『獅子と魔法動物学者の継承者たち ―スキャマンダー家の双子とホグワーツ―』 作:夜幻
「……着いた?」
レオナが窓の外を覗き込む。
「たぶん!」
レオニダスも立ち上がった。
窓の向こうに見えるのは、暗い駅と、ぼんやりと灯るランタン。
やがて列車が完全に停止した。
「ホグワーツだ!」
レオニダスが声を上げる。
「本当に着いたんだ!」
レオナも嬉しそうに笑った。
車内が一気に騒がしくなる。
生徒たちは荷物をまとめ、次々と列車から降りていく。
「レオニダス、レオナ、忘れ物はない?」
ローズが確認する。
「ない!」
「私も!」
二人は同時に答えた。
「本当に?」
「本当!」
レオナが胸を張る。
レオニダスはトランクを持ち上げた。
「じゃあ行こう!」
二人は並んで列車を降りた。
冷たい夜風が頬を撫でる。
「うわ……」
レオナが目を丸くした。
「寒い!」
「でも、なんかすごい!」
駅の向こう側には、巨大な影が広がっていた。
湖。
森。
そして、その先にそびえ立つ――。
ホグワーツ城。
無数の窓から明かりが漏れ、夜空を背景に堂々と建っている。
「……あれがホグワーツ」
レオニダスが呟いた。
レオナも兄の隣に並ぶ。
「きれい……」
二人はしばらく言葉を失った。
これまで写真や話でしか知らなかった場所。
それが今、自分たちの目の前にある。
「行くぞ!」
レオニダスが笑う。
「うん!」
二人は一緒に歩き出した。
やがて新入生たちは大広間へと案内された。
大きな扉が開く。
「わあ……!」
レオナの口から声が漏れた。
高い天井。
無数の蝋燭。
そして、魔法によって夜空のように見える天井。
「すごい……」
レオニダスも目を輝かせる。
大広間には、すでに上級生たちが並んで座っていた。
その視線が、一斉に新入生へ向けられる。
「緊張するね」
ローズが小声で言う。
「僕は全然!」
レオニダスが答える。
「嘘」
レオナが即座に言った。
「さっきから手が動いてるよ」
「え?」
レオニダスが自分の手を見る。
確かに、無意識に指を動かしていた。
「……ちょっとだけ緊張してる」
レオナが笑う。
「私も」
「じゃあ一緒だな」
「うん」
二人は顔を見合わせた。
やがて、前方に置かれた椅子へと新入生たちが並んでいく。
その上には、古びた組分け帽子が置かれていた。
組分けが始まる。
一人。
また一人。
帽子が名前を呼び、寮を決めていく。
「次――」
教授が名簿を見る。
「レオニダス・スキャマンダー!」
レオニダスの肩が跳ねた。
「僕だ!」
「頑張って、お兄ちゃん!」
「うん!」
レオニダスは前へ歩いていく。
椅子に座る。
組分け帽子が頭に被せられた。
少しの沈黙。
やがて帽子が動いた。
「ふむ……」
低い声が響く。
「勇気がある。好奇心も強い。何より――仲間を大切にする心が強いな」
レオニダスはじっと黙っている。
「さて、どこにするべきか……」
ほんの少しの間。
そして――。
「グリフィンドール!」
大広間が大きな拍手に包まれた。
「やった!」
レオニダスが拳を握る。
グリフィンドールのテーブルへ向かう途中、レオナと目が合った。
レオニダスは笑顔で親指を立てる。
「グリフィンドール!」
口の動きだけで伝える。
レオナも笑った。
次々と新入生の組分けが進む。
そして――。
「レオナ・スキャマンダー!」
「……私!」
レオナが一歩前へ出る。
兄の座った椅子を見る。
そして小さく息を吸った。
「行ってくるね」
誰に言うでもなく呟く。
椅子に座る。
組分け帽子が頭に乗せられた。
「なるほど……」
帽子が呟く。
「明るく活発。好奇心旺盛。そして――兄を大切に思っている」
レオナの頬が少し赤くなる。
「でも、それだけではないな」
帽子が続ける。
「自分自身の心もしっかり持っている。誰かの後ろについていくだけの子ではない」
レオナは顔を上げた。
「ならば――」
帽子が叫ぶ。
「グリフィンドール!」
一瞬の静寂。
次の瞬間。
「やったー!」
レオナが立ち上がった。
グリフィンドールのテーブルから、大きな拍手が起こる。
レオニダスは誰よりも大きく手を叩いていた。
「レオナ!」
「お兄ちゃん!」
二人は笑いながら互いに駆け寄る。
「一緒だ!」
「一緒だね!」
二人は思わず手を取り合った。
「やっぱり私たち双子だね!」
「だろ!」
周囲から笑い声が聞こえる。
その様子を見ていたローズが微笑んだ。
「本当に二人らしいわね」
アルバスは別の寮へ。
スコーピウスもまた別の寮へ。
仲間たちはそれぞれ違う場所へ進んでいく。
それでも、レオニダスとレオナはグリフィンドールの同じテーブルに並んで座った。
「これから学校生活が始まるんだね」
レオナが言う。
「ああ」
レオニダスは目の前に並ぶ料理を見る。
「まずは――」
「まずは?」
「食べよう!」
「ふふっ!」
二人は笑った。
大広間には、魔法の灯りが輝いている。
目の前には、これから始まる新しい生活。
親たちが歩んできた道とは違う。
レオニダスとレオナ。
二人の双子が、自分たち自身の物語を始める。
その第一歩が、今、踏み出された。