酒寄彩葉に泣かされる優柔不断で悪いモブの話~逆行編~ 作:ゴリラ皇子
早いものであっという間にモブちゃんのソロライブの日となった
最早お馴染みとなったメンバーが控室に集まり、思い思いの時間を過ごしていた
「彩葉、大丈夫?」
「うん大丈夫、ありがとう」
かぐやの卒業ライブの代わりとも言うべき今回のライブに、私は複雑な感情を持っていた
歴史の流れを変えないためにも念のためやった方がいいのは理解している…けど、かぐやを失いかけ、そしてモブちゃんとの別れとなったライブに対してどう向き合っていいのか答えを出せないでいた
けれど、そんな私の悩みは割とあっさりと解決してしまった
「うっひょぉおおおお!見てみて新衣装!ウチちょっと可愛すぎない!!??」
「いぇーい!ヤッチョと芦花の合作だからねぇー!今回はファナティックかつエレガントに仕上げてみましたぁー!!」
「ひゅー!ヤチヨも芦花も愛してるぅうう!!」
新衣装にテンションがぶっ壊れたモブちゃんと、後方ドヤ顔生産者顔をしていたヤチヨが見事なハイタッチを決めた
「あの2人見てたら何かごちゃごちゃ考えてるのが馬鹿らしくなっちゃった」
「あれで2人とも無理してるわけじゃないから凄いよね」
ライブを全力で楽しんで、笑って見送る
…もう、私にできることはそれだけだ
うし!と改めて気合を入れたところで、突然モブちゃんがこんなことを言い出した
「ってか今更なんだけどさー、誰でも参加できるとはいえ…ウチの卒業ライブに来たい人なんかおるん?」
モブちゃんのその言葉に、ヤチヨを除いた部屋にいる全員が『こいつマジか』という視線を向けた
ヤチヨ?(無言のアイコンタクト)
ちゃうんすよ、というか彩葉もそっち側だよ?(無言の目逸らし)
そんなことないでしょ(首を傾げる)
ま、まぁモブちゃんらしいと言えばらしいか
実際のところどうなのかは…自分の目で確かめてもらうとしよう
「モブちゃん、そろそろ時間だよー」
「マジか早すぎね!?」
ヤチヨのその言葉にモブちゃんは全員が見える位置まで移動すると頭を下げた
「皆んな!ほんっとお世話になりました!少し距離は遠くなっちゃうけどさ…ウチ頑張ってくるよ!」
周囲からモブちゃんを応援する言葉が飛び交う中、気づけば私はモブちゃんを抱きしめていた
「いろぴ?」
「私達はずっとモブちゃんと一緒にいるよ、だから大丈夫。モブちゃんならできるよ」
「…!」
抱きしめたモブちゃんの身体が僅かに震えたのが分かり、抱きしめた手に力を込めた
「ありがとう…行ってきます、彩葉」
「行ってらっしゃい、モブちゃん」
彩葉との別れを済ませたモブちゃんを待っていたのは、先にステージへと来ていたヤチヨだった
「ごめん、お待たせ」
「ちゃんとお別れはできたかい?」
「そりゃもーバッチリ!」
それは良かったと朗らかに笑うヤチヨの顔に「やっぱりずるいなぁ」と思いながら、モブちゃんも笑った
「ヤチヨ」
「なんだいなんだい?」
2人の視線が交差し…モブちゃんは深々と頭を下げた
「貴方がいてくれたおかげで毎日楽しかったよ…本当に、ありがとうございました」
「こちらこそ、楽しんでくれてありがとう」
「何か…自分にお礼言うって不思議な感じだね」
「そうかもねー」
そのやり取りさえ何だか面白くて、2人は笑い合った
「ヤチヨ!私は貴方に誇れるような私になります!」
そう言って再度頭を下げたモブちゃんを、眩しいものを見るような目で見つめたヤチヨは「筋金入りだねー」と苦笑しながら口を開いた
「のんのん!モブちゃんは既にどこに出しても恥ずかしくないくらい、立派な存在なのです!」
「え、それはどういう…」
口で言っても分からないなら、見せてあげないとねーそう朗らかに言いながらヤチヨは高く掲げた指を鳴らす
パチンッ
という音が響き、特別に作られたKASSEN場に巨大なゲートが出現した
そのゲートから人が雪崩れ込むように出てくる。数百、数千をはるかに超えてもなお止まることはない数の人…その光景を見たモブちゃんは口を震わせながら何とか言葉を発した
「こ、れは…?」
「皆んなモブちゃんを見送るために来たんだよー」
いつか見たかぐやの卒業ライブのKASSEN、それをゆうに超える参加者を見て…ヤチヨは嬉しそうに笑った
「モブちゃん、貴方がこんなにも沢山の人に愛されていること…実感できたかな?」
この世界に来てからほぼ毎日ツクヨミにいるモブちゃんは、自覚もないまま本当に…本当に多くの人と関わり、影響を与えてきた
モブちゃんとして
MO=BUとして
困っている人がいれば声をかけ、楽しそうなイベントがあればひょっこりと参加し、暇そうな人に声をかけては、遊んで、笑って、泣いて、戦って、また笑って
それも全て…ツクヨミを、そしてツクヨミを楽しんでいる神々の皆んなを愛するが故だ
ツクヨミとツクヨミに関わる全ての人へと向けられた愛…それが今、モブちゃんへと返ってきていた
「うぅ…ぐすっ…」
その光景を見たモブちゃんは、顔を両手で覆った。もう泣かないと、そう決めていたのに…。そんなモブちゃんを明るく照らすように、空から光る桃がやってきた
「ほら、見て…彩葉達もやってきた」
ヤチヨが指し示した先、桃から現れた
彩葉、かぐや、芦花、真実、オタ公、朝日、乃依、雷がモブちゃんへと振り返り、手を振ったり笑いかけたりサムズアップした後…モブちゃんを守るよう背を向けて立った
その背中を見たモブちゃんは、もう溢れ出す涙を隠すことをやめた
あぁ…本当に…皆んな…みんな…!
「自由だぁああああーーー!!!」
モブちゃんの叫びに呼応するかのように、空が暗くなり月が浮かぶ
…そして敵役の月人さん達が彼方より現れた
「敵になると雰囲気あるね〜」
「何であろうと撃ち倒すだけだ」
乃依さんが不敵に笑い、雷さんが鋭く睨みつける
「特訓の成果みせるよ…!」
「皆んなで勝って、皆んなで美味しいもの食べよ〜!」
芦花が気合を入れ、真実が嬉しそうに笑う
「盛り上げていこうぜ!」
「盛大に送り出してやろーじゃん!」
お兄ちゃんが声を張り上げ、闘志むき出しのオタ公さんがそれに続く
「ごらぁ!日頃のお説教の恨み〜覚悟しろぉ〜!!」
「私は別に恨みとかないんだけど…折角なら勝ちたいよね」
「も〜勝ちたいじゃなくて勝つよ!モブちゃんのために!」
「そうだね…勝とう!モブちゃんのために!!」
…かぐやの言う通りだ
勝っても負けてもモブちゃんが月へ行くという結果は変わらない、だけど…今度こそ!勝ってモブちゃんを見送るんだ!!
そして月人さん達が動き出すと共に、ライブの始まりを告げる歌が流れ出した
1曲目はこの歌が良い!モブちゃんはそう言ってかぐやへ頼み込んでいたっけ
その歌をバックに私達は前へ前へと走り出した
『どんな明日が来ても…笑えるように今を生きてゆこう』
「おーい黒鬼!指揮取れ!指揮!」
「かぁー!人気者は辛いねぇ…よぉーしお前等ぁ!FFはねぇから気軽にぶっ放せぇ!!」
「「「おう!!!」」」
『そうやって決めたのに 変わらぬ今日を夢見てしまうよ』
「どこ撃ってもあたるって、案外気持ち良いかも」
「確かにな…だが油断はできんぞ」
『もっと衝動的な音で!もっと感情的な歌で!サヨナラを彩るシンフォニー』
「いやー友達の歌を聞きながら戦うってのも乙なもんだねぇー!」
「確かに、やる気が出るね…!」
「この調子でどんどん行こぉ〜!」
『憧れた景色は思ってたよりも…ずっと複雑で自由で…キレイで…儚くて…』
「行くぞオタク達ぃ〜カチコミじゃあ〜!かぐやに続けぇ〜!!」
「「「「うぉー!!!!」」」」
「ちょっかぐや突っ込みすぎ!?あとオタク言うな!」
『何千年が経ったって…何万年が経ったって…きっと この一秒は永遠に続いてゆく!』
「「「「ぎゃー!!!???」」」」
「あー言わんこっちゃない!」
「ありがと!い・ろ・は♡」
『始まること、終わりゆくこと…そっと今、君が笑ってくれたこと…それを運命だと言うなら!全部抱きしめてみようー!』
「行くよ!」
「行こ、行こ!」
『あぁ世界が彩りに満ちてゆく
すべてが祝福を奏でている』
1曲目を歌い終わり、次はいよいよ『Reply』だと気合を入れ直す
そんなモブちゃんだったが、ふと会場を見渡した際に…月人の攻撃で吹き飛ばされる彩葉とかぐやを視界へ捉えてしまった
無いはずの心臓がドクンと脈打つ
目を閉じ、息を吸い込んだ
そして深く…深く息を吐き出すと
決意を固めた
「…よし!」
カッと目を見開くと…モブちゃんは、ステージから勢いよく飛び降りた!
「ヤチヨ!あと任せた!!」
「りょー☆」
あぁ…本当、私ってバカだなぁ
折角皆んなが準備してくれて、応援してくれてるっていうのに…その期待を裏切っちゃった
優柔不断で悪いモブだよ…本当…
でも
それでも
それでも!!!
これが、これこそが私だ!私なんだよ!!!
ステージを飛び出したモブちゃんは、動きやすい元の衣装へと着替えると…彩葉達目掛けてKASSEN場を最短距離で駆け抜けた。そして追撃をかけようとしていた月人目掛けて思いっきり拳を叩きつけた!
「ウチの彩葉とかぐやに…何してくれてんじゃあああああああああ!!!!!」
「「モブちゃん!?!?」」
さっきまでステージにいたはずのモブちゃんが目の前に現れたことに驚愕する彩葉とかぐや。ステージを映しているモニターを見ると、モブちゃんの代わりにステージへ上がったヤチヨが手を振っていた
「にははは!…来ちゃった」
「何やってんの!?…って、モブちゃんらしいと言えばらしいか…全くもう!」
「やっぱ我慢できるわけないよね〜モブちゃんならさ!」
「そゆことー☆」
見計らったように、ヤチヨが2曲目をスタートさせる。その歌は勿論…『Reply』、モブちゃんから託された歌だ
「彩葉!かぐや!ウチも一緒に!!」
「当然!」
「もちろん〜!」
「「「一緒に戦おう!!!」」」
『当たり前の結末なんて、いらないって笑ってた』
『破天荒ばっかりで、それでもまっすぐで…鈍らないきみだけの声』
「っとと、モブちゃん作戦とかある!?」
「このままじゃジリ貧!だから最短距離で大将を討つ!!」
「いいじゃ〜ん!それができたらだけど!さぁ!」
『迷わず歩いて(いたね)』
『気づけば遠くに(いたよ)』
「良いね、その作戦!」
「ああ!俺たちも乗った!!」
「「「皆んな!」」」
『同じエンドに連れてってくれる…そう思ってたけど…』
「でも本陣の守りは大丈夫かなぁ〜?」
「確かに、攻められたらやばいか…」
『守りはヤッチョ達に任せてー!』
「ありがと〜!でも歌に集中してね〜!!」
『よよよー!』
「何やってんだか…自由過ぎっしょ」
「今のモブちゃんもヤチヨのこと言えなくなーい?」
「ぐぅ」
『昨日の続き(喋りたかった)』
『くだらなくても(ちょうどよかった)』
「私達が雷さんの武器に乗って、それを乃依さんのウルトで吹っ飛ばす!?正気!?」
「おもろ」
「ひゃ〜怖そう〜!」
『並んでたかったよ…ごちゃつく隙間で』
「お前等ぁ!モブちゃん達を全力で援護だ!当てるなよ!!」
「「「「おう!!!」」」」
「やれ、乃依!」
『聞き分けのいい(フリはもうできない)』
『飛び立つ背中(追いかけてみたい)』
「飛んでる!?私達飛んでる!?!?」
「飛んでるっーか、吹っ飛んでる的な?」
「おっもしれぇ〜!」
『本音を聞かせて…ただ叶えてみたいから』
「2人とも捕まって!」
「「かぐや!」」
「これが温存していた…かぐやちゃんロケットだぁあああ!!!」
『この一瞬を最高のパーティーにしよう』
『そしてそっと同じ明日へ地図をつなごう』
「これ…芦花のネイル!?こんなとこまで!?」
「芦花〜!」
「いやー愛されてますなぁー!」
『ねぇ心揺らして』
『笑顔もシェアして』
「ちょまず!あれ避けられなくない!?」
「彩葉!ウチにワイヤーを!!」
「分かった!」
『ありふれてる好きな物にずっとまみれて!』
「かぐやが助ける!」
「私が連れてく!!」
「ウチが守るんだ!皆の笑顔を!!」
『君といたあの部屋へ電子の海へ』
『もう一度飛び込んでタカラバコにしちゃおう!』
「見て〜!彩葉達届いたよ〜!」
「やりゃーできんじゃん」
「綺麗…流れ星みたい」
『ねぇずっとはしゃいで』
『アンコールかさねて』
「「「いっけぇぇえええええええ!!!!!」」」
『また新しい景色の』
『物語をえがこう!』
私達が大将役の月人さんを倒した後、爆発的な歓声がKASSEN場に響き渡った。それこそ遥か彼方の空中にいる私達に届くくらいの歓声だ
「勝った!勝ったよウチ等!!」
「当然、私等3人は最強だからね」
「しゃあ!ざまぁみろ月人共〜!」
私達は抱きしめ合い、喜びを分かち合った
勝ったからって歴史の何かが変わるわけじゃない、でも私達の中の何かが確かに変わった気がしたんだ
「ところでさ〜…これ着地はどうする感じ?」
「あっ」
やばっ!着地のことまで考えてなかった!?
慌てふためく私とかぐやを見てモブちゃんは可笑しそうに笑った
「落ち着いて2人ともー!KASSENに落下ダメージないっしょ?」
「ヴェエ〜!確かに!」
「…そう言われればそうかも」
堪らず吹き出すモブちゃんにつられて、私達も声を出して笑った。そうやって暫く笑い合っていると
「3人とも!よーく頑張ったー!!」
「「「ヤチヨ!」」」
飛んできたヤチヨが私達を優しく抱きとめると、空の散歩を楽しむようにゆっくりと降下を始めた
「ってかごめんねーヤチヨ!ライブほっぽり出しちゃって!」
「いえいえーお陰様でまた楽しいライブができましてよー!」
「モブちゃんの歌も、ヤチヨの歌も最高だったよん」
「最っ高に楽しかったぁ〜またやりたぁ〜い〜!」
「ちょ暴れんなって!」
そうして地上に無事帰還した私達を大歓声が迎えいれた
「皆んなごめーん!我慢できんかったぁー!!」
モブちゃんが大声でそう謝ると、いたる所から「気にすんなー!」「格好良かったぞ!」「そうじゃなくっちゃ!」という声がとんだ
「にははは!ありがとー!やっぱツクヨミって最高だぁー!!」
嬉しそうに笑ってそう言ったモブちゃんの背後から、ニュッと月人さんが出てきた。そして一礼するとモブちゃんへ何かを伝えたようだ
「…」
「おっと…ごめん!皆んな、もう行かなくちゃ!!」
モブちゃんのその言葉に、方々から声がとんだ。引き止める声、応援する声、悲しむ声、再会を願う声…本当に色々な声が…
「ツクヨミの空も今宵を限りー可愛い子分の手前達とも別れ別れになる道途だ!!」
「「「誰が子分だ!!!」」」
本当…愛されてんなぁ…
それだけ、モブちゃんがツクヨミを愛したって証拠で…自分のことのように嬉しい
嬉しいんだけど…
「モブちゃん…」
「どしたん?彩葉??」
皆んなへ笑って手を振るモブちゃんを見ていたら…私の願いが、我慢を越えて溢れてしまった
「いかないで…」
私の言葉を聞いたモブちゃんが肩を震わせ顔を伏せた
笑って見送るんだって、そう決めたのに…ごめん…涙が止まらないんだ
モブちゃんは何も言わずに顔を俯かせた後、バッと勢いよく顔を上げるとこう叫んだ
「モブちゃんフラッシュ!」
へ?
モブちゃんのその言葉と共に、私以外の人達が目を押さえて転げ回った
「「「目がぁ〜目がぁ〜!!」」」
「なんでヤッチョまでー!?」
うわっ!?ヤチヨまで!?!?
一体どういうつもりなのか、モブちゃんは不敵な笑みを浮かべたまま私に近づいてきた
「い・ろ・はー♡」
「も、モブちゃん!?何やってんの!?」
「いやぁー、ウチは悪いモブだからさ…最後にもうちょーっとだけイケナイことしちゃおうかなって!」
「え?なに?どゆこ…むぐっ!?」
私の問いかけは、最後まで言うことはできなかった
何故なら、突然顔を近づけてきたモブちゃんに口をふさがれたから
「ウチと彩葉の、仲良しのやつ…皆んなには内緒だよ?」
そう言って笑うモブちゃんの顔があんまりにも綺麗で
…私は言葉を失ってしまったんだ
「それじゃあ皆んな!未来で待っててねー!さらばーい☆」
「それヤッチョのやつー!」
モブちゃんを呆然と見送った私は…彼女が完全に消えてから大きく息を吐き出した
そして、直ぐに先程のことを思い出すと顔が熱を帯びたのを感じた
「酷い目にあったぁ〜」
「よよよ…まさかヤチヨまで喰らわせるとはー!」
ようやく回復したのか、かぐやとヤチヨがヨロヨロと起き上がってくる
なんかさっきのKASSENの時よりダメージ負ってない?
その有り様が何だかおかしくて、思わず声をあげて笑ってしまった
「行っちゃったね〜」
「うん…最後までモブちゃんはモブちゃんだった」
「それがモブちゃんでありヤチヨですからー」
「ヤチヨが言うと説得力が違うわ」
月が消えて、明るくなったツクヨミの空を眺める
どこまでも青く澄み渡る空は…まるで旅立った彼女のようで…どこまでも飛んでいけそうだった
そうやって空を眺めていると、私達の名前を呼びながら芦花達がこちらへと駆け寄ってくるのが分かった
「帰ろっか…私達の家へ」
「ねぇ〜彩葉とモブちゃんの仲良しのやつって何なの?」
「秘密ー」
「ヴェエ〜!?ヤチヨ!ヤチヨも知ってるよね!?」
「教えなーい☆」
「芦花ぁ〜!2人が虐めるぅ〜!!」
「ふふっ私は後でこっそり教えてもらおっかなぁ」
「芦花の裏切り者ぉ〜!」
「おーここが月かぁー」
月人へ連れられて月へと来たモブちゃんは、物珍しそうにキョロキョロと周囲を見渡した
「いやはや…知っているのと実際に見るのとは全然違いますなぁ」
「…」
「へ?私に会わせたい人??」
月に知り合いなんていたっけかなぁ?とてんで見当がつかないまま、導かれるまま歩いて行くと
「この部屋?入れって??」
とある部屋の前へと案内され、中へ入れと促された
一体何なんだ…と訝しみながらも、促されるまま部屋の襖を開けた
すると、その部屋の中では
「おっ、やっと来たな」
「も〜遅いよ〜!」
「ライブお疲れ様」
「にゃー」
先程別れた筈の彩葉、かぐや、芦花が先に月へと来ていた猫DOGEと戯れていた
「な、なんで…?」
目の前の光景に思考が完全に停止し、モブちゃんは何とかその一言を消え入りそうな声で呟いた
そして転ぶように彩葉達に近づくと、叫ぶように声をあげた
「なんで…なんで彩葉達がここにいるの!?だってここ、月…月なんだよ!?!?」
彩葉達は慌てふためくモブちゃんの手を優しく握った
「落ち着いてモブちゃん、この私は"酒寄彩葉"本人じゃないから」
「彩葉じゃ…ない…?」
モブちゃんはその言葉に顎が外れそうなほど口を開けて驚く…だって自分が彩葉を見間違える筈がないからだ
声や何気ない仕草、それ等全てが彩葉本人だとモブちゃんに伝えていた
しかし、続くかぐやと芦花の言葉にモブちゃんは更に驚愕することになった
「そだよ〜!かぐや達の情報を元に生み出したクローンなんだ〜!」
「うん、なんかよく分からないけどそう言うことらしいよ?凄いよね」
あっけらかんと、とんでもないことを言う2人を彩葉が補足した
「まぁー正確に言うと私達の情報を元に新しい月人を誕生させた形だから、クローンとは違うし完全に元の私達とも一緒じゃないんだけどね。あっ、ヤチヨと月人さん達も共犯だから」
その節はお世話になりました、と月人へ頭を下げる彩葉をモブちゃんは呆然と眺める
「言ったでしょ?私達はずっと一緒だって。本物じゃないのは申し訳ないけどね」
私達はずっとモブちゃんと一緒にいるよ
その言葉をきっかけにして、大切に…大切に…宝箱へしまっておこうとした今までの楽しかった思い出全てが、モブちゃんの脳内に溢れ出した
「うぅ…ひっぐ…うわぁーーーーーん!!!!」
今まで見たことのないほどの突然の大号泣に狼狽える彩葉達
「も〜!彩葉のせいでモブちゃん泣いちゃったじゃ〜ん!!」
「わ、私のせい!?」
「モブちゃん大丈夫だよ、よしよし」
あわあわしながらモブちゃんの頭をなでたり背中を撫でたりして、落ち着かせようとする3人へ…モブちゃんは絞り出すように必死に声をだした
「ひっぐ…ちがうの…うれしくて…うれしすぎてなみだとまらないのー!!!」
月へと渡ったえらえらモブちゃんは、バリバリ社畜し…3代目かぐや姫の姫ちゃんへ引き継ぎを済ませると、無事タイムマシンも完成させました
やること全部済ませたモブちゃんは…すっかり仲良くなっていた月人達と涙の別れを済ませ、タイムマシンを使い8000年前へと旅立ったのです
彩葉、かぐや、芦花それから猫DOGE…大切な人達と共に
そして…
「「おっも………」」
「2人とも毎回それ言うよね〜」
私はここ、酒寄研究所にて2人の何度目かになる適合実験を行っていた
2人とはもちろん、ヤチヨとモブちゃんだ
「ツクヨミとリアルの重力の差がすごくてねー」
「それなー!リアルの重力マジやべぇ…って感じ」
前の歴史と同じように、私はこの研究所の所長となった。やっぱりヤチヨにも現世を楽しんで欲しかったし、何より…モブちゃんとも一緒にいたかったのだ
「やっぱ、それぞれYC型とMB型の方が適合率が良いか」
『もはやその辺りはオカルトに足突っ込んでるよね』
「お、彩葉2号もそう思う?」
『2号言うな』
8000年過ごした自分と話すのは、いまだに変な感じするけど…彼女には研究助手として随分助けられた
『かぐや1号!自分も早くボディが欲しいであります!!』
「かぐや2号!無茶を言うなであります!!」
『ヴェエ〜!来年とか遠過ぎ〜!!』
いやいや、人手が足りないんだから仕方なかろうて。お金は8000年組が今回もはっちゃけてくれたから何とかなってるけどさ
『あ、私1号が来たみたい』
「ウチの知らん間に、その呼び方流行ってたりするん?」
「技の1号的なー?」
ガチャっとドアを開けて入ってきたのはお馴染みのメンツ、芦花、真実、お兄ちゃん、乃依さん、雷さん
「皆んなー!」
モブちゃんとヤチヨが皆んなと談笑している間に、諸々のチェックを終わらせる。うん、今のところ問題なしっと
「2人はこの後やりたいことある?」
「「パンケーキ!」」
「現実での味覚はもうちょいお待ちあれー」
私の言葉が2人の中のなにかの琴線に触れたのか、ヤチヨとモブちゃんは顔を見合わせて笑うと…2人揃ってこう言ったんだ
「「もう1秒だって待てないのにー!」」
『今生に間に合った!モブちゃんの復活ライブ!!』
「オタぴ張り切ってんねぇー!」
「そりゃずっと楽しみにしてたんだから、ああもなるって」
「モブちゃんも8000年ぶりじゃん〜?」
「ヤッチョは先週ぶりー!」
私の隣にはかぐやがいてヤチヨがいて…そしてモブちゃんがいる
本当、生きるのって最高だ!
「いくよ!」
「「「「せーの!!」」」」
ねぇねぇー皆んなはさ、このお話ハッピーエンドだと思う?
このあと喧嘩別れするかも?
にははは!たとえ喧嘩しても、離れていてもウチ等はずっとずーっと繋がってるよ
貴方がウチを見つけてくれたように
まーとりあえず、このお話はここでお終いね☆
へ?
このお話のタイトル?
タイトルはねー!
【挿絵表示】