その周囲を漆黒のペンギンたちが囲み、円堂へ一斉に襲い掛かる。
―だが、円堂の前に三人のDFが躍り出た。
「行くぞ! ここを通すな!」
「はい!」
「ああ!」
神童、野坂、灰崎。
三人は同時に、どこからともなく伸びてきた長い蔦を掴み、ターザンのように空を舞う。
そして―
「「「"ディープジャングル"!!!」」」
三人が宙を舞いながら、ボールを包囲する。
そして──三方向から、シュートへと同時に足をぶつけた。
―ドォンッ!
激しい衝撃と共にペンギンたちが弾き飛ばされ、シュートの勢いが完全に殺された。
「やった!」
思わず喜びの声をあげる天馬―
値千金のブロック。
カウンターの大チャンス―そう思ったその瞬間。
「―油断禁物よ」
低く冷たい声が、そこに響いた。
「"ディメンションカット"」
空間が歪む。
黒魔女―玄間嬢子の足が、異次元の裂け目から現れた。
その足先が―神童の足に収まっていたボールを正確に捉える。
そして。
ボールは再び、黒魔女の足元へと収まった。
「何!?」
「しまった……!」
防ぎ切ったはずの攻撃。
その直後に、ボールを奪い返される──。
「魔王様!」
天へとボールを蹴り上げる黒魔女。
「良くやった。行くぞ、お前たち」
魔王―逢魔 統華が、マークを抜けて前線へと走り込んだ。
そこに先ほどシュートを放ったキャプテン、そしてボールを奪った黒魔女。
"魔王軍"の三人が、並んだ。
「―終わりだ、円堂守!」
天高く打ち上げられたボールを中心に三角形をの形で並ぶ魔王、黒魔女、キャプテン。
―そして、同時に飛び上がった。
三人の軌跡に沿って、その軌跡に幾重もの"死の三角形(デスゾーン)"が次々と形成されていく。
漆黒の力がボールへと収束し―
遥か目下にあるゴールに向かって、"絶望"が解き放たれた。
「「「"ラスト・デスゾーン"!!!!」」」
ズドォォォォンッ!!
魔王軍が放つ究極の闇。
どす黒い閃光が、円堂の守るゴールへと一直線に迫り来る―
「まずい! 止めるぞ!」
危機を察知した究極化身イレブンの守備陣が一斉にゴールへと駆け戻る―
「任せろぉぉぉッ!!」
「円堂!?」
「円堂さん!?」
―円堂が、叫んだ。
退かない。
仲間たちが振り返った先―
円堂は、迫り来る「ラスト・デスゾーン」を真正面から見据えていた。
魔王がその姿を見て、口元を吊り上げる。
「ほう……! だが止められるかな! 我ら"魔王軍"が全霊を!!」
迫る、漆黒の閃光。
円堂は―笑っていた。
「俺は―楽しいんだ……!」
右手を、ゆっくりと握りしめる。
「皆でこんなに強えやつと、何のしがらみもなく戦えるのが!」
その瞬間。
円堂の脳裏に、これまでの戦いが蘇る。
フットボールフロンティア。
エイリア学園との戦い。
イナズマジャパンとして挑んだ世界との戦い。
そして―究極化身イレブンとしての数々の激闘。
その先―今この瞬間の、ファンタジーイレブンとの熱い戦い。
円堂はさらに強く―爽やかに笑った。
「やっぱり俺は―」
右手を高く掲げる。
「サッカーが大好きだ!!」
その右手に──黄金の光が集まっていく。
巨大な手が、円堂の背後から姿を現した。
黄金に輝く、神々しい右手。
「ゴッドハンドでこれを止められるとでも思っているのか!」
「―いや―これはただのゴッドハンドじゃない―!」
その拳に込められたのは、円堂一人の力ではない。
究極化身イレブン──十一人。
共に戦い、共に笑い、共に苦しみ、それでも最後まで勝利を目指してきた仲間たち。
そして──これまで円堂が出会い、共にボールを追いかけてきた、すべての仲間たち。
そのすべてへの感謝と、未来へ進み続けるための、“勝利”への想い。
それらすべてが、黄金の右手へと集約されていく。
「未来に届け―」
迫る漆黒の閃光。
迎え撃つ、黄金の右手。
「"オメガ・ザ・ハンド"!!!」
―黄金と漆黒。
二つの究極が、真正面から激突した。
「ぐ……っ!」
円堂の足が、地面を大きく踏みしめる。
──重い。
ゴールへ押し込もうとする「ラスト・デスゾーン」の圧力は、これまでに受けたどんなシュートとも違っていた。
「うおおおおおおおおッ!!」
円堂が叫ぶ。
黄金の巨大な手が、漆黒の閃光を真正面から受け止める。
だが──止まらない。
「まだだ……!」
黒い閃光が、黄金の手を押し込み始める。
「円堂!」
「円堂さん!」
仲間たちが叫ぶ。
それでも円堂は、手を下ろさない。
「―負けるもんかぁぁぁぁぁ!!!」
歯を食いしばる。
黄金の光が、さらに強く輝く。
──バァンッ!!
巨大な黄金の手が、一気に漆黒の閃光を押し返した。
「なっ……押し返している!?」
「嘘だろ……! 俺たち三人の『ラスト・デスゾーン』を……!」
黒魔女が目を見開く。
キャプテンも驚愕する。
魔王──逢魔統華だけは、静かにその光景を見つめていた。
「……ふっ」
その口元に、わずかな笑みが浮かぶ。
「なるほど……これが究極化身イレブンのサッカ──」
そして―黄金の光が、フィールド全体を照らし―
黄金の巨大な手が、漆黒の閃光を握りつぶした。
──止まった。
「止めたぞぉぉぉぉッ!」
円堂の咆哮が、フィールド全体に響き渡る。
その瞬間──究極化身イレブンの面々から、一斉に歓声が上がった。
「やったぁ!」
「凄い……!」
「―マジかよ……!」
一方で驚愕の表情を浮かべるファンタジーイレブン。
「凄まじいキーパ──あれが……円堂守」
誰かが、呟く。
―そして。
ベンチでは、これまで静かに戦況を見つめていた笹波雲明が、ゆっくりと立ち上がった。
その眼差しは、すでに次の一手を見据えている。
「──この試合、最後の指令を伝えます」
その声に、究極化身イレブンの全員が振り向いた。
「必殺タクティクス──」
雲明が、フィールドを指差す。
「──『グランドラスター』を実行!」
「……!」
一瞬の静寂。
そして──
「行くぞ、皆!」
円堂の声に、十一人が一斉に駆け出した。
「「「おう!」」」
円堂は、キャッチしたボールを大きく蹴り上げる。
高く舞い上がったボールは──神童のもとへ。
「野坂!」
神童が、迷いなくボールを送り出す。
──パシッ!
「鬼道!」
野坂から鬼道へ。
鬼道もまた、一瞬たりとも足を止めない。
「ハル!」
ボールが、円堂ハルへ。
剣城へ。天馬へ―
繋ぐ。繋いでいく―11人全員に。
誰一人として、同じ場所には留まらない。
フィールドを縦横無尽に駆け抜けながら、互いの動きを読み、次の選手へとボールを託していく。
そのたびに──
ボールが、眩い金色の光を帯びていく。
「なんだ……あの光は!?」
ファンタジーイレブンが、その光景を見つめる。
そして──フィールドを駆ける十一人の軌跡が、一本、また一本と重なっていく。
上空から見ればそれはまるで──
巨大な稲妻。
十一人が繋いだパスの軌道そのものが、フィールドに“稲妻”の形を描き出していた。
そして──
「おおおおおおおおっ!」
フィールドを駆ける、一人の選手。
―円堂守。
彼もまた、ゴールを飛び出していた。
「何だと……!?」
その姿を見て、勇者が目を見開く。
「あのキーパー……ゴールを離れた!?」
ゴールを守るべきGKが、攻撃へと加わる。
傍から見れば──あまりにも大胆。一歩間違えれば、愚策とも言える選択だった。
だが。
円堂には、かつてリベロとしてフィールドを駆けた経験がある。
守るだけではない。
自らボールを運び、仲間へ繋ぎ、前線へと切り込む。
「行くぞぉぉぉっ!」
円堂がボールを受ける。
そして──迷うことなく、前へ。
一人、また一人と味方へパスを繋ぎながら、さらに前進していく。
神童が動く。
野坂が動く。
鬼道が動く。
天馬も、剣城も、豪炎寺も──。
究極化身イレブンの十一人が、まるで一つの生き物であるかのように連動していく。
そのたびに金色の稲妻が、フィールドを走った。
「……っ!」
ファンタジーイレブンは、守備に入ろうとするが、近づけない。
「速い……!」
「なんなんだ、あの連携は……!」
そして──円堂が、最後のパスコースを見据える。
「──豪炎寺!」
円堂から鋭く蹴り出されたボールが、金色の軌跡を描いて飛んでいく。
豪炎寺が走る。
その足元へ寸分違わず、ボールが収まった。
そして、その隣には──剣城。
二人のストライカーが、並んでゴールへ向かう。
その前に立ちはだかるのは──僧侶。
「絶対に守ってみせます──!」
僧侶は両手を組み、静かに目を閉じる。
「星の守神様……お力をお貸しください!」
祈りを捧げた、その瞬間。
背後から、眩い聖なる光が立ち上った。
光は次第に巨大な姿を形作り──
「―"護星神、タイタニアス"!!」
僧侶の背後に、神々しき守護神が現出する。
「さあ──来てください! 豪炎寺さん、剣城さん!」
一歩も退かない。
その瞳には、守り抜くという強い決意が宿っていた。
「二人だけじゃないよ」
「……!」
その声は──頭上から。
空から舞い降りるように、もう一人のストライカーが二人の背後へ現れる。
「行くよ、豪炎寺さん! 剣城さん!」
「「ああ!」」
円堂ハル。
サッカーモンスターが、二人に加わった。
豪炎寺と剣城が同時に跳ぶ。
炎を纏いながら、二人が空中で回転する。
その中心を──ハルが跳び上がった。
一人のストライカーが放つ「ファイアトルネード」。
二つの火が重なり炎となる「ファイアトルネードDD」。
そして―三つの炎が一つに重なり、爆炎となりゴールへ叩き込まれる。
その―シュートの名は。
「「「──ファイアトルネードTC!!!」」」
三人が、同時にボールを蹴り抜く!
究極化身イレブンのストライカー三人による爆炎の一撃。
──誰もが、そう思った。
だが。
これは──シュートではない。パスだ。
「天馬! 明日人!」
「「はい!」」
ファイアトルネードTC──その炎の先。
そこには、すでにゴール前まで駆け上がっていた円堂守。
そして──松風天馬と稲森明日人が待ち構えていた。
「シュートチェイン!?」
ファンタジーイレブンが息を呑む。
「みんな! 行くぞ!」
円堂の声とともに、三人がボールを囲む。
三人は超高速で周囲を駆け回り、残像すら生み出しながらボールを中心に旋回する。
やがて──
ゴォォォォォッ!!
三人の周囲から、猛烈な暴風が巻き起こった。
炎を巻き込み、さらに巨大化していく。
それは、嵐、竜巻、ハリケーン。
そのすべてを凌駕する──渾身の一撃。
「「「"ジェットストリーム"!!!」」」
爆炎を巻き上げながら、大いなるハリケーンがゴールへと襲い掛かる。
迎え撃つのは──僧侶。
彼女は化身とともに右腕を構えた。
だが―
「―うおおおおおおおおっ!!」
そこに割って入る一人の影。
虹色の光を全身に纏いながら、フィールドを駆け抜けてくる。
「まさか―!!」
ヴィクトリオ・アルノ。
三度目の、シュートチェイン。
「行くよ―皆!」
ヴィーが、炎と嵐を纏ったシュートへと飛び込む。
その瞬間──
究極化身イレブン、十人の力が一斉に収束する。
炎。
風。
雷。
光。
そして──それぞれが歩んできた歴史と、仲間たちとの絆。
すべての力が、ヴィーのもとへ集まる。
「これが俺たちの―!」
虹色の光が、爆発的に膨れ上がり―
最後の一撃を、解き放った。
「"
──ドォォォォォンッ!!
虹色の光を纏った究極の一撃が、ゴールへ一直線に突き進む。
だが──
僧侶は、退かない。
その瞳に恐れはない。
ゴールを守るキーパーとして──最後の一瞬まで、立ち続ける。
「──絶対に、守ります!」
化身──護星神タイタニアスとともに、右腕を大きく突き出した。
「―"マジン・ザ・ハンド"!!」
―ドゴオオオオオオオオオオオオンッ!!
巨大な守護神の腕と虹色の一撃。
それが、真っ向からフィールドを揺るがしながら激突した。
「うううううっ―! 絶対に……このゴールは……!」
大きく揺れる僧侶の身体―
―だが―抑えられない。
究極化身イレブンの十一人の想いが一つになった、文字通り究極の一撃。
それが―護星神の右腕に亀裂を入れ―吹き飛ばした。
ボールはそのままゴールへ―
「まだまだァァァァァァ!!!」
虹色の一撃がゴールへ迫る、その前に―二つの影が飛び込んだ。
勇者、ブレイブ。
二人の“勇者”が、並んで立ちはだかる。
「行くぞ!」
「勝つのは──俺たちだ!」
二人は、それぞれの足を大きく振りかぶる。
そして―虹色に輝くボールへ、力の限り振り抜いた。
「「"流星ブレード"!!!」」
──ズドォォォォォン!!
赤と青。
二色の光を纏った二本の斬撃が、真正面から「最強イレブン波動」を迎え撃つ。
「「ううううおおおおおおおっ……!!!」」
圧倒的な衝撃。
二人が、鬼気迫る表情で踏ん張る。
虹色の光が、二人の足元を削っていく。
それでも──退かない。
「まだだ……!」
「こんなところで……!」
赤と青の光が、さらに激しく燃え上がる。
だが──
──ギギギギギ……!
「ぐっ……!」
「強い……!」
二人の「流星ブレード」が、徐々に押し込まれていく。
虹色の光が、二人を飲み込もうとする。
そして―
「まだだ」
静かな声が響いた。
二人の背後から―漆黒のオーラがゆっくりと立ち上る。
「我らの戦いを―終わらせるにはまだ早い!」
「「逢魔……!」」
魔王―逢魔統華。
全身から迸る混沌のオーラを纏いながら、彼女は一歩前へ出る。
「"カオスメテオ"!!」
──ズドォォォォォン!!
混沌の一撃が、虹色の光へ叩き込まれた。
三人の一撃。それが「最強イレブン波動」と真正面から激突する―
「「「いっけえええええええええッ!!!」」」
究極化身イレブンの全員が叫ぶ。
フィールドの外から、雲明も声を張り上げた。
「「「うおおおおおおおおッ!!!」」」
ファンタジーイレブンも叫ぶ。
勇者も。
ブレイブも。
そして魔王も。
虹色の「最強イレブン波動」。
赤と青の「流星ブレード」。
漆黒の「カオスメテオ」。
幾つもの力が、たった一つのボールへと集約されていく。
「「「うおおおおおおおおおおおッ!!!」」」
両チームの咆哮が、フィールドを揺らす。
そして──
―ドォォォォォォォォンッ!!
すべての力が、限界を超えた。
赤。
青。
黒。
虹色。
幾重もの光と力が激しくぶつかり合い──
次の瞬間。
──パァァァァァァァァァッ!!
全てを飲み込むような、巨大な白い光が弾けた。
「────!」
フィールドが。
選手たちが。
ゴールが。
そして──この戦いそのものが。
眩い白に包まれていく。
何も見えない。
何も聞こえない。
ただ、白い光だけが―
全てを覆い尽くしていった。
──イナズマVキャラバン、コックピット。
そこには、いつもと変わらない二人の姿があった。
ヴィクトリオ・アルノ。
そして──ワンダバ。
「──それで、どうだった? あの試合は」
ワンダバが飲み物をヴィーへ手渡しながら尋ねる。
ヴィーはそれを受け取り、一口飲んでから少しだけ笑った。
「──すごく、アツかった」
その瞳には、まだあの試合の光景が残っている。
「歴史には……まだ、あんな可能性があるんだって」
「ああ。私も見せてもらったぞ」
ワンダバも、静かに頷く。
「あの戦いは──凄まじかった」
──ファンタジーイレブン。
風の勇者。
星の勇者。
そして──魔王。
三つの歴史が交わり、ひとつのチームとして生まれた──奇跡の歴史。
「──それにさ」
「ん?」
ヴィーが、ふと口を開く。
「俺──思ったんだ」
ワンダバが首を傾げる。
ヴィーは、前を見つめた。
その瞳には、新しい“ワクワク”が宿っていた。
「―他の歴史にもさ、探せば、あんなアツい“もしも”の歴史が──まだあるんじゃないかって」
「……確かにな」
ワンダバも、その言葉の意味を理解する。
──あの勇者たちは、本来なら持っているはずのなかった“IFの歴史”を持っていた。
ならば。
それは──勇者だけではない。
まだ見ぬ誰かにも。
まだ記録されていない世界にも。
同じような“もしも”の歴史が、存在しているのかもしれない。
「もしかすると──探せば見つかるかもな?」
「ああ……!」
ヴィーの顔が、ぱっと明るくなる。
──彼はこれからも、時空を巡り続ける。
まだ見ぬ歴史を。
まだ見ぬ“もしも”を。
そして──まだ見ぬ、アツい物語を。
そのヴィーの席のすぐ近く。
コックピットの一角に、小さな写真立てが置かれていた。
そこに収められているのは──
究極化身イレブン。
そして、ファンタジーイレブン。
二つのチームが並んで写る、あの試合の記念写真。
その背景には──
激闘の末に刻まれたスコアボード。
ヴィーは、その写真を一度だけ振り返る。
そして──前を向く。
「―さあ行こう! まだ見ぬ新しい歴史へ!」
―イナズマVキャラバンは、次なる時空へと走り出した。