『獅子と魔法動物学者の継承者たち ―スキャマンダー家の双子とホグワーツ―』 作:夜幻
汽笛が、キングス・クロス駅いっぱいに響き渡った。
「出発するぞ!」
レオニダスが窓から身を乗り出しそうになる。
「お兄ちゃん、危ないよ!」
レオナが慌てて服の裾を掴んだ。
「大丈夫だって!」
「大丈夫じゃない!」
「レオナ、そこは僕を信じて!」
「信じてるから止めてるの!」
そんな二人のやり取りに、近くにいたローズが笑う。
「二人とも、ホグワーツに着く前からそれなの?」
「いつものことだよ」
レオニダスは胸を張った。
「僕たち双子だから!」
「双子って便利な言葉ね」
ローズが呆れたように言う。
「でも、本当に仲いいよね」
レオナは嬉しそうに笑った。
「うん!」
「だろ?」
レオニダスも頷く。
列車がゆっくりと動き始める。
窓の外で、両親たちが手を振っていた。
「お兄ちゃん!」
「うん!」
「お母さんたち、見て!」
二人は並んで窓際に立つ。
ハーマイオニーが大きく手を振っている。
レオも笑いながら手を振っていた。
その隣には、見送りに来たハリーやジニー、ロンたちの姿もある。
レオニダスが両手を振る。
「行ってきまーす!」
レオナも負けじと声を上げる。
「行ってきます!」
列車が速度を上げる。
少しずつ、駅が遠ざかっていく。
レオナの目に、一瞬だけ寂しそうな色が浮かんだ。
「……行っちゃったね」
「ああ」
レオニダスも窓の外を見る。
「でもさ」
「うん?」
「ホグワーツに行くんだぞ」
レオニダスが振り返った。
「僕たちの学校生活が始まるんだ!」
「……そうだね!」
レオナの顔にも笑顔が戻った。
「楽しもう!」
「もちろん!」
二人は拳を軽くぶつけ合った。
「絶対楽しいよ!」
「絶対!」
そこへ、コンパートメントの扉が開いた。
「ここ、空いてる?」
声の主はローカンだった。
その後ろにはライサンダーもいる。
「もちろん!」
レオナが手招きする。
「入って!」
「ありがとう」
ローカンとライサンダーが座る。
すると、今度はアルバスが顔を覗かせた。
「ここ、みんな一緒?」
「そうだよ!」
レオニダスが答える。
「アルバスも入れよ!」
「うん」
アルバスが席についた。
続いてスコーピウスも入ってくる。
「……僕もいいかな?」
「もちろん!」
レオナが笑う。
やがてコンパートメントには、子どもたちが集まっていた。
小さい頃から顔を合わせてきた仲間たち。
家族同士の付き合いが長かったから、改めて自己紹介をする必要もない。
「なんだか変な感じだな」
ローカンが言った。
「何が?」
レオニダスが尋ねる。
「いつも遊んでた僕たちが、今日からホグワーツの生徒なんだよ」
「ああ!」
レオニダスが頷く。
「僕もそう思ってた!」
「昨日まで家で遊んでたのにね」
レオナも笑う。
少しの間、車内が静かになった。
窓の外では、ロンドンの街並みが少しずつ遠ざかっている。
「ねえ」
レオナがみんなを見る。
「ホグワーツって、どんなところかな?」
「魔法の授業がある」
アルバスが答える。
「それは知ってるよ」
「じゃあ、何を知りたいの?」
「全部!」
レオナが即答した。
レオニダスも頷く。
「僕も!」
「二人とも本当に元気だな」
ライサンダーが笑った。
「だって楽しみなんだもん!」
「そうそう!」
レオニダスが立ち上がる。
「魔法薬も、呪文学も、飛行訓練も!」
「あと動物!」
レオナが続ける。
「魔法動物も見たい!」
「それなら父さんたちの話を聞けば?」
ローカンが言った。
「ああ、そうだった!」
レオニダスが笑う。
レオの弟であるロルフは魔法動物学者。
その妻であるルーナも、魔法生物について詳しい。
幼い頃から魔法動物の話を聞いてきた二人にとって、魔法動物は身近な存在だった。
「でも、学校では自分で見つけたい!」
レオナが言う。
「それいいね!」
レオニダスが頷く。
「僕たちで探そう!」
「うん!」
二人はまた顔を見合わせた。
同じことを考えていたらしい。
「また二人で何か始める気?」
ローズが笑った。
「もちろん!」
レオニダスは即答した。
「僕たちは双子だから!」
「はいはい」
ローズが苦笑する。
そのときだった。
コンパートメントの外から、声が聞こえてきた。
「お菓子はいかが?」
レオナの目が輝く。
「お兄ちゃん!」
「行こう!」
二人はほとんど同時に立ち上がった。
「待って!」
ローズが呼び止める。
「二人とも、お金は?」
「あ……」
「忘れた?」
「……ちょっとだけ」
レオナが気まずそうに笑った。
「二人とも!」
ローズが呆れる。
するとアルバスが笑った。
「僕も買うから、一緒に買おうよ」
「本当?」
「うん」
「ありがとう!」
レオナが嬉しそうに笑う。
レオニダスも笑った。
列車は、さらに速度を上げていく。
窓の外には、広い草原が広がり始めていた。
やがて夕方になる。
子どもたちはお菓子を食べながら、これから始まる学校生活について話し続けた。
どの授業が楽しみか。
どんな先生がいるのか。
寮はどこになるのか。
そして――。
「みんな、同じ寮になれるかな?」
レオナが尋ねた。
「それは分からないよ」
アルバスが答える。
「組分け帽子が決めるから」
「じゃあ、もし別々になったら?」
レオナが少し不安そうにする。
レオニダスがすぐ隣に座った。
「大丈夫だよ」
「お兄ちゃん?」
「僕たちは双子だろ?」
レオニダスは笑った。
「寮が違っても、僕たちは双子だ」
レオナは一瞬きょとんとした。
そして――。
「うん!」
満面の笑顔になった。
「そうだね!」
二人は手を握った。
ホグワーツで、どんなことが待っているのかは分からない。
同じ寮になるのか。
別々になるのか。
どんな友達ができるのか。
どんな失敗をするのか。
まだ何も分からない。
ただ一つだけ、二人には分かっていた。
どんな場所へ行っても。
どんな出来事が起きても。
自分たちは双子だということ。
そして――。
二人なら、きっと大丈夫だということ。
「レオナ」
「なに?」
「ホグワーツ、楽しもうな!」
「うん!」
ホグワーツ特急は夜の闇へ向かって走り続ける。
その先に待つのは、魔法の城。
そして、二人の新しい物語だった。