『獅子と魔法動物学者の継承者たち ―スキャマンダー家の双子とホグワーツ―』   作:夜幻

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第19話「五人目の記憶――継承の始まり」

光が消えた。

 

地下の記憶保管庫には、静寂だけが残っていた。

 

レオ。

 

ハーマイオニー。

 

レオニダス。

 

レオナ。

 

第三の継承者。

 

そして――

 

四人目の継承者。

 

誰も口を開かなかった。

 

先ほど見えた記憶。

 

まだ幼いレオニダスとレオナ。

 

二人を抱くレオとハーマイオニー。

 

そして、その後ろに立っていた人物。

 

四人の継承者よりも前に――

 

すでに「継承」を知っていた誰か。

 

レオが静かに口を開く。

 

「……僕は、あの人を知っている」

 

ハーマイオニーが振り返る。

 

「本当に?」

 

「顔を見たことがある」

 

レオは目を閉じる。

 

「でも、どこで会ったのか……思い出せない」

 

四人目の青年が言った。

 

「それも、消されたんだと思う」

 

「君も?」

 

「うん」

 

青年は自分の杖を見る。

 

「僕たち四人の記憶だけじゃない」

 

「もっと前の記憶まで、消されている」

 

レオニダスが拳を握った。

 

「じゃあ、全部の始まりは――」

 

「その人だ」

 

青年が答える。

 

「僕たちが継承者になった理由も」

 

「この戦いが始まった理由も」

 

「全部、そこにつながっている」

 

レオナが一歩前へ出た。

 

「だったら、思い出そう」

 

「え?」

 

「お父さん」

 

レオを見る。

 

「私たちの記憶を、全部つなげればいい」

 

ハーマイオニーが目を見開いた。

 

「……そうね」

 

「記憶は一人では消せても――」

 

レオが続ける。

 

「複数の人間が共有すれば、完全には消せない」

 

四人目の青年が頷く。

 

「それが、僕たち四人の力だった」

 

「なら――」

 

レオニダスが杖を掲げる。

 

「今度は親世代も一緒だ」

 

レオも杖を構える。

 

ハーマイオニーも続く。

 

六本の杖が光った。

 

その瞬間――

 

地下室の中央に、一つの巨大な記憶が現れた。

 

古いホグワーツ。

 

まだレオたちが学生だった頃。

 

そして――

 

その中に、一人の青年が立っていた。

 

レオが息を呑む。

 

「……彼だ」

 

ハーマイオニーも気づく。

 

「レオ……」

 

記憶の中の青年は、四人の子供たちを見つめていた。

 

そして――

 

幼いレオニダスに向かって言った。

 

『力を持つ者は、力だけでは守れない』

 

次にレオナを見る。

 

『知恵を持つ者も、知恵だけでは守れない』

 

第三の子を見る。

 

『記憶を持つ者も、記憶だけでは守れない』

 

最後に四人目を見る。

 

『だから、四人が必要なんだ』

 

レオニダスが呟く。

 

「この人は……」

 

青年は微笑んだ。

 

『君たちは、誰かの代わりになる必要はない』

 

『君たちは、君たち自身になるんだ』

 

レオナの目が見開かれる。

 

「……お父さんが言ってたことと同じ」

 

レオが黙って記憶を見る。

 

青年は続けた。

 

『継承とは、古いものをそのまま受け取ることじゃない』

 

『受け取ったものを、自分の未来へ変えることだ』

 

その言葉に――

 

レオは目を閉じた。

 

「……そうだった」

 

ハーマイオニーが見る。

 

「思い出したの?」

 

「うん」

 

レオは静かに答える。

 

「僕は、彼からこの言葉を聞いた」

 

「いつ?」

 

「学生の頃だ」

 

そして――

 

レオの記憶が一つにつながった。

 

若き日のレオ。

 

その隣にハーマイオニー。

 

二人の前に立つ青年。

 

彼は、レオに一冊の本を渡していた。

 

『いつか、君たちに子供が生まれたら』

 

『この本を渡してほしい』

 

若きレオが聞く。

 

『何のために?』

 

青年は笑った。

 

『子供たちが、自分たちの道を選べるようにするためだ』

 

ハーマイオニーが尋ねる。

 

『あなたは、何者なんですか?』

 

青年は答えなかった。

 

ただ――

 

『名前は、まだ必要ない』

 

そう言った。

 

記憶が途切れる。

 

レオは目を開けた。

 

「……そうだ」

 

「彼は僕たちに――」

 

その時。

 

四人目の青年が突然、顔を上げた。

 

「待って」

 

「どうした?」

 

「この人……」

 

青年の表情が変わる。

 

「僕は知ってる」

 

「え?」

 

「この人の名前を」

 

全員が彼を見る。

 

青年は苦しそうに頭を押さえた。

 

「ずっと忘れていた」

 

「でも――」

 

記憶が戻ってくる。

 

幼い四人。

 

そして、青年。

 

青年が四人に告げる。

 

『僕の名前を覚えておいて』

 

四人が頷く。

 

『僕は――』

 

そこで記憶が黒く染まる。

 

「……っ!」

 

青年が膝をつく。

 

レオナが駆け寄る。

 

「大丈夫?」

 

「名前が……」

 

「思い出せない?」

 

「違う」

 

青年は震える声で言った。

 

「思い出した」

 

彼は顔を上げる。

 

「僕たちを最初に導いた人の名前は――」

 

一瞬の沈黙。

 

そして。

 

「エドガー・スキャマンダー」

 

レオが息を呑む。

 

「……スキャマンダー?」

 

ハーマイオニーも驚く。

 

「あなたの――」

 

「そう」

 

四人目の青年は頷く。

 

「僕たちの魔法の起源に関わる人」

 

レオは記憶をたどる。

 

「でも……」

 

「彼は、僕の祖先でもある」

 

青年は言った。

 

「そして、君の祖先でもある」

 

「……!」

 

レオは言葉を失う。

 

「つまり――」

 

レオニダスが呟く。

 

「継承は、俺たちの親から始まったんじゃない」

 

四人目の青年が答える。

 

「もっと前から始まっていた」

 

レオナが写真を見る。

 

四人の子供。

 

その裏側に――

 

新しい文字が浮かび上がる。

 

『第一の継承――力』

 

『第二の継承――知恵』

 

『第三の継承――記憶』

 

『第四の継承――選択』

 

そして――

 

『第五の継承――未来』

 

「……第五?」

 

ハーマイオニーが呟く。

 

レオニダスが振り返る。

 

「五人目なんて、いないだろ」

 

四人目の青年が首を横に振る。

 

「いる」

 

「誰?」

 

青年は――

 

レオニダスとレオナを見る。

 

「君たちだよ」

 

「……え?」

 

「僕たち四人が守ってきたものを――」

 

「次の時代へ持っていく人間」

 

レオナが息を呑む。

 

「私たち……?」

 

「うん」

 

青年は微笑んだ。

 

「君たちは、四人の継承者の次に来る」

 

レオニダスが自分の杖を見る。

 

「じゃあ……俺たちは」

 

「五人目の継承者じゃない」

 

青年は静かに言う。

 

「五人目の“継承”そのものなんだ」

 

レオナが考える。

 

「つまり……」

 

「私たちが何を選ぶかで、継承の意味が変わる?」

 

「そう」

 

その瞬間。

 

黒い霧が地下室に流れ込んできた。

 

「来る!」

 

レオが叫ぶ。

 

ハーマイオニーが杖を構える。

 

「プロテゴ!」

 

巨大な盾が広がる。

 

しかし――

 

黒い霧は止まらない。

 

『継承を終わらせる』

 

声が響く。

 

『過去を消す』

 

『親を消す』

 

『子を消す』

 

『記憶を消す』

 

レオニダスが前へ出る。

 

「させるか!」

 

杖を振る。

 

「プロテゴ・マキシマ!」

 

レオナも続く。

 

「私も!」

 

二人の魔法が重なる。

 

第三の継承者。

 

四人目の青年。

 

レオ。

 

ハーマイオニー。

 

六人の魔力が一つになる。

 

黒い霧が押し返される。

 

しかし――

 

敵の声が笑う。

 

『六人では足りない』

 

レオが叫ぶ。

 

「何だと?」

 

『お前たちが守ろうとしている未来には――』

 

『すでに、私が手を伸ばしている』

 

その瞬間。

 

黒い霧の中に、巨大な映像が浮かんだ。

 

そこに映ったのは――

 

ホグワーツ特急。

 

そして――

 

レオニダス。

 

レオナ。

 

ローズ。

 

アルバス。

 

スコーピウス。

 

次世代の子供たち。

 

「……!」

 

ハーマイオニーが息を呑む。

 

「子供たちが……」

 

レオが杖を握り締める。

 

「狙われている」

 

第三の継承者が叫ぶ。

 

「違う!」

 

「え?」

 

「狙われているのは――」

 

彼は映像を見る。

 

「子供たちの“未来”だ」

 

黒い霧が一気に広がる。

 

そして――

 

映像の中のレオニダスが消えた。

 

「兄ちゃん!」

 

レオナが叫ぶ。

 

続いて――

 

レオナの姿も消える。

 

「レオナ!」

 

レオニダスが叫ぶ。

 

さらにローズ。

 

アルバス。

 

スコーピウス。

 

一人ずつ、映像から消えていく。

 

四人目の青年が震える。

 

「これは……」

 

「未来そのものを削っている」

 

ハーマイオニーが言った。

 

レオは杖を握り直す。

 

「なら、止める」

 

「レオ」

 

「今度は――」

 

レオは子供たちを見る。

 

「僕たち親世代が、未来を守る番だ」

 

レオニダスの姿が一瞬だけ戻る。

 

その目が――

 

父を見た。

 

「父さん!」

 

レオが叫ぶ。

 

「絶対に忘れない!」

 

「……!」

 

レオニダスも叫ぶ。

 

「俺たちも!」

 

レオナが続く。

 

「お父さんと、お母さんが守ってきたものを――」

 

「私たちが受け継ぐ!」

 

その瞬間。

 

六本の杖が――

 

一本の巨大な光へ変わった。

 

黒い霧を切り裂く。

 

そして、その先に――

 

最後の扉が現れた。

 

扉には、ただ一つ。

 

『継承戦――最終段階』

 

その下に、文字が浮かぶ。

 

『過去を守る者』

 

『現在を生きる者』

 

『未来を選ぶ者』

 

レオは静かに言った。

 

「行こう」

 

ハーマイオニーが頷く。

 

レオニダス。

 

レオナ。

 

第三の継承者。

 

四人目の青年。

 

全員が扉の前に立つ。

 

そして――

 

扉が開いた。

 

その向こうには――

 

ホグワーツ特急。

 

2017年9月1日。

 

すべてが始まった日。

 

そして。

 

その列車の中に――

 

本来なら存在しないはずの、

 

「もう一人の子供」が座っていた。

 

その子供が、ゆっくり振り返る。

 

「……遅かったね」

 

レオニダスが息を呑む。

 

レオナが呟く。

 

「あなたは……」

 

子供は笑った。

 

「僕が――」

 

「最後の継承者だよ」

 

――第19話・終――

 

 

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