『獅子と魔法動物学者の継承者たち ―スキャマンダー家の双子とホグワーツ―』 作:夜幻
2017年9月1日。
ロンドン、キングス・クロス駅。
大勢の人々が行き交う駅の中、その一角に二人の子どもが並んで立っていた。
「レオナ、準備できた?」
「できてるよ、お兄ちゃん!」
元気よく返事をしたのは、レオナ・スキャマンダー。
その隣にいるのは、双子の兄――レオニダス・スキャマンダーだった。
二人はそっくりなところもあれば、違うところもある。
けれど、二人を知る家族からすれば、一番よく似ているところは別にあった。
いつも一緒にいること。
笑うときも。
遊ぶときも。
喧嘩するときも。
そして、何かに挑戦するときも。
今日も二人は、ほとんど同時に自分たちのトランクを見下ろした。
「忘れ物ない?」
「ない!」
「本当に?」
「ないってば!」
「昨日も『絶対大丈夫』って言って、靴下片方忘れてたじゃん」
「それは……昨日の私!」
レオナが頬を膨らませる。
レオニダスは思わず笑った。
「同じレオナじゃん」
「今日は違うの!」
「何が?」
「今日はホグワーツに行くレオナだから!」
「それなら僕もホグワーツに行くレオニダスだ!」
二人は顔を見合わせる。
そして――。
「ふふっ」
「はははっ!」
同時に笑い出した。
少し離れたところでは、二人の両親がそんな様子を見守っていた。
「本当に楽しそうね」
ハーマイオニー・スキャマンダーが微笑む。
「ああ。あの二人らしいよ」
レオ・スキャマンダーも笑っていた。
今日から二人は、ホグワーツ魔法魔術学校へ向かう。
それは、二人にとって初めての大きな一歩だった。
「ねえ、お兄ちゃん」
「ん?」
レオナが小さな声で尋ねる。
「私たち、同じ寮になれるかな?」
「なれるよ」
「絶対?」
「絶対!」
レオニダスは迷いなく答えた。
「だって僕たち双子だもん」
「双子だから同じ寮になるって決まってないでしょ?」
「……それはそうだけど」
「ふふっ」
「でも、もし別々になっても大丈夫だよ」
「どうして?」
レオニダスは胸を張った。
「僕がお姉ちゃんのところに遊びに行く!」
「私、妹なんだけど」
「あ」
「お兄ちゃんでしょ?」
「そうだった!」
二人はまた笑った。
レオナは兄の手を握る。
レオニダスも握り返した。
いつものことだった。
小さい頃から、二人はこうして手を繋いできた。
怖いとき。
寂しいとき。
嬉しいとき。
どんなときでも。
「行こう、お兄ちゃん」
「ああ!」
二人は一緒に歩き出した。
向かう先は――壁。
普通の人間なら、絶対に通り抜けられない場所。
しかし、魔法使いにとっては違う。
「せーの!」
レオニダスとレオナは、ほとんど同時に駆け出した。
そして――。
壁を抜けた。
「わあっ!」
目の前に広がった光景に、レオナが歓声を上げる。
蒸気を上げる赤い列車。
その車体には、大きく文字が書かれていた。
HOGWARTS EXPRESS。
ホグワーツ特急。
これから二人を魔法学校へ運ぶ列車だ。
「本物だ!」
レオニダスの目が輝く。
「お兄ちゃん、見て!」
「見てる!」
「すごい!」
「すごい!」
二人は完全に夢中になっていた。
少し離れた場所から、聞き慣れた声が聞こえる。
「レオニダス! レオナ!」
「……あ!」
二人が振り向く。
そこには、見慣れた顔があった。
「ローズ!」
レオナが駆け寄る。
「レオナ!」
ローズ・グレンジャー=ウィーズリーも笑顔になる。
「遅いわよ!」
「ごめん!」
「レオニダス、またレオナと競争してたんじゃないでしょうね?」
「してない!」
「してたでしょ?」
「してないって!」
「顔に書いてあるわよ」
「えっ!?」
レオニダスが慌てて顔を触る。
レオナが吹き出した。
「お兄ちゃん、引っかかった!」
「レオナ!」
「ははは!」
そのやり取りを見て、ローズも笑った。
そこへさらに声が加わる。
「相変わらず仲いいな、お前ら」
「ジェームズ!」
ジェームズ・シリウス・ポッターが手を振っている。
その後ろには、アルバス・セブルス・ポッターとリリー・ルーナ・ポッターの姿もあった。
「今日から本当にホグワーツなんだな」
ジェームズが言う。
「うん!」
レオニダスが答える。
「楽しみだ!」
レオナも頷いた。
「私も!」
さらに向こうから、聞き慣れた声がする。
「おーい!」
振り返ると、ローカンとライサンダーがこちらへ向かって走ってきていた。
「遅いぞ!」
「待ってよ!」
「二人とも、トランク重くない?」
レオナが尋ねる。
「大丈夫!」
「僕も!」
幼い頃から何度も一緒に遊んできた従兄弟たち。
今日からは、同じホグワーツで学ぶ仲間になる。
そして、その少し後ろ。
静かにこちらを見ている少年がいた。
スコーピウス・マルフォイ。
レオニダスが手を振る。
「スコーピウス!」
「……やあ」
スコーピウスも小さく手を上げた。
こうして、次の世代の子どもたちが少しずつ集まっていく。
かつて親たちが築いた友情。
その絆を知る子どもたちは、今日から新しい場所へ向かう。
けれど――。
彼らがこれから作る物語は、親たちの物語の繰り返しではない。
それぞれが自分自身の道を歩く。
その中でも、レオニダスとレオナはいつも隣にいる。
「お兄ちゃん」
「ん?」
「ホグワーツ、楽しみだね」
「ああ!」
レオニダスが笑う。
レオナも笑う。
二人はもう一度、手を握った。
「一緒に行こう!」
「うん!」
ホグワーツ特急が、汽笛を鳴らす。
新たな世代の物語が、今――始まろうとしていた。