使い方がわからず、1話目が投稿できてなかったみたいです
こちらが1話目です
撃たない戦争
― コーヒーとタバコの煙の中で ―
こんな話も宇宙世紀のどこかににあったかもしれない…
1 アレックス・ハーディングという男
―戦争は会議室で決まる―
『ハーディング少佐…作戦立案科実務班主任 ハーディング少佐
至急、4階第2ミーティングルームへ来てください
繰り返します
作戦立案科実務班、主任 アレックス・ハーディング少佐
至急、4階第2ミーティングルームへ来てください』
冷めたコーヒーを一口啜り、天井のスピーカーを見上げる。
またか、今度はどんなくだらない難題を押し付けてくるんだ?
仕事だから仕方ない。
はぁ~…気が重い…
空になったコーヒーカップを恨めしく見つめると、俺は席を立った。
ミーティングルームへの道のりは案外遠い…なにせ建物からして違う…
放送で建物名称を言わないのは、本部の悪い癖だと思う。
自分達は選ばれた人間だとでも思っているのだろうか?
俺は自分の部署のある建物の受付嬢のエマにミーティングルームへ向う旨を伝え建物を出た。
今頃エマがマクレラン准将にそちらに向かった事を伝えているはずだ。
重い足取りの中、エマ嬢の
「頑張ってくださいね、いってらっしゃい!」
この一言に何度背中を押してもらったかしれない。
今日の当番がエマ嬢で良かった。
俺は建物間を移動するための動く歩道に向かうと歩道の入口にマーティン・クロス中尉が立っていた。
同じ科の同僚だ。
「おやぁ〜?
あのルウムの裏の立役者で現、連邦のお荷物のハーディング少佐様じゃないですか〜
また会議呼び出しですか〜
本当ご苦労さまだねぇ〜
まぁ、会議に出席するだけで飯が食えるんだから大層良いご身分ですね~
あぁ、すみません忘れていました。
コチラは現在進行中のソロモン攻略戦の推定座標の微調整しなくてはいけないんだった、会議なんて悠長な事する暇がなくてねぇ~」
クロスは現在花形のソーラーシステム発案チームの一員、現在の主戦術開発班の下っ端だ。
「これはこれは、たくさんいる花形チームの雑用係のクロス中尉殿ではないですか!
たくさんおられるチームは違いますね!
わざわざ私の見送りに出てきていただけるだけのお時間があるとは、羨ましい!(笑)
ご苦労さまです」
俺は嫌味の1つを飛ばすと顔が赤くなるクロス先輩を尻目に早足の速度をさらに早め、横を通り過ぎた。
…
……
………
ルウム戦役。
あの戦いは完全に序盤の情報戦の敗北が原因だった。
負けるべくして負けたと言える。
数を用意したことへの安堵から楽観視していた上層部。
もっとも、戦場に数を用意する事は基本的にはおそらく正しい。
残念なことに、その数が上層部の油断を、現場指揮官の危機管理の欠如を招く。
そして、最大の敗因はジオンによる新兵器のモビルスーツの情報の少なさと過小評価だった。
そんな中、自分のした事と言えば、兵站の徴収と整理だ。
将兵を動かせば全員が飯を食うし、移動すればエネルギーも減る。
そして、一番やってはいけないのは、助かったかもしれない命を見殺しにする事だ。
アチラコチラの備蓄施設からかき集めた補給物資を現場で整理しながら遅滞無く補給を行う…
『言うはやすし、行うは難し』
当時の俺の部下はさながらココが最前線かと思うような忙しさに忙殺されていた。
そして、一番大切な部分…
『救える命は全部救う』
『各個別の医療艦』ではなく、組織として医療行為が行えるように整えた。
更に退役艦と物資輸送後の空になった輸送艦に簡易ベッドを作り病院船とした。
俺の本当の想定では、負傷したジオン兵も治療し、捕虜としての外交カードとして使って行く道筋迄を考えていたのだが、結果として連邦軍の惨敗…
ほとんどの病院船は連邦軍の敗残兵で埋まることとなった。
後日、上層部から
『よくやった、あの病院船が無かったら死者は更に3割増えていただろう』
と称賛された……
ものの…直属の上司たるマクラレンからは…
『上は被害縮小に喜んでいたが、この金は誰が用意するんだ?』
とかなりネチネチ言われたものである。
…
……
長い廊下を曲がると薄暗い通路がある。
ここの照明は戦時下のエネルギー統制によって消されてしまっている。
いや節約も大切だけど、もっと他にある事だろ…って思うけどね。
さて…この部屋に自分の上官がいるのはわかるけど他にはどんな面々が暇つぶしに来ているのやら…
第2ミーティングルーム…
部屋の前にはマクラレンのいつもの補佐官がおり、無言で扉を開けてくれた。
本当に、コイツは愛想がない…
部屋の中にはモニターが多数置かれ3人の上官?とモニター越しにエリートらしき人が映っている。
他に3つモニターが通信したままで背景が映っているので本チャンの会議自体は終わり、現在は分科会の様相になっているのだろう。
画面のなかの人…階級章的には少将の様だが、正直、顔も名前も知らないし、実は覚える気もない。
マクラレン准将が俺のことを簡単に紹介する…
声には出さなかったが少将は一瞬、珍獣でも見るような目で画面越しに俺を見てきた。
そうとも、連邦の歴史に残るかもしれないあの作戦は失敗した。
……
訃報
ガルマ・ザビ戦死
………まさかの事態だった。
だってあのザビ家の御曹司だぜ?
戦闘狂と名高いドズル・ザビならまだしも、まさかあのガルマ坊やが最前線に出てきて戦死するなんて考えるわけ無いじゃないか……
自分の無能さを痛いほど痛感させられた事態だった。
あの日、俺はうちの優秀な事務員すら近寄れないほど静かに荒れていたらしい。
俺はマクレランの隣の席に案内され着座するとモニターと通信のスイッチを入れ身分証明をスキャンした。
暫くのタイム・ラグのあと正面のモニターに自分の顔と階級章が表示されており、他の人の顔も名前もそこに表示されている…
少将はリチャード・アシュクロフトと言うらしい…
見た感じ、なかなかいい感じのタヌキだ。
…
……
『さて…
以上が先ほどあった会議の内容で、まぁ現在の我軍の状況を簡単に整理したものだ。
何かここまでで、ハーディング少佐に意見はあるかね?』
…ここまでの説明……
…要は戦争のせいで民間の人材が不足…生産に必要な人材やインフラ整備が追いつかず。
長期化すると経済的にも物資的にも連邦軍は破綻…崩壊する。
……本当に何を今さらって内容だ。
「そうですね、開戦直後から懸念されていた内容だと思います」
俺は極めて冷静に、呆れてる感を出さないよう注意して言葉と態度を選んでいた。