撃たない戦争   作:川口のミネ

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7 ソロモン攻略戦

7 ソロモン攻略戦

 準備期間はあまりに短かった。

 作戦参加後発組の俺達に協力的な所はなく、補給物資の詳細を把握するなんて簡単な事まで滞っている。

 バークがかなり焦っている。

「少佐、ヤバイですって…あの時に調べた物資、ソロモン攻略戦用だって思ってたら、その後も行くんすか……

 上、ちょっとおかしくなっちゃいました?」

 言いたいことはわかる。

 俺も正直正気の沙汰とは思えないぐらいだ。

 しかも、俺達の試算…いや、バークの試算ではソロモン攻略戦ですらおそらく物資がまわらなくなるのだ。

 いや、戦うだけなら量は足りるかもしれない…しかし、戦う船に対して補給する船の量が圧倒的に少ないのだ。

 そして、大規模戦闘は多くの船が一気にエネルギーを消費する…

 補給艦は1度補給すれば自ら補給基地に戻らねば補給する物資は積み込めない…そして補給艦は大概に足が遅いのだ…

 本来、大規模な作戦行動は短時間で戦闘を終え、戦艦や巡洋艦が自力で補給基地の有る拠点へ来てもらうしか方法が無いのだ………

 大規模戦闘を2回連続…しかも敵陣深くで転戦?……

 考えれば考えるほど正気の沙汰ではない。

「バーク…すまん、何を用意すればいいか教えてくれ」

 俺も補給計画は得意だとは思っていた…

 だが、事前準備なしではどうにも太刀打ちできそうにない。

 唯一、乗り切る可能性があるとすればバークの経験以外に道は見いだせなかった。

「少佐!

 そんなに深刻な顔しないでください。

 大丈夫…人間いざとなれば水だけでもしばらく生きていけますから!」

 バークは軽口を叩いてみせたが、目が笑ってない…

 そんな事を1番思ってないのはバーク本人だ。

「すまん…」

「少佐!

 謝る時間があったら頭を動かして下さい!

 俺達のハーディング少佐は連邦軍崩壊の危機を事前に察知した猛者ですよ!

 気が付かなければ良かったとか考えてませんよね。

 だってあのまま行ったら…

 ソロモンは落とした…

 ア・バオア・クーに向かった。

 でもみんな動けなくなって全滅した。

 それを後で聞いて俺達は

『関わらなくて良かった〜』

 って思うとお考えですか?

 馬鹿にしないでください!

 少佐は俺に命令すれば良いんです。

 おいバーク、なんとかしろ!ってね」

 顔に悲壮感を漂わせながらバークがつぶやいた。

 ずいぶんと励まされてしまった。

 しかし、何故か今回は情報が上手く入ってこない。

 カーターもなかなか苦戦しているのか、事務所を出たきり顔を合わせていない…

 今俺にできることは何だ…

 ルウムの時に集めた補給艦がどこにいるか使えないか把握するぐらいだろうか?

「少佐、ちょっと心当たりがあるのでしばらく出てきます。」

 バークと入れ替わりにカーターが入ってきた。

「…あまりいい知らせではありませんね……

 …ソロモン攻略戦が始まりました」

 さらにカーターが言葉を重ねた。

「もう一つ、連絡です。

 作戦本部の連中、たぶん物資の正確な量とか把握してませんね…

 あーだこーだ屁理屈並べて結局たらい回し…

 あれはヤバい、分かってる奴がいるかどうか怪しいです。

 現地にわかる奴が居ないとどうにも…

 情報すら回って来ないっす…」

 カーターは星1号作戦の中枢部へと進入してきたらしい。

 カーターで情報が掴めないのは不味い……

 いや、本格的に不味い…

 まだ、戦いはまだ序盤なはずだ。

 ソーラーシステムでいっそ素早くケリがつかないだろうか?

 そんな事を考えてしまった。

 ……

 ………

 館内に放送が流れた…

『ソロモン攻略戦に於いて我軍の新兵器ソーラーシステムが稼働!

 絶大な戦果を上げたとの報告が入りました』

 窓の外や建物の中から聞こえる歓声…

 うちの事務所では誰一人として声を上げるものは居なかった。

 ……良かったなクロス…

 しっかり生き残って帰ってこいよ!

 コトリ…静かにマーサがコーヒーを置いてくれた。

「少佐、ソーラーシステムは失敗するより成功した方がいいに決まってますよ…」

 それはわかっている…

 今頃、兵士や前線指揮官は喜びを爆発させていることだろう。

 いや、後方のこの事務所の周りですらお祭り騒ぎだ…

 静まり返っているのはここだけかもしれない…

 だが、このあとの事を考えるととても喜べる気はしない…

 コーヒーの湯気がユラユラと立ちのぼる…

 ダン!

 カーターの机が揺れた…

「何か…何かできませんか…」

 カーターが机を叩く…何もできない…

 何も指示すら出せない自分が情けなかった。

 ……

 コンコン…

 マーサが扉を開けると、受付のサラが立っていた。

「あら?サラちゃん珍しいどうしたの?」

「はい、ハーディング少佐にアシュクロフト少将から秘匿回線通信が入っています…通信室へお願いします」

「珍しいわね、何時もは放送で呼び出しなのに」

「はい、アシュクロフト少将から至急だと言付かりましたので…急いで伝えに」

 俺はありがとうと伝えることもせず席を立ち通信室へ向かって歩き出した。

 ……

 ………

 …通信室…

 完全防音の部屋に入ると少し耳が痛い…

 俺はセキュリティチェックで身分証明と網膜スキャンを行う。

 回線が呼出になり画面にはアシュクロフト少将が現れた。

 秘匿回線のせいか、普段よりも画質が粗いのがせめてもの救いか…

『単刀直入に聞く…

 補給計画はどうだ』

 画像が粗くても、声の質は変わらないらしい…声に棘がある。

「時間がなさすぎます」

『そんな事を聞くために呼んだのではない、既に前線からは補給が滞り始めているとの報告が上がっている!』

 わかっている…でもそれは俺達のせいでは無い…

「作戦本部はなんて言ってるんですか?」

 粗い画面越しでも怒気が伝わってくる。

『奴らは補給部隊の怠慢まで本部では責任取れん…と言ってきおった』

「そうですか…」

『アレックス・ハーディング少佐…前線は待ったなしだ、もう一度言う。

 なんとかしろ!

 以上だ。』

 画面が灰色になり通信が切れた…

 ……終わったな……

 …本当に打つ手が思い浮かばない…

 俺は通信室の椅子に座ったまま天を見上げた。

 

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