「スキンヘッドにしてみたんですが、どうですか?」
ゲーチスがそう言って俺に話しかけてきた。彼の頭は見事にそりあがっていた。自慢の三本松ヘアーとロングヘアが見事にすっきりなくなっていた。彼のどっちかと言うと男前に属する顔だけがこっちを見て笑っていた。だが、特徴的な三本松ヘアーがなくなったせいで余計イケメンだが悪党な面構えとドラゴンボールに出てくるスカウターみたいなモノクルが目立ってしまっている。
「いいんじゃないの」
俺は適当に返事をした。
「すっきりしてさ」
三本松よりはある意味まともな髪型と言える。俺はそう言ってそそくさとゲーチスから離れた。ゲーチスは俺をまだ立ったまま見つめていた。その瞳は何かを訴えかけているように見えた。だが、俺は今夜、バイバニラと愛し合うために家に戻らなくてはならないのだ。
そしてバイバニラと俺はかなり愛し合い、そしてぐったりとした。俺は疲れのためベットの上で深い眠りに落ちた。
そして、部屋に忍び込んでくる正体不明の人物に気がつかなかった。
俺は朝起きて鏡を見て絶叫した。
俺の自慢の髪の毛がない。
歴代主人公の中でもイケメンと公式から言われたのは俺だけだ。そのおれがなんというありさまであろうか。
「なんでハゲになっているんだよ」
と俺は叫んだ。すると鏡に俺と同じような頭の男が映っていた。
「うわっ」
俺は振り向いた。身長2メートルの大男が立っていた。ゲーチスだ。
「何のようだ」
「あなたもやられましたか」
「あなた『も』ってじゃあ、お前も?」
「はい」
「じゃあなんで自分でスキンヘッドにしたなんて嘘をついたんだよ」
「自分だけまんまと剃られたと言ったらカッコ悪い。しかし、他にやられた人がいれば言いやすいじゃないですか」
「そうか」
それで、俺が剃られるのをまっていたというのか・・・あいかわらずあくどい男である。
「待てよ、と、いうことは俺らのほかにも剃られた男がいるというのか?」
「はい」
実はこのところ、トレーナーたちがはげにされるという事態が発生しているらしい。それも名のあるトレーナーばかりがハゲにされているらしいのである。
「なんでそんなことを・・・」
「多分、優秀なトレーナーに嫉妬したあまり出来の良くないトレーナーでしょう」
ゲーチスが言った。
「わたしもハルモニア家に生まれ、兄弟たちから散々嫌がらせをうけました。優秀な私を兄たちは恨み、嫉妬し、私に嫌がらせを繰り返したのです。しかし私は負けませんでした。なんとしてもハルモニア家を継ぎたかったのです。まあ、私は英雄になれずこのざまですがね」
「ふーん・・・」
ゲーチスも苦労しているんだな・・・俺はそう思った。
そう考えると人間味のない冷酷な男という印象から少し彼を身近に感じられるような気がした。
「こうなったら犯人を見つけ出さなければいけませんね、被害が大きくなる前に」
「また、どうせ犯人を見つけ出してたっぷり仕返ししたいだけだろう」
「ふん、私とて許せないことはありますよ」
ゲーチスはそう言った。
その真意はさておき、味方は多いほうがよい。
さっそく捜査を開始した。
とりあえず、被害が出たというところからしらみつぶしに情報を得ることにした。
「ええ、私もやられましたよ」
そう言ったのはレンブであった。
「わたしも頭の毛を剃られました、いつもの時間にトレーニングを開始し、ダゲキたちと特訓をし、疲れて眠ってしまいました。起きて四天王のみんなと会議に出たらみんながクスクス笑っているのでどうした?と聞くとギーマのやつが『鏡を見て来いよ』というので見に行きました。すると私の髪の毛が一本残らず剃られていました。そして戻るとシキミのやつが『結構似あっていますよ』というのです。私は顔を真っ赤にして部屋にこもっていました。するとピンポーンというチャイムが鳴るので出てみるとあなたたちハゲ2人が立っていたので『ああ、仲間が増えて嬉しいな』と少し元気が出ました」
「なるほど」
ゲーチスが言った。
「私もサザンドラとSEXする時間を狙われました。SEXして寝ているところを狙われましたから。私は決まった時間にサザンドラとSEXしています。ようするに私たちの予定をよくわかっている人物、ということになりますね。SEX」
「SEX、SEX連呼しないでもらおう!」
レンブが怒った。
「ここは神聖なポケモンリーグなんだ、下品な言葉は慎んでくれ」
「ほう、そんなこと言っていいんですか?」
俺は言った。
「あなたもローブシンのケツに入れているといううわさがありますよ」
俺は言った。
「ほう・・・」
ゲーチスがニヤリと笑った。
「なるほど、さしずめさっき言っていた特訓と言うのも特訓は特訓でもSEXの特訓だったんじゃないんですかな?ん?レンブくん?そうなのだろう?」
「ち、違う!!」
レンブは叫んだ。
「ケツの穴と言うのは人体急所の一つだ!そこを鍛えるために私の肉の棒を・・・」
そう言いかけてレンブは顔を真っ赤にした。
「も、もう・・・バカ!!しらん!出ていけ!!」
俺とゲーチスは無理やり外に出された。
「ふん・・・所詮四天王と言えど肉欲には勝てないものよ」
ゲーチスは言った。
「まあ、そう言うなよ」
俺は一応フォローしておいた。
収穫はあった。ようするに犯人は俺、ゲーチス、レンブの3人の予定を知っている人物。ということになる。
「わかりましたよトウヤ、犯人がね」
「え?」
「犯人はただ一人・・・チャンピオンのアデクしかありえません」
「えー!?それはないだろう」
「良く考えてみなさい、ワタクシ、君、レンブ、3人と親交の深い人物は彼しかありえません」
「え?で、でも何が目的だ」
「ふっ・・・あなたも頭の悪い人だ・・・いや、純粋というべきかもしれませんね、さきほど言ったでしょう。人間は嫉妬する生き物だとね。ワタクシは兄たちから嫉妬され、嫌がらせを受け、それを嫌と言うほど感じました、いや、兄たち以外にも大学、就職先、そしてやっとプラズマ団のボスに上り詰めてからもそれを感じることがありました。所詮人間などそんなものです。」
「し、しかしだよ・・・?アデクさんが俺たちに何を嫉妬するっていうんだよ?」
「良く考えてみなさい、ポケットモンスターシリーズは伝統的にラスボスはチャンピオンということが決まっていました。その座をワタクシに奪われてしまった。まず、これがワタクシに対する嫉妬です。次にアデクはあなたに敗れ、殿堂入りを決められてしまいました。また、伝説のポケモンであるレシラム、ゼクロムに選ばれたのはただの田舎出身のなんでもないトレーナーである貴方・・・チャンピオンであるアデクは選ばれなかった・・・そういういくつもの要因があなたに嫉妬する原因となったのです」
「じゃあレンブさんは?彼はアデクさんの弟子だぞ」
「彼はポケモンリーグ最強と言う説があります。まあ実際はがんじょう持ちのポケモンがいて倒すのに手間取るだけですが・・・しかし実際アデクさんよりは強いような印象があります。なので嫉妬したんでしょ」
「なんか最後適当だぞ」
「だまらっしゃい」
「しかし、その基準で行けばNに嫉妬しないのはおかしくないか?彼はアデクさんを一回破ってさらに伝説のポケモンに選ばれているぞ」
その時「キン肉マァ~~~~ンGOファア~~~イト♪」という音楽が流れた。
「あ、私の携帯ですね」
「ポケモンの登場人物なら『マサラタウンにさよならバイバイ』にしとけよ!」
トウヤは叫んだがゲーチスは無視した。
かけてきたのは七賢人のリョクシからであった。
「ゲーチス様、大変です、N様の髪の毛が何者かに剃られてしまいました」
「わかりました、今すぐ行きます」
ゲーチスは携帯を切った。
「ほら見なさい、犯人はアデクさんで決まりですよ」
「う、うーん・・・」
とりあえず俺たちはNの様子を見にNの城に向かった。
「ひどい・・・ひどいよ・・・こんな」
Nは泣いていた。そして自分の頭をつるつると撫でていた。
「こんなんじゃトモダチに嫌われちゃうよ」
「まあまあ、N」
と俺は慰めた。
「トモダチはお前がハゲになったくらいで嫌うようなことはしないよ、なあ?」
おれはそこにいたヒヒダルマに話しかけた。
だが、ヒヒダルマは無言で立ち去った。
「ほら、見てよ、髪がなくなっただけでボクと認識しないんだ、つるっパゲなんかと誰もトモダチになってくれないよぉ」
Nは泣きまくった。
「N、あなたはどうやって髪の毛を剃られたのです?あなたともあろうものが部屋のカギをかけるのを忘れていたのですか?」
「ううん、部屋のカギはかけておいたよ、でも、ボクがハゲになって目が覚めた時にはもう部屋のカギが開いていたんだ。何者かが侵入した形跡もあるよ」
「N、お前、合鍵とか作っていやった人とかいないか?」
俺は聞いた。
「誰もいないよ、アデクさんくらいだよ、彼とはバイバニラを持っているという共通点があるだろ?だから週一で良いバイバニラを見せ合ったりする趣味があるんだよ」
「ちょっと待て」
俺は言った。
「本当に見せ合うだけか?バイバニラのアナルを犯したり、フェラさせたり、チンコを冷たい肌にくっつけたりして楽しんでいたんじゃないのか?」
「まったく君には敵わないな」
Nはフッ・・・と自嘲気味にため息をついた。
「お前!?なんで俺は誘わなかったんだよ!」
「だって君を呼ぶとすぐバイバニラを乱暴に抱こうとするだろう、そういう人はバイバニラ同好会にふさわしくありません!!」
「なんだとぉ!!」
「うるさい!!」
ゲーチスが叫んだ。
「そんなことはどうでもいいでしょう。これでハッキリしました。Nの部屋の合鍵を持っているアデクが犯人です。」
俺もそれは認めざるを得なかった。
「そうときまったら早くアデクを逮捕するべきだね」
Nは言った。
「早くしないと罪のない君たちの友達がハゲにされてしまうよ。まあボクにはどうでもいいけどね。さあ、ボクのみじめなハゲ姿を見ないでくれ、とっととどっかへ行ってくれ」
その言葉を聞いて、俺はNの肩をつかみこう言った。
「お前なぁ・・・お前だって俺の友達の一人なんだぜ」
「ト、トウヤ・・・」
Nは泣いた。
「ボクが間違っていたよ・・・」
立ちあがった。
「髪の毛がなんだというんだ。そんなものポケモンたちに自由を与える王になるボクには必要のないものだ。大事なのは気持ち・・・誰かを思いやると言う気持ちなんだ」
その時・・・Nの部屋にいたさっきのヒヒダルマ・・・いやヒヒダルマだけではない。ゾロアやアーケオス、アバゴーラなどがいっせいに拍手しはじめた。
「みんなお前がハゲになったから冷たくしていたんじゃない。お前のそのいじけた心を嫌っていただけだ。だが、お前は大事なことを学んだな」
「ト、トウヤ・・・」
「ふん、とんだ茶番だ」
ゲーチスが言った。
「だが・・・これが絆というものなのかも知れませんね」
「さあ、悪の権化、くそったれ野郎のアデクをぶっ殺しにいこうぜ!」
俺は叫んだ。
「そうだね、嫉妬にまみれた強欲で最低な人間の屑のチャンピオンに僕達の正義を見せてやろうよ」
「ふん、顎が四角いチョビ髭髪の毛ボサボサウルガモスヘアーのヤムチャ噛ませ犬チャンピオン腕毛すね毛出しまくり風呂に入っていないチャンピオンに私の見事なハルモニア最高イケメン鉄拳制裁を叩きこんでやりましょう」
俺たちハゲは、アデクのいるポケモンリーグに向かった。
「お~~~~い!!」
俺たちはポケモンリーグの扉をドンドンドンと叩きまくった。
「うるさいですよ!」
シキミが出てきた。
「シキミさんですか、あなたのようなオッパイだけが取り柄の腐女子に用はありません、そこをどきなさい」
ゲーチスが言った。
「アラ?誰かと思いきやハゲじゃないですか。しかもおっさんのハゲ。英雄になれなかったからってハゲになることはないんじゃないですか?まさか英雄になれないとハゲになるんですか?」
とシキミは言った。
「おい、いい加減にしとけよ」
とNが言った。口調がいつもと違っている。
「確かにゲーチスは早漏中年極悪ハゲだけど言っていいことと悪いことがあるだろう」
さすがに父親を侮辱されると怒るらしい。ゲーチスにバケモノ包茎と言われたのになんという親思いの子だろうか。
「アレ?もしかしてN様ですか?うわー、イケメンなのにハゲてしまって気の毒ですね~wもうファンつきませんね~?もうすぐBW2発売なのにどうするんですか?そのままの姿で2に現れたら女の子のファン泣きますねw」
「な、な・・・」
Nの目に涙がうっすら浮かんだ。
俺はもう我慢ならなかった。
「やい、黙って聞いていればいい気になりやがって」
俺は前に出た。
「あら?トウヤくんじゃないですか?BW2に出れなくて残念ですね~wあwすいませんwBW2だけじゃなくアニメにも出れてませんねwそれはN様も同じですけどwwwしかも服をサトシ君に取られてしまってその後どうしたんですか?まさかフルチンでいたんですか?可哀想ですね~レンブさんの使用済みブリーフならここにあるんであげますよwww」
俺らはついにキレた。
「んだとぉ~黙って聞いていれば・・・おい!!」
俺はボールからモンジャラを出した。
「おい『いんじゅう』!その女を触手で拘束しろ!!」
モンジャラがシキミを触手で拘束した。
「キャー!何をするんですか!!触手で私にエロいことをするつもりですね!?エロ同人誌みたいに!この変態!!」
俺たちは笑った。
ゲーチスもボールを取りだした。
「誰がそんな立派な扱いするものですか、キリキザン!」
ゲーチスのキリキザンがシュパシュパシュパ!!と手の刃物をうならせる。
「キャー!!」
シキミが目をつぶる。おそらく服を切り裂かれたと思ったのだろう。だが、違った。シキミの目の前に紫色の自分の髪の毛が散るのを見た。
「ワタクシたちと同じような苦しみを味わうがよろしかろう」
「キャー、ハゲに~~~」
シキミは拘束を解かれ、自分の頭に手をやった。俺たちと同じようにつるつるである。
「ひ、ひどい、女性にこんなこと・・・あんまりですよ~」
俺たちは3人でヒゲダンスのような動きをした。
むろんバカにするためだ。
そして笑い、先へ進んだ。
「ふう・・・とんだ道草を食ってしまいましたね。これでチャンピオンのところまで行けるというものです」
「そうだね、何にせよアデクさんに復讐するのはもちろんのことなぜこんなことをしたのかを話してもらわねばね」
「うむ、そのためにも一刻も早くチャンピオンの部屋に行こう」
俺たちはアデクの部屋の扉を開けた。
中は薄暗かった。
「気をつけようトウヤ・・・もしかすると暗闇から襲ってくるかもしれないよ」
「うん・・・アデクさんのポケモンはウルガモス・・・おそらく火で攻撃してくるだろうからその瞬間、明るくなるはず・・・油断しなければよけられる」
「いや・・・裏を描いてバッフロンの突進が来るかもしれません、とにかくトウヤ・・・N・・・気をつけるのですよ」
俺たちは慎重にチャンピオンルームを捜索した。
「ん?」
俺は何かを見つけた。
「おい、何かを見つけたぞ、おそらくこの部屋の明かりのスイッチだと思う」
「トウヤ・・・そのスイッチを入れてみるのも一つの手だと思うよ」
「うむ、Nの言うとおりだ、こんな薄暗くてはワタクシたちが不利です」
「わかった、二人とも油断するな」
二人はうなずいた。俺はスイッチを入れた。
部屋が明るくなり・・・そこにはとんでもない風景があった。
「ア、アデクさん・・・」
なんとアデクさんがロープで天井からつるされ、しかも猿轡をされていた。
さらに驚くことに髪の毛が剃られハゲにされている。
「アデクさん!」
「待て、トウヤ!罠かもしれないぞ!」
俺はNの制止を振り切り、アデクさんを縄からほどき床に下ろした。
「アデクさん!しっかり!!」
「う・・・?う・・・?ト、トウヤか・・・?」
アデクが意識を取り戻した。
「ゲーチスにNも・・・フフ・・・わ、わしが油断したばかりに・・・」
「一体何があったのです!?」
犯人はアデクという説を一番信じていたゲーチスが驚きの声をあげた。
「まったく信じられないよ」
Nも同じ気持ちだった。
「わ、わしは・・・いつも通り挑戦者と戦った・・・だ、だが、その挑戦者はものすごく強かった・・・わ、わしはやられてしまった・・・そしてそれだけならまだしも彼はワシを縛り付け、わしの髪の毛を剃っていった。『ジジイのくせにふさふさしているんじゃねぇよ』それがわしの聞いた最後の言葉じゃった。」
「ひどい・・・」
俺はつぶやいた。
「一体誰なのです?その挑戦者は・・・」
「お、お前らが一番良く知っている人物じゃ・・・」
「わかりました、その人の名前を言いたくないのですね、いや、なんとなく検討がつきました」
「どういうことなんだ?ゲーチス」
俺は聞いた。
「トウヤ・・・ワタクシは思い違いをしていたようです。もっとシンプルに考えるべきでした・・・嫉妬という観点にばかりとらわれそれを忘れていたのです。ようするに将来ハゲるかもしれない・・・そういうコンプレックスを持っている男が将来あるかもしれない自分の姿に相手を変えてしまう・・・そういうことで自分のコンプレックスから少しでも解放されたい・・・そんな風に考えているということをもう少し検討すべきでした」
その時、れいとうビームが奥の部屋から発射され、それがゲーチスのケツに命中した。
ゲーチスは叫び声をあげ、ケツを抑えた。
「大変だ!肛門が凍ってしまったら大便が・・・」
Nが叫んだ。
「だ、大丈夫ですN様・・・こんなこともあろかとマグカルゴの体液を袋に入れ、パンツに仕込んであります。しかし、冷凍ビーム自体の威力はケツに大ダメージを与えました。ワタクシはもう駄目かもしれません」
「誰だ!?」
俺は叫んだ。
「ふふ・・・すごいね、トウヤ・・・やはりぼくのライバルなだけはあるよ・・・でも、そんな君がぼくは憎くてたまらなかった。そしてそのふさふさな髪の毛もね・・・」
「お、お前は・・・」
「やはり・・・!?」
ゲーチスがうめいた。
なんとそこには冷凍ビームを放ったダイケンキを従えたチェレンが立っていた
「そ・・・そんなチェレン!?」
俺は驚愕した。
「な、なぜ・・・」
「やはりそうだったか・・・」
ゲーチスはチェレンを睨み、そう言った。
「彼の若ハゲがかなり進行していることはダークトリニティの調べでわかっていた。その時は『なんでこんなくだらないことまで調べ上げた』と言って彼らのケツにケツバットをやったが、今思えばあの情報は役にたっということですね」
「そうか・・・彼の若ハゲに対するコンプレックスがボクたちをハゲにする動機だったのか・・・」
Nも言った。
「ふふ」
チェレンが冷たい目で俺たちを見つめながら言った。いつものチェレンの目ではなかった。冷たい・・・氷のような目・・・。そしてその眼には狂気が宿っていた。
こんなチェレンは見たことがない。
「君たちのぼくを見る視線にはいつも『この若ハゲ』という視線が入り混じっていたね・・・だから復讐してやったのさ、君たちもハゲの辛さがわかったかい?ははははははははははははは」
たしかにチェレンの額は少しこの年齢にしては広く、またチェレンの親父さんがつるっぱげであることは村の噂となっていた。よって村の人たちの中では「チェレンは将来ハゲるのではないか」という噂があったことは事実。
だが俺はチェレンを一度もハゲと言ってバカにした記憶はない。それどころか頭のいい眼鏡の似あう知性的なイケメン・・・それが俺の彼に対する認識であった。
Nも同じように思っていただろう。ゲーチスはどうかはわからないが。
「さあ、ボクをバカにするやつを全員ダイケンキのビームで凍らせてしまおうね・・・」
チェレンが狂気に満ちた顔でニヤリと笑い、そう言った。
「君の好きにはさせないぞ!」
Nがボールからゼクロムを出した。
「ゼクロムクロスサン・・・」
「遅いよ」
Nがクロスサンダーを出す前にチェレンのダイケンキが動き、れいとうビームを放った。その放ったビームがゼクロムに直撃し、ゼクロムはダメージを受けた。
「ゼクロム!」
「はははははは」
チェレンが笑った。
「このダイケンキはレベル100まで鍛えてある。そんじょそこらの伝説には負けないよ」
「くっ・・・」
「トウヤ・・・」
Nが言う。
「ここはボクのゼクロムとトウヤのレシラムの合わせ技を使うしかないよ」
「クロスサンダーとクロスファイアを同時にやるわけだな」
俺は了解した。しかしチェレンは狂気に満ちている割に冷静で隙がない。
これは強敵だ。
だが、なんとしてもチェレンには正気に戻ってもらなねばならない。
「チェレン!思い出してくれよ!あの時の日々を!一緒に旅だった日を!!」
「思い出した!キミはあの時もボクをハゲと冷徹な目で見ていたなっ!」
「見てねえよ!!」
俺はダイケンキのハイドロポンプをよけながら叫んだ。
「目を覚ましてくれチェレン!」
「黙れ!」
俺は2発目のハイドロをよけた。頭皮がないのでいつもより余計水しぶきの冷たさが身にしみる。
「おい、Nどうしよう」
「方法は一つしかないね、ボクのゼクロムと君のレシラムの連携技を撃つしかない。」
「あいつは強くなっている、タイミングをあわせないとマズイぞ」
ダイケンキが今度はれいとうビームを撃ってきた。
俺とNはそれをそれぞれ左と右に飛んでよけた。
よけた場所に冷凍ビームが直撃しカチンコチンに凍った。
「くそっ、これじゃ撃つタイミングが作れないじゃねえか」
「せめてチェレンに隙があればね・・・」
そう言うとゲーチスが立ちあがった。
「ワタクシがおとりになりましょう」
「「なんだって!?」」
俺とNは同時に叫んだ。
「危険すぎるよ」
Nがゲーチスを止めた。
「方法はこれしかありません」
「ゲーチス・・・・!」
「お前・・・!?」
「ふん、別にあなたたちのためじゃありません、チェレンは今やハゲのコンプレックスに取りつかれた狂気の男となっています。このままじゃイッシュ地方をすべて壊しつくしてしまうでしょう。そうなればイッシュを征服するというワタクシの野望もなくなってしまいますからね」
ゲーチスは俺とNに自分が隙を作るうちにクロスファイアー、サンダーを撃て、と命じた。
ゲーチスはローブを脱ぎ捨てて、上半身裸とズボン姿になると、手をあげて妙な踊りを踊りだした。
「や~~~~~い、ハゲハゲハ~~~~ゲ~~~」
そう言いながら、ゲーチスは片足で立ち、身体のバランスを取りつつ、頭上で手をパチパチ叩き始めた。
「ムキーッ!!」
チェレンはゲーチスを攻撃しようとハイドロカノンを撃った。ハイドロポンプより強力な技だ。かなり怒ったのだろう。
「ぐおっ!」
吹っ飛ばされるゲーチス。
「トウヤ、いまだ!ハイドロカノンは攻撃した後はしばらく動けなくなる。」
「わかった!」
「クロスサンダー!」
「クロスファイアー!」
ゼクロムとレシラムがそれぞれの雷と炎を出し、それが融合しダイケンキとチェレンに襲いかかった。
「うぉおおおおおおおおおおお~~~~~~~っ!!」
チェレンは吹っ飛ばされ、チャンピオンルームの壁に身体を叩きつけられて気絶した。
「や、やった・・・!?やったぞN!」
「あ、ああ・・・でも・・・そういえば、ゲーチスは!?」
俺たちはハッとしてゲーチスに駆け寄った。
「うっ・・・ううっ・・・・」
「よかった・・・息があるぞ!!」
ゲーチスはなんとかまだ生きている。
「ゲーチス・・・すまない、貴方をおとりにしなければ勝てなかった・・・」
Nはそう言った。
「な・・・なにを言っているのです・・・父親が息子をかばうのはあ・・・あた・・りまえ・・・」
ガクッ
ゲーチスは気絶した。
「ゲーチス!?」
俺たちはゲーチスをポケモンリーグの治療室に連れて行った。
ゲーチス、チェレンは治療室のベットに寝かせ、治療を受けている。
俺、N、アデク、は治療室の椅子に腰かけ、話をしていた。
「まったく、ひどい事件じゃった」
「ああ、ボクたち5人ともハゲになってしまったね」
そうなのである。イッシュの超トレーナーと呼ばれた俺、N、ゲーチス、アデク、レンブの5人がそろいもそろってハゲである。
「まったく・・・たかがハゲくらいで暴走するなっていうの」
アデクが言った。
「コンプレックスという一言では片付けられない人の心の闇・・・そういうものを感じたよね・・・」
Nがため息をついてそう言った。
俺は幼馴染でありながらチェレンの心の闇に気がつかなかった自分を責めていた。
俺がもっと彼の様子を気にかけていればこの忌まわしい事件は防げたのかもしれない。
そう思うと俺は自分が情けなく、許せなかった。
ジョーイさんが治療室から出てきた。
「ジョーイさん、チェレンとゲーチスは!?」
「無事終わりました、二人とも意外と元気で面会できますよ」
俺達3人は喜びに満ちた。
「イヤッホーウ!」
「キャーッ」
俺らはダッシュで治療室の中にジョーイさんをぶっ飛ばし、そのまま突っ込んだ。
「ゲーチス、無事だったのか!」
Nがゲーチスのベットにかけよった。
「ふん、当たり前でしょう、私はこのイッシュをこの手に握るまで死ねません」
「すまない・・・ボクたちのために」
Nがすまなそうに言った。
「ふん、言ったでしょう、私は私のためにやったことです。礼を言われる筋合いはありません、さて・・・」
ゲーチスは椅子にかけてあったローブを取るとそれをとり、ベットから起き上がった。
「無駄な時間を過ごした。ワタクシはワタクシのやるべきことをやりに行く」
そう言い、ローブを着たゲーチスが指を鳴らすとダークトリニティが現れた。
「ゲーチス様、車のご用意が出来ています。」
「育毛剤の準備、それと髪が生えそろうまでのカツラは用意できましたか?」
「はい、世界で一番優秀な科学者に育毛剤をつくらせ、世界で一番優秀なカツラ職人にカツラをつくらせました」
「よろしい、では行きますよ、我々の野望のために・・・・!」
「はっ」
ダークトリニティはゲーチスとともに一瞬にして消えた。
Nもトモダチのゼクロムに活躍のお礼に食事を用意しなければいけないといい、帰って行った。
俺はベットの上のチェレンに話しかけた。
チェレンは目を覚ましており、天井を見つめていた。
「チェレン・・・」
「ありがとう・・・」
「え?」
「ありがとう・・・トウヤ・・・僕をとめてくれて・・・」
「チェレン・・・」
「あの時僕はどうかしていた・・・世界を破滅させ、すべての人間をハゲにしてやろう・・・そう思っていた。でも間違っていた。トウヤ・・・すまない。許してくれ」
「許すことなんてなにもないよ・・・」
俺はチェレンを抱き上げた。
「さあ帰ろう」
俺は村に戻った。
そして自分の家のドアを開けた。
「ただいま」
俺は家の扉を開けた。
「あら、おかえりなさい」
ママが迎えてくれた。
「トウヤ!?どうしたのその頭!?」
ママがおれのつるつるの頭を見て、驚いて言った。
「ふっ・・・」
俺は答えた。
「俺の勲章だよ」
さわやかな風が俺の頭を通り過ぎて行った。だが、髪の毛がないのでなびくものはなかった。
だけど俺の心はとてもさわやかだった。
おわり