9 約束
しばらく待たされたがモニターには無事にクロスが映し出された。
粗い画像越しにでも、その表情は明るく、酒を呑んでたのか顔が仄かに赤い。
『何だ?ハーディング…
貴様が俺様に用?
珍しいじゃないか』
モニター越しなのに声がでかい……
何故だろう、こいつの顔を見るとイラっとするのは、もはやパブロフの犬なのだろうか?
「クロス中尉、その…
ソーラーシステムの成功おめでとう…まずは素直に賛辞を贈りたい…」
クロスの顔が曇った。
『何だ気持ち悪い…』
「いや、賛辞は、本当に素直に凄いと思っただけだよ」
コレはオレの偽らざる本心だ。
『どうした?らしくないな、何があった?』
俺は要点だけをまとめ、現在浮かれている連邦軍の危機的状況を説明した。
『……
なるほど、連邦軍の艦隊がピンチだという話はまぁ分かった…
だが、俺が動く必要がどこにある?
俺は戻ればおそらくは昇進だ。
こんなところで危険な橋を渡る必要がどこにある?』
確かにその通りだろう。
クロスは話を続ける。
『と…まぁ、普通は考える。
傍から見たらソーラーシステムは派手だからな…』
表情、そして声がトーンを落とした。
『どうせお前の事だ、ソーラーシステムについて既に色々と掴んでいるんだろ?』
やはり酒も入っているのだろう。いつもより饒舌だ…
しかしその声に何時もの皮肉めいたトーンが混じっていた。
「まぁな…
らしくないな…
お前…
どうせ押し付けられたんだろ…」
『成功させないと、現場で頑張っている人間に責任を押し付けられる……
納得できるか?
誰かが防波堤にならないといけないだろ?
志願したんだよ(苦笑)
まぁ、俺なら出来ると思ったし、実際に能力のある俺には出来たからな(笑)』
腹が立つ……
だが、クロスのこう言う所は素直に好きだ……
『しかし、お前とこんな話をしてる場合じゃないんだろ?』
「引受けてくれるのか?」
『どうせやらざるを得ないんだろ?
やるなら前向きに行動したほうがいい結果が出るさ。
戻ったら美味いコーヒー奢れよ』
「あぁ、何杯でも飲んでくれ……」
クロスの顔つきが変わった。
『その輸送計画、詳細を話せ』
俺は安堵のため息を押し殺しながら、用意していた資料を取り出した。
「まずは、輸送に通常の輸送船を使うという今までの固定概念を外してくれ……」
クロスが一瞬、怪訝そうな顔をする。
『……輸送船を使わない?』
「そうだ。
輸送船にはかわりないかもしれんが、今まで使っていなかった船を使う」
俺は手元を操作し、資料をモニターに映し出した。