魔法少女リリカルなのは リインの孤独 作:黒背景クローバーs
原作:魔法少女リリカルなのは
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ずっと書きたかったテーマです。
「ねぇみんな見て。この子ついに目が覚めたようだよ。」
その日、私は産声を上げた。まだぼんやりとしか瞳には映らない。けれど、なぜか私の心は安心していた。優しい声が聞こえた。
__それから5年後。
今、私は働いていた。
こんなに幼いのにおかしいだろうか。いや、おかしくない。だって私は人間の女の子じゃない。融合機。だからごく当たり前のこと。
融合機の役目はロードの補佐と戦闘支援。ロードのために生まれ、ロードのために生き、ロードのために死ぬ、そんな自己を持った存在。
私はそんな融合機として今、この時間を生きている。
私のような存在は今ではひどく珍しいようだ。
「なにこの小さいの。」
職場で毎日一回聞こえる言葉。街中では数えきれないほど聞こえる言葉の矢。それらが毎日のように私を襲う。その度にロードはやては困った顔をして、曖昧に流す。そしてその度に私を抱き寄せて、ロードはやては言う。
「大丈夫やで、リイン。あんたは私たちの家族や。」
私にはわからない。私はただの融合機。自己があるだけの、ただのデバイス。でもロードは私を気遣ってくれる。
毎日のように気遣ってくれてお世話もしてくれる。笑いかけてくれる、一緒に寝てくれる。
ついに耐えきれなくなった私は、6歳の誕生日の夜に、期待で輝かせた目でロードはやてに尋ねた。
「なんで私に優しくしてくれるのですか?」
「それはね、あんたの先代のリインが…」
なにを勘違いしていたのだろうか。
時が静かに止まった。ワクワクと鼓動していた胸は静かに沈黙した。そばにあった誕生日プレゼントの居場所が突然消えた。
どうしてロードはやては私を無償の愛で愛してくれていると思い込んでいたのだろうか。
夜。月は嫌味なほどに美しく輝いていた。ロードはやては満足げに私を抱いて寝ていた。ロードはやての暖かな体温。その日、初めてそれを辛いと感じた。その体温も、愛も、何もかもが私に向けられたものじゃない。私の知らない過去の先代に向けられたもの。
だから逃げ出した。
部屋からも、家族からも、使命からも、先代からも、そして自分からも逃げ出した。
小川のそばの土手。夜の孤独は身に沁みた。
「どうして…いや…もう。」
「ごめんね…みんな。」
小さな体は小刻みに揺れていた。夜の通行人も、野鳥も、月も、小さな私を見つけることはできなかった。それが嬉しくもあり、なぜかつらくもあった。
どれくらいの苦しい時間が過ぎ去ったのだろうか。
声が聞こえた。穴だらけの心にその声は響いた。
それは聞き慣れた声だった。私は振り向いた。夜風が頬を撫でた。
「リイン…ごめん。」
ロードはやては一人だった。土手の草木で茂った傾斜地に車椅子でそこにいて、私をただ申し訳なさそうに見つめていた。
その顔を見れば私の事情など星の屑のように空虚な悩みで、ロードはやての底知れない優しさは夜の世界を唯一照らす月のように思えた。本当にそう思えた。
私はそっと近づいた。
そしてそっと、涙する彼女を抱きしめた。小さな体で大きな体を抱きしめる、抱きしめられる。暖かな体温を感じた。この時だけは、今夜だけは、その体温は自分に向けられたものだと、そう信じた。
「はやてちゃん、もう…大丈夫です。ごめんなさいでした。」
「リインは謝らんでええ。私が全部悪いから。」
帰り道、融合した私たちは華麗に夜間飛行を楽しんだ。
翌日、目が冴えない私たちは家族の良いネタにされた。
その次の年、ロードはやては特進した。私もまた制服に新たな星をつけた。
今でもたまに思う時がある。もしも私でなく先代が今もはやてのそばにいたら。もしもあの日、ロードはやてが私を見つけられなかったら、と。
けれど、それを不安がるのは幼かった頃の私達だけだろう。今の私達にとって、そんな悩みは悩みですらない。そんな悩みは幸せの証明だ。
もしそうでなかったら、じゃない。
たくさんの奇跡が実際に起きたから今の私たちがいる。
だから、
「私達は今、最高の幸せ者です。」
きっと今度の言葉は信じても良いんだ。
最後までお読みいただき誠にありがとうございました。
私事になりますが、こちらの短編はpixivの方でも掲載させて頂いております。