『獅子と魔法動物学者の継承者たち ―スキャマンダー家の双子とホグワーツ―』   作:夜幻

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第4話「アルバス・ポッター――英雄の息子」

アルバス・ポッター――英雄の息子

 

ホグワーツの中庭。

 

休日の午後。

 

レオニダスとレオナは、ベンチに座っていた。

 

「暇だな」

 

レオニダスが言う。

 

「さっきまで走り回ってたでしょ」

 

レオナが呆れたように返す。

 

「もう疲れた」

 

「兄ちゃん、体力ありすぎ」

 

「父さんに似たんだ」

 

「自分で言うんだ……」

 

そんな二人の前を、一人の少年が歩いていた。

 

黒い髪。

 

丸い眼鏡。

 

そして――。

 

額に刻まれた稲妻型の傷。

 

「アルバス!」

 

レオニダスが声をかける。

 

少年が振り返った。

 

「……レオニダス?」

 

「一緒に来ないか?」

 

「どこへ?」

 

「特に決めてない!」

 

「それ、誘い方としてどうなんだよ」

 

アルバスが笑った。

 

レオナも笑う。

 

「兄ちゃんらしいでしょ?」

 

「まあな」

 

アルバスは二人の隣に座った。

 

しばらく三人で話していた。

 

けれど。

 

アルバスの表情が、少しだけ曇っていることにレオナは気づいた。

 

「アルバス」

 

「ん?」

 

「どうかした?」

 

「……別に」

 

「嘘」

 

レオナが即答する。

 

アルバスが苦笑した。

 

「レオナには敵わないな」

 

「兄ちゃんよりはね」

 

「おい!」

 

レオニダスが抗議する。

 

三人が笑う。

 

けれど、アルバスはすぐに視線を落とした。

 

「……父さんの話をされたんだ」

 

「ハリーさんの?」

 

「ああ」

 

アルバスは頷いた。

 

「『ハリー・ポッターの息子なんだから』って」

 

レオニダスの表情が変わる。

 

「……」

 

「俺が何かするたびに、父さんと比べられる」

 

アルバスは眼鏡を直した。

 

「父さんは英雄だ」

 

「うん」

 

「ヴォルデモートを倒した」

 

「うん」

 

「魔法界の誰もが知ってる」

 

アルバスは、自分の手を見る。

 

「でも、俺は父さんじゃない」

 

レオニダスが静かに言った。

 

「……俺も、父さんじゃない」

 

アルバスが顔を上げる。

 

「レオニダス?」

 

「俺の父さんはレオだけど」

 

「うん」

 

「父さんみたいになれって言われたら、たぶん嫌だ」

 

アルバスは少し驚いた。

 

「お前でも?」

 

「もちろん」

 

レオニダスは笑う。

 

「俺は俺だからな」

 

レオナも頷いた。

 

「私も、お母さんの代わりになるために生まれたんじゃないよ」

 

「……」

 

アルバスは二人を見る。

 

「でも、お前たちの父さんと母さんは……」

 

「すごい人だよ」

 

レオナが答えた。

 

「もちろん」

 

「だったら――」

 

「だからこそ」

 

レオナは言葉を続けた。

 

「私たちが同じになる必要はないんだと思う」

 

アルバスは黙った。

 

レオニダスが笑う。

 

「それにさ」

 

「何?」

 

「英雄の息子って、結構大変だろ?」

 

「……まあな」

 

「じゃあ、一緒にいようぜ」

 

「え?」

 

「俺も『レオ・スキャマンダーの息子』だから」

 

レオニダスは拳を差し出した。

 

「一人で背負う必要ないだろ」

 

アルバスは、その拳を見る。

 

そして――。

 

自分の拳を軽くぶつけた。

 

「……そうだな」

 

「決まり!」

 

レオニダスが笑う。

 

レオナも微笑んだ。

 

「二人とも」

 

「ん?」

 

「名前に負けないようにする必要なんてないよ」

 

アルバスは、少しだけ笑った。

 

「じゃあ、何を目指せばいい?」

 

レオナは答えた。

 

「自分で決めればいい」

 

「……自分で」

 

「うん」

 

「それって、結構難しいな」

 

「だから面白いんじゃない?」

 

レオニダスが口を挟む。

 

「俺なら、とりあえず強くなる!」

 

「兄ちゃんは少し考えてから決めて」

 

「なんでだよ!」

 

「また無茶するから」

 

「しないって!」

 

「この前も言ってた」

 

「……」

 

アルバスが吹き出した。

 

「ははは!」

 

「アルバスまで!」

 

三人の笑い声が中庭に響く。

 

その日の夕方。

 

アルバスは、両親のもとへ戻った。

 

「ただいま」

 

「おかえり、アルバス」

 

ジニーが微笑む。

 

ハリーも息子を見る。

 

「今日はどうだった?」

 

アルバスは少し考えた。

 

「友達と話してた」

 

「そうか」

 

ハリーはそれ以上聞かなかった。

 

アルバスは父を見る。

 

英雄。

 

救世主。

 

そして――。

 

自分の父親。

 

昔は、その三つが同じものに思えていた。

 

けれど今は違う。

 

ハリー・ポッターは、英雄である前に。

 

アルバスにとって――父親なのだ。

 

「父さん」

 

「ん?」

 

「俺、父さんみたいにならなくてもいい?」

 

ハリーは少し驚いた。

 

そして、すぐに笑った。

 

「ああ」

 

「……いいの?」

 

「もちろんだ」

 

ハリーは息子の肩に手を置いた。

 

「僕は僕の人生を生きた」

 

「うん」

 

「だから、君は君の人生を生きればいい」

 

アルバスは静かに頷いた。

 

「ありがとう」

 

その夜。

 

アルバスは自分の杖を手に取った。

 

父の杖ではない。

 

自分の杖。

 

自分だけの魔法。

 

自分だけの未来。

 

そして翌朝。

 

中庭でレオニダスとレオナに会うと、アルバスは笑った。

 

「なあ」

 

「ん?」

 

「俺、自分で決めることにした」

 

レオニダスが笑う。

 

「何を?」

 

「これからのこと」

 

レオナも微笑んだ。

 

「それでいいと思う」

 

三人は並んで歩き始める。

 

父の名前。

 

母の名前。

 

家族の歴史。

 

受け継いだものは、たくさんある。

 

けれど――。

 

受け継いだものだけで、未来が決まるわけじゃない。

 

自分の名前で。

 

自分の杖で。

 

自分の選択で。

 

次の一歩を踏み出す。

 

アルバス・ポッターは――。

 

「英雄の息子」から。

 

少しずつ。

 

「アルバス・ポッター自身」へと歩き始めていた。

 

 

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