撃たない戦争   作:川口のミネ

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14 コーヒーカップ

14 コーヒーカップ

 

 少将が退室したものの通信自体は繋がったままだった。

『お前、いつもあんな感じで命令来るの?』

 クロスの心配そうな顔が大きく映し出された。

「そうなんっすよ。

 コレで今日も徹夜は確定ですね…」

 カーターが軽く肩をあげた。

『お前らムカつくな、俺も大概だと思ってたけど、俺以上って何なんだよ…』

「なんか色々とスマン」

 俺は頭を軽く下げた。

『まぁコッチは気にするな…

 優秀な俺が居るんだ、補給もソロモンの立て直しもなんとかするさ…』

 通信を切ると、俺達は第4会議室へと足を向けた。

 ……

 ………

 会議室の扉は閉まっている…

 中にはバークしかいなかった。

「あぁっっ

 やっと戻ってきた。

 マーサなら買い物です。

 きっと長くなるからって食料買いに行きました」

 …マーサがいない…

 マーサの入れたコーヒーが無性に飲みたい。 

 ホワイトボードには、数枚の紙

・『主力艦隊壊滅?』

・『光の壁?(爆発光?)』

・『デギン・ザビ死亡確定?』

 真中のテーブルには、紙コップとポットが置いてある。

 ……

「艦隊消滅の光のことはもう考えなくていい…」

 俺はカーターにホワイトボードの紙を剥がさせた。

 何も書かれていないホワイトボードに大きく書き出した。

『サイド3無血占領(低予算)』

「次の主題だ…

 先ずはサイド3の図面を入手!

 その後、常駐戦力の分析!

 可能な限り正確に調べろ!」

 俺はカーターとバークに告げるともう一度、繰り返す。

「なりふり構うな、ジオンに気取られようが構わん!

 持てる全てのカードを使うのは今だ…

 全力で事に当たれ!ズムシティを丸裸にしろ!」

 カーターは自分の席に座りモニターを見つめ…

「…ちょっと出てきます」

 バークは席を立つと部屋を後にした。

 俺はホワイトボードを見直す。

 ギレン・ザビ…

 実の父を手に掛けた可能性すらある……

 ギレン・ザビがサイド3外に出ている状態で落とす…

 それが1番血が流れない…

 紙コップにコーヒーを半分ほど注ぐ、芳ばしい薫りも楽しむ余裕はない…

 とはいえ、俺達が動く以上マクレランには筋を通しておかなくてはいけないだろう。

 俺は注いだコーヒーを二口で飲み干す。

「准将の所に行ってくる」

 カーターを残し俺はマクレラン准将の下に向かった。

 カーターは光るモニターを見つめていた。

 ……

 ………

 マクレラン准将は、混乱の渦中にある中、必死に情報を求めていた。

 数人に指示を飛ばしている…

 普段あまり見ない光景だ。

 俺は手帳を取出し知っていることを箇条書きで書き出す。

 そして、もう一枚……

『アシュクロフト少将の特命により、独自に動きます』

 忙しそうな准将に目を合わせ、メモを手渡す…軽く目を通す。

「ハーディング…

 何をするか知らんが責任はコチラで構わん。

 ただし、不定期で構わないが情報を掴んだら回せ!」

 准将も状況を判断するための材料が足りないようだった。

 ……

 ………

 会議室に戻るとホワイトボードには図面が何枚か貼られていた。

「コレは?」

「ズムシティの設計図です。

 施工図が欲しかったんですけど…見つからないんですよね〜」

「赤丸は何だ?」

「設計当時の配備計画とおもわれる軍の駐留拠点の類です…

 が、当てになるかは疑問ですね」

 准将のところに行った少しの時間でここまで揃えるとは、流石カーターだ。

「マーサ、コーヒー頼む…」

 間髪入れず、俺の前に紙コップに入った温かいコーヒーと灰皿…そして紙皿に盛られた一口サイズのサンドイッチが置かれた。

 俺の正面にマーサが立つ。

「少佐…少し食べてからにして下さい。

 体持ちませんよ」

 俺が部屋に入った瞬間から用意していたのだろう。

 驚くべき提供スピードだ。

 俺は抵抗するのを諦め、頷くとサンドイッチをコーヒーで流し込んだ。

 ホワイトボードの正面でカーターと話す。

 設計図から目が離せない…

「もう少し、探って見ますが施工図や具体的な駐軍箇所は今のところ不明ですね…」

 カーターがモニターから顔をあげた。

「充分だ、何も資料が無くては話も進まん…

 マーサ、コレ大きくして一枚に出来ないか?」

「貼り付けるだけなら」

「あっ少佐、図面の尺度違いますけど…」

「だからマーサに頼んだ。

 ただ貼るだけなら頼まん、自分でする」

 カーターの顔がマーサを見て…そしてモニターに沈んだ。

「確かにマーサさんならなんとかしそうですね」

 ……

 ………

 真中にあるテーブルの俺達の補給物資は部屋の隅に追いやられ、現在マーサが作った地図が置かれている。

 そして、どこから持ってきたのかさまざまなサイズの缶や紙箱が置かれ、

『軍施設』

『議事堂』

『駐屯地』等、次々に貼られていく…

 俺が指示したのは『地図を作って欲しい』ってだけだったけど、コレでずいぶんと考えやすくなった。

 俺の脳内に砂盤が積み上がっていく。

 カーターが地図に線を書いて行く…

「少佐、駐屯地一つ一つは小さく、連携もままなりませんね。

 こっちにはモビルスーツや大型戦車等は無さそうですよ」

 個別の図面では分かりにくかったが、全体として見てみると、街の端々に見かける駐留拠点は、軍の駐屯地というよりは、治安維持程度が目的のようだ。

 カーターが言うように規模が小さい、

 ズムシティで抑えなくてはいけない場所…

 議事堂?いや、ザビ家の軍事独裁政権…軍施設を優先すべきか、

 軍施設の周りを見ると巨大な壁?

 線で囲まれている…

 更に壁の外は堀?川が囲むように流れている。

 サイド3…ココが攻められる時点で敗北なのに……

 ここだけ要塞のようだ…

 どうやって攻めろと?

 要塞……いや、殲滅なんて柄でもないことを考えるな、無力化すれば良いだけだ…

 そんな事を考えていたところで、扉が開いた。

 バークだ。

「少佐!ズムシティ内部は威圧的な建物が多いそうですが、警備自体はザルらしいですよ…」

「どこの情報だ?」

「ジャブローの時にとらえていたジオン兵共です」

 ……なるほど、近くに情報源があったのか…気が付かなかった。

「どんな手を使ってもいいって言われたんでね…」

「拷問でもしたのか?」

「いえ、鼻薬をちょいと…

 時間は掛かりましたが安酒でホイホイ話してくれました」

「あと、ズムシティのなかの連中…やはり事務方が多くて戦闘向きではないそうです…

 威圧すれば直ぐに折れるか逃げるかするんじゃないかって言ってましたよ」

「…どこまで信用できる?」

「そうですね…

 でも、ある程度は信用できるかと…

 確かに此方に不利になるような発言して混乱させる事もアリとは思います。

 が、奴等も『ジオンはおしまいだ』って思ってるみたいで俺達の役に立って終戦後の保身を図ろうとしてるみたいに見えましたね」

「そうか、話半分だとしてもその空気感はありがたい」

 俺はコーヒーを取りに壁際に向かうと、マーサがカップを手渡してくれた。

 

 

 

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