イメージとして、真希さんはオールマイトに出会う以前からずっと鍛え続けてきた分、原作出久より圧倒的に強いです。
……まあ、こっちの出久もなんだけど。
始まりは3月下旬のこと。
死柄木弔を筆頭とする敵連合と、それに追従した総勢10万人以上の軍勢――超常解放戦線。
ヒーローらはその殲滅のため、水面下で入念に調査、準備し、やがて実行に至った。
だがその戦いは壮絶を極め、敵、ヒーロー共に多くの死傷者を出すことになった。
加えて、そんな『全面戦争』の結果起きた、和歌山、大阪、京都、三県にまたがって発生した大規模破壊。
戦いのさ中、敵連合
それらに伴うヒーローたちの信用の失墜。
巨大監獄タルタロスを始めとした、監獄各地の襲撃によって野に放たれた凶悪敵、ダツゴク。
ヒーローらを見限った市民らによる武装蜂起。
そんな両者らの戦いと、それを止めるために駆けつけたヒーローたちと、そんなヒーローたちに浴びせられる非難と。
そんな現実に打ちのめされた結果、引退が相次ぎ、数を減らしたヒーローたち。
それでも、敵たちは待ってはくれない。
彼らを解き放ち、陰からほくそ笑む黒幕もまた――
「ぐぅぁッ……!!」
それを理解しているからこそ、オールマイトから個性を託された真希は、止まることなく、休むことなく、戦い続けていた。
平和を、人々が笑って暮らせる世を取り戻すために。
たとえ、友たちを
「ザコどもが……」
雄英ヒーロー科1年、A組B組38人。
かつて、雄英体育祭で真希を下した
そんな彼ら全員を、そして、最後に立っていた爆豪勝己を、真希は、倒してしまった。
「お前らが強いのは認める……けどな――」
自身を中心に倒れている38人に向かって、真希は、語り掛けた。
「ヒーロー科全員で寄ってたかって、
倒れている者たち全員……何も言い返せない。
彼女の身を案じ、倒すのではなく、あくまで捕まえるために戦っていたのは事実。
それでも、刀を置いた彼女が、一瞬でA組 轟と、B組
彼女の持つ『個性』、
それは、歴代たちの積み重なった身体能力に加えて、彼らが使ってきた個性もまた宿り、そして、目覚めていた。
だと言うのに、彼女は
「分かったらこれ以上邪魔すんな……これは私の戦いだ。ガキどもは引っ込んでろ」
「……アナタこそ、私たちと同い年のガキでしょうに」
倒れている38人のうちの一人が、殴られた腹を押さえて、ふらつきつつ立ち上がっていた。
「アナタだけではない……これは、私たち、全てのヒーローたちの戦いです。いくら、オールマイトから個性を託されたからと、思い上がらないでいただきたい」
1年A組
ヒーロー名:クリエティ
個性:創造
立ち上がった、八百万百を見て、真希は舌打ちした。
「そのオールマイトも、
「ええ、そうです……そして、
そんな百の言葉に、真希の眉はピクリと反応した。
「緑谷出久さんはいなくなり、目標としていたオールマイトは引退、目指していた禪院家の頭首という野望さえ、叶わなくなってしまった……そんなアナタに残されているのは、オールマイトから託された個性と、その個性に込められた使命だけ」
「……なにが言いてぇ?」
「憧れも、目標も、全力を尽くすための理由の全部、一度に失くして……今のアンタは、無くなった理由の代わりに、
「……」
「言い訳を見つけた後は、やみ雲に人助けして、敵を倒しまくって、必要とされてる気になって……やり場のない不満と個性を持て余して暴れまわってる今のアンタが、その辺の敵や、私たちみたいなガキと何が違うっていうのよ? 真希!?」
「うるっせーぞ!!
他でもない、生き別れた双子の妹の名前を叫んで、強気に叫びながらも痛みにふらついている妹の前に立って、その胸倉を掴んだ。
「テメーにだけは言われたくねーんだよ!! 個性や弱さに甘んじて、勝手に拗ねて諦めて、禪院家から逃げていったテメーにだけは!!」
「……ええ、そうよ。私は逃げた。戦うのもゴメンだし、強くなんかなりたくなかった。だから逃げた……真希と一緒に逃げたかった!!」
「そうだな、そりゃあ逃げるのが一番楽だったし、それだって間違っちゃいなかったろうさ。てか、それが私らにとっての正解だったんだろうよ……それでも私は残った。『無個性』だろうが強くなるために毎日血反吐を吐いた。それで個性も勝ち取って雄英にだって入った。ただ『個性』を持ってるってだけでロクに痛い目も見ねぇで、温室でヌクヌクお勉強してただけで雄英に入れた、お坊ちゃんお嬢ちゃんとは違ぇ。個性も、個性に込められた重さも、お前らとは違ぇ。全部が全部、お前らとは違ぇ! 一緒にされるだけムカつくだけだし、仲間ヅラされてもイラつくだけだ!! だからそのまま温室に引っ込んでろ!!」
「……ハンッ」
力を込められながら言われた真希の言い分を、
「結局はソレが本音なんじゃない……特別な個性を手に入れた自分は、私たち一般ピープルとは違うんですーってイキり散らして、あわよくばAFOを倒して、ずっと自分のことバカにしてきた連中や社会に向かって、ザマぁしたいだけなんでしょう?」
「……」
真希は手を離し、地面に刺さしていた刀を取った。
「肯定も否定もしねぇ……だが言えるのは、少なくとも今の私は、ソレができるだけの力を持ってるし、それをする義務があるってことだ」
眼鏡を掛けつつ
「お前らには無理だ。私が全部片づけといてやるから、お前らは雄英にいろ」
「真希!!」
「じゃあな……
一言だけ残して、『個性』を発動。強化された脚力で地面を蹴り、彼女らの手の届かない、遠くに向かって――
――領域展開
時刻は午前中、人々が仕事や学校へ向かう時間帯。
天気は快晴。数時間前に登った太陽が、午前中の爽やかな空気を照らし出している。
だというのに、学ラン姿で道の上に立っている人物は、爽やかという言葉とは裏腹にイラついているのが見て取れる。
「ごっめーん、マッキー! 寝坊しちゃったー♪」
「遅っせーぞ!
『マッキー』が叫んだ先には、セーラー服を着て左手に学生カバンを持ち、右手に握ったフランスパンをかじりつつ走ってくる、出子の姿があった。
謝っているふうな言葉とは裏腹に、口調や声色には反省以上に、マッキーなら許してくれる♪ そんな見え透いた甘えが浮かんでいて。
「たく……罰としてフランスパン半分よこせ」
「あー! それわたしのー!」
出子のフランスパンを半分千切って、走り出した。
「ほらー! 捕まえてごらんなさーい!」
「言ったわねー!」
沈みゆく夕日が世界を包み、空を、空間を、そして海面をオレンジ色に染め上げる。
同じように、オレンジ色に染まったマッキーと出子の二人もまた、追いかけ、追いかけられる姿は、実に楽しげで、幸福に満ちていて……
「すっげー! 空を飛んでるぜー!」
夕日が沈みゆく海を走る、豪華客船、その先頭デッキにて。
手すり一つを隔てたそこは、船の上のどこよりも海に近く、加えて前に進む船の風をもろに受ける場所。
遮るものはなにも無く、船が前進するままに、出子に支えられながら両手を広げるマッキーもまた、風を切り、空を裂いていく。
それは正に、全てから解放され、空を飛んでいると錯覚するのも無理は無く……
「それー!」
「やったなー!」
月が高く上った夜。船体は傾き、もはや半分が浸水している。積載された救命ボートは乗客の数にはまるで足りず、船上に取り残された大勢の人々が、逃げ惑い。泣き叫び。
そんな船上の、浸水している部分にて。マッキーと出子は笑顔で水を掛けあっていた。
(ああ、楽しいな……いつぶりだよ、こんなに胸がときめくのは……)
(継いでよかった。ワン・フォー・オール……)
……てッ
「なぁーに幸せいっぱいの夢見せてくれてんだああああああああ!!!」
マッキー……真希が絶叫し、『個性』を解放。
それらが一斉に噴出した結果、満月の夜空も、沈みゆく豪華客船も、出子も消えて……
「よぉ……帰ってきてきたのかよ。出久」
光源が見えないのに明るい空間。空には巨大な紅白の飾り紐――水引。
地上には瓦礫でできた、木造家屋の骨組みのような物体が散らかり、それに夥しい数の日本刀が突き刺さり。
そんな空間に立った真希から、数メートル先に……
セーラー服姿じゃない。ヒーローコスチュームと、サポートアイテムの日本刀を携えた少年――
緑谷出久が立っていた。
「……ごめん、真希さん。帰ってくるのが遅くなって」
「……そうだな。お前が日本にいてくれりゃあ、こんな苦労せずに済んでたかもな」
それは皮肉であり、だが同時に事実でもある。
「おかげで、顔も手も、ケガと火傷でこんなグズグズになっちまった……だが、それはもういい。とっとと
「……」
「立ち止まってる暇は無ぇ。ヤツらに時間を与えるわけにいかねぇ。ヤツらの狙いは
「疲れるでしょう、それ……」
「あいにく、疲れたなんて言ってられる場合じゃねーんでな……分かったら、とっとと私をここから出せ。お前が作った空間なんだろ? わざわざ私を捕まえるために」
先ほどまで見ていた、幸せ? な夢と、直前までいた破壊された街とは明らかに違う場所。
そんな不自然に過ぎる空間の中心に立つ、『例外』に過ぎる力を持った少年を見れば、諸々の事象の全てに納得できてしまう。
だから、さっさと出してくれるよう、お願いしてみたのに。
「そう……ここは僕が作りだした
結局、この空間にの外いるんだろう、ヒーロー科1年の連中と同じ。
戦って、分からせるしかない。
「そーかよ……言っとくが、お前相手に手加減はできねーぞ?」
「手加減してあげようか?」
「いらねーよ!!!」
ペッタン ペッタン
ペッタン ペッタン
粘着性のある柔らかい物体が、硬い木の上で伸び、広がり、踊っている。
和菓子職人の格好をした、出久と真希。うち、真希は思い切り振り下ろし、叩いた後の杵をすぐに振り上げ、出久は持ち上がっている間に臼の上の餅を回していく。
「まぁ、そりゃあ真依……百の言った通りだよ。オールマイトが個性を譲渡してくれるって聞いた時は、そりゃあ普通に嬉しいと思ったし、チャンスだと思った。これで無個性じゃなくなる。なれるわけねぇって言われてきたヒーロー目指せる。ヒーローになって、どいつもこいつも見返してやれるってさ」
シャカシャカシャカ
シャカシャカシャカ
「そうだ……私がヒーロー目指してたそもそもの理由は、私を無個性だってバカにしてた連中を見返すためだった。で、見返した後で、禪院家の頭首になって、禪院家の連中全員を見下す……結局は復讐だ。今まで散々されてきたことに対してのな」
「……せんぶり茶です」
バーのカウンター席で愚痴っている間に、バーテンダー姿の出久が出したグラスを一口……
「苦っげぇ……ッ」
「大将、トロとイクラとカッパ巻き頼む」
椅子に座り、注文をした時、寿司職人の姿をした出久は言われた寿司を握り、巻き物を巻いて、真希の前に置いた。
「だから正直、OFAに込められた宿命だとか運命だとか言われても、ピンと来なかったし、実感も湧かなかった。どっちにせよ、私がオールマイトみてぇなヒーロー目指すことは変わらねぇ。後はなるようになるだけだ……うま……そう思って時に、禪院家の実家が襲撃された。そこにいた奴らは全員、良くて大ケガ、悪くして何人も死んじまってよぉ。その後には、オールマイトも引退しちまった。お前もいなくなっちまうし、おかげで最終的に、目指してたもんが無くなった。見返してぇ連中もいなくなった……美味い……そんなふうに、夢も目標も失くしちまってた時に起きたのが、あの全面戦争だ……美味ぇ」
「こちら、店からのサービスです」
夜中の屋台の椅子に座りながら話しているうち、出久が出した皿には、たっぷりのおでんの具材が入っていた。
「そこで、死柄木を見た時、感じたんだよなぁ……こいつには勝てねぇって。後で知ったが、死柄木は本当なら、ミルコに襲撃された時点で死んじまってたらしい。その直後、そばにいたヒーローも気づかねぇ強さの電流が流れて、死柄木は生き返った。たった一人の執念が、たった一度の奇跡起こして、その結果が、今のこの国の有様ってわけだ……アイツの破壊活動に、理由は無ぇ。信念も無ぇ。あるのは、ただ『壊す』ってだけの、単純だが分かり易い、強すぎる『執念』だけ。空っぽな雑魚だと思ってたヤツは、私には無い……失くしちまった武器を、とっくに持ってたんだよ」
喋りながら、立っている真希は持っているお盆からお椀を取り、座っている出久の持つお椀の上へ持っていく。そこに、一口分の蕎麦を入れ、出久はソレをズルリと平らげ、空になったお椀を再び真希の前へ、を、繰り返す。
「目指してた目標が全部消えちまって、残ったのは、ソレを実現するために何となく目指した、『ヒーローになる』っていう漠然とした夢だけ……そんな、誰よりもヒーローに向いてねぇ空っぽな私が、ヒーローになる方法はよぉ、もう、オールフォーワンを倒す。それっきゃねーんだわ――」
話を終えて、
「だから、私が、私でいるために、これ以上邪魔すんな」
「……」
空間が店から、再び夥しい刀と瓦礫の山に変わる。
そこには、それぞれの刀でつばぜり合う、ヒーローコスチュームを着た二人の姿があった。
「つーか、何なんだよ、さっきから。何の個性だよ、こりゃ?」
「『
「そーかよ……ならこれ以上、長引かせるわけにはいかねーな!」
個性『
眼鏡を外した真希の身から発生した煙が、周辺を覆い、出久の視界を奪う。
出久は、手近に刺さった刀を握る。
「個性……『剛翼』」
背中から生えた紅い翼を振るい、力のかぎり扇いだ時。
晴れた煙の向こうから真希が刀を構え走ってきていた。
それを、刀で受け止めるも――かなりの力に振るわれて、出久の身が後ろへ吹き飛んだ。
「個性『透明化』……!」
吹き飛びながら別の刀を引き抜いた瞬間、出久の身が透明になり、消えた。
「ワンフォーオール・フルカウル……
そこで真希は、OFAを発動。本来超パワーを発揮するための力の一部を、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚……全ての感覚器官に巡らせる。
あらゆる物が視え、聴こえ、空間を
ただ力まかせの超パワーを発揮するだけではオールマイトは超えられない。そう考えて、真希が独自に考えて、あみ出した、歴代も、オールマイトさえ使ったことのない、真希だけの
「――そこ!!」
ハッキリと変化した
「フルカウル、『
捕まえた見えない出久に向かって、個性を発動させ突撃。
「OFAフルカウル――ウィズ竜骨!」
加えて、フルカウルの力を刀へ集中。瞬間、峰からエネルギーが噴射し、威力が向上。
出久の刀を叩き下り、丸腰になった出久を殴り飛ばした。
「言ったろうが! お前に守ってもらうほどか弱い乙女じゃねぇ! 私はもう、お前と一緒に誘拐されて何もできなかった私とは違ぇ! お前のことも、私が全員守ってやっから、これ以上邪魔すんな!!」
「うん……知ってるよ。真希さんはとても強いって」
殴り飛ばされて、それでも立ち上がりながら、真希に、笑顔を向けた。
「君の本音は分かった。戦い続ける理由も……動機や心根はどうであれ、それでも
「そんなもん、ヒーローなら当たり前だろうが。それに、個性を継いだ私には、戦い続ける義務があるんだよ」
「そうかもしれない。きっと、OFAを継ぐってことは、そういうことなんだろうね。僕が君と同じ立場だったなら、同じことをしてたと思う」
「随分と分かったふうな口効くじゃねーかよ?」
「分かるよ。だって……」
「僕も、OFAの継承者だから」
言われた真希は、さすがに面喰らった
「……は? なに言ってんだ? お前の個性は『ネイカ』だろう?」
「そうだよ。『物間寧香』ちゃんがいなくなる時に、遺してくれた『個性』……その個性を僕へ譲渡するために、誰の個性をコピーしたか覚えてる?」
「あ……」
そこで、真希も思い出す。
神野区でAFOを倒した後で、『物間寧香』が消える時、彼女がずっと探し、ようやく見つけて、手に入れることができたという『個性』。
その個性を利用して、『無個性』だった緑谷出久に託された
本人は覚えていないと言っていたが、そんな個性を持つ人間は、
「じゃあ、あの部屋の隅にいたのって……」
同時に、思い出した光景があった。
眠りについている時に見た、部屋。そこには、歴代のOFA継承者たちが座っていた。
オールマイトもいたが、その姿が他と違っておぼろげだったのは、彼がまだ生きているからだろう。
だがそんな部屋の、隅の方に、一見すれば見逃してしまうほど、オールマイトよりはるかにおぼろげで、小さな小さな影があった。
歴代も誰も、何も言及していなかったから気にせずにいたのだが……
「僕の個性は『ネイカ』だけど、同時にコピーされたOFAでもある……僕も、
OFAを持つ人間は、私一人じゃなかった……
そんな衝撃の事実を聞かされて、真希は――
「だったらよぉ……なおさら全部、私がやるしかねーじゃねぇかあああ!!!」
刀を握りしめ、出久へ振るう。出久は新たに引き抜いた刀で受け止める。
「オールマイトも、禪院家も無くなった私に残されたのは、オールマイトからもらったOFAと、そっから来る義務だけ……なのに、それも他に代わりがいるっていうならよぉ――いらねーじゃねぇか!! いる意味ねぇじゃねーか!! 今までしてきたこと全部!! 私が今日までやってきたことの全部、無駄だったってことじゃねーか!!!」
そこからは、戦略も何もない。個性の発動さえない。
ただやみ雲に、力任せに、感情のまま目の前の相手に、刀を振り回すだけ。
「もう他にねーんだよ!! これしかねーんだよ!! 私がここにいるって!! 私が!! 生きてたって言える方法は!! そのために!! 死柄木を!! AFOを!! ぶっ倒す以外に、できることねーんだ!!」
「私の存在意義を!! 生きてたって証明を!! 盗るんじゃねえええええええ!!!」
「違う!!」
出久もまた、力のかぎり刀を振るう。
出久の刀は折れたが、真希の握っていた刀は飛んでいき……
弾かれて、フラ付いた真希を、出久は抱きしめた。
「OFAがあるから、君が生きてるんじゃない、君がいたから、OFAは生かされた……動機は不純だったかもしれない。下心や野心もあったかもしれない。だからこそ君は力を出せた。全力で生きられた。そのおかげで救われた人たちだっていた……君がいたから、みんなが生きてこられた。僕だってその一人だ」
互いの顔を突き合わせ、戸惑う真希に、言葉を送り続けた。
「僕がここにこうしていられたのも、君がOFAを継承していたからだ……偶然だったかもしれない。君からしたら、自覚は無いかもしれないけど、君が僕と、寧香ちゃんの、二人を救ってくれた。君のおかげで僕は、自分が生きてていって思えるようになったんだ」
「私が、出久を……?」
「僕だけじゃない。たとえ、本音が君自身のためだったとしても、そんな君の行動のおかげで、君に救けられた人たちはいた。君自身が生きていくためにしてきた行動は、君の周りにいた人たちを生かしてあげられた。だから、僕以外の生徒たちも、必死で君を止めようとしたんだろう? 君のことを、生きてていい人だって思ってたから」
今日まで救けた人……
怖がって逃げた人たちもいた。ヒーローだからと罵声を浴びせられもした。
けど、救われたと感謝してくれた人たちもいた。
「そんな人たちが、今の君の姿を見て、笑ってくれると思う? たった一人やみ雲に走り回って、終わりの見えない戦いを続けて、傷ついて、ボロボロになって……君の周りには、大勢の仲間がいるのに」
「私は……OFAの継承者で、AFOを倒すのが義務で……」
「そうだね。それは変えられない……けど、義務は一人で背負う必要はない。君はオールマイトとは違う。誰かに頼ったっていいんだ。みんなや、僕に、助けを求めたっていいんだよ」
「……」
自分にはもう、OFAしかない。そう思ってきた。
だから、強くなろうと、なるしかないんだと、自分に言い聞かせ、事実、力をつけて、技をあみ出し、強くなっていった。
おかげで今まで戦えてきた。戦っている間は、自分は間違っていなかった、そう思うことができた。
空っぽな自分でも、ヒーローになれるんだって。
ヒーローでいていいんだって。
ここにいること、生きていたこと、証明できるんだって。
だから、戦い続けてきた。
戦わなければ、生きていけないと思ってた。
けど、本当は……
「疲れた……辛い……もう嫌だ……」
その言葉を漏らすこと、いつからやめたろう……
いつから、本音に蓋をしてきたろう……
「痛い……苦しい……休みたい……怖い……」
一度漏れた本音は全部、目の前の……愛しい人に、向けられた。
「たすけて……出久、たすけて――」
涙ながらに、そう本音を吐露した真希を……
出久は、再び抱きしめた。
「もう大丈夫……僕が来た」
……
…………
………………
「ねぇ、これ本当に大丈夫なの?」
「まだどこかに敵がいるんじゃあ……」
巨大ではあるが、それほどの規模には感じない。
突然現れ、真希を閉じ込めてしまった。そんな球体の周りに集まった、雄英ヒーロー科1年たちは、口々に不安と警戒を漏らしていた。
彼らに付き添っていたプロヒーローらも、同じ顔をしていたが……
「大丈夫だ……彼なら、上手くやってくれる」
唯一、コレの存在を知っているらしい、No.2ヒーロー ホークスは、そうたしなめ、微笑みを見せ、信頼に満ちた声を上げている。
「彼とは――」
プロヒーローの一人が、それを尋ねようとした瞬間――
球体が突然ひび割れ、硝子が割れる音と共に砕け散った。
そんな、割れた球体の中から――
剛翼を広げ、地上へゆっくり降りてくる、雄英高校の『例外』――緑谷出久と。
そんな彼の腕の中で、安心しきったように眠りにつく、禪院真希の姿があった。
原作出久との最大の違いは、真希さんには爆豪勝己がいなかったことかもしれない。
……せっかくだから、皆さんに決めてもらおうかしら。
真希さんの火傷どうしよう?
-
残せ
-
治せ