「うそ……」
卒業ライブが終わって月に帰ってきた私に待っていたのは今までサボった分溜まりに溜まったつまらない仕事、ではなかった。
「なん、で、地球人がここに…ていうかこの人、最初の頃の路上ライブに来てくれてた……」
『最初にツクヨミでかぐや様に接触した際、踏み台にしたアカウントの人物です。他の地球人とは魂の形が少し違っていたため誤って連れ帰ってしまいました。目覚め次第、元いた場所に送還します』
そこにいたのは地球の人。しかもかぐやのファンだった人。名前は知らないけど握手すると嬉しそうにしてくれてたのを覚えてる。
案内係の月人が淡々と説明してくれる。
「送還って……この人、魂だけになっちゃってるじゃん。この人の肉体は?どこに保護してるの?」
『魂と肉体を無理やり引き剥がした影響でどちらかは諦めなければならず、また肉体より魂の方が破損が少なかったため魂のみを保護しました。現在は修復するために月に適応させながら破損箇所を治していました。修復は完了していますが目覚める様子はありません』
「元いた場所って、ツクヨミのこと言ってる?魂だけ急にツクヨミに返したところで元通りなわけないでしょ」
地球人にとって肉体と魂の乖離は死を意味する。そもそも肉体が無事でも魂と乖離した肉体は生理現象も全て止まってしまう。12日も経っているなら肉体はもう…
もともと地球人の肉体と魂は死ぬ時以外に分離する前提の形をしていない。それが無理やり引き剥がされたなら魂だって見た目は治っていてもどんな影響があるか分からない。治っても目覚めないのがいい証拠だ。
『いかがいたしますか?』
「…このまま目覚めるまで保護してて。目覚めてから本人にどうしたいか確認するから」
目覚める保証なんてないのに、それ以外に出来ることがない。
かぐやが仕事を放り出して逃げたりしなければ月人たちは来なかった。かぐやがヤチヨカップで優勝しなければこの人はアカウントを乗っ取られてたりしなかった。
「かぐやのせいだ……」
かぐやがこの人を死なせてしまった。いつか見た映画の主人公の気持ちが今になって痛いほどわかる。罪を背負うってこういうことなんだな。自分の身が穢らわしいものに思えてくる。
彩葉…ごめんね。こんなんじゃもう、会いにいけないや。
「かぐや、人殺しになっちゃった……」
願わくば、この人がいつか目覚めてかぐやのこと許しませんように、
「えっ!?かぐやちゃん誰か殺っちゃったの!?月人鬱陶しくて処分しちゃったとか!?」
月人のそれとは違う知らない声が響いた。
はろばんこんちゃろー!n番煎じ(nは100以上の自然数とする)の超かぐや姫ワールドに転生した太田邦義、略してオタク君でーす!いえーい!超かぐや姫に脳を焼かれた同志オタク君見ってるー?僕は今、君たちがどれだけ望んでも来れないツクヨミに来ちゃって——たんですけどねぇ。ツクヨミサービス開始から毎日ログインしてヤチヨ追いかけまくってかぐやといろpに貢ぎまくって号泣しながらヤチヨとかぐやのコラボライブ観てたらいきなり暗転して、目覚めたら目の前にかぐやちゃんがいるし。人殺しCOしてるしでびっくりしてつい大声が出てしまった。
あーもうめっちゃ目丸くしてるじゃん。オタクすぐ大声出すから。すごく気まずい。アイサツ、いきますか。
ドーモ、カグヤサン。クニヨシ=オオタデス
「……」
なんか言って!ちょっと恥ずかしいから!なんてアホなこと思ってると大きなお目目からポロポロと涙が。
ちょっ!かぐやちゃん!?ごめんねキモかった!?それともお腹すいちゃった!?ごめんねぇ、何もできないけどとりあえず推しの泣き顔は心臓に悪いから泣き止んでおくれぇ!
「かっ、かぐやが」
うん?
「かぐやが、にっ、逃げだしたせいで……ごめんなさいっ、ごめんなさいっ…」
それだけ言うと顔を伏せて泣き始めてしまった。どいうこと?俺がここにいるのとなんか関係あるの?視線をいつのまにか来ていた菩薩型に向けると1から説明してくれた。あっ、貴方が主治医やってくれてたんですねどうもお手数おかけしました。ちなみに卒業ライブの時の映像とかって…あっ、ない?ですよね失礼しました。
ざっくり言うと魂抜かれて実質死亡でかぐやちゃん視点自分が原因で人が死んだってことね、なるほどなるほど。
死因はまぁ転生とかいうウルトラCかました俺のせいっぽいしなんなら死んだって感覚全くないからいいとして。
タイムパラドックス起こってない?輪廻を脱したというより捻じ曲げてないこれ?
と、とりあえずかぐやちゃんに説明ずら。お兄さん転生者って言って他の世界から来たちょっと様子のおかしい人なんだよー。だからかぐやちゃんのせいじゃないよー。なんなら死んでる実感ないから実質死んでないよー。と前世のことから今世のことまで洗いざらい説明する。かぐやちゃんに認知されてたことを知って発狂しかけるもののオタク君これを華麗にグレイズ。
とりあえずこうして起きたわけだし、どれだけ憧れても来れなかったこの世界にこれて、彩葉さんよりも先にかぐやちゃんの故郷にまで来れたんだから全部無問題なのよ?
「でも…それでももう地球で生きられないんだよ…」
そこはほら我らの超人彩葉さんに期待しよ。月人が使えるアンドロイドを作ってくれるかもしれないし、ツクヨミに味や匂い、温度なんかも実装してくれるかもしれない。彼女はかぐやちゃんのためならなんだってするよ。
人殺しじゃないことが分かったかぐやちゃんは無事酒寄彩葉と再会してめでたしめでたし〜ってね。ハッピーエンドを目指してこその人生じゃない?
「彩葉ともう一度…」
目に光が戻ってきたかぐやちゃんに安堵する。これならひとまずは大丈夫そうかな。あともう一押ししておこう。
そしたらほら、まずはお仕事頑張らないと!かぐやちゃんじゃなきゃ処理できない仕事もいっぱいあるからこうして月人のみんなも連れ戻しにきたわけじゃない?それをしっかりやっつけて、引き継ぎして、今度は月人に行ってらっしゃいしてもらいながらもう一度地球行っちゃおう!
そのためにも今日はいろんなこと考えて疲れちゃっただろうし一回おやすみなさいしよ?ね?
「うん、うん。わかった。ごめんね。ありがとう」
これでもう大丈夫かな。
まだ菩薩さんに聞きたいことがあると伝えて先に休むように促す。
ツクヨミに行けるかどうかで今後とやるべきことがだいぶ変わるが、一般人に出来ることなんてそう多くないだろう。推しのために命を燃やす。最悪文字通りの意味で。
「くによし!かぐやが巻き込んじゃったことに変わりはないから!だからくによしもハッピーエンドまで連れて行くから!」
振り返ったかぐやちゃんがそんなことを叫びながら走りさっていく。
ほんと俺の推しは最高だよ。
さてさて、お待たせしてしまってすみませんね。ご迷惑おかけしました。菩薩さん…さっつーでいい?語感がなんとなく…良い?ありがとうさっつー。ツクヨミってさ、俺行けるよね。意識だけは途中からあったからツクヨミに返すって話を別の月人が言ってたの聞いたから行けると思うけど一応ね。じゃあ次が1番大切なこと。保険の意味でしかないけどね。俺もハッピーエンドに連れて行ってくれるって言ってたのをなるべく尊重したいし。
万が一俺が原因の輪廻の崩壊が悪影響を出すってわかった時に過去に遡って俺という存在を消すことって、できる?
出来そう。
リバイバル上映で脳を焼かれたので勢いで投稿。脳を焼かれたのにこんな文章しか出力できないんですか???
二次創作で散々いろんな作品読みましたが映像になるとやっぱ全然違いましたね。ボロボロ泣いてました。芦花さんと真実の見た目だったり、犬DOGEの読み方だったり想像してたのと全く違う部分もたくさんあって楽しかったです。
月の超技術vs酒寄彩葉の超技能100本勝負とかCHK!(コズミックホラーかぐや)とか酒寄彩葉の月面探索とかちょっと面白そうだから誰か書いて欲しいンゴねぇ