12 焦燥
コーヒーが冷めるまでの間、俺は座ったまま1人で思考を整理する。
今ある情報は少ない…
仮に情報統制されていたとして、カーターが嗅ぎ回ってくれているが…どこまで分かる?
ジオンの攻撃なのか不幸な事故なのか?
まさか連邦のジオンに対する情報戦?いや…コレはないか…
今できること…本当にないのか?
あっっ!
アシュクロフト少将に聞くか?
ん?何を?
本当に壊滅的なダメージを受けているなら相当忙しい…
『知りたいんですけど、本当ですか?』
……俺はバカか?
誤報ならば…下らない誤報で仕事の邪魔をするのか?
……俺はアホか?
待てよ…仮に本当だとすれば少将も情報が欲しいはず…ならば、今はあえて多方面から別々に動き、後で情報を摺り合わせた方が確度が高い…
俺はタバコを咥えて火を付けた。
冷静になれオレ。
コトリ…灰皿が置かれた。
「少佐…ココは禁煙です」
マーサがいつの間にか横に立っていた。
1度深くタバコを呑む…
「禁煙ならなぜ灰皿が出てくる…」
「せめてもの心遣いです。
第4会議室…いつでも行けます。
エマもいたので、人払いもお願いしてあります」
俺はもう一口タバコを深く呑むと、まだ長いタバコを灰皿へ苦々しく押し付けた。
「はじめよう…行くぞ」
……
………
廊下は短い距離なのに近づくほどに足が重くなる様に感じた。
宙で何が起きているのか…
さっぱり判らないまま会議室のドアを開けた。
カーターはまだ戻ってきていない。
現状分かっていることは少ない。
バークとブレインストーミングを行う事とした。
分かっていることから想像力を働かせて行く…
ここで大事なことは質より量!
くだらない発想から真実にたどり着いたことも1度や2度ではない。
「一番可能性があるのは事故じゃないっすか?」
……俺は何も言わず続きを促す。
「光の壁ができる程の大爆発…
例えば輸送中の液体燃料タンクに引火とかっす」
「考えたくないが、補給船団が現地にいた可能性はあるか…」
もしも、そんな事になってたら……
いや、今はそこまで考える必要はない。
「ジオンの新兵器…
ソーラーシステムのジオン版……でもあれは焦点合わせるのが難しいらしいから移動する艦隊にはどうだろう…」
「可能性はゼロではないんじゃないですか?
艦隊集合場所を予想し、そこに焦点合わせとけば……でも、それならソロモンの時に助けてますかね?」
俺も言ってて現実味がないと自分で自分の案を却下する。
「少佐…連邦軍の情報操作の可能性はないっすかね…」
「誤報を掴ませて裏を突くってアレだろ?
どうだろう…今の連邦軍に兵力を隠す理由が思い浮かばないんだよな」
「彗星が突……」
突然ドアが開いた。
入ってきたのは青い顔をしたカーターだ。
「少佐、報告は3点あります…
最後まで聞くまでは大人しくしててください…」
カーターはいつもより静かに話し出した。
「先ず、我々の仲間…
クロス中尉以下、補給船団は全て無事です。
クロス中尉に直接、通信で確認することができましたので間違いありません」
俺は…いや、俺よりもあからさまにバークがホッとした顔を見せた。
……しかし、次の言葉がカーターから出てこない。
「どうしたカーター…
続けろ…」
言い難くしてるときほど背中を押してやる必要がある。
「はい…どうやら、連邦軍主力艦隊が壊滅したのは事実のようです……
こちらは複数のルートで裏を取ってます。
全滅では無いようですが、それに近い状況のようで、本部もかなり混乱してます」
俺達裏方組は、ともすれば被害を数字だけで見がちだ……
しかし、その数字には一人ひとりの人生がかかっている。
裏方組はその事を絶対に忘れてはならない……
「そして、デギン・ザビが亡くなったもようです……」
「何だと?
どういう事だ?………」
俺の思考が加速していくのを感じる。
まさか…ジオンの最高権力者だぞ?
「……当該宙域で、アシュクロフト少将の名前で極秘作戦が展開されていたとの情報もあり、ジオンとの和平交渉だった可能性が高いです」
「少将がデギン・ザビとの和平交渉だと?」
まさか、少将も?
失念していた…
少将は和平交渉の道を探っていたではないか……
マズイ、マズイ、マズイ、マズイ……
「『籠る』は継続、引続き情報収集に努めろ、私は少将と連絡を試みる」
俺は会議室を飛び出した。
「少佐!」
カーターが何かを叫んでいたが、耳には入らなかった。
今、確認しなければならない事は一つだけだ。