『獅子と魔法動物学者の継承者たち ―スキャマンダー家の双子とホグワーツ―』   作:夜幻

32 / 32
最終話 次の世代へ――ホグワーツ特急

九月一日。

 

キングス・クロス駅。

 

九と四分の三番線。

 

ホグワーツ特急の汽笛が、駅いっぱいに響いていた。

 

赤い列車。

 

白い蒸気。

 

そして――

 

たくさんの親子。

 

その中に、レオニダスとレオナの姿があった。

 

「……今年も来たな」

 

レオニダスが列車を見上げる。

 

隣では、レオナが静かに微笑んでいた。

 

「うん」

 

二人の手には、それぞれの杖がある。

 

レオニダスのオークの杖。

 

レオナの柳の杖。

 

二本の杖は、もうすっかり二人の手に馴染んでいた。

 

少し離れたところでは、アルバス、ローズ、スコーピウスも準備をしている。

 

「忘れ物はない?」

 

ハーマイオニーが尋ねる。

 

「大丈夫」

 

レオナが答える。

 

レオは二人を見つめる。

 

「本当に?」

 

「本当に」

 

レオニダスが笑う。

 

「父さん、心配しすぎ」

 

「そうか?」

 

「そうだよ」

 

ハーマイオニーが笑った。

 

「あなたも昔は同じだったでしょう?」

 

「……否定できないな」

 

レオが苦笑する。

 

その少し離れた場所では――

 

「アルバス、無理するなよ」

 

ハリーが息子に声をかけていた。

 

「分かってるよ、父さん」

 

ジニーが笑う。

 

「あなたも昔は無理してたでしょう?」

 

「……僕の話はいいだろ」

 

「ふふ」

 

その隣では、ロンがローズに話しかけていた。

 

「困ったことがあったら、ちゃんと誰かに相談するんだぞ」

 

「分かってる、お父さん」

 

アステリアも微笑んでいる。

 

「ローズなら大丈夫よ」

 

「そうだな」

 

ロンが頷く。

 

少し離れた場所では、ドラコとパンジーがスコーピウスを見送っていた。

 

「スコーピウス」

 

「何?」

 

「自分の名前を恥じる必要はない」

 

ドラコは静かに言った。

 

「だが、その名前に何を書き加えるかは、お前自身が決めろ」

 

スコーピウスは微笑んだ。

 

「分かったよ、父さん」

 

パンジーが息子の肩に手を置く。

 

「行ってらっしゃい」

 

「うん」

 

それぞれの家族が、それぞれの言葉を子供たちへ渡していく。

 

けれど――

 

誰も未来の答えを渡してはいなかった。

 

渡していたのは、

 

経験。

 

記憶。

 

愛情。

 

そして――

 

選ぶ権利。

 

レオニダスがレオを見る。

 

「父さん」

 

「ん?」

 

「昔、言ってたよね」

 

「何を?」

 

「杖は親から受け継ぐものじゃないって」

 

レオは頷いた。

 

「覚えてる」

 

「僕の杖は、父さんの杖とは違う」

 

「そうだな」

 

レオニダスは自分のオークの杖を見る。

 

「でも……父さんから受け継いだものはある」

 

レオは黙って息子を見る。

 

「何だ?」

 

レオニダスは少し考えた。

 

「守りたいと思ったら、守ること」

 

そしてレオナが続ける。

 

「知りたいと思ったら、知ろうとすること」

 

アルバスが笑う。

 

「自分で決めること」

 

ローズが続ける。

 

「過去を忘れないこと」

 

スコーピウスも言った。

 

「でも、過去に縛られないこと」

 

レオは静かに笑った。

 

「……そうか」

 

ハーマイオニーがレオの隣に立つ。

 

「ちゃんと受け継がれているわね」

 

レオは彼女を見る。

 

「いや」

 

「え?」

 

「受け継いだだけじゃない」

 

子供たちを見る。

 

「自分たちのものにしてる」

 

ハーマイオニーは微笑んだ。

 

「それが一番大切なのよ」

 

その時。

 

汽笛が鳴った。

 

「そろそろだ!」

 

レオニダスが言う。

 

子供たちが列車へ向かう。

 

レオナが一歩進んだところで、振り返る。

 

「お父さん」

 

「どうした?」

 

「……ありがとう」

 

レオは微笑んだ。

 

「何が?」

 

「私を、私のまま育ててくれて」

 

レオは一瞬だけ言葉を失った。

 

そして――

 

「こちらこそ」

 

そう答えた。

 

ハーマイオニーもレオナを見つめる。

 

「あなたは私じゃない」

 

「うん」

 

「だからこそ、あなたにしかなれない人になってね」

 

「……うん!」

 

レオニダスも両親を見る。

 

「僕も!」

 

レオが笑う。

 

「お前も、お前にしかなれない人になれ」

 

「分かった!」

 

二人が列車へ乗り込む。

 

レオニダスは窓から顔を出す。

 

「じゃあな!」

 

レオナも手を振る。

 

「行ってきます!」

 

「行ってらっしゃい!」

 

親たちが手を振る。

 

ハリーとジニー。

 

ロンとアステリア。

 

ドラコとパンジー。

 

レオとハーマイオニー。

 

それぞれが、自分たちの子供を見送る。

 

汽笛が鳴る。

 

列車がゆっくり動き始めた。

 

「またね!」

 

「気をつけて!」

 

「手紙を書けよ!」

 

「分かってる!」

 

列車が少しずつ遠ざかる。

 

レオニダスとレオナは、窓から親たちを見ていた。

 

そして――

 

レオナが兄を見る。

 

「兄ちゃん」

 

「ん?」

 

「私たち、これからどうなるのかな」

 

レオニダスは少し考える。

 

「分からない」

 

「そっか」

 

「でも――」

 

彼は笑った。

 

「自分で決められる」

 

レオナも笑った。

 

「うん」

 

二人の杖が、ほんの少し光る。

 

「記」

 

「憶」

 

その光が重なる。

 

そして、新しい文字が浮かんだ。

 

「未来」

 

レオニダスは目を見開く。

 

「……未来」

 

レオナが頷く。

 

「私たちの未来」

 

列車は進んでいく。

 

ロンドンの街を抜ける。

 

そして――

 

ホグワーツへ向かって。

 

その頃。

 

駅に残った親世代は、静かに列車を見送っていた。

 

ロンがぽつりと言う。

 

「行っちまったな」

 

ハリーが笑う。

 

「ああ」

 

ドラコは腕を組む。

 

「これで、少しは静かになる」

 

パンジーが笑った。

 

「本当にそう思ってる?」

 

「……思っている」

 

ジニーが笑う。

 

アステリアも微笑む。

 

そして、ハーマイオニーがレオを見る。

 

「寂しい?」

 

「少し」

 

「私も」

 

レオは遠ざかる列車を見つめた。

 

「でも――」

 

ハーマイオニーが言葉を続ける。

 

「嬉しい」

 

二人は頷いた。

 

親ができることは、

 

子供の未来を決めることではない。

 

道を示すこと。

 

必要な時に手を差し伸べること。

 

そして――

 

最後には、自分の足で歩かせること。

 

それが、親世代から次世代への本当の継承だった。

 

一方。

 

ホグワーツ特急の中。

 

レオニダスたちは、新しい席を囲んでいた。

 

アルバス。

 

スコーピウス。

 

ローズ。

 

そしてレオナ。

 

誰もが、親たちの名前を背負っている。

 

英雄の息子。

 

偉大な魔女の娘。

 

名門の後継者。

 

伝説の家系。

 

けれど――

 

もう、それだけではない。

 

レオニダスが言う。

 

「俺たちは、俺たちだ」

 

レオナが頷く。

 

「うん」

 

アルバスも笑う。

 

「僕たちの話を始めよう」

 

ローズが窓の外を見る。

 

「親たちの物語の続きじゃなくて――」

 

スコーピウスが言った。

 

「僕たち自身の物語を」

 

四人は顔を見合わせた。

 

そして笑った。

 

窓の外には、遠く青い空が広がっている。

 

その先にあるのは――

 

まだ誰にも分からない未来。

 

だからこそ。

 

自分たちで選ぶことができる。

 

レオニダスが杖を握る。

 

レオナも杖を握る。

 

二本の杖に浮かぶ文字。

 

「記」

 

「憶」

 

そして――

 

「未来」

 

レオニダスが笑った。

 

「行こう、レオナ」

 

「うん、兄ちゃん」

 

ホグワーツ特急は走り続ける。

 

親世代から受け継いだものを胸に抱きながら。

 

けれど、親世代と同じ道を歩くのではなく。

 

自分たち自身の未来へ。

 

そして――

 

新しい世代の物語へ。

 

――完。

 




ここまで「アナザーストーリー」全10話を読んでくださり、本当にありがとうございました。

この物語では、レオとハーマイオニーをはじめとする親世代の過去と、レオニダス、レオナ、アルバス、ローズ、スコーピウスたち次世代の姿を描きました。

第1話では、レオの二本の杖を通して「過去」と「現在」を描きました。

そして、レオニダスのオークの杖とレオナの柳の杖。

二人は父親や母親と同じ杖を選ぶ必要はありません。

なぜなら、二人は親のコピーではなく、それぞれ一人の人間だからです。

レオニダスは兄として前へ進み、レオナは妹として兄を支え、時には止める。

違う二人だからこそ、一緒に歩いていける兄妹として描きました。

第2話から第6話では、ハーマイオニーの知識、アルバスの「英雄の息子」という立場、ローズとロン・アステリアの親子関係、そしてスコーピウスとドラコの「名前」を通して、親子がそれぞれの過去と向き合う姿を描きました。

第7話と第8話では、レオとハーマイオニーの馴れ初めと二人の愛情を描きました。

幼い頃の「いつか結婚しよう」という約束。

ホグワーツでの再会。

レオがハーマイオニーを守った神秘部での戦い。

そして、大人になった二人が改めて互いを選んだこと。

二人の関係は、子供の頃の約束だけで続いているのではありません。

何度も互いを選び、支え合ってきたからこそ、今の家族があります。

第9話では、「名前を取り戻す」という物語を描きました。

名前を失っても、誰かが覚えている限り、その人の存在は消えません。

けれど最後に自分の名前を取り戻すのは、その本人です。

そして、この10話を通して描きたかったテーマは、

「受け継いだものに、自分自身の意味を加える」

ということです。

親から受け取るものは、知識、経験、記憶、愛情、名前、家族の歴史など、たくさんあります。

しかし、それをそのまま繰り返す必要はありません。

レオニダスはレオではない。

レオナはハーマイオニーではない。

アルバスはハリーではない。

ローズも、スコーピウスも、それぞれの親とは違う人生を歩いていきます。

親から受け取ったものを胸に抱きながら、自分自身の未来を選ぶ。

それが、この作品で描きたかった「継承」です。

だからこそ、最終話の舞台をホグワーツ特急にしました。

親世代が子供たちを見送り、次の世代が未来へ向かって走り出す。

親たちは、子供たちの未来を決めるのではなく、ただ願います。

自分の人生を、自分自身で選んでほしい、と。

そして列車の中で、レオニダスたちは言います。

「僕たちの話を始めよう」

親世代から受け取った物語を胸に抱きながら、今度は自分たちの物語を書いていく。

その瞬間こそが、このアナザーストーリーの結末です。

レオニダスとレオナ。

アルバス、ローズ、スコーピウス。

そして、これから出会う次の世代。

彼らがどんな未来を選ぶのかは、まだ誰にも分かりません。

だからこそ、物語は続いていきます。

「たとえ世界が僕たちを忘れても。

僕たちは、僕たちを覚えている。」

その記憶を胸に、子供たちはホグワーツ特急とともに、自分たちの未来へ進んでいきます。

最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました。

――アナザーストーリー、完。

そして、次の物語へ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。