11 新兵器
俺はカーターからの報告を受けた。
「何とか回っています…
正直、コチラの予想をかなり上回る補給速度のようです」
「しかし、この数字…凄いな……」
カーターが新たな資料を出そうとしている…
バークが戻ってきた。
「少佐!
アイツ凄いっすね!
うちに引き抜きましょう!」
入ってくるなりうるさく俺の隣に座りマーサにコーヒーを求めた。
「アイツ見事に『問題の先送り』しやがりました」
「問題の先送り?」
普通、評価される時に使われる言葉ではない。
「はい、今回の1番の問題は補給物資と補給を欲しがる艦隊との距離です。
アイツ、補給物資の拠点ごと牽引しながら補給船団送り出しまで同時にヤッてるんっす。
初動は遅れますが、最終的にはヤバイっすよ」
俺は目を見張った。
集積地の場所を変える?
コレはかなり無茶をしていると言える。
液体燃料の入っているタンクの束…
コレだけでも鳥肌が立つ…
牽引作業は相当神経をすり減らしている事だろう。
限られた物のなかでコチラの予想を遥かに上回る結果を出してくる辺り、流石クロスだ。
「ねぇ~少佐!
あんなやつあそこの部署には勿体ないですって、ウチに…俺に下さいよ〜」
あんな部署…あそこ花形部署だぞ(笑)
「バーク…よく考えろ。
あのクロスだぞ?
直ぐにお前が使われる様になって休みは無くなるな」
バークの顔が少し曇り…
「ソレはダメだぁ〜」
綺麗に机に突っ伏した(笑)
バークは休むのも大事!
改めて心に書き留めておこう。
新しいコーヒーが置かれる。
インスタントコーヒーとはいえ本当に芳しい…
久しぶりにゆっくりと味わうコーヒーは心地よかった。
……
………
クロスから補給船団の件で、細かな調整依頼が次々と届く。
積荷の順番から係留位置、出港時刻に至るまで、確認事項は尽きない。
が、この手の調整は慣れたものだ。
バークがコーヒーをこぼしてマーサに怒られてる。
騒がしく忙しくも平和な日常が流れている…
しかし、そんな些細な日常は激しく開けられたドアと共に打ち破られた。
「少佐…なんかヤバイかも…」
普段あまり取り乱さないカーターが慌てている。
「少し落ち着け!
お前はバークか!?
マーサ、カーターに水を頼む」
いや、落ち着かなくてはいけないのは俺自身だ。
カーターが焦っている?
俺は焦っていた。
コーヒーを飲もうとして口元に近づける。
空なのに気が付くとマーサが俺のカップを受け取ってくれた。
「まだ、詳細は不明です。
誤報の可能性も無くはないです……」
普段から簡潔に物事を伝えるカーターらしくない…
話が全然見えない。
「カーター、深呼吸しろ!
第一報はだいたい不確かなことが多い。
知って無視を選択するのと、知らずに過ごすのでは意味が違う!
今、持っているものを開示しろ!」
「先ず…主力艦隊との通信は断絶しています。
付近の宙域にいた艦隊からの報告では…
『スクリーンを覆い尽くすほどのバカげた光量…光の壁が見えた』との連絡が入ったそうです。
そして内容が内容だけに現在情報統制が引かれ、噂では連邦軍主力艦隊が壊滅したのではないか?との噂まで聞こえてきます。」
……信じられない内容に部屋の空気が固まったようだ、首1つ動かすのにギシギシ音がなるのではないだろうか…
今すべきことを考えろ!
考えろハーディング…
誤報なら誤報でいいのだ…
今の最善を探せ!
考えるには…情報が圧倒的に足りない…
「…マーサ!」
「準備します。
バーク一緒に行きますよ」
マーサが俺にコーヒーを渡してきた。
「えぇ~、でもそうだよなぁ〜」
バークがマーサと共に部屋を出ていく…
「カーター
何でもいい、不確定でも噂でもいい、とにかく情報が欲しい…
ガルマ作戦の時に使った非公式ルートを使用しても構わん」
「分かりました、2時間後に1度戻ります」
俺はコーヒーを手に持ち口に運んだ。
あっっっち…
コーヒーは火傷するほど熱かった。
まただ、あの時と同じ少しピリついた空気……
マーサの動きが少し速くなったように感じた。