撃破されたヘルキャットの車内では楓が腕を組みながらペンローズの高い射撃技術に関心の表情を浮かべており、苗もそれに激しく同意していく。
しかしそんな呑気な2人に寧々が突っ込みを炸裂させており、優実がそんなやり取りを横目に苦笑いを浮かべていた。
「いやー、敵ながらあっぱれ。アレを当ててくるなんてねー」
「流石はうちのエースといったところだねー」
「もう!呑気に関心してる場合!?」
「あはは…(汗)」
ちなみに撃破した六号重戦車では車長用ハッチからその様子を確認していた野々が、インカムでりほへ速やかに報告をしていくが、直後車体に衝撃が走る。
「隊長、ちょっかいかけてきたヘルキャットは撃破しました。こちらの損害はなし、隊列に復帰s…」ドゴォォォン
それが被弾した衝撃だということは野々もすぐに気づいたものの、直後撃破判定を示す白旗が上がったしまったためほぼ後の祭り。
撃たれた箇所と方向を確認しつつ、やられた旨を間髪入れずに報告していく。
「…!?あーもうやられた…!すみません隊長やられました…!高地からです!」
もちろんその報告はりほの耳に飛び込んでおり、残された1年生チーム2両に森へ入るように指示を出しながら、自車も移動指示を送りながら高地へ視線を向ける。
「7号車と8号車は森に入ってください!蛍さん…!」
『わかりました…!』
『はい…』
「りょーかい!」
高地…その頂上にはポツンとだが砲塔のようなものが確認出来、より詳しみるためにりほは双眼鏡で確認。
するとそこに映り込んでいたのはアニメ同好会チームのスーパーパーシングであり、やられた…と双眼鏡降ろしながらりほはそんなことを口にしていく。
「……やられた、スーパーパーシングか…」
恐らく試合序盤、ヘルキャットやT-34Eなどがちょっかいをかけてきたのも、こちらの出方を確認するのもあるが、本命はあのスーパーパーシングが高地を確保するための時間稼ぎ。
スーパーパーシングは無印パーシングよりエンジンがそのままも相まって坂道などではかなり動きがトロい。
ー恐らく最初ちょっかいをかけてきたのもスーパーパーシングが高地を確保するための時間稼ぎ…ー
しかしその分火力装甲共に優れており、あーいう高地を確保すれば自慢の性能を活かした撃ち下ろしが可能になるのだ。
ー高地とかでは確かに機動性は終わってる、でも確保さえすれば自慢の装甲と火力を存分に活かせる…ー
実際この中で火力や装甲のある六号重戦車を撃破され、T-34Eやヘッツァーの位置を掴めてないりほ達は迂闊にスーパーパーシングを撃破することが不可能。
だが行動しようにも高地のスパパを撃破するかどうにかしなければ、撃ち下ろされるこちらの位置を一方的に報告され、奇襲を受ける可能性も充分にあり得る。
ー実際こっちは六号重戦車をやられて有利なポジションを取られてる…、けど迂闊に動こうものなら…ー
しかし手がないかと言われればそんなことはなく、何やら策があるりほはインカムで残る2両に対して指示を飛ばしていくのであった。
ーでも手がないかって言われると…ー
「7号車、8号車。これから指示を出すのでよく聞いてください」
六号重戦車を撃破した頃、高地のてっぺんでは撃ち下ろす形でスーパーパーシングが陣取っており、砲身からは発射した後の白煙が立ち込めている。
そんなスパパの車長用ハッチから顔を出していた美乃梨が残る3両が森林地帯に入ったことを確認しつつ、インカムで報告をしていく。
「…こちらアニメ同好会チーム、六号重戦車を予定通り撃破し残る3両は近くの森林地帯に退避。ですがこっちはヘルキャットをやられました」
するとインカムに穂香からの返答が返ってくると共に、引き続き警戒をするようにという指示が返ってくる。
『りょーかい、引き続き警戒お願いね』
「了解です」
そんな指示を出した穂香は、次はどのように動くか…と地図とにらめっこしながら考え込んでいた。
浅香の指摘通りエースとも言える六号重戦車をやれたのはデカいが、こちらもヘルキャットがやられている。
撹乱担当の1両がやられたとなればこちらも迂闊に近づくことが出来なくなってしまう。
「さてと…野々ちゃんたちを倒せたのはデカいけど…こっちも痛み分けなのよねぇ…」
「撹乱担当のヘルキャットがやられたのが痛いぜ、あーいうのは2両でやるのが一番効果あるんだが…」
とは言え和奈が言うように、向こうもこちらの位置が恐らくスパパ以外掴めていないため下手に動くこと出来ない。
何より六号重戦車がやられたことで1年生チームの護衛をIV号1両でしなければならず、こちらよりも余計に行動パターンが狭ばれているのは間違いない。
「でも向こうは野々さんたちを失って余計に動けないはずよ、2両と1年生チームを1両で護らないといけないんだし」
「ええっ、こちらよりも行動パターンは狭められてるのは間違いない。ここは焦らずゆっくりいきましょう」
そんなことを話している間、高地に陣取っているスパパでは美乃梨が双眼鏡で逃げ込んだ森林地帯を監視していたのだが、突如その一体が白い煙に覆われ始めたことに気づく。
「……ん?」
もちろんそれが煙幕だと言うことに気づいた美乃梨はすぐにインカムで報告しつつ、榴弾装填を望結へ指示する。
「…煙幕…!『穂香さん!相手が煙幕を焚き始めました!』望結さん!榴弾用意!」
「りょーかい!」
当然煙幕を焚き始めたということはこちらの目を盗んで移動を試みているということであり、それを阻止するために榴弾を装填させたことを確認した美乃梨は即座に発砲を指示。
それを受けて美濃がトリガーを引いて発砲、放たれた砲弾は狙った場所へ迷わずに飛来、着弾していく。
ー恐らく煙幕を利用して移動しようって魂胆でしょうけど…そうはさせないわよー
「榴弾装填完了!」
「撃てっ!」
カチッ
ダァァン
もちろん榴弾なので着弾すると爆発音と共に、衝撃波によって煙幕の煙が吹き飛んで視界が少しクリアに。
その後敵の動きを探ろうとした美乃梨だったが森林地帯からこちらに発砲しながら飛び出してきたシャーマンファイアフライと旧砲塔チハを目の当たりにするや否や、即座に穂香へ伝える。
「よしっ視界は少しクリアになった…あとは……、ビンゴ2両出てきた…!」ガコッ
『穂香さん!シャーマンファイアフライと旧砲塔チハが出てきました!』
それを聞いた穂香だったがIV号が出てきてないことに気づくと、そのことに関して尋ねていく。
しかし煙幕に紛れてIV号が出てきた感じは見受けられず、恐らくまだ森林地帯に潜んでいる可能性があるとのこと。
『…IV号は?居ないの?』
『いえ、2両のみです。煙幕に紛れて出ていったようにも見受けられないので…恐らくまだ森林地帯にいるかと…』
可能性として考えられるのは2両を囮として使いこちらの位置特定や、意識をそちらに向けてその間に移動するというのが考えられるが、そんな見え見えの嘘をりほがしてくるとは到底思えない。
ー…2両のみ…恐らく囮なんだろうけど…、そんな見え見えの嘘を隊長がするかしら…ー
何を考えているかは分からない、だが2両が離れたならIV号を撃破するチャンスなのにはかわりなく、穂香は2両の動向を気にしつつも隠れているであろう場所をマークするように指示を飛ばす。
ーでも2両離れたってことは今IV号は1両のみ、なら囲んでしまえば…ー
『美乃梨さん、2両の動きをできる限りマークしつつIV号の警戒を。こちらは接近して撃破を試みます』
『了解です』
とまあそんなやり取りをしている最中、動き出した2両の車内では本当にこれで大丈夫なのだろうか…と一年生チームが不安そうな表情を浮かべている。
「…大丈夫なのかな、この作戦…」
「うーん…わかんない」
とは言え先輩の隊長が言うなら信じるしか手はないため、インカムで漣がやるしかないよ…と小さな声でみんなを宥めていき、こはねもうん!と頷いた。
「でも他にないし…隊長に言われた通りのことをやろう…」
「うん…だね!」
その頃森林地帯では予想通りIV号が茂みに隠れるように待機しており、りほが双眼鏡で周辺を索敵を行っていく。
「………」
恐らく…いや分散したとなれば間違いなく脅威度の高いこちらを穂香は狙ってくるのは確実、もちろんそれを想定してのこの動きだ。
大胆な動きに出たねーと洋梨が砲手用ハッチから顔を出しながらそう口にしていき、りほもこの作戦がやりやすいからと答える。
ー分散したとなれば脅威度が高いのはこっち…なら優先的に狙ってくるはずだけど…、いや生徒会長なら狙ってくるー
「にしても大胆な作戦に出たよねー、一年生と分散って」
「うん、でも現状このほうがやりやすいんだよね。作戦として」
確かに一年生と分散するとなると経験不足なほうが襲われた場合、こちらが孤立してしまう上に、逆にこちらが撃破されるとなし崩しにチームが崩壊してしまう危険性が高まる。
とは言え固まって行動していてもこちらは思うように動けないため、ならば敢えての分散行動…という作戦にでたらしい。
「確かに分散したらしたでリスクはあるけど、固まってると動きにくい…なら敢えての分散ってね」
そんなことを話している間にも、IV号が隠れている森林地帯へ近づいたT-34Eとヘッツァーの2両は一旦手前で停車。
離脱したシャーマンファイアフライと旧砲塔チハの動向やこちらに来ないことを確かめると、スーパーパーシングにも捜索を命じた。
「停車、美乃梨。一年生チームの方はどう?」
『こちらに接近する気配はなし、そのまま離脱していきます』
「りょーかい、なら一旦こっちに加勢してIV号を探すのを手伝ってくれる?」
『わかりました』
もちろん地上側もであり、美梨里に対して穂香はスーパーパーシングと入れ違いで高地へ展開するように指示。
それを聞いた彼女もはいと答えていき、車内に指示を出すと移動を開始。スーパーパーシングと入れ違う形で高地へと登っていく。
「美梨里さん、今から高地に展開してる美乃梨さんが降りてくるからチェンジで高地に」
「わかりました…!高地へ移動するよっ」
ガコッ
ブロロロ
というのもヘッツァーは乗車人員が少ない分1人の役割が多い、その上車体が低いため待ち伏せは得意だが敵を探すのは背が低い分森林地帯などでは不向き。
なのでここで交代することでヘッツァーの弱点をカバーしつつ一気にIV号との勝負に蹴りをつけるといったところだろう。
ー流石にヘッツァーだと森林地帯での索敵はIV号に部がある…ならスパパと交代することでその弱点をカバーしつつ一気に蹴りを…ー
そうこうしているうちにスパパとヘッツァーの交代が済み、いよいよ突入といったところで穂香は美乃梨へインカムで合図を送り、それを聞いた彼女は車内へと指示を出した。
『交代完了しました!』
『りょーかい、なら突入するわよ』
『了解です』
直後弾かれたようにスパパが動き出していき、それに続く形でT-34Eも移動を開始、生い茂る草をかき分けながらゆっくりと森林地帯へと2両は入っていく。
「こっちも行くわよ、和奈。前進」
「ほーい」
ガコッ
キュルキュル
2両が突入した頃スパパとチェンジする形で頂上に登って射撃位置についたヘッツァーの車内では、音見がこのタイミングで離脱した2両が襲ってきたらどうしよう…と不安そうな表情を浮かべていた。
「…でも大丈夫…なのかな、このタイミングで離脱した2両が襲ってきたりとか…」
まあ確かにこのタイミングで離脱した同じ1年生チーム2両に襲われたら、固定砲塔のヘッツァー1両では太刀打ち出来ない。
だがそれは反撃する余裕があったらの話であり梨里は大丈夫大丈夫と、理由も付け加えながら安心させるように話しかけていた。
「大丈夫大丈夫ー、それはこっちに反撃する余裕があったらの話。私ならこのタイミングで反撃なんて絶対出来ないしー」
だといいけどねーとユキがそんなことを呟いている頃、その離脱した2両は茂みに身を潜めており、こはねは双眼鏡で頂上の様子を伺っていた。
「……」
というのも離脱したのは嘘、実際はスパパを地上に誘引するためりほが提案した作戦。
実際狙い通りにスパパは地上へと降りていき、交代でヘッツァーが登って陣取っており、位置的にも充分奇襲可能。
こちらに注意がいってないことを確認したこはねはインカムでりほへと報告を行っていく。
『こちら7号車こはねです、隊長の狙い通りヘッツァーが頂上に陣取りました』
『りょーかい、なら手はず通りにお願いね』
そう返答を聞いたこはねは隣に停車しているシャーマンファイアフライのハッチから顔を出していた漣に対して援護射撃をお願いしますと告げながら、車内に戦車前進を指示していき、旧砲塔チハが弾かれたように動き出していくのであった。
「漣さん、援護射撃。お願いします」
「うん…」
「咲希ちゃん、前進」
「オッケー!」
ガコッ
キュルルルル