幼馴染の勇者を庇って女になったボク、見た目が勇者の好みど真ん中らしい 作:本郷カキツバタ
王都へ戻る三日のあいだ、カイルは二度、ボクの髪を結んだ。
乾いた街道を馬車が進むたび、後ろへ薄い土煙が伸びる。二度目の休憩では、結んでもらった髪をそのままにして出発できた。
一度目は、紐の長さが左右で違った。
二度目は、結び目がちゃんと真ん中に来た。
そこで褒めたら、次もやる気になったらしい。
馬車の中で青緑の紐を指に掛け、何もないところで結び方を確かめていた。
「自分の髪でやれば?」
「長さが足りない」
「ボクの頭、練習台にしないでよ」
言ってから、二人とも少し黙った。
カイルが先に笑った。
「それは、まだ言っていいだろ」
「……そうだね」
◇
塔の作業が早まった分、王都では報告を落ち着いてまとめられた。
ナディアはボクの図面を見て、固定観測環を支える支柱へ印を付けた。
次は調整できる支柱を一緒に運びたい、と言う。
「勇者の腕を、毎回道具の数に入れるわけにはいかないものね」
「本人も、そう思ってると思う」
「本人は、案外、毎回持つと言うかもしれないけれど」
そこは否定しきれなかった。
ボクは支柱の図面を別の紙へ写し、仕組みを二つ提案した。
一つは重いが安定する。
もう一つは軽い代わりに、置ける床を選ぶ。
どちらから試すか話していたら、窓の外が暗くなった。
ナディアが時計を見る。
ボクも見た。
戦勝祭の、前日だった。
「今日は帰る」
「そうした方がよさそうね」
ナディアは残った紙を引き寄せた。
「次は祭の後でいいわ。試作は私が手配する」
ボクは自分の図面を揃え、彼女の机へ移した。
◇
部屋へ戻ってから、服を三度、取り出した。
礼装は違う。
明日、着るものだ。
普段の灰色の上着だと、学院から帰ってきたままに見える。
何でもいいはずだった。
昔から知っている相手に、改めて会いに行くだけなのだから。
何でもよかったら、三度も引き出しを開けたりしない。
結局、少し深い青緑の上着にした。
首元に余計な飾りのない、自分で選んだものだ。
鏡の前へ立つ。
銀灰色の髪。
細くなった首。
目の色は、前と同じなのに、顔の中で占める大きさが違って見える。
この顔を、カイルは好きだと言った。
言葉にしてもらう前から、こちらを見たときの目で、何度も知っていた。
鏡の中の襟を直す。以前なら、見た目を褒められても中にいるボクには関係ないと思っただろう。今は、カイルに見てもらいたくて髪の片側まで整えている。
高い棚へ手が届かないときや、手帳の印より先に腰が重くなったときには、以前の身体を思い出す。それでも今夜は、この顔で会いに行きたかった。
ボクは髪を自分で結び、買っておいた茶を持った。
◇
カイルは、扉を開けたまま止まった。
「入っていい?」
「ああ。悪い」
横へ避ける動作が、一拍遅い。
その一拍を見逃さなかった。
鏡の前で三度着替えたことは、黙っておく。
机には、茶の道具と、小さな焼き菓子があった。
「カイルも用意してたの」
「用意すると言っただろ」
「ボクも持ってくるって言った」
「二つあって困るものじゃない」
包みを開くと、同じ店の印が出てきた。
菓子まで、ボクの持ってきたものと同じだった。
二人で見比べる。
「一人分、多いね」
「明日、食えばいい」
「明日も来ることになってる」
言ってから気づいて、顔を上げる。
カイルは、否定しなかった。
「来ないのか」
「……来る」
明日の分まで包みを寄せてから、ボクは椅子を引いた。
茶を淹れているあいだ、机の奥へ目が行った。
修理してもらった額が置いてある。
十五歳の、ボクとカイル。
今より少し尖った顔のボクが、慣れない正面を向いている。
隣のカイルは、今より無防備に笑っていた。
茶を置いたカイルが、ボクの視線を追う。
「場所、ここでいいだろ」
「うん」
ずっと見ていたら、カイルが首を傾けた。
「何か気になる?」
「……今から話す相手と、そっちのボクが、別の人みたいになったら嫌だなって」
カイルに好かれたくて選んだ上着の袖を、膝の上で伸ばした。絵の中のボクなら、こんなことを考えずにここへ来ただろう。
「上手く説明できないんだけど」
「そのままでいい」
「そのままだと、長いよ」
「知ってる」
カイルが向かいではなく、隣の椅子へ座った。
ボクは茶の縁へ両手を添えた。
温かいものがあると、少し話しやすい。
「カイルがこの顔を好きなの、嬉しいんだ。もう、嫌じゃない」
「ああ」
「でも、昔のボクは、もういらないみたいになるのは嫌だ」
「ならない」
早い返事だった。
「最後まで聞いて」
「……悪い」
謝られると、それ以上強く言えなくなる。
ボクは茶へ視線を落とした。
「ボク、たぶん、急に気が利くようにはならない。本に夢中になったら返事しないこともあるし、カイルの話より魔法の話をしたくなることもある。服だって、毎日、喜びそうなのを選べるか分からない」
「毎日だったら、俺が困る」
「そこ、冗談を言うところじゃない」
「冗談じゃないけどな」
横を見ると、カイルは口元だけで笑っていた。いつもの余裕より、少しだけぎこちない。
「前から知ってるよ。全部」
「知ってるのと、よくなかったって思うのは別でしょ」
「その話なら、リオだって俺をよく知ってる」
カイルは、自分の茶へ手を伸ばした。
「返事をしないときの起こし方も知ってる。服が変わったら嬉しい。でも、いつもの格好で俺の部屋へ来るのも嬉しい」
言葉の途中で、カイルが息をつく。
「上手く言えないな」
「カイルも?」
「俺も」
カイルが、額の方を見た。
「この頃は、考えてなかった。リオと、こういう話をするとは」
ボクは頷いた。
「ずっと、この気持ちだったって言えば、安心するか?」
「たぶん、嘘だって言う」
「そうだろうな」
小さく笑い合った。
笑えたことで、肩が少し楽になった。
「最初は、見た目だった」
カイルが言った。
逃げない目で、こちらを見ていた。
「リオが起きて、俺を呼んだとき。何を見ていいのか分からなくなった。身体が変わったばかりで大変だって分かってるのに、綺麗だと思った」
ボクはカップから手を離した。
指に力が入り、落としそうになったからだ。
「そのあと、リオが普通に近づいてくるたび、どこを見ればいいのか分からなくなった」
「……少しは、言ってくれれば」
「言っても、俺相手に何を気にしてるの、って顔をした」
した記憶がある。
一度ではない。
「好きな顔だから、落ち着かないだけだと思おうとした。でも、知らない誰かがその顔をしてても、俺の部屋に勝手に本を置いたり、眠いと肩を使ったりはしないだろ」
「ボク、それ、今から謝った方がいい?」
「謝られたい話じゃない」
カイルの手が、机の上へ置かれた。
ボクのすぐ近くだった。
「リオがするから、どうしようもなかった」
いつも気軽に触っていた手に、今夜は触れられない。
掴めばいい。
そうしたら、きっと握り返してくれる。
でも、先に聞きたかった。
カイルが、自分の言葉で、どこまで言うのか。
「男のままだったら?」
聞いてから、自分で嫌な質問だと思った。
もう、そういう未来は来ない。
比べて確かめることもできない。
カイルはすぐには答えなかった。
「分からない」
やがて、そう言った。
「同じように好きになったと、今から言うのは違う気がする。実際、その頃は、こうして触れたいと思ってなかった」
「……うん」
「でも、魔王を倒したあと、どこへ行くか考えるとき、リオがいないところは、あまり思いつかなかった」
カイルが笑う。
「リオの都合もあるのにな」
ボクも同じだった。ミルネへ行くと聞いただけで、斜め向かいの扉まで浮かんでいた。
「聖剣に選ばれたときより、こっちの方が困った」
「比較するもの?」
「聖剣は握れば結果が出た。リオは、何年一緒にいても答えが変わる」
「二十年以上ね」
言うと、カイルが少し笑った。
「好みの顔だけで済めば、楽だったんだけどな」
カイルの指が、ボクの指へ触れた。
「顔を見ないようにしても、声がする。俺の名前を、昔と同じ呼び方で呼ぶ。つい返事をして、気づいたらもう近くにいる」
「嫌だった?」
「嬉しいのに、平気な顔ができなかった」
軽く触れていた指が、動いた。
ボクの指の間へ、一本だけ入る。
「今は、もっと近くにいてほしい。リオが誰を待ってるのか、俺が聞かなくても分かるくらい」
息が詰まった。
それはボクも欲しかったものだった。
毎日、少しずつ形を変えて、欲しいと思っていたものだった。
カイルが身体をこちらへ向ける。
ボクも、逃げずに向いた。
幼馴染の顔だった。
見飽きるほど知っているのに、こんなに緊張して見つめるのは初めてだった。
「リオ、好きだ」
指に、力が入る。
「俺と、恋人になってほしい」
「ボクも、好き」
返事は、思ったより早く出た。もっと長い話を用意していたのに、カイルが言った途端、自分の言葉も同じ形になった。
カイルが黙る。
握っていた指にも、急に力が入らなくなった。
「……聞こえた?」
「聞こえた」
「だったら、何か言ってよ」
「今、考えてる」
「何を?」
「リオが、俺を好きだって言ったこと」
同じ言葉を返されただけなのに、顔が熱くなった。
「言ったよ」
「ああ」
「そんなに、何回も確かめること?」
「確かめたい」
カイルは、ずるいと思う。
いつもの声で、そんなことを言う。
ボクは、机に置いたままの茶を見た。
もう、湯気が薄くなっていた。
一口飲めば、顔を見ない時間を作れる。
作らなかった。
「まだ、話したいことがある」
カイルが頷く。
言い終えたから抱き寄せるとか、そういうことはしなかった。
近い椅子へ座ったまま、ボクを見る。
「ボク、カイルを応援できない」
眉が動いた。
「恋愛の練習、付き合ってあげるって言ったでしょ」
「ああ」
「本当は、カイルが知らない誰かに、ボクの前でしたみたいに笑うのが嫌だった。どうすれば喜ばれるかなんて、一緒に確かめなければよかったと思った」
思い出しただけで、繋いだ指にまた力が入った。
本当に好きな人を誘うときも困らないね、と言った夜を思い出す。あの続きを想像したくなくて、ボクは繋いだ手を少し自分へ寄せた。
「ひどいよね。自分で言ったくせに」
「俺は、練習じゃないつもりだった」
「今は、分かってる」
分かっているから、今夜ここにいる。
分からないふりをして楽になるのは、もうやめた。
「カイルの隣は、ボクの場所だと思ってた。相棒だから、幼馴染だから、それくらい当然だって」
指を、握り直した。
「でも、それだけじゃ足りなくなった」
誰かと幸せになればいいと思っていたはずだった。でも、その誰かへ帰っていくカイルを見送ることはできそうになかった。
「ボクを、一番にしてほしい」
カイルの目が、まっすぐこちらへ向いた。
「仕事の途中で、何でもボクを優先しろって意味じゃないよ。そうじゃなくて……」
「分かる」
「本当に?」
「リオが帰ってきたとき、最初に顔を見たいのは俺であってほしい、ってことなら」
喉の奥が詰まった。
ボクは頷いた。
「……そういうの」
「俺も、そうだ」
握られた手が、少し持ち上がる。
カイルの方へ引かれるかと思った。
でも、机の縁で窮屈だった指を、二人の間へ下ろしただけだった。
昔から、ボクが言う前に、窮屈なところだけ先に見つける。
そんなカイルを、恋人にしたらどうなるのか。
知っている部分の多さが、今は余計に落ち着かなかった。
「あと、もう一つ」
「まだある?」
「ある。長いって言ったでしょ」
「聞くよ」
「……カイルが、ボクを見るの、好き」
最後の方は、小さくなった。
カイルが瞬きをした。
今のは予想していなかったらしい。
「この顔で、カイルが困るのも、ちょっと好き。前は、そんなの気づかなかったけど」
「ちょっとか?」
「今、そこを確かめないで」
笑いそうな口元を睨んだ。
カイルは笑いかけて、途中でやめた。
ボクの耳まで赤いことに、たぶん気づいたからだ。
「女になったから、カイルに何かしてあげなきゃいけないとは思ってない。でも、触ってほしいとは思う」
もう、カイルの目を見ていられなかった。
視線を下げると、二人の手がある。
結局、逃げられる場所がどこにもない。
「……ボクも、こうなったらどうなるのか、よく分かってない」
すぐ隣で、椅子が鳴った。
「俺も分からない」
カイルの声がした。
「リオ相手だと、知ってることの方が少ない気がしてる」
そんなはずはないのに、おかしかった。
何年、一緒にいると思っているのだ。
その何年を持ったまま、二人とも、初めてのところへ来てしまった。
ボクは顔を上げた。
「カイル」
「ああ」
「ボクを、カイルの恋人にして」
言ったあと、胸の中へ、まだもう一つ言葉が残った。
「カイルも、ボクの恋人になって」
カイルの表情が崩れた。
笑ったのだと思う。
けれど、普段みたいに人へ見せるための、整った笑顔ではなかった。
「なる」
短い返事だった。
その短さが、たまらなく好きだった。
◇
それから少し、何も話せなかった。
手は繋いでいる。
すぐ隣に、恋人になった人がいる。
さっきまでと同じ部屋なのに、椅子の高さまで違う気がした。
「……何か、変わる?」
ボクが聞くと、カイルは考えた。
「明日、迎えに行くとき、言い訳を考えなくていい」
「前から来てたでしょ」
「考えてたんだよ」
「カイルも?」
「俺も」
知らなかった。
自分ばかりが用事を増やしていると思っていた。
可笑しくなって、少し笑う。
笑いながらカイルを見たら、視線がボクの口元にあった。
笑えなくなった。
知っている目だ。
一度だけ、こんなふうに近くなったことがある。
あのときは、ボクが先に目を逸らした。
今は、逸らしたくなかった。
「リオ」
「……うん」
「キス、してもいいか」
胸の奥で、何かが跳ねた。
ボクは、握られている手を自分の方へ引いた。
「……してほしい」
声は、小さかった。
でも、カイルは聞き返さなかった。
カイルの指が、頬へ来る。
髪の束を耳の後ろへ寄せるだけの、何度かされたことのある動きだ。
今夜は、それだけで目を閉じそうになった。
「顔、少し上げて」
「……椅子、カイルの方が低いのに」
「それでも届かない」
こんなときに、変なところで普段の会話になる。
笑いかけたところへ、額が近づいた。
鼻が軽く触れる。
二人とも一度止まった。
カイルが、ほんの少し首を傾けた。
唇が触れた。
思っていたより、温かかった。
柔らかいという感触は、離れかけてから追いついた。
それをちゃんと覚えようとしたころには、もう離れていた。
ボクは、目を開けた。
カイルが目の前にいる。
近すぎて、顔を一度に見られない。
「……短い」
自分の声だと、すぐには思えなかった。
カイルの目が大きくなる。
「今、何て?」
「聞こえたでしょ」
「聞こえたけど」
分かっているくせに聞き返すから、カイルの袖を掴む指に力が入った。
何か返していないと、さっき自分が口にした言葉の熱が、そのまま頬まで上がってきそうだった。
「もう一度。今度は、ボクも」
最後まで言う前に、カイルが近づいた。
二度目は、鼻が当たらなかった。
ボクも、少し顔を傾けたからだ。
どこへ手を置くか迷い、袖を握ったままにした。
カイルの手が頬から首の後ろへ移る。
強く押さえられているわけではないのに、その手の中にいることが分かった。
離れたあとも、ボクは袖を放せなかった。
カイルも、顔を遠ざけなかった。
「リオ、そういうこと、自分から言うんだな」
「……ボクだって、初めて知ったよ」
言い返したら、カイルが笑った。
ボクも笑った。
十五歳の二人の絵が、机の奥からこちらを向いていた。
見られている気がして、少しだけ落ち着かなかったけれど、伏せようとは思わなかった。
◇
茶は、完全に冷めていた。
淹れ直したあと、今度は部屋の話をした。
机を二つ置けるところ、と書かれた紙を、カイルが引き出しから出す。
ボクは、研究の道具をしまえる棚も要ると言った。
カイルは、自分の装備を置く場所も欲しいと言った。
窓の向きでも少し揉めた。
ボクの机は明るい方がいい。
でも、夏に西日が強すぎると暑いらしい。
「見てから決めよう」
ボクが言うと、カイルが頷いた。
「二人で?」
「今、それを確かめる?」
「確かめたいんだよ」
最初と同じ返事だった。
もう、好きに確かめればいいと思った。
帰るとき、扉の前で、もう一度だけ抱きしめられた。
カイルが離れたあと、ボクは胸を指で押した。
「明日の朝、寝坊しないでね」
「リオも」
「ボクはしない」
「昨日、俺が呼びに行くまで寝てただろ」
そうだった。
恋人になったからといって、過去の寝坊が消えるわけではないらしい。
部屋へ戻って、扉を閉める。
背中をつけてから、頬に手を当てた。
誰も見ていないところで、ひどく気の抜けた顔でボクは笑っていた。
◇
翌日の戦勝祭で、ボクたちは一人ずつ名前を呼ばれた。
カイル・アスター。
リオ・フェルン。
リゼット・ハルヴェ。
ガレス・ベルン。
誰かの付き添いとしてではなく、四人それぞれが、討伐の旅を終えた人間として。
深い青緑の礼装の袖が、手の甲へ触れる。
歩くときに裾を踏まないよう、少しだけ持ち上げた。
客席を見渡したカイルの目が、こちらへ戻る。
ボクは、今度はその目を避けなかった。
祝宴では、四人の絵を残すための下描きもした。
ガレスがじっと立つのに飽き、リゼットに袖を引かれる。
その隣で、ボクは少し笑いそうになった。
今の姿で並んだ絵が、増える。
古い一枚を失くさずに。
音楽が始まったあと、カイルがボクの前へ来た。
手を差し出して、何か言おうとする。
ボクは先に、その手を取った。
「今回は、何て言えばいい?」
カイルが小さな声で聞いた。
「踊ろう、でいい」
「踊ろう、リオ」
「うん」
歩き出す前に、ボクは少し背伸びをした。
耳へ口を寄せるだけで、カイルの指に力が入る。
それが分かったから、声が少しだけ弾んだ。
「ボクの恋人なんだから。今夜は、ちゃんとこっちを見てて」
カイルが、息を止めた。
「最初から見てる」
「知ってる」
音楽の拍に合わせて一歩出る。
二歩目で裾がカイルの靴へ触れ、二人とも同時に足元を見た。
「踏むのはリオだったな」
「今それ言う?」
笑いながら顔を上げると、言った通り、カイルはまだこちらを見ていた。