そろそろ第2章に入ろうと思いますので、次回あたりが第1章最終話になると思います。
ルーデウス視点─────
5歳になった。
節目の歳といえばお祝いである。
パウロからは2本の剣、ゼニスからは植物辞典、ロキシーからは杖を貰った。ここまでは前回と同じだが、今回は1人参加者が多い。
そう、オルフェウス─オルステッドがいる。
実は何をプレゼントしてもらうかは事前に相談していた。
オルステッドは当初、剣にするか杖にするか、それとも魔術教本にするかで悩んでいたらしいので実物を見せてもらったのだが、全部プレゼントで出しては行けないようなものだった。
アスラ金貨10万枚相当の剣だの、今は絶滅した魔物の素材を使った杖だの、禁忌レベルの魔術が記された魔術教本だの…下手な使い方をすれば国が動く逸品ばかりである。
人間臭さがあると思っていたところなのに、変なところで常識が抜けているなこの御仁は…。
「流石にこれはやりすぎです」
とキッパリ断ったらすごく悲しそうな顔をされた。小動物じゃないんだから…。
「はぁ…子供にあげるものなんですから、ちょっとしたもので良いんですよ。大きくなった時に着れる上着とかいいんじゃないですか?」
「…!なるほど、そういうものか…!」
と、言うわけでプレゼントしてくれたのが『魔力付与品』の鼠色のコートだった。
大きめのコートだが、防刃防火はもちろんのこと、伸縮自在の素材で長く扱えるそうだ。
…いやこれ絶対高いだろ。レベルを落としたとはいえ金貨数万枚レベルのシロモノじゃないのか?これ…なんでオルステッドはどこか自信満々なんだよ、ちょっとこの人の感覚誰か直してあげて!
「このコートの素材だが、既に絶め────」
「うわぁ!オルフェウスさん!ありがとうございます!大きくなったら着させてもらいますね!これで冒険とかできたら楽しいだろうなぁ!アハハハ!!!」
「そうか、喜んでもらえたなら何よりだ」
あぶねー!今絶滅って言おうとしただろ!絶滅種のコートとか絶対口に出しちゃダメだからな!俺の命が狙われかねないっての!
おい、何話し遮られたからって少し落ち込んでんだよ!そんな顔する資格ねぇからな!もうちょっと世間の感覚を養って貰えますか!?全く…。
こんな感じで、5歳の誕生日パーティーは波乱万丈の結果となった。
もちろん、この後オルステッドにはしっかり説教をした。世界最強の龍神がこんなガキに説教されちゃダメだろ…とは思いつつも、一応感謝は伝えた。その時は嬉しそうな雰囲気になったので、それで良かったのかもしれない。いや、良くないが。
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5歳になったことで、剣術訓練が大きくレベルアップした。
パウロから貰った木剣を振るうようになったというのもあるが、パウロ自身もオルステッドとの訓練で相当強くなっていた。なんせ、本気では無いとはいえオルステッドに防御の姿勢を取らせているのだから。
オルステッド曰く、現在の時点で剣神流、水神流、北神流のそれぞれで聖級に匹敵する強さではあるらしい。光の太刀といった奥義こそ会得していないが、素の実力でここまで成長するのは天才としか言えないとオルステッドも話していた。
一方で俺は特に成長は見られず…とはいえ前回の経験で上級剣士程度なら魔術抜きでも対応可能なのだが、やはり闘気を纏えない分どうしても劣ってしまい、成長したパウロによって今まで以上にボコボコにされてしまった。剣の腕としてはせいぜい中級が良いところだろう。
なにより、パウロの剣技が恐ろしい。始めは北神流を使うのを嫌がっていたが、オルステッドの剣技を見てそれも改めたらしい。結果、北神流に剣神流を混ぜた動きや、北神流を利用しながら水神流のカウンターを使うという、どの流派を使用するか全くわからないという絶対に敵に回したくはない存在になった。
「そういえばルーデウス」
「なんですか?」
「お前、その剣技…いや、『
…しまった、ついて行くのに必死になりすぎて慣れ親しんだ技を使っていたらしい。
なんせ前はあまりにも殺しすぎて、世界各国から指名手配されてたからな…最終的に魔大陸に住んでいた時期が1番長かったくらいだ。
これも全てヒトガミの…くそっ、思い出すと腹が立ってくるな。
やめだやめ、今はこれだけ充実してるんだ、恨みこそ忘れはしないが、この時間を無駄にはしたくない…。
話を聞く限りでは、オルステッドの知る俺は人殺しに積極的ではなかったらしい。いや、俺も元々は積極的では無かったのだが、最終的にそうなってしまったというかなんというか…とりあえず、下手に技術を使ってオルステッドの信用を落とすことはしたくない。やはり話しておくべきなのか…。
オルステッド視点─────
ルーデウスが5歳になってしばらく経ったが、ルーデウスの剣士、魔術師としての腕の伸びはかなり悪い。前者は闘気を纏えない故だが、後者はほぼ完成されきった技術ばかりで成長が難しいと言ったところだろう。
しかしひとつ気になる点がある。ルーデウスの戦い方だ。
剣を使うにしても、魔術を使うにしても、極力無駄を減らした動きで急所を狙う癖があるように見える。
俺の知るルーデウスは余程の危機でない限りは急所を的確に狙うことはしなかった。殺人に対する忌避感を感じさせる動きが多いのだ。それに対して、今のルーデウスは命を奪うのに容赦が無いように見える。瞳の奥に黒く深い何かが蠢いているような感じがしてならない…一体何がルーデウスをそうさせたのか、自分から話してくれるならばありがたいが…。
一方でパウロの成長は凄まじい。全ての流派を上級で修めることのできる天才だとは知っていたが、俺との組手を通じて聖級剣士に匹敵するまでに至っている。
再会してすぐは、あまりの実力の落ちように呆れたものだが、あっという間に実力を取り戻し、冒険者時代の力を超えた。
「息子にかっこいいところ見せなきゃなんねぇからな!」と言っていたが、父になったことでひとつ成長したのかもしれない。
後は本人が主軸にしている剣神流の奥義、『光の太刀』を会得できるかどうかだが…。
と考えていた1週間後のことだった。
「今回こそは1本取らせてもらうぜ…!」
「…来い!」
「父さまー!がんばってくださーい!」
「あなた〜!がんばって〜!」
今日は珍しくゼニスも顔を出している。
毎日必死で俺に食らいつくパウロを見て何か思うことがあったのかもしれない。
「こりゃ…かっこいいとこ見せねぇとな!」
空気が切り替わる。普段のパウロから発せられる「オルフェウスを倒す」という殺気が消え失せ、穏やかで透き通った瞳が俺を貫く。
「ふっ…!」
一閃──────
まるで、時が止まったような空間でパウロの剣が迫る。光に匹敵する速度で放たれる一撃を、俺は思わず受け止める。
『光の太刀』
そうとしか言えない一撃は、龍聖闘気を纏った俺の腕にビリビリとした衝撃を伝えていた。
「ま、マジかよ…」
渾身の一撃、完成した『光の太刀』を受け止められたパウロは驚愕の顔を浮かべる。ゼニスも同様だが、ルーデウスは別の理由で驚きを隠せないようだ。
「パウロ・グレイラット、今の一撃は素晴らしかった。受け止めた腕が痺れて動かん…これならば剣王、いや、剣帝すら狙えるかもしれんな」
「易々と止められたのに信じられねぇよ…でもアンタがそう言うくらいなんだ。俺の力は相当上がってるんだな?」
俺は大きく頷いた。それを聞いたゼニスがパウロに抱きつき、絶賛の声を上げている。何せ、『光の太刀』を使える人間などそう簡単にはいない上に、剣王に匹敵する人材など国が欲しがるほどの実力者である。
「あの…オルフェウスさん…」
「…なんだ?」
「父さまの一撃…腕が痺れたって本当ですか?」
「ああ、本当だ。凄まじいな、お前の父親は」
「い、いや、まさかそんなに…龍聖闘気を通じてダメージを与えるレベルなんて…」
ルーデウスも驚きを隠せないらしい。パウロという男は、俺の想像を超える天才のようだ。
この機会をもたらしてくれたルーデウスには感謝しかないな…そして、今のルーデウスにも。