『獅子と魔法動物学者の継承者たち ―スキャマンダー家の双子とホグワーツ―』   作:夜幻

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第20話「継承者たち――自分たちの未来へ」

ホグワーツ特急の中。

 

2017年9月1日。

 

窓の外には、キングズ・クロス駅。

 

本来なら――

 

新しい一年が始まるだけの日だった。

 

しかし。

 

誰もいないはずの車両に、一人の子供が座っていた。

 

レオニダス。

 

レオナ。

 

第三の継承者。

 

四人目の青年。

 

そしてレオとハーマイオニー。

 

全員が、その子供を見つめている。

 

「……君は誰?」

 

レオニダスが尋ねた。

 

子供は答えなかった。

 

ただ、窓の外を見ている。

 

「ここは……」

 

レオナが呟く。

 

「私たちがホグワーツへ行った日の……」

 

「そう」

 

子供が初めて口を開いた。

 

「全部の始まりの日」

 

四人目の青年が一歩前へ出る。

 

「君は、本当に最後の継承者なの?」

 

子供は首を横に振った。

 

「違う」

 

「じゃあ――」

 

「僕は、継承者じゃない」

 

全員が息を呑む。

 

子供は静かに続けた。

 

「僕は――」

 

「継承される前の存在」

 

「……?」

 

レオが眉をひそめる。

 

子供は胸に手を当てた。

 

「みんなが忘れた未来」

 

「未来……?」

 

「うん」

 

子供はレオニダスを見る。

 

「君たちが生まれる前に、たくさんの未来があった」

 

「その中には――」

 

「選ばれなかった未来もあった」

 

ハーマイオニーが気づく。

 

「時間改変……」

 

子供が頷く。

 

「この世界は、一度だけじゃない」

 

「何度も、未来を変えられている」

 

レオニダスが拳を握る。

 

「じゃあ、敵は――」

 

「時間を変えているんじゃない」

 

子供は答えた。

 

「未来を選ぶ権利を奪っている」

 

沈黙。

 

その言葉が、全員の胸に響いた。

 

第三の継承者が呟く。

 

「だから、記憶を消していたのか」

 

「そう」

 

「過去を消せば――」

 

四人目の青年が続ける。

 

「未来を選べなくなる」

 

「その通り」

 

子供は微笑んだ。

 

「敵は、誰かを殺したいんじゃない」

 

「みんなに『この未来しかない』と思わせたいんだ」

 

レオニダスが杖を握る。

 

「そんなの――」

 

レオナが続けた。

 

「継承じゃない」

 

「うん」

 

子供は二人を見る。

 

「だから、君たちが必要だった」

 

「私たちが?」

 

「そう」

 

子供はレオナを見る。

 

「兄を守ること」

 

次にレオニダスを見る。

 

「妹を守ること」

 

そして第三の継承者へ。

 

「記憶を守ること」

 

四人目の青年へ。

 

「選択を守ること」

 

最後に――

 

レオとハーマイオニーを見る。

 

「そして、親が子供に未来を押しつけないこと」

 

レオとハーマイオニーは顔を見合わせた。

 

ハーマイオニーが静かに頷く。

 

「……そういうことなのね」

 

レオも笑う。

 

「継承は、命令じゃない」

 

「うん」

 

「子供たちが、自分で選ぶものだ」

 

その瞬間。

 

列車が揺れた。

 

ドンッ!

 

窓の外が真っ黒になる。

 

「来た!」

 

第三の継承者が叫ぶ。

 

車両の奥から――

 

黒い霧が流れ込んでくる。

 

『未来を選ぶ必要はない』

 

声が響く。

 

『すでに決まっている』

 

『親が歩いた道を、子も歩けばいい』

 

レオニダスが叫ぶ。

 

「違う!」

 

『父の力を継げ』

 

『母の知恵を継げ』

 

『先祖の血を継げ』

 

『過去を繰り返せ』

 

レオニダスの目が鋭くなる。

 

「俺は――」

 

オークの杖を握る。

 

「父さんと同じになるために生まれたんじゃない!」

 

レオナも杖を構える。

 

「私も、お母さんの代わりになるためじゃない!」

 

ハーマイオニーの目に涙が浮かぶ。

 

「レオナ……」

 

「私は私の魔法を選ぶ」

 

レオニダスが続く。

 

「俺は俺の道を選ぶ!」

 

第三の継承者が杖を掲げる。

 

「僕は、忘れない!」

 

四人目の青年も続く。

 

「僕は、自分の名前を取り戻す!」

 

黒い霧が揺らぐ。

 

『ならば――』

 

『継承を捨てろ』

 

レオが一歩前に出る。

 

「それも違う」

 

黒い霧が止まる。

 

「継承は、捨てるものでもない」

 

レオは自分の二本の杖を見る。

 

古いオークの杖。

 

そして古代の黒檀の杖。

 

「僕も、昔の自分を捨てたわけじゃない」

 

「過去も、傷も、守れなかったものも――」

 

「全部、今の僕につながっている」

 

ハーマイオニーが隣に立つ。

 

「でも、それをそのまま子供たちに背負わせる必要はない」

 

「そう」

 

レオが頷く。

 

「僕たちが渡すのは――」

 

「力そのものじゃない」

 

ハーマイオニーが言う。

 

「選ぶ権利よ」

 

その瞬間。

 

レオニダスの杖が光った。

 

レオナの杖も光る。

 

第三の継承者の折れた杖。

 

四人目の杖。

 

そして――

 

レオの二本の杖。

 

六本の杖が、一つの光になる。

 

黒い霧が押し返される。

 

『なぜ……』

 

『なぜ未来を決められない……』

 

レオニダスが叫ぶ。

 

「未来は――」

 

レオナが続ける。

 

「誰かに決められるものじゃない!」

 

第三の継承者。

 

「記憶する!」

 

四人目。

 

「選ぶ!」

 

ハーマイオニー。

 

「考える!」

 

そしてレオ。

 

「生きる!」

 

六人の声が重なった。

 

「それが――」

 

「僕たちの継承だ!」

 

光が弾けた。

 

黒い霧が消える。

 

そして――

 

列車の窓から、朝の光が差し込んだ。

 

静かだった。

 

あれほど激しかった時間魔法も――

 

完全に止まっている。

 

レオニダスは自分の杖を見る。

 

「……終わった?」

 

レオナも杖を見る。

 

「たぶん」

 

第三の継承者が笑う。

 

「うん」

 

四人目の青年も笑った。

 

「終わったんじゃない」

 

「え?」

 

「始まったんだよ」

 

四人は顔を見合わせた。

 

子供が立ち上がる。

 

「僕は、もう行く」

 

レオナが尋ねる。

 

「どこへ?」

 

「未来へ」

 

「……」

 

「僕は、まだ誰にも選ばれていない未来だから」

 

子供は笑った。

 

「だから、自分で選びに行く」

 

そう言って――

 

光の中へ消えていった。

 

レオニダスはその姿を見送る。

 

「……あいつも、継承者だったのかな」

 

レオナが首を横に振る。

 

「違うと思う」

 

「じゃあ?」

 

「未来そのもの」

 

第三の継承者が頷いた。

 

「だから、誰にも縛れなかったんだ」

 

四人目の青年が微笑む。

 

「僕たちが守ったのは、未来じゃない」

 

「未来を選べる世界だよ」

 

その言葉に、レオは静かに笑った。

 

そして――

 

列車の扉が開く。

 

駅のホーム。

 

そこには――

 

ハリー。

 

ジニー。

 

ロン。

 

アステリア。

 

ドラコ。

 

パンジー。

 

そして多くの親世代の仲間たちがいた。

 

「レオ!」

 

ハリーが叫ぶ。

 

レオが手を上げる。

 

「ハリー」

 

ハリーは子供たちを見る。

 

「終わったのか?」

 

レオは首を横に振った。

 

「終わったんじゃない」

 

「始まったんだ」

 

ハリーが笑う。

 

「なるほど」

 

ジニーがレオナを抱きしめる。

 

「怖かったでしょう?」

 

「うん」

 

「でも――」

 

レオナは笑った。

 

「大丈夫」

 

レオニダスも笑う。

 

「俺たち、四人で約束したから」

 

ハリーが驚く。

 

「四人?」

 

レオニダスが振り返る。

 

そこには――

 

第三の継承者。

 

四人目の青年。

 

そしてレオナ。

 

四人が並んでいる。

 

レオニダスが言った。

 

「これからも、忘れない」

 

レオナが続く。

 

「でも、過去に縛られない」

 

第三の継承者。

 

「覚えているからこそ――」

 

四人目。

 

「新しい未来を選べる」

 

ハーマイオニーが微笑んだ。

 

「それが、あなたたちの答えなのね」

 

レオニダスは頷く。

 

「うん」

 

レオナも頷く。

 

「私たちの答え」

 

その瞬間。

 

レオが二人の肩に手を置いた。

 

「なら、もう僕たちから教えることはない」

 

レオニダスが驚く。

 

「え?」

 

レオは笑う。

 

「自分で選べ」

 

ハーマイオニーも笑った。

 

「失敗してもいい」

 

「迷ってもいい」

 

「立ち止まってもいい」

 

「でも――」

 

二人の親が、子供たちを見る。

 

「自分の未来だけは、自分で選んで」

 

レオニダスとレオナは、互いを見る。

 

そして――

 

同時に笑った。

 

「うん!」

 

その瞬間。

 

ホグワーツ特急の汽笛が鳴った。

 

ポォォォ――!

 

次の世代の子供たちが、列車へ乗り込んでいく。

 

ローズ。

 

アルバス。

 

スコーピウス。

 

そして――

 

レオニダス。

 

レオナ。

 

二人が列車の入り口で振り返る。

 

レオが手を振る。

 

ハーマイオニーも手を振る。

 

「行ってらっしゃい!」

 

「行ってきます!」

 

二人は列車へ乗り込んだ。

 

扉が閉まる。

 

列車が動き始める。

 

窓から見える親たちの姿が、少しずつ遠くなる。

 

レオナが言う。

 

「兄ちゃん」

 

「ん?」

 

「これから、どんな未来になるかな」

 

レオニダスは少し考えた。

 

そして――

 

笑った。

 

「分からない」

 

「……うん」

 

「でも、それでいいんじゃないか?」

 

レオナも笑う。

 

「うん」

 

二人は窓の外を見る。

 

ホグワーツへ向かう線路。

 

その先には――

 

まだ誰も知らない未来。

 

レオニダスは杖を握る。

 

レオナも杖を握る。

 

二人の杖が、ほんの少しだけ光った。

 

兄と妹。

 

力と知恵。

 

そして――

 

その二つをつなぐ記憶。

 

それは、誰かから押しつけられた運命ではない。

 

受け取ったものを、自分たちの形に変えていく。

 

それこそが――

 

「継承」だった。

 

そして、物語の最後。

 

遠ざかる列車を見ながら、レオが静かに呟いた。

 

「……行ったね」

 

ハーマイオニーが隣に立つ。

 

「ええ」

 

「僕たちの子供たちが」

 

「次の世代へ」

 

レオは微笑んだ。

 

「僕たちが残したものを――」

 

ハーマイオニーが続ける。

 

「彼らが、自分たちの未来へ変えていく」

 

二人は走り去る列車を見つめた。

 

そして――

 

ホグワーツ特急は、朝日の中へ消えていった。

 

その先に待つのは――

 

まだ誰も知らない未来。

 

誰かが決めた未来ではない。

 

誰かの伝説を繰り返す未来でもない。

 

自分たち自身で選ぶ未来。

 

それが――

 

「獅子と賢者の継承者たち」

 

最後に残された、たった一つの約束だった。

 

――たとえ世界が僕たちを忘れても。

 

――僕たちは、僕たちを覚えている。

 

そして――

 

「自分たちの未来を、自分たちで選ぶ」

 

物語は、ここで一度幕を閉じる。

 

しかし。

 

次の物語は――

 

もう、始まっている。

 

――完――

 

 

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