『獅子と魔法動物学者の継承者たち ―スキャマンダー家の双子とホグワーツ―』   作:夜幻

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本作は、『ハリー・ポッター』シリーズおよび『ハリー・ポッターと呪いの子』を題材とした二次創作です。

物語の舞台は2017年。

かつて「黄金のカルテット」と呼ばれたハリー、ロン、レオ、ハーマイオニーは、卒業後も変わらぬ友情を育み、今では家族ぐるみで互いの家を行き来するほど親しい間柄です。

そんな親たちのもとで育った子どもたちは、幼い頃から一緒に遊び、笑い合ってきました。

そして今、新たな世代がホグワーツへ入学します。

レオとハーマイオニーの双子、兄レオニダスと妹レオナ。

レオの双子の弟ロルフとルーナの双子、ローカンとライサンダー。

さらに、ハリー、ロン、ドラコたちの子どもたちも加わり、次世代の魔法使いたちが集います。

親たちが築いた名声は、子どもたちにも受け継がれていく。

けれど、彼らは親の物語を繰り返すために生まれたわけではありません。

笑って、喧嘩して、失敗して、友情を育みながら、自分たちだけの未来を探していく。

これは、「黄金のカルテット」の次の世代。

新たな魔法使いたちが、自分自身の物語を歩み始める物語です。

※本作には原作とは異なる家族関係・人物設定・オリジナル展開が含まれます。



本編
第0話 オリバンダーの店――二人の杖


2017年、夏。

 

ホグワーツ入学を目前に控えた、ある日のこと。

 

ロンドンの一角にある古びた店の前に、四人の魔法使いが立っていた。

 

「ここだ」

 

レオ・スキャマンダーが、古びた看板を見上げる。

 

『オリバンダーの店――良質な杖の店、紀元前382年創業』

 

その隣には、ハーマイオニー・スキャマンダー。

 

そして、その二人の間には双子の兄妹がいた。

 

兄、レオニダス・スキャマンダー。

 

妹、レオナ・スキャマンダー。

 

二人とも、初めて訪れる魔法界の老舗を前に、目を輝かせている。

 

「ここで僕たちの杖を選ぶんだよね?」

 

レオニダスが身を乗り出す。

 

「そうよ。でも、杖を『選ぶ』というより――」

 

ハーマイオニーが微笑む。

 

「杖に選ばれるのよ」

 

「杖に?」

 

レオナが首を傾げた。

 

そのとき、レオが腰に差していた杖を取り出した。

 

「俺の杖も、昔ここで選んでもらった」

 

一本目の杖。

 

イングリッシュ・オーク。

 

十五インチ。

 

火竜の心臓の琴線とヌンディのたてがみの毛を組み合わせた、特殊な芯。

 

かつて、レオがまだ学生だった頃から共に戦ってきた杖だった。

 

そして――その杖には、今も傷跡が残っている。

 

「神秘部で壊れたんだ」

 

レオは杖を見つめる。

 

1995年。

 

不死鳥の騎士団と死喰い人が激突した、魔法省神秘部での戦い。

 

そのとき、レオはシリウス・ブラックとハーマイオニーを守るため、最後までこの杖を使い続けた。

 

そして杖は、限界を迎えた。

 

「……でも、後悔はしてない」

 

レオは笑った。

 

その後、彼が手にしたのが二本目の杖だった。

 

古代の黒檀。

 

十四と四分の三インチ。

 

ユニコーンの心臓の腱とフェニックスの羽を組み合わせた芯。

 

こちらもまた、簡単には持ち主を認めない、非常に気難しい杖だった。

 

「二本とも、強そう」

 

レオニダスが目を輝かせる。

 

「でもな」

 

レオは双子を見る。

 

「お前たちが、俺と同じ杖を持つ必要はない」

 

「え?」

 

「杖は親から受け継ぐものじゃない。お前自身が選ばれるものだ」

 

ハーマイオニーも頷いた。

 

「あなたたちには、あなたたちの魔法があるもの」

 

レオニダスとレオナは顔を見合わせる。

 

「じゃあ――」

 

「僕たちだけの杖?」

 

「そういうこと」

 

レオが笑う。

 

そして、四人は店の中へ入った。

 

「さて……」

 

店主オリバンダーが、レオニダスをじっと見つめる。

 

「レオ・スキャマンダーの息子か」

 

「はい!」

 

レオニダスは元気よく答えた。

 

「なるほど。父親とは違う杖が必要になりそうだ」

 

何本もの杖が運ばれてくる。

 

試してみる。

 

だが、どれもしっくりこない。

 

「違うな」

 

「これも違う」

 

「うーん……」

 

レオニダスが杖を振るたび、棚の箱が揺れる。

 

そして――

 

「これを」

 

オリバンダーが一本の杖を差し出した。

 

オーク材。

 

十一・五インチ。

 

ドラゴン・ハートストリング。

 

レオニダスが握った瞬間だった。

 

――バシュッ!

 

強い魔力が杖先から弾けた。

 

店内の紙が舞い上がる。

 

「うわっ!」

 

レオニダスが驚く。

 

レオナも目を丸くした。

 

だが、次の瞬間。

 

レオニダスは笑った。

 

「これだ!」

 

オリバンダーは杖を見つめ、静かに頷いた。

 

「オークとドラゴン・ハートストリング……」

 

そして、レオニダスを見る。

 

「強い意志を持つ者ほど、この杖は応えるでしょう」

 

レオニダスは杖を握り直した。

 

まるで、自分の手に馴染むようだった。

 

「よろしくな!」

 

杖に話しかけるレオニダスを見て、レオナが笑う。

 

「杖に挨拶してる」

 

「だって相棒になるんだろ?」

 

「ふふっ。お兄ちゃんらしい」

 

次はレオナだった。

 

オリバンダーはしばらく彼女を見つめた。

 

「では、君にはこれを」

 

一本目。

 

違う。

 

二本目。

 

違う。

 

三本目。

 

やはり違う。

 

レオナは杖を握るたび、首を傾げた。

 

「……何か違う」

 

「何が?」

 

レオニダスが聞く。

 

「分からない。でも……違うの」

 

そしてオリバンダーが一本の杖を取り出した。

 

ウィロー。

 

十インチ。

 

一角獣のたてがみ。

 

レオナが手に取った瞬間――

 

店内が静かになった。

 

派手な爆発は起きなかった。

 

ただ、杖先から柔らかな光が広がっていく。

 

レオナは目を細めた。

 

「……これ」

 

「気に入ったかね?」

 

「うん」

 

レオナは杖を握りしめる。

 

「なんだか、ちゃんと分かる」

 

オリバンダーが微笑む。

 

「洞察力に優れ、持ち主の意志に忠実な杖だ」

 

レオニダスが隣から覗き込む。

 

「僕の杖とは全然違うな」

 

「だからいいんじゃない?」

 

レオナが笑った。

 

「お兄ちゃんが突っ走ったら、私が止めるから」

 

「えっ?」

 

「だって、絶対そうなるでしょ?」

 

「……まあ、たぶん」

 

二人は顔を見合わせて笑った。

 

その様子を、レオとハーマイオニーは静かに見つめていた。

 

レオは自分の二本目の杖に目を落とす。

 

そして、双子の杖を見る。

 

自分とは違う。

 

だが、それでいい。

 

「二人とも、自分の杖を見つけたな」

 

レオが言った。

 

レオニダスは杖を掲げる。

 

レオナも隣で杖を掲げる。

 

一本は、前へ進むための力。

 

もう一本は、進むべき道を見極める力。

 

違う二本。

 

けれど、並んだときには不思議なほどよく似合っていた。

 

「行こう、レオナ!」

 

「うん、お兄ちゃん!」

 

二人は並んで店を出ていく。

 

その背中を見ながら、ハーマイオニーが微笑む。

 

「レオ」

 

「ん?」

 

「私たちの子どもたち、本当に大きくなったわね」

 

レオは頷いた。

 

「俺たちが歩いてきた道を、そのまま歩く必要はない」

 

「ええ」

 

二人は、遠ざかっていく双子を見つめる。

 

「この子たちは、この子たちの未来を作る」

 

2017年。

 

新たな世代の物語は、二本の杖とともに始まった。

 

 

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