パーティは脱退しました!~それでも即席鍛冶魔法使いは名を挙げるために頑張りたい~ 作:ロマンティックな王様
「こ、こんにちは~……どなたかいらっしゃいますか」
「はーい! ちょっと待ってておくれよ!」
グリュンバルトの大通りに面する武器屋、《鉄の金床》。
大森林が近いということもあってか、この街には冒険者が多く、その冒険者たちを相手にする武器屋も数多い。
そんな中でもこの店は初心者~中級者、ランクで言えば
ともかくそんなお店であるからこそ、俺やリィゼ、ヴェーマは鉄を譲ってくれるんじゃないかなぁ~と過去に訪れたわけだ。
念のため他に客がいないことを確認して呼びかけてみれば、奥の方から女性の声が響く。
そのまま周囲の武器防具を見渡しながら待つこと数分。こちらへと向かってくる足音とともに、店の奥から女性がやって来た。
作業の途中だったのだろうか。頭に布を巻いた彼女は、汗と汚れを袖で拭いながら「待たせたねぇ」と受付に立つ。
「今日はどんなご用件だい? 武器が欲しいのかい? それとも修理? 見たところ、まだ
「お、おぉ……」
ドタプンッと揺れる大迫力の双丘を前に、思わず感嘆が零れてしまう。
いったいリィゼの何倍あるのだろうか。考えただけで未来の俺が斬り殺されている姿が目に浮かんでくる。
あいつ剣を振るのに邪魔だから不要とか言うくせに、俺とヴェーマがそこに触れたらキレるんだよなぁ。
「……? どうしたんだい?」
「……あ、すみません黙ってしまって。今日はカインさんたち《五葉の風》の皆さんの紹介で来たんですが……」
「キアンの……ああ! もしかしてお前さんがシュミットか! キアンたちの命の恩人だっていう!」
一瞬考えるようなそぶりを見せるも、すぐに思い至ったのか俺の名前を出してくれた。
「直接的に命を助けたわけじゃないんですが、その一助にはなれたようでして……でも実際生き残れたのは、カインさんたちの実力があったからですよ」
「なーに謙遜してるんだい! お前さんの武器があったからこそ、キアンたちは死なずに済んだんだ。アレの姉として、アタシからも感謝させとくれ!」
受付のテーブルを軽い身のこなしで飛び越えてきた彼女は、着地と同時に再びドタプンッ! と双子山を暴れさせる。
その光景に思わず目を奪われてしまった俺は、再び「おぉ……!」と感嘆の声を零すのだが、ニヤリと笑った女性はそのまま俺を抱き寄せた。
ボムンッと、顔が埋まる。
「ちょおっ……!?」
「カハハ! かわいらしい反応するじゃないか! さっきからずっと見てただろう? 家族を助けてもらった礼さね! こんなので良けりゃ、存分に堪能していきな!」
ギュムギュム、と何度か押し付けられるように抱きしめられると、大きな柔らかい山の感触がダイレクトに伝わって来た。
ま、間違いない……この人、下着類なんにもつけてねぇ……!!
これは良いものだぁ……!
「……すみません、これ以上は死んでしまいます! すっごく名残惜しいんですけども……!!」
「カハハ! 正直者さねぇ! でも、感謝してるのは本当だよ。ありがとう、おかげでアタシの弟は死なずに済んだんだ」
ポン、と俺の頭に手を置いて感謝を伝えてきた彼女は、そのまま離れてニカリと笑って見せた。
そして頭の布を取ると、肩ほどまで伸ばされた淡い赤の髪がバサリと揺れ、そのままこちらに手を差し伸べてくる。
「自己紹介がまだだったね。アタシはフェルム。《五葉の風》のキアンの姉で、ここ《鉄の金床》で鍛冶師をやってるよ」
「カインさんたちからはもう聞いていると思いますが、シュミットと言います。今は
よろしくお願いします、とフェルムさんの手を取って挨拶する。
自己紹介をやる前にあんな行動に出るとは……胸と同じく、性格もなかなか大胆な人であるようだ。
「詳しい話はキアンたちから粗方聞いてるよ。ここじゃなんだ、奥を使おうじゃないか」
そう言ってフェルムさんは一度店の外へ出て、そしてまた戻って来る。
どうやら表に一時閉店の看板を出してきたらしい。わざわざいいんですか? と聞いてみれば、彼女はニカッと笑ってみせた。
「別に構わないさ。お前さんが来たら優先して対応するって決めてたからねぇ! さ、そんなことは気にせずついてきな!」
こっちだよ、とフェルムさんの後に続き、先ほど彼女がやって来た受付の奥の部屋へと足を踏み入れる。
どうやらそこが火事場になっているようで、火床や金床、 脇船に加え、壁には大小さまざまな鎚が並べて掛けてあった。
完成したものなのだろうか。壁際のテーブルには剣や槍の穂先、鏃などが並んでいる。
薄暗く、それでいて火床からチロチロと顔を覗かせる炎が仄かに周囲を照らす。まさにイメージする鍛冶場がそこにあった。
「おぉ……」と思わず声が零れる。
「こういうの、好きかい?」
「……はい。ちゃんと見るのは初めてなんですけど……いいですね、こういうの。ここで武器が生まれるのか……」
並べられている武器に歩み寄ってじっくりと目を凝らす。
鎚を打ち、鍛えられた肌だ。俺が魔法で作り出した武器とは異なる、人の息が感じられる武器。
いや、感覚的なものなのでちゃんとは説明できないのだが……それでも、俺の魔剣とは根本から違うと思わされた。
「これが、鍛冶師が作った武器……」
「カハハ! 改めてそんなこと言われると、ちょいと照れくさいもんだねぇ~。そんなに見たいなら、後で存分に見せてやろうじゃないか」
それより座りな、とどこからか持って来た椅子を用意してくれたフェルムさん。
促されるままそこに座ると、彼女は普段から鍛冶師事で使っているのだろう小さな椅子に腰を下ろした。
自然とこちらの視点が高くなったからだろう。薄手の上衣の胸元にそれはそれは深~い谷間が垣間見えている。
頑張って視線をフェルムさんの目に合わせる。
「さて、それじゃあ話をしようじゃないか。キアンたちからは、お前さんに武器の相場を教えてやってほしいって聞いてるんだが……商売でも始める気なのかい?」
「商売は、考えている最中ですね。カインさんたちに、俺の武器……魔剣を金銭で買いたいと言われたので、どれくらいの値が妥当なのか。それを検討したいと思っています」
「で、その相談でアタシのところに来たわけだね。まぁ、キアンたちから聞いていた通りさね。それで? その件の魔剣……《シュミットの魔剣》とやらは見せてもらえるのかい?」
フェルムさんの問いかけに、俺は「はい」と頷き腰に携えていた剣を鞘ごとフェルムさんに手渡す。
受け取ったフェルムさんは、鞘から魔剣を抜き、様々な角度からじっくりと観察し始めた。
「へぇ……面白いモンだねこりゃ。作り手の息がまったく感じられないくせして、そこらの鈍らよりも凄みがありやがる」
「息……とというのは?」
「ん~……そうだね、職人の癖みたいなもんだよ。アタシだけに限らず、作られた物には作った奴の意思が籠るもんさね」
「それが、ないと?」
武器を観察しながらフェルムさんが頷く。
まぁでも、彼女が言わんとしていることは何となく理解できる。
なにせ俺が作った魔剣は、素材があれば時間をかけずに完成する。フェルムさんたちのような鍛冶師が時間をかけ、鍛えたものとは根本から異なるのは当然だろう。
「凄みってのは……まぁ、アタシの勘が『こいつはすごいもんだ』って喚いてやがるのさ。鈍ら以下に見えるのに、鈍ら以上……いや、名剣名槍並みだと感じられる。面白いに決まってるだろ? ここ刀身の文字は何か意味があるのかい?」
コツコツとフェルムさんは指先で魔剣の刀身に描かれた文字を叩く。
「意味……というか、俺が作る魔剣には、どこかしらに文字が描かれるんです。意味は、俺にもわからないんですが」
「製作者本人にも理解できない文字……自分のスキルなのにそんなことがあるんだねぇ。それで? これはどんな魔剣なんだい?」
「実際見てもらった方がわかりやすいと思います。【縮小】と唱えていただければと」
「【縮小】! っ……!? ほほぉ……こいつは驚いたねぇ! 本当に小さくなりやがったよ!」
剣を手にしたフェルムさんが俺に言われた通りに唱えれば、剣はたちまちその姿を変え、アクセサリーほどの大きさに縮んでしまった。
その様子に一瞬驚愕の表情を浮かべたフェルムさんだったが、すぐその顔には笑みが浮かび呵々大笑し始める。
「【解除】と唱えれば、また元の大きさに戻りますよ」
「【解除】! カハハ! 本当に元の大きさに戻った! こいつは面白いねぇ!」
まるでおもちゃを手にした子供の様に、それはそれは純粋な笑みを浮かべながら【縮小】と【解除】を繰り返して遊ぶフェルムさん。
だがそんなに付与した効果の使用を続けると……と彼女に教える前に、フェルムさんに渡していた剣は限界を迎えたらしく、【解除】されるとともに粉々に砕けて消えてしまった。
その様子を見ていたフェルムさんは、「おっと?」とキョトンとしていた。
「……聞いてはいたけど、本当に消えちまうんだね。なるほど……魔法が付与された強力な武器だけど、使っちまえば消えちまう。こりゃ値をつけるのが難しいねぇ」
「ですよねぇ……カインさんからは、小金貨五枚が最低価格だって聞いているんですが」
「うちの商品の十倍ってところか。まぁ、妥当だろうね。いくら名剣名槍であっても、使ってなくなっちまうもんに大金は出せないよ」
だがねぇ、とフェルムさんが顔を顰めた。
「お前さん、本当にこれで商売する気なのかい? 言っちゃあ悪いが、こんなもん売り始めたら余計なところからも大注目間違いなしだよ?」
「まぁ、ですよね……」
その言葉に、俺は「はぁ」とため息を零す。
いやまぁそれはそうだろうと、自分でもわかってはいるのだ。
俺の《鍛冶魔法》は、他とは違って特異……いや特異すぎると言っても過言ではないスキルであり、その特異性に注目するものもいるはず。
ただの一冒険者……それも力のない
なので現状では大々的な商売はできないだろう。もしもやるなら、俺個人が誰も手出しできないような力を持つ、あるいは強力な後ろ盾を得るしかない。後者の場合は信頼できる相手が望ましいだろう。
「なので今考えているところとしては、俺が信頼できる人、あるいはその信頼できる人が紹介してくれた人にだけに売ろうかなと」
いわゆる会員制みたいな感じで販売できるなら、その方がいいと思っている。
そもそも、魔剣を作れるのは俺一人であり、魔力量などを考えれば作れる数にも限度はある。大量生産にはとことん向いていないものだろう。
そうフェルムさんに伝えると、「なるほど紹介制さね」と顎に手を当て頷いていた。
「まだまだ考えないといけないところはあると思いますが……とりあえず、魔剣の値段だけでも決めておきたいなと。なのでそのあたりのご相談をさせてください」
「そういう事なら任せときな! ここでの話は、アタシの中だけに留めておくから安心しておくれよ」
なんなら契約書も作ろうじゃないか、と笑って見せるフェルムさん。
そんな彼女とは数時間ほど魔剣についての話を詰め、最終的には付与する効果や数、素材によって詳細を分けて値段をつけることになるのだった。
ストックはここまでです。
あとはお待ちいただければと……
めちゃくちゃ人気になれば、やる気もいっぱい出るんだけどなぁ…(チラチラ)