『獅子と魔法動物学者の継承者たち ―スキャマンダー家の双子とホグワーツ―』 作:夜幻
親世代の同窓会――獅子と賢者の馴れ初め
夕方。
レオとハーマイオニーの家には、久しぶりに多くの人が集まっていた。
ハリーとジニー。
ロンとアステリア。
ドラコとパンジー。
そして――。
「今日は昔話をする日なんだろ?」
ロンが椅子に座りながら笑った。
「昔話?」
レオニダスが首を傾げる。
「そうだ」
ロンは嬉しそうに笑う。
「俺たちが若かった頃の話だ」
「聞きたい!」
レオニダスが身を乗り出す。
レオナも隣に座る。
アルバス、ローズ、スコーピウスも集まってきた。
ハリーが苦笑する。
「昔話か……」
ジニーが笑う。
「いいじゃない。たまには」
アステリアも頷く。
「私も聞きたいわ」
ドラコが腕を組む。
「僕まで話す必要があるのか?」
パンジーが即答する。
「もちろん」
「……」
そんな中。
ロンが突然、レオを見る。
「そういえばさ」
「ん?」
「一番気になるのは、やっぱりレオとハーマイオニーじゃないか?」
「え?」
ハーマイオニーが驚く。
レオも目を丸くする。
「僕たち?」
「そうだよ」
ロンは笑った。
「幼い頃から知り合ってたんだろ?」
レオナが目を輝かせる。
「本当?」
「ええ」
ハーマイオニーが少し恥ずかしそうに答える。
レオニダスが父を見る。
「父さんと母さんって、いつから知り合いだったの?」
レオは少し考えた。
「かなり昔だよ」
「どのくらい?」
ハーマイオニーと顔を見合わせる。
そして――。
二人が同時に笑った。
「まだ、本当に小さかった頃」
「子どもの頃?」
レオナが驚く。
「そう」
ハーマイオニーは懐かしそうに目を細めた。
「まだホグワーツに入る前だったわ」
レオが続ける。
「僕たちは、まだ魔法界のことも、ホグワーツのことも、よく分かっていなかった」
「じゃあ、どうやって会ったの?」
ローズが尋ねる。
レオは少し笑った。
「最初から仲が良かったわけじゃない」
「え?」
「でも、話をしているうちに……」
ハーマイオニーが言葉を継いだ。
「いつの間にか、一緒にいることが当たり前になっていたの」
レオニダスが笑う。
「それで?」
「ある日ね」
ハーマイオニーが話し始める。
「子どもの頃、私たちは将来の話をしたの」
「将来?」
「ええ」
レオが苦笑する。
「今思えば、本当に子どもらしい約束だった」
「何を約束したの?」
レオナが尋ねる。
ハーマイオニーは少し頬を赤くした。
「……いつか結婚しようって」
「ええっ!?」
子どもたちが一斉に驚いた。
ロンが大笑いする。
「本当に言ったのか!」
「ロン!」
「いや、だって面白いだろ!」
ハリーも笑っている。
ジニーは微笑ましそうに二人を見る。
アステリアも笑う。
パンジーはドラコを見る。
「あなたたちには、そんな可愛い話はなかったの?」
「パンジー」
「何?」
「今は二人の話だ」
レオニダスは父を見る。
「父さん、本当に母さんと結婚するって言ったの?」
「言ったよ」
「子どもの頃に?」
「うん」
「じゃあ、約束守ったんだ」
レオはハーマイオニーを見る。
「そうだな」
ハーマイオニーも笑った。
「本当にね」
レオナが嬉しそうに笑う。
「素敵」
「でもね」
ハーマイオニーが続ける。
「その頃は、本当に子どもの約束だったのよ」
「うん」
レオが頷く。
「だから、その後どうなるかなんて誰にも分からなかった」
そして二人は――。
ホグワーツで再び出会った。
「ホグワーツに入ってから?」
アルバスが尋ねる。
「そう」
レオが答える。
「再会したときは、少し不思議な感じだった」
「どうして?」
「昔の約束を覚えていたから」
ハーマイオニーが笑う。
「でも、子どもの頃とは違っていた」
「どんなふうに?」
レオナが尋ねる。
「お互いに成長していたの」
ハーマイオニーは懐かしそうに語る。
「レオは昔よりずっと行動的になっていたし」
「母さんは?」
レオニダスが聞く。
「私は……昔から本ばかり読んでいたわね」
「今と同じじゃん」
ローズが笑う。
「ローズ」
ハーマイオニーが苦笑する。
「でも」
レオが言った。
「再会してから、また少しずつ話すようになった」
「そして?」
スコーピウスが聞く。
ロンがニヤニヤする。
「そして、二人は――」
「ロン」
アステリアが止める。
「自分で話させてあげて」
「はい」
レオは苦笑した。
「そうして一緒にいる時間が増えていった」
「何か大きな出来事はあったの?」
レオニダスが尋ねる。
ハーマイオニーがレオを見る。
「……クィディッチね」
「ああ」
レオが頷いた。
「クィディッチ?」
レオナが驚く。
「父さん、選手だったの?」
「少しね」
「少しじゃないだろ」
ロンが口を挟む。
「結構すごかったぞ」
レオは苦笑した。
「でも、そのとき怪我をした」
「え?」
ハーマイオニーが話す。
「試合中に、レオが大きくバランスを崩して」
「そのまま落ちた」
「落ちたの!?」
レオニダスが叫ぶ。
「大丈夫だったの?」
「怪我はしたけど、命に関わるほどではなかった」
レオが笑う。
「でも――」
ハーマイオニーが続ける。
「私は、すごく心配した」
「母さんが手当てしたの?」
レオナが尋ねる。
「ええ」
ハーマイオニーは頷いた。
「魔法で傷を治して、包帯を巻いて」
レオが笑う。
「そのときのハーマイオニーは、すごく真剣だった」
「当然でしょう」
「『動かないで』って何度も言われた」
「怪我人が動いたら悪化するでしょう?」
「はい」
レオニダスが笑った。
「父さん、母さんには逆らえないんだ」
「昔からね」
ハーマイオニーも笑う。
レオは少し遠くを見る。
「あのとき、僕は思ったんだ」
「何を?」
「この人のそばにいたいなって」
ハーマイオニーが静かにレオを見る。
「……私も」
部屋が少し静かになった。
「私も、あのときからレオを特別に意識するようになったの」
「怪我を治したから?」
レオナが聞く。
ハーマイオニーは首を横に振る。
「それだけじゃないわ」
「じゃあ?」
「レオは、怪我をしても最後まで周りの人を気にしていたの」
「……」
「自分より他の人を心配していた」
レオは少し照れたように笑う。
「そんなことしてたかな」
「してたわ」
ハーマイオニーは即答した。
「だから私は、レオのことをもっと知りたいと思った」
レオニダスとレオナが顔を見合わせる。
そして――。
ロンが突然口を開いた。
「なるほどな」
「何?」
「ハーマイオニーが惚れた理由が分かった」
「ロン!」
「だってそうだろ?」
ロンは笑った。
「レオは昔から、誰かを守ろうとするところがあった」
アステリアが頷く。
「確かにね」
ハリーも静かに笑う。
「レオらしいよ」
レオは照れながら頭をかいた。
「そんなに言われると困るな」
しかし。
ハーマイオニーの表情は、少しだけ変わった。
「でも――」
彼女は静かに言った。
「本当にレオに守られたことがあるの」
子どもたちが一斉に顔を上げる。
「いつ?」
「不死鳥の騎士団の時よ」
部屋の空気が変わった。
ハリーも静かに頷く。
「あの戦いか」
レオニダスが父を見る。
「父さんが言ってた、最初の杖が壊れたとき?」
「そう」
レオは答えた。
「神秘部での戦い」
ハーマイオニーが続ける。
「あのとき、私はシリウスと一緒に戦っていた」
レオが頷く。
「僕は二人を見つけた」
「そして――」
ハーマイオニーは、自分の手を見つめる。
「敵の攻撃が来た」
レオの最初の杖。
イングリッシュオーク。
十五インチ。
ドラゴンの心臓の琴線と、ヌンドゥのたてがみの毛を組み合わせた芯。
学生時代から、ずっとレオと共にあった杖。
「あの瞬間」
レオが静かに話す。
「僕は考えるより先に動いていた」
「私を?」
レオは頷いた。
「ハーマイオニーとシリウスを守るために」
ハリーが静かに息を吐く。
「僕も覚えている」
「攻撃が来た瞬間、レオが前に出た」
ハーマイオニーが言う。
「杖を構えて」
レオは目を閉じる。
「そして、受け止めた」
「その結果――」
レオニダスが尋ねる。
レオは自分の手を見る。
「杖が壊れた」
「……」
子どもたちは黙って聞いていた。
「それでもレオは、私たちの前から動かなかった」
ハーマイオニーの声が少し震える。
「杖が壊れても」
「うん」
「もう一度、私たちの前に立った」
レオニダスは父を見る。
「父さん……」
「僕にとっては、それが普通だったんだ」
「普通じゃないよ」
レオナが小さく言った。
「だって、杖が壊れるほど守ったんでしょう?」
レオは妹を見る。
「……そうだな」
ハーマイオニーが静かに笑った。
「私は、そのときに分かったの」
「何を?」
「この人を好きなんだって」
部屋が静まり返る。
「守られたから、ただ好きになったわけじゃない」
ハーマイオニーはレオを見る。
「私を守るために、自分の大切なものを失うことを迷わなかった」
「……」
「その姿を見て、私はレオを失いたくないと思った」
レオの表情が柔らかくなる。
「ハーマイオニー」
「だから、あなたが杖を失ったとき」
彼女は微笑んだ。
「今度は私があなたを守りたいと思ったの」
子どもたちは黙って二人を見る。
ロンが小さく笑った。
「なるほどな」
ジニーも微笑む。
「素敵な話ね」
パンジーがドラコを見る。
「あなたはこういうこと言える?」
「……僕に振るな」
「ふふっ」
アステリアも笑った。
「でも、本当に二人らしいわ」
ハリーがレオを見る。
「最初の杖、まだ持ってるのか?」
「もちろん」
レオは立ち上がった。
しばらくして。
一つの箱を持って戻ってきた。
蓋を開ける。
そこには――。
傷の残った一本の杖があった。
イングリッシュオーク。
十五インチ。
戦いで受けた傷が残っている。
レオニダスが静かに見る。
「これが……」
「ああ」
レオは杖を手に取る。
「僕の最初の杖」
レオナも近づく。
「大切?」
「とても」
「今も使うの?」
「もう主に使っている杖は別だ」
レオは微笑む。
「でも、これは僕の過去そのものだから」
ハーマイオニーが隣に立つ。
「そして、私たちの大切な記憶でもある」
二人の間に、静かな時間が流れる。
レオニダスが父を見る。
「父さん」
「ん?」
「じゃあ、母さんは父さんに守られたから好きになったの?」
ハーマイオニーが少し考える。
そして笑った。
「それも一つのきっかけね」
「でも、それだけじゃない」
「そう」
ハーマイオニーはレオを見る。
「守ってくれたからこそ、私はレオという人をもっと知りたくなった」
「……」
「一緒に笑って」
「うん」
「一緒に悩んで」
「うん」
「一緒に未来を考えて」
ハーマイオニーは微笑む。
「気づいたら、子どもの頃の約束が本当になっていたの」
レオも笑った。
「僕は約束を忘れてなかったけどね」
「私もよ」
レオナが嬉しそうに言う。
「じゃあ、幼い頃の約束がずっと続いてたんだ」
「そうね」
ハーマイオニーが答える。
「でも、重要なのは約束を守ったことだけじゃないの」
「?」
「大人になった私たちが、もう一度自分たちの意思でお互いを選んだこと」
レオは頷く。
「それが一番大切だった」
子どもたちは黙って二人を見る。
幼い頃の約束。
ホグワーツでの再会。
クィディッチでの負傷と手当て。
そして――。
命を懸けて守った、あの日。
一つ一つの出来事が積み重なって。
今の二人につながっている。
ロンが笑った。
「しかし、昔のレオは本当に無茶だったな」
「ロン、それは今もよ」
ハーマイオニーが即答する。
「え?」
レオが固まる。
子どもたちが笑う。
「父さん、今もなんだ」
レオニダスが笑う。
「レオナ、やっぱり俺たちが止めないと」
「うん」
「おい!」
ハーマイオニーも笑った。
「そういうところは、昔から変わってないわね」
レオは苦笑する。
「でも、ハーマイオニーも昔から変わってない」
「どこが?」
「僕が無茶すると、必ず止める」
「当然でしょう」
二人が顔を見合わせる。
そして――。
自然に笑った。
かつて幼い二人が交わした、小さな結婚の約束。
ホグワーツでの再会。
傷ついた少年を手当てした少女。
守られた少女が、いつしかその少年を愛するようになった。
そして今。
二人は夫婦として。
子どもたちの隣にいる。
レオニダスが妹を見る。
「レオナ」
「なに?」
「俺たちも、こういう話ができる日が来るのかな」
レオナは笑った。
「まだ早いよ、兄ちゃん」
「そうか?」
「うん」
ハーマイオニーが笑う。
「その前に、二人とも自分の人生をしっかり歩きなさい」
レオも頷く。
「僕たちの物語を、そのまま受け継ぐ必要はない」
「自分たちの物語を作ればいい」
子どもたちは頷いた。
窓の外。
夜空に星が輝いている。
かつての少年と少女は、大人になった。
そして今。
その二人の子どもたちが、自分たちの未来へ歩き始めている。
「父さん」
「ん?」
レオニダスが笑う。
「その杖、かっこいいな」
レオは傷ついた最初の杖を見る。
「そうか?」
「うん」
レオナも微笑む。
「傷があっても、大切な杖なんだね」
レオは頷いた。
「そうだ」
ハーマイオニーがその隣に立つ。
「私たちの記憶だから」
二人の視線が重なる。
そして――。
静かに笑った。
その夜。
親世代の同窓会は、昔話で大いに盛り上がった。
けれど子どもたちの心に残ったのは、英雄たちの武勇伝だけではない。
一人の少年が、一人の少女を守ったこと。
一人の少女が、その少年の傷を癒やしたこと。
そして二人が、互いを選び続けたこと。
それこそが――。
レオ・スキャマンダーとハーマイオニー・グレンジャー。
「獅子」と「賢者」の物語の始まりだった。