荒木節って難しい……
「おい、デク。
場所は雄英高校、ヒーロー科訓練用のグラウンドにて。
死柄木およびAFO、解放戦線残党、ニアハイエンドと呼ばれる脳無たち。
そんな強敵らとの『第二次決戦』に備えて行っていた訓練のさ中。
一通りの訓練をこなして休憩に入ったタイミングで、爆豪勝己が緑谷出久に話しかけていた。
「領域って……真希を捕まえて、訓練でも使ってくれた『領域展開』って技のこと?」
他のヒーロー科生徒らも、タオルと水を差しだすメリッサ・シールドの隣で汗だくで座りながら息を切らしている、出久の周囲に集まりだした。
「阿保か。お前の『爆破』と同じで、ありゃあ出久の個性有りきの技だって見て分かんねーのか?」
「んなこたぁ分かっとるわ! それが普通の使い方じゃねーから俺でも出せるか聞いてんだろーが!! テメーは黙っとけ眼鏡女!!」
「んだとッ、爆発ヒス野郎!?」
「あぁん? やんのかコラァ?」
「やめたまえ爆豪君! 近いぞ!」
「爆豪、止せ。それ以上真希に近寄るな」
今にも喧嘩が始まりそうな二人を前に、
「デク君、汗とかすごいけど、大丈夫? その、領域のせい?」
「ふむ……アレのおかげで、我らも良い訓練になっておりますが、使う前と後の緑谷殿の消耗が目につきますな」
二人の喧嘩をよそに、A組
彼女らの言う通り、出久は自身の最終奥義である『領域』をこたびの圧縮訓練で使用していた。
領域展開で爆豪らヒーロー科生徒を閉じ込め、その領域内で出久がコピーしてきた個性と完全顕現されたネイカを使って麗日らと戦う。
ほんの数分しか出していられないが、どんな個性を使うか分かっている敵連合やダツゴクらとは違う、未知の
汗を拭い、呼吸を整えた出久は、集まった生徒らに笑顔を見せた。
「……うん、そう。領域展開は使うと、体力がごっそり持っていかれるんだ……えっと、多分、かっちゃんには無理だと思う。僕の個性『ネイカ』は
「そーかよ……なら、あの黒い火花の打ち方は?」
「『黒閃』のこと? あれも、かっちゃんには無理かな? そもそもあれは、技っていうより現象だから。コピーしてきた個性の中から、特に最適な組み合わせの三つを、100万分の1秒以内の誤差で……要するに、とても相性の良い三つの個性を全く同時に当てる必要があるんだ」
「……てことは、『炎』と『氷結』の二つしか無ぇ俺にも無理だな」
「轟君の場合は、『半冷半燃』ていう一つの個性としてカウントされると思うけど」
と、同じく聞いていた轟も、落胆した様子を見せていた。
「……そう言やぁよぉ、出久は海外でなにしてたんだ?」
言葉や話題が途切れたところで、真希が別の話題を切り出した。
「主に、現地でのヒーロー活動だよ。授業に出られない代わりとして、現地で敵の討伐や、各国政府から要請された仕事をこなして、それを公安に報告して雄英での単位として扱ってもらってたんだ」
「なにそれ、すっげぇ……!」
「イズク、すごい……」
授業の一環。単位の取得。そんな学生らしい目的を果たすための手段の凄まじさに、聞いていた生徒全員が息を呑んだ。
「うん、そう。僕はすごいでしょう……僕はもう、奥さんがいなきゃ何もできない、出来損ないの木偶の棒のデクじゃないぞ」
口々に、出久を褒めたたえる声を浴びながら、出久は顔を上げ、胸を張り、断言した。
「今の僕は――バツ1こ持ちのデクだ!」
「余計ダメじゃねーか!!」
「つか、バツイチはともかく、どこに子供がいるんだよ?」
「今の個性の『ネイカ』は、『物間寧香』ちゃんが遺してくれた、僕との子供みたいなものだし……」
「こ持ちって、
真剣そのものな出久の突飛な発言に対して、全員が声を上げ、そして、笑い合った。
「なぁなぁ、海外でやってたこと教えてくれよ? 政府からどんな仕事任されたんだよ?」
「聞きたい! 聞きたい!」
「出久、私にも聞かせてくれ」
「えっと、その……ごめん、守秘義務があるから」
日本のヒーローの仕事にも、公にできないような事件や敵を扱う例は多い。
出久の場合もそうらしい。プロヒーローを目指す身として有意義な話が聞けると思っていた生徒たちは、残念そうに肩を落とした。
「でも、そうだな……敵が出てこないし、あの話なら、多分話しても大丈夫かな?」
と、落胆している生徒たちに出久が言ったことで、再び全員の視線が出久に注がれた。
「これは、今言った通り、敵や、組織とかが一切出てこない、単純な調査の仕事だったんだけど――」
エピソード# 溶ける森
上へ上へとたくましく伸びた茶色と、青々とした緑色の情景が、上と左右と、下にも広がっている。一歩踏み出すごとに、柔らかな草地が沈み込み、踏まれこすれ合う足音が、外来者の存在を示している。人数は二人……
「ほんの少し前にデカイ宗教組織を滅ぼしたその足で、こんな森の中を歩かされるなんテ……いくらお前の授業の一環だからと言って、もう少し選り好みするべきじゃないのカ?」
「内容はどうあれ、依頼には違いないし。それに、困っている人がいるんだ。これだって立派なヒーローの仕事だよ」
前を歩く、緑谷出久に対して、後ろを歩く黒人男性は文句を垂れている。
出久は、優しく笑いかけていた。
「だから、嫌なら留守番しててもいいって言ったのに。前にも言ってた通り、ミゲルの仕事は道案内までで、僕の仕事の手伝いまでする義務は無いんだから」
「まあナ。だが、戻ってくるまで暇なんダ。それに、あまりお前から離れすぎて出会えなくなったら、契約金を受け取れない可能性もあル。金を回収するまでお前のそばから離れるわけにはいかないんダ」
「そういうものなんだ……じゃあ、なるべく早く済ませるようにするよ」
「ぜひ、そうしてくレ」
喋りながらも警戒は解かず、軽口を言い合いながらも常に周囲に気を配る。
人間、どころか動物の気配さえほとんど無い森の中でも……
奥へ進むごとに、深く進むごとに、二人の口数も減っていき――
「森の入り口から、北西へおよそ20キロ地点……この辺りだ」
「普通なら2時間。舗装もされてないから、普通の人間なら3時間は掛かっただろうガ……ちょうど1時間で着いたナ」
道中でさえ、見上げるほどの巨木や緑に囲まれていた場所の、更に奥の奥。
下を見ても、緑。左右を見ても、緑。上へ見上げても……
「立派な樹ダ」
「うん。樹齢何百年……いや、千年は超えてるかな?」
ここへ来るまでにもいくつも見ることになった、長く太く、空高く伸びた巨木に囲まれたそんな場所にいても、一際目を引く中心の樹。
おそらくこの森に生きる生物の中で、最も巨大で、最も高齢。まるで古の時代に、あるいはファンタジーの世界に迷い込んだかのような……そう思わせるほどの巨大樹が堂々と鎮座する様は、まるでこの森という世界の中心にあるようであり、まるでこの森全てを支配する、王の貫禄さえ醸し出している。
「……それじゃあ、霧も出てきたし、調査を始めるよ」
「オオ……もっとも、調査なんか今さら意味があるのカ?」
ミゲルがついボヤいてしまった、出久に課せられた調査の仕事……
一ヶ月ほど前、この森に残る豊富な木材を伐採・採集するために、十数人の木材業者がこの森に入っていったが、彼らが戻ってくることは二度と無かった。
そのことを嘆いた家族らの嘆願によって、山岳救助隊はもちろん、護衛のためのプロヒーローらも含めた捜索隊が組まれたものの、やはり一人として帰ってきた者は無かったらしい。
大きく深い密林ではあるが、森のプロも含めた大勢の人間が一度に遭難するという事態はさすがにおかしい。
野生動物に襲われたか。森に
いずれにせよ、現段階で手がかりは無し。捜索隊が行方不明となったことで、うかつに人を寄こすこともできない。
誰もが頭を抱えていた時に、偶然にもそれを依頼するに足る力を持っていた人間が――
「要するに、国民やヒーローを浪費したくなかったから、
「それを言われると身も蓋も無いけど……こういう調査仕事だって、ヒーローの仕事だからね。今はとにかく、仕事を、終わらせないと」
調査と言っても、森のことなど何も知らない出久ができることなど、せいぜい彼らが消えたと思しき現場に赴き、辺り一帯を見て回ることくらい。
そのために歩き回っている中、足の裏に柔らかいものを踏みつけた。
ここに来る途中にも、転がった枝だったり石だったり、地面から突き出た木の根だったりを踏みつけることは度々あった。
だから今回も、木の蔓か何かを踏みつけたんだと、最初踏んだ時はそう思った。
そんな、踏みつけたものを見てみると……
「これは――骨? 人骨?」
一見、茶色と緑に覆われた、よくある木の枝にも思えた。
だが木の枝にしては、間に開いている隙間と言い、見知った動物的な――人間っぽい、どころか明らか人間の骨の形と言い……
「これは……これは――!」
踏んだ箇所だけ、じゃない。
木の枝か、植物の茶色だと思っていた。だがよく見れば、今踏んだものの形をした物体が、辺り一帯には散らばっていて。
「ゲッホッ、ゲッホッ――」
思わず出久が口を押さえ、咳き込むよりも前に、ミゲルの咳き込む声が聞こえた。
直後に出久も、突然の出来事に咳き込み始める。
「ゲッホッ、なんだッ、急に、ゲッホッ……喉が、目と鼻も、ゲッホッ――」
目と、喉と、口と鼻の中に酸味が広がる。過去に食べたレモン、間違えて飲んだ酢、それらなど目じゃない、酸味と、苦みと……
「……なッ、皮膚が!」
ぼやけていく視界の中で、全身に広がる、剥がされるようなかゆみと痛みを感じた。
とっさに露出した手を見た時、そこは腫れあがり、爛れているのが見えた。
「ミゲル! 攻撃だ! スデに攻撃は始まっていた!!」
「ゴホッ、ゴッホッ――
ミゲルがたまらず個性を発動した。両足をばたつかせ、響く音と共にビートを刻む。
ミゲル・オドゥオール
個性『ビート』
肉体でビートを刻むことで、身体能力を強化・向上させることができるぞ!
「……だ、ダメダ! 強化系では何の意味も無イ!」
「個性『反転』!!」
パニックを起こしているミゲルに近づき、治癒系個性を発動。
お互いに、異常の現れた箇所が、正常に戻り、痛みが引いていく感覚を覚えるが……
「クソ! 一時しのぎだ、治したってすぐに体が溶けていく!」
「
「とっくに探してる! ゲホッ、音、赤外線……僕が視える範囲に人間は一人もいない!」
「ゲッホ、ゲホ……では、どごがら、どんな攻撃を仕掛けられていル? それが分からなげれば、逃げても意味は無いゾ!」
(唯一持ってる治癒個性の『反転』は5分経てば5分使えなくなる。『超再生』もそれは同じだしミゲルは救えない、霧もどんどん濃くなってる、このままじゃ逃げることも……)
「なら――個性『
反転で治癒を続けつつ、ラグドールの『探査』を発動。個性の内容は元より、発動者が近くにいれば位置も分かるが……
「これは――これは!」
「分かったのカ?」
「霧だ」
「霧?」
「霧だ! この霧が攻撃だ! この霧の全てが、生物を溶かす強酸でできている!」
「強酸性の霧だト!? だったら、完全に霧に包まれる前に、霧の外へ逃げるしカ――」
出久の言葉を聞いて、走り出した時だった。
バシャリと、踏み出した地面から音がした。
と同時に、足もとから……否、履いている靴から煙が上がっていた。
「オオオオオ!!
「こっちもだ!! 霧も濃くなってる――視界が消えるぞおおおおお!!!」
真っ白な濃い霧に全身を包まれ、視界も完全に失った中、とにかくお互いを見失わないよう、背中を合わせ密着する。
だがそんなことをしても、強酸性の霧から逃れることはできない。
個性で治癒を施し続けても、身体はもちろん、衣服の溶解もまた進む。
(どうする! 考えろ! 空を飛んで逃げる? けど、僕の持っている個性は空を移動するだけ、反転が使えなくなる前に霧の外へ逃げられる保証も無い。
「個性『創造』!」
新たに個性を発動。それによって『創造』したものを、背中のミゲルに手渡した。
「ガスマスクだ! とにかく被って!」
「今さら、目や呼吸器だけ守っても意味が無いだろウ!? そもそもこのマスクも、いずれ溶けル!」
「そうだ! だからこれから、この霧を消す!」
「策があるんだナ?」
「個性で体を今すぐ強化しろ!」
出久の言葉を信用し、言われた通りマスクを着け、個性を発動。
出久自身もマスクを着けて、再び個性を発動させる。
(上手くいく保証は無いし、上手くいったとしてもかなり危険だ――けど、反転が使えなくなるまであと1分も無い。時間切れになる前に何とかする方法はこれ以外に無い。これは賭けだ!)
思考しながらも創造した物を、空中へ投げる。
「伏せろ!!」
声を上げ、ミゲルが地面へ伏せるのを感じ取る。直後に新たに、個性を発動した。
「個性『帯電』――無差別放電130万
「……お前、一体ナニしたんダ?」
ガスマスクを着けたまま、丸焦げになった二人。
うち、体中の脂肪を材料に行った『創造』による脂質不足で動けなくなった出久をミゲルがおぶって、元来た道を歩いていた。
その道中で質問してきたミゲルに、おぶられている出久も疲れ切った様子で返答した。
「水蒸気爆発だよ」
「水蒸気?」
「液体に高温の物質や炎が触れたら一気に蒸発して爆発が起きることがある……僕はあの時、大きな水風船を『創造』して、それに130万ボルトの電気をぶつけた。130万ボルトは数千から1万度の熱があるからね。霧で水風船は見えなくなってたし、炎よりも速くて広がる電気を当てた方が確実だったんだ」
「それであんな爆発になったと?」
「もちろん、僕が創造した程度の量の液体であれだけの爆発は起きない。水風船の中身は、カビ取り洗剤――要するに、強アルカリ性液体だよ」
「強アルカリ……つまり、中和か?」
「そう。酸とアルカリを混ぜ合わせると中和反応が起きて、中性になる。それも決して無害ってわけじゃないけど……けど、強酸と強アルカリを混ぜ合わせたら、激しい中和反応が起きて、発熱や突沸が起こって、たまに映画やコミックとかで見る試験管みたいに爆発が起こる。おまけに人体には猛毒の塩素ガスまで発生する。洗剤に『混ぜるな危険』て書いてある理由だね」
「そのためのガスマスクというわけか……」
話を聞いて、一応は納得する。
いくら霧状とは言え、むしろ、どちらも霧状に大きく広がっていたからこそ起きた、激しい中和反応による大爆発。
そんな、爆発やらガスでひどい目に遭ったものの、それでも酸の霧が中和されて、爆風で霧も霧散し視界も開けた。地面の水たまりも、靴が溶けない中性液に変わった。
反転の個性も5分が経過して使えなくなっているが、また5分経てば使えるようになる。ケガや傷が治るなら、これ以上ミゲルに文句は無い。
後は、再び霧に包まれない内に、急いでこの森から離脱するだけ。
「……とにかく、これであの森に入った人たちが帰ってこない理由が分かった。強酸性の霧に包まれて、抵抗も逃げることもできないまま溶けて、骨だけになったんだ。その骨がゴムや植物のように柔らかかったのは、骨のカルシウムが酸に溶けたせいだよ」
「結局、あの霧はどこから発生していたんダ? 個性なのは間違いないだろうガ」
「森だ」
「ン? ああ、だから、森のどこかラ――」
「そう、森だ。この森から、あの霧は発生していたんだ」
ミゲルの質問を遮りながら、出久は確信を込めて言った。
「いや、より正確に言えば……あの霧を発生させていたのは、さっきの場所の中心に伸びていた樹だ」
「樹……あの、一番デカイ巨大樹のことを言っているのカ?」
「そう……探査で霧を調べた時、あの樹から個性の反応があった。人の気配は全く無かったし。あの樹が個性を宿したのか、それとも個性に似た別の何かだったのかは、僕には分からないけど」
「植物に個性ガ……そんなこと、あり得るカ?」
「分からない。でも、個性に目覚めた動物の例もある。植物がそうなったとしてもおかしくはない。そう考えたら、人体が溶けるくらいの強酸なのに、あの一帯の木や草が溶けるどころか、変色さえせず自然な状態のままだったことにも説明がつく。効率よく餌を捕まえるために、個性を使うことにも」
「俺たち人間は、まんまとこの森の狩場に……いいや、胃袋にのこのこ飛び込んだ餌だったというわけカ」
「……もちろん、あくまで状況証拠から来る推測でしかないけど。どの道、ここから先の調査は、現地の人たちにお願いするしかないね」
「正直に報告して、信じてくれると思うカ?」
「渡された高性能カメラには一部始終が撮れてたし、なんとか説明するしかないよ」
そんなことを話しているうちに、『個性』で回復することができたらしい。
ミゲルの背から降りて、再び使えるようになった『反転』をミゲルに施した。
「次の仕事もついてくる?」
「フゥム……留守番するべきかもナ」
……
…………
………………
「結局、本当に恐ろしいのは、人間よりも自然の神秘なのかもしれない……と、こんなことがあったんだよ」
話している内に、汗も止まり呼吸も整った出久を見ながら、聞いていた生徒ら全員、言葉を失っていた。
「中和反応と爆発で霧を吹き飛ばすだなんて、無茶にも程がありますわ!」
「『酸』で霧か、その発想は無かったな……でも気体だと武器としての運用は難しそう……」
真っ先に声を発したのは、出久以上に博識で科学にも詳しい、八百万百と、『酸』の個性を持つA組
「植物に『個性』が……言われてみれば、今までありそうで無かった事例ね」
「私の『ツル』も、あくまで私という人間に宿った個性ですし。そもそもが植物ではなく髪の毛ですが……」
メリッサ・シールドに塩崎茨を始めとした、不可思議な巨大樹に興味津々な者たちの声も上がった。
「ていうか緑谷、ヤオモモに
「うん。まぁ、さすがにまだまだ練習が必要だけどね。八百万さんほど複雑なものは作れないし」
「てか、個性が実質
「なにそれ、なんかズルい!」
「じゃあさ、B組だけど、俺の個性もコピーしてくれよ!」
「え、いいの?」
「おう! 役に立つか分かんねーけど、俺も緑谷の力になりてーんだ」
「いいですな! では、私めも」
「私のもコピーしていいよ」
最初に名乗りを上げた
「それで、その溶ける森ってどこにあったの?」
「それは――」
「おーっと、出久、そこから先は守秘義務違反だよ?」
と、一通りのコピーを終え、話を再開していた出久に、掛けられた声があった。
「ホークス! それに……」
「くぉら! 出久! もっと私に会いに来やがれ!!」
プロヒーローの二人。
現No.2ヒーロー ホークスと、左手を義手で覆っているラビットヒーロー ミルコ。
うち、ミルコは叫んだかと思うと、あっという間に出久の前に移動し、後ろから抱き着いた。
「ちょ、ミルコ、苦しい……ていうか、ミルコには帰国してすぐに会いに行ったじゃないですか……!」
「出久、お前、私よりも先にミルコに会いに行ったのか?」
「うん。だって、そうしないと後が怖いし……」
「どういう意味だコラァー!?」
「痛い痛い痛い、義手で頭つかむのやめて……!」
痛がる出久に、悪戯するミルコ、それに顔をしかめる真希、止めようとしている麗日とメリッサ。
それに笑っているホークスと、A組B組生徒たち……
二度目の全面戦争を前にした、つかの間の安息のひと時のことだ。
うーん、守秘義務。
過去ストーリーをごまかッ、省略するのに、なんと便利な言葉……
ちなみに、化学苦手だし試してないので実際こうなるのかは分からんです。はい。
良い子は絶対マネしないでね。