撃たない戦争   作:川口のミネ

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10 それぞれの責任

10 それぞれの責任

 

 俺は詳細はまだ決まってない旨を素直にクロスに話し、詳細は後程バークとカーターから連絡を入れる事を伝えた。

 クロスからは少し呆れられたが、俺はこのあと、どうしても通しておかなければいけない事案がある…

 何かあった際の責任の所在を確認することだ。

 仮にもクロスや協力してくれる船乗り達に被害が及ぶようなことがあってはならない。

 俺は改めて決意を固めると、事務所へ戻った。

「マーサ…少将は?」

「ミーティングルームの1番へ終わり次第来るようにとの事です」

「…秘匿回線ではなくて?」

「はい…おそらくマクレラン准将も呼ばれてお待ちかと思われますが詳しくは…」

「そうか…マーサ。

 ぬるめのコーヒーを半分頼む」

「……待たせてよろしいのですか?」

「なに…ひと口ぐらいコーヒーを飲んだところでバチは当たらんだろうさ…」

 マーサが変な顔になったが下がって行った。

 視界にはバークが寝ている。

 まだ寝ててくれたのはありがたい。

 が、3時間は過ぎているので遠慮はしない。

「バーク、起きろ!

 今回の作戦概要を3分で語れ」

 俺は聞きながら作戦に綻びがないか考え直す。

 いや…実際綻びだらけで、クロスの指揮能力に頼る事、極めて大だ。

 事前に準備出来ていないものをクロスに押し付ける形になってしまい申し訳ない。

 俺はマーサが入れてくれたコーヒーをひと口飲む…

 大きく息を吸込み立ち上がると、バークもマーサも立ちあがった。

「行ってくる」

 それだけ伝え事務所を後にした。

 ……

 ………

 受付のエマの会釈を片手で返し、ミーティングルームへ早足で向かう…

 部屋の前にはマクレラン准将が直々にお出迎えだ。

「お待ちだ……

 ハーディング…良い話なのだろうな…」

 マクレラン准将の顔が強張っている。

「どうでしょう…

 取り方によりますかね…

 概要をここでお話しますか?」

 俺は目を合わせると、マクレラン准将は小さく首を振った…

「いや、待たせてる…

 ここで聞いても、なかで聞いても大して変わらんさ」

 マクレラン准将がセキュリティカードをかざす。

 ミーティングルーム1

 将官以上しか立ち入りを許されていないミーティングルーム…

 俺は初めて足を踏み入れた。

 足が沈む……毛足の長い絨毯が敷き詰められている。

 こんなところがあるとは知らなかった。

 広い部屋は間接照明が照度を下げて薄暗く壁を照らしている。

 アシュクロフト少将はマイクを切ってあるのか、モニターには映っているが書類仕事をしているようだ。

 マクレラン准将が着席すると隣の席を指さされた。

「アシュクロフト少将。

 ハーディング少佐を連れてきました」

 画面のなかのアシュクロフトは一瞥も無い……

 聞こえてないのだろうか、事務仕事を続けている……

 ………

 1分は待っただろうか…

 マクレランが再度呼びかける。「アシュクロフト少将…」

 モニターの手が上がり『待て』を示した。

 聞こえてはいるらしい…

 更に1分は経っただろうか…

 口の中に渇きを感じる…

 アシュクロフトはコチラを向き音声が繋がる。

『スマンな…

 人払いをするからもう少し待て…』

 画面から少将が消えると遠くで声が聞こえてきた、

『緊急性のあるもの以外は立ち入りを禁止する…下がっておれ』

 画面に現れたアシュクロフト少将は怒るでもなくにこやかでもなく…ただ淡々と1言尋ねてきた。

『で?』

 うっかり悲鳴をあげそうになるほどの重圧…

 まずは現状の報告……

 いや、先ずは結論からだ…

 俺は改めて顔を上げモニター越しではあるが目を見て発言した。

「アシュクロフト少将…

 事後承諾になります。

 星1号作戦における補給計画ですが、勝手ながら既に行動を開始いたしました。

 不足を完全解消は不可能と思われますが、ある程度はこのオペレーションで改善すると考えています」

 長い沈黙……

 とにかく、俺には長く感じた。

『事後承諾か、いいだろう…聞こう』

「先ずは現状の把握から説明致します……」

 俺はさっきバークと話した内容に俺のフィルターが入らない用注意しながらできるだけ淡々と事実を羅列していった。

 画面の少将は手を組んだまま微動だにしない。

 隣のマクレランの方が動揺している。

「次に、現在私の独断で実行中のオペレーションについて説明します」

 …

「…つまり、元々のルートが大周りだったと?」

 ずっと無言だったマクレランが口を挟んできた。

「はい、試算では2/3程度に短縮できるかと」

「確かに良い発見ではあるが…

 しかし…焼石に水だな」

『……以上か?』

「いえ、あと2点…

 もう少しお聞き下さい、可能であれば質問は最後にしていただくと疑問も少ないかと…」

 俺は推測ではあるものの集積地の物資量の大幅修正を話し終わる。

「最後になりますが……

 私の独断でソーラーシステムパネルの輸送船を現在補給艦として準備中です。

 輸送船団は現状の補給船団とほぼ同数…

 輸送力が跳ね上がります。

 しかし、試算ではここまでやっても足りません……

 現状、私のチームで考える最善手と考えます」

 ……重い沈黙が流れた。

「そこまでやっても足りない?」

「はい、瞬時最大には遠く及びません。

 後は現地の采配次第で不満は大きく変わるでしょう」

 ……

『指揮は誰が執っている?』

「クロス…マーティン・クロス中尉であります」

『知っているか?』

 マクレランの顔がコチラを見た。

「はっ!

 ソーラーシステムの現地責任者でハーディングの同期であります」

「ハーディング…そいつは使えるのか?」

「はい、実務処理能力は私以上かと…

 部隊を率いる現場指揮まで含めれば、私では代わりは務まりません」

『そうか…』

「アシュクロフト少将…

 今回の独断は私の勝手な判断です。

 問題が起きた場合、全責任は私個人にあります」

『足りんな…』

 ……足りない

「では、何かあれば私の進退も…」

 マクレランが口にする。

『バカモン!!』

 静かに話していたアシュクロフト少将の怒声が響く…

 場の空気が震え、そして一瞬で凍りついた。

 静かな重い空気が場を支配してゆく。

『貴様らが責任をとってやめたところで軍は損失しか出さん!

 責任は私が負う…

 私の見る目が正しかったと証明しろ』

 

 

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