撃たない戦争   作:川口のミネ

13 / 17
13 運命

13 運命

 

「エマ、急ぎだ!

 回線は何でもいいアシュクロフト少将へ繋ぎたい、通信室と回線は空いてるか?

 …緊急だ!」

 臨時回線は受付が一元管理している。

 普段使っている秘匿回線やミーティングルームも同様だ。

 エマ嬢は俺の剣幕に目を丸くしながら黙ってしまった。

「しょ~さ〜…少佐!

 エマさんが困ってますって。

 今、情報統制のせいで、秘匿回線はおろか一般回線ですら規制されています」

 カーターが追いかけてきた。

 エマは残念そうに頷く…

 俺は拳をテーブルに叩きつけそうになり、エマ嬢の怯えた顔をみて手を止めた。

「……くっどうにかして少将との連絡を取りたい……方法は……

 何か無いのか!」

 俺は苛立ちが隠せず声が大きくなってしまった。

「少佐、可能性はありますよ。

 補給に使ってる固定回線は、まだ規制の対象に入っていません!」

「補給用固定回線?」

「クロスさんの所を経由すればおそらく…」

「早く言え!

 直ぐに向かうぞ!

って事でエマさん通信室の空きありますか?」

 黙ってエマ嬢がカードキーを俺に手渡してくれた。

 ……

 ………

 モニターにクロスが映った。

『おぉ、これはこれは…

 この上司にしてこの部下ありの師弟ではないですか?』

 いきなり、嫌味モード全開?どうした?

「クロス、何か言いたいのなら直接言え…今は時間が惜しい」

 画面のなかのクロスが固まる…

『本当、お前らムカつくな…

 何か?お前のとこの部下だろ、そこのカーターってのは』

「カーター…何があった?」

 カーターは首をかしげた。

『分かってねーのかよ!

 通信だって呼び出されて来てみたら、てめぇの聞きたいことだけ聞きやがって!

 一方的に通信切りやがったんだぞ?分かってるのか?』

 クロスが起こっているのはもっともだ…

 しかし、カーターとしては本当に時間が無かった…俺のせいでもある。

「すまん…俺が急がせた」

「まったく、カーター…バーク…

 優秀なのはわかるけど、そこまで似せるな!

 常識をちゃんと教えとけ!

 まぁ、この件は終わりだ…

 悪いが、もう一つクレームだ!

 手短に話すからちゃんと聞け!」

 時間が惜しい。

 大人しくしているしかない。

 黙っている事を肯定と捉えたのか話し始めた。

『アシュクロフト少将って知ってるな…』

「あぁ、まさにそのこと…」

『先ずは聞け!!』

 クロスが手を上げて俺を制した。

『俺の所に連絡があってな、ソロモンの立て直しを行う。

 お前の力を借りたい手伝え…

 だとよ…

 何で俺のことを知ってるのかって聞いたら『ハーディングを引き抜こうとしたら、俺よりも優秀だって、お前を勧められた』

 だと……

 迷惑だ!

 まだ補給が8割しかできてないんだぞ?

 わかるか?』

「8割終わってるのか?

 凄いな……

 いや、少将…ソロモンに居るのか?」

『あぁ、別室にいるぞ…

 呼ぶか?』

「頼む」

 モニターからクロスが消えると無言のままカーターと視線を合わせた。

 程なくして、クロスが現れ…アシュクロフト少将も姿を見せた。

「……ご無事で……

 …ご無事で何よりです」

 少将の顔が少し歪んだ。

『将軍からな、ソロモンを早急に使えるようにしてくれと頼まれてな……』

 初めて見る苦悶の表情だ…

「では…レビル将軍は…」

『うむ…デギンを道連れに鬼籍に入られた…』

 返す言葉に詰まる。

 将軍は長年の盟友だったのだろう。

「……そうですか…」  

 俺は言葉を絞り出した。

『しかし、良く通信が繋がったの…情報統制をしているはずだが…』

 隣を見ると、カーターの表情が少し硬い。

 人を食ったように飄々としているカーターですら、少将の前では緊張するらしい。

「補給用通信回線は、まだ使えますです。」

『そうなのか、人のやることだ、完全には程遠いな……』

 少将が寂しげに見える。

「少将、込み入ったことをお聞きして大丈夫でしょうか…?」

『うむ…

 ジオンも今頃は盗聴どころではないだろう…

 許可する』 

「ありがとうございます。

 少将の進めておられた『和平交渉』これは……」

 暗く疲れた顔…一瞬の間があった。

『…そう…失敗じゃな……』

 言葉が出ない。

 和平工作…

 このタイミング…

 成功する確度は決して低くなかったはずだ……

 全てはあの光が呑み込んでしまったと言うのか……

『ハーディング君』

 顔を伏せたまま…それでも静かに続ける。

『デギン亡きジオン、戦局はどうなると考える?』

 アシュクロフト少将…

 その目は死んではいなかった。

「……どうでしょうか…」

 俺は言葉を選びながら思考を整理する。

「……ギレン・ザビ……

 偉大な父と言う『抑え』が外れた今……」

 ……

 考えがまとまらない…

「戦局は…泥沼?

 和平への道筋が想像できません…」

 俺は素直に言葉にした。

『じゃな、私も同意見だ』

 少将が決意に満ちた顔に変わった。

『ハーディング少佐。

 サイド3での決戦を見据えた作戦行動立案を命じる』

 俺は顔を上げ背筋を伸ばした。

『ただし…現在の連邦軍にはもう人材、物資……余裕など一切ない…

 可及的速やかにサイド3を占拠、占拠後ザビ家の私財を抑えることを念頭に立案せよ』 

 ……その命令の意味を理解した瞬間…

 鼓動が1瞬止まった。

 体は鉛のように重くなった。

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。