「市長様!目標を射程に捉えました!今すぐ迎撃できます!」
「よし、いいぞ!ミサイル発射!」
「了解!ミサイル、発射!」
モナティアムの町から迎撃ミサイルが発射される。もうもうと煙を吐きながら迫りくるミサイルを目にして、ウラノスは飛行を停止した。
「っ……!」
一直線にこちらに向かってくる飛翔体を見て、ウラノスは迎撃の構えを取る。
急速に輝きを増していく身体。それを遠くに見て、エレナたちは間違いなくアレがウラノスだと認識した。
ドーーーーーーーーーーーンッッ!!!
激しい閃光に遅れてやってくる耳をつんざかんばかりの轟音。エレナたちの戦意は一瞬にして挫かれそうになった。
「は、はは……。あたしたちの資金と技術を込めた一発に、贅沢に核爆発で対抗しようっていうのかい……」
絶望ともいえる皮肉を漏らすエレナ。刻々と迫ってくる絶望の壁に、エレナの心は極度の混乱状態に陥っていた。
しかし、ただ座して待つだけではいられない。エレナはモナティアムの市長だ。自身がエルフたちのために造り上げた町に、たくさんのエルフたちが住んでいる。そして、その命を預かっているのは、他でもないエレナ自身だ。
エレナは震える体に鞭を打って、声を張り上げた。モナティアムを守る為に、エルフや同胞を守る為に、エレナは立ち上がった。
「稼働できるドローンはすべてウラノスに向かわせろ!!!発射可能なミサイルも用意出来次第、順次発射するんだ!!!」
エレナの号令に、周囲のエルフたちが慌ただしく動きだした。
ゆっくりと飛来してくる発光する飛翔体を見つめながら、エレナは次の一手をどうすればいいかと混乱する頭で考えた。
ウラノスが近付けば近付くほど、彼女の熱と爆風に曝されるリスクが上がる。だから、どうにかして彼女を撤退させるか、撃ち落とさなければならない。
エレナは考えた。どうすればいい?どうすれば彼女を退けられる?刻々と迫りくる青く輝く彼女を見ながら、エレナの心拍数は徐々に上がっていった。
「エレナ!!!」
「ヘイリー……!」
その時、作戦室のドアが勢いよく開かれた。
「なんだ!?いったい何が起きているんだ!?さっきの大きな爆発は何なんだ!?」
「ヘイリー……!よく来てくれた!!!お前の力が必要なんだ!!!」
エレナはヘイリーの手を取って作戦指揮台へと引っ張っていった。そして、今起きている危機的状況をヘイリーに説明した。
ヘイリーは地球侵略においてエルフ軍第一先鋒将校を務めた生粋の軍人である。そんなヘイリーが作戦室に着いたという事は、ウラノスへの迎撃能力が上がった事を意味していた。
「……と、いう訳だ。分かったか!?」
エレナから現在の状況を説明を受けたヘイリーの瞳がゆっくりと閉じられる。
刻々と過ぎていく時間。迫りくるウラノスの影。エレナの心の焦りが強くなっていく。
各オペレーターの視線を一身に浴びるヘイリー。期待と不安の混じった視線を浴びながら、ヘイリーは静かに佇んだ。
そして、突如カッとヘイリーの瞳が見開いた。
「エルフ軍第一先鋒将校、ヘイリー!!!これより作戦の指揮を執り行う!!!」
ヘイリーは高らかに宣言した。その宣言を聞いたオペレーターたちは、かつての英雄の帰還を目の当たりにした事で、大いに士気が高まるのを感じた。
「エレナ!至急モナティアムに警報を発報するんだ!一般市民を地下シェルターに避難させて、稼働できる鎮圧班を誘導と治安維持に当てろ!」
「わ、わかった!」
「ミサイルは効かないと言っていたな……。なら、旧式の対空砲を用意しろ!!幸いにも奴の飛行速度は遅い!!対空砲で弾幕を張って進路を妨害するんだ!!!」
ヘイリーの指示を受けたオペレーターがドローンに指示を出して高射砲を展開させる。エルフたちが避難したことで空きができた広場に、続々と高射砲が展開されていく。
「各員任意射撃を許可する!撃って撃って撃ちまくれ!!」
オペレーターの指示を受けたドローンの高射砲部隊から続々と弾が撃ちあがる。トレーサーが尾を曳き、飛行するウラノスに向かって一直線に向かって飛んで行く。
「よしっ……!」
ウラノスの周辺で砲弾が炸裂し、猛烈な弾幕を展開される。ヘイリーの睨んだ通り、ウラノスは炸裂する対空砲弾に足止めを食らい、進行が止まった。
しかし、次の瞬間、ウラノスの身体が光を放ち始めた。
「ヘイリー将官!目を伏せてください!核爆発です!」
オペレーターの言葉から間もなく、凄まじい閃光が作戦室を包み込んだ。
遅れてやってくる大気を震わす大轟音。ウラノスの能力を目の当たりにしたヘイリーは言葉を失った。
「アレが……ウラノス……。くっ……!なんとしても食い止めねば……!」
☆☆☆☆
絶え間なく鳴り響く警報。混乱する市民。シェルターに続々と押し寄せるエルフの津波を画面越しに見つめるエレナ。エーリアスに漂流して以来初めて訪れた滅亡の危機に、エレナは憔悴していた。
「エレナ様……。大丈夫ですか?」
「……これが大丈夫そうに見えるのかい?よくそんな言葉をかけれるな!!?」
「す、すみません……」
憔悴したエレナの口から暴力的な言葉が飛び出てくる。エレナもそんな自分の言葉に気付いたのか、ハッとした後にすぐに謝罪の言葉をかけた。
「す、すまない……。つい反射的に口をついて出てしまった……」
「い、いえ、いいんです。しかし、どうなさるおつもりですか?いくらヘイリーともいえども、あの竜族の侵攻を食い止めるには限界があると思いますが」
「……それを今考えているところだ。市民の避難が完了でき次第、本格的に迎撃態勢を敷いてウラノスを撃退するべきか……。いいや、それとも、避難と並行して部隊を展開させるべきなのか……?くそっ、どうすれば……!」
アメリアがエレナの前に出る。憔悴したエレナの目に、堂々とした佇まいのアメリアの冷たい顔が映り込む。
「……市長様、今ここで弱っているようであれば、モナティアムはあの竜族に滅ぼされるだけです。……エレナ様、ここは私がエレナ様に代わって決断を下しましょう」
「……アメリア?」
「私がエレナ様に代わってモナティアムの指揮をさせていただきます。エレナ様は少し休んでいてください」
「お、おまえ……」
その時、眩い光が二人を包み込んだ。
「なっ……!」
次元門が開かれ、何者かが姿を現す。
リニュアと似たようなシルエット。次元門に浮かび上がる何者かが、足を踏み出そうとしている。
モナティアムの槍。すべての次元を破壊する破滅の執行者。遍く次元を滅ぼし、すべてを破壊する征服王。
「……ここがあの人間のいる次元ね……!とうとう見つけたわ……!」
異次元の来訪者、R41時空のリニュアが姿を現した。