2 ミーティングルームの攻防
『そう邪険にするでない。
少なくともココにいる我々はハーディング少佐の事を高く評価している』
解像度の高すぎるモニターは考えものだ…
努めて表情に出さないようにしていたのに、内心の今さら感が表に出てしまっていたらしい。
画面のなかでアシュクロフト少将がパネルを操作していた。
程なく目の前のモニターの共通画面の部分が急に大きくなった…
『ちょっとコレを見て欲しい…
ある男が作り、非常に残念ながら失敗に終わった作戦案の一部だ…』
映し出されたのは、見覚えのある文書…
見覚えあるはずだ…数ヶ月前に練りに練った『ガルマ・ザビ懐柔計画』の一部抜粋だ……
俺の作った作戦立案書ではないか…
「これこそ『何を今さら…』だと思われますが?」
この程度の嫌味は画面のなかのアシュクロフト少将の顔色は変わらないらしい。
『この作戦案にはこういう1文がある。
『このまま、戦火が広がれば先には共倒れの未来しかなく、現在のルウムの大敗後の状況では、停戦や休戦、終戦への交渉は困難と思われます。
仮に、交渉に挑めたとしても連邦には厳しい内容になるでしょう、しかしながら不利益があったとしても戦闘を……』
また、別のところにはこうも書いてある。
『軍は、国や政府の為にあるのでは無く、どんな時も民衆を守る為に有るべきである』と……
何か言いたいことはあるかね?』
モニター越しに少将が冷たい目で俺を見ている。
「そこに書いてあるとおりだと思いますが?
何か間違ってますか?」
俺は多少イライラを言葉に乗せながら発言した。
「ハーディング少佐…」
マクレラン准将から少し諌められた。
が、向こうから喧嘩を売るのであればコチラは、せめて高値で買い取らせてもらうつもりだ。
いっそこのような場所に呼ばれなくなれば、ソレはそれで幸いなのだ。
『勘違いしないでくれ、ハーディング少佐。
私だって理想を追い求めたい気はあったのだから。
だが、軍とは所詮、暴力機関であるしそれぞれの思惑だけで動いておれば、ソレこそ収集がつかなくなる。
軍においては、上官に従う事が秩序なのも理解してくれ。
それにの、殴られたら殴り返さねばいつまでも殴られ続けられる…
これも事実だ』
「はぁ…
数ヶ月も前の私の文書をお持ちいただきありがとうございます。
一応、お答えしておきますと、そちらの作戦案は、既に可決の裁可がおりております。
ご質問等あれば私ではなく、決裁された方にして頂いたほうが宜しいかと…」
「ハーディング少佐!
口が過ぎるぞ!」
イライラして態度に出てしまうのは悪い癖だ。
マクレラン准将の顔がますます赤くなっている。
まぁ知ったことではない!
ただし、態度に出ると余計な仕事が増えたり更に時間が取られたりする事も事実だ。
しかし、少将は顔色1つ変えず続ける。
『まぁ、私はそんな君も嫌いではないよ。
そこでだ、そんな真っ直ぐな君に意見を聞きたい。
ソロモン攻略後、ジオン公国はどう動く?
ソロモンが陥落した場合に、ジオン公国に休戦、停戦、終戦の協定会議の提案をした場合、話に乗ってくると思うかね?』
!?
俺は話の急展開に思わず声を失ってしまった。
「………
…即答は…しかねます…
ソロモンの墜ち方にも大きく左右されるでしょう。
現段階では判断は難しいですが、可能性はあると思います。」
『そうか、ではその後のことの検討を頼む、まとまり次第提出せよ』
話は終わったとばかり席を立とうとする少将を引き留めた。
「アシュクロフト少将。
1つお聴きしてもよろしいですか?」
『むろん、かまわん』
「ソロモン攻略戦ですが、ソーラーシステムのみではダメなのですか?
艦隊は安全圏から逃げだす艦艇の追撃のみにするとかは?」
アシュクロフト少将が少し困った顔をして片手を上げ手を開いた。
『50だ』
「50?」
『そう…
予算5割増…
想定破損率50%……
ソロモン攻撃成功確率50%………
話にならん…』
「なっっ!
どうしてそんな事になってるんですか?」
『作戦立案自体はよいのかも知れんが、運用ができん。
ルウム戦役の時の貴様の様に現地で指揮を取る様な者は稀だ。
パネルは運搬や設置時にちょっとしたことで破損する…
破損パネルは補修がほぼきかん…
そして1枚1枚の角度がズレればただソロモンを明るく照らすだけになりかねん…
運用試験ではソロモンの半分の距離にある小惑星で実験し、焦点が合うのに実に3日掛かった。
実戦でそんな物は当てにできん』
クロスの奴…
本当に忙しいんじゃねーか…
「もう一つよろしいですか?」
『なんだ?』
「その…予算はどれくらいつくのでしょう?」
『……その件はそこにいる男と相談するがよかろう』
マクラレンがこちらを見ている…目が険しい。
まぁ、どう考えても予算は無いわな…
『マクラレン准将。
どうだろう、やはり彼を私の幕閣に引き抜けんかね』
「無理ですね。
だいたい彼は前線ではなく後方で情報が集まるところでこそ、その能力が生かせるんです。
つまり、私の下以外では彼は輝けません!
それに彼の上は心労が絶えないからお勧めしません」
『そんなに扱いにくいかね』
「はい、何かあれば正論で論陣を張って殴ってきますので…」
……
「……あの……
光栄ですが、そういった会話は是非退室後にしていただけると……なんか少し痒いですから」
俺は早足でミーティングルームから逃げ出した。
顔は、間違いなくにやけてしまっていただろう。
本部建物の外では外部照明の明かりが1段落されている。
ジャブローに完全な夜はない。
ただ、時間の経過を知らしめるために数段階に明かりが調整されるのだ。
外では夕方なのだろう。
俺は来た道を来た時よりも軽い足取りで、でも、重たい課題を背負い自分達の事務所のある建物に戻った。
既にエマ嬢は帰った後のようだ。
代わりに今の時間帯はサラが座っていた。
俺の顔を見ると立ち上がり挨拶とともに伝言があるとのことだった。
「エマからの伝言です。
「なんか言うなら予算つけろって言ってやれ」
との事です」
サラは、静かに言うと微かに笑って表情を戻した。
「ありがとう」
俺はエマへともサラへとも取れる返事をして自分のチームの事務室へと足を向けた。
まだ使い方がよくわかりません
評価とかのシステムがあるのならぜひ評価してほしいです
よろしくお願いいたします