淡海乃海 双流の近江   作:はくいろ

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ストックは……まだ……あります!やらせてください!!


第九話「先を行く者」

 答えは出た。ここが、前世で俺が読んだ『淡海乃海』の世界であることについては、もう疑う理由の方が少ない。そう認めてしまうと、それまで胸の内に引っ掛かっていたものが一つ消えた代わりに、今度は別の疑問がはっきりと形を持った。ならば、竹若丸は何者なのか。いや、そんなものは分かっている。前世で読んだ『淡海乃海』の竹若丸――後の朽木基綱は、俺と同じように前世の記憶を持ってこの時代へ生まれた人間だった。五十を過ぎるまで別の時代を生き、それから朽木家へ転生した男。物語の通りなら、今、朽木にいる竹若丸にも当然その記憶があるはずだ。

 

 だが、それをそのまま答えにしてよいのか。俺は一度、その考えを頭の中で押し留めた。この世界が『淡海乃海』と同じだからといって、何もかもが前世で読んだ通りだとは限らない。何より、その証拠が俺自身だった。本来の物語にいた六角義治と、今ここにいる俺は既に違う。少なくとも、俺が前世の記憶を持って六角家に生まれたという時点で、物語には存在しなかった変化が一つ生まれている。ならば竹若丸についても、「物語でそうだったから」という理由だけで決めつけるべきではない。ただし、確かめるための材料なら目の前にある。

 

「対馬守」

 

 三雲対馬守が顔を上げた。

 

「はっ」

 

「竹若丸について、他に分かったことはないか?」

 

 父上が僅かにこちらを見る。先ほどまでの報告だけで満足したと思っていたのかもしれない。しかし、俺にとってはむしろここからが本題だった。

 

「本人について、でございますか」

 

「朽木が豊かになったことは分かった。澄み酒も、組屋源四郎のこともな。それ以外に、この三年で変わったことがあれば知りたい」

 

 三雲は手元の書付へ視線を落とし、少し考えてから一枚を手に取った。

 

「では、確かなところだけを申し上げまする。まず朽木へ入る者の数は、以前よりかなり増えているようにございます。近江からだけではなく若狭から入る商人や旅人も多く、道を通る者から銭を取らなくなったことも、その理由の一つであろうとのこと」

 

「銭を取らない?」

 

「関でございます。以前は取っていたものを、今では取らぬと」

 

 思わず黙った。関所の廃止。また一つ、記憶と重なるものが増えた。三雲は俺の反応を確かめるようなことはせず、そのまま淡々と続けた。朽木では澄み酒だけでなく、木を使った品や漆を塗った器もよく売れており、酒を求めて来た商人が別の商品を買って外へ持ち出すことも多いらしい。そのためか職人も以前より増え、近頃は刀を打つ鍛冶まで朽木へ入っているという。さらに武具を扱う者の出入りも見られ、城下では以前より兵らしき者の姿が増えているらしい。

 

「兵の数は?」

 

「そこまでは。朽木へ入った者の話を繋ぎ合わせただけにございますので、正確な数までは掴めておりませぬ。城の内まで探らせれば別でございますが」

 

「いや、そこまではよい」

 

 父上が口を挟んだ。

 

「朽木と戦をするわけでもあるまい。亀松丸が知りたいと言うたから調べさせたに過ぎぬ。余計な真似をして勘付かれる必要はない」

 

「はっ」

 

 その判断は当然だった。俺も頷く。むしろ、これだけ分かれば十分過ぎるほどだ。関を廃し、澄み酒を作り、商人を呼び込み、別の商品まで売れるようにして、職人を集め、鍛冶を入れ、兵まで増やし始めている。俺は三雲の言葉を聞きながら、前世の記憶を探っていた。細かな順番までは覚えていない。それでも、竹若丸が朽木を豊かにし、商いを増やし、それと並行して軍事力まで整えていったことは覚えている。何より、それら一つ一つが幼い子供の思い付きとしては不自然だった。

 

 澄み酒だけなら偶然と言えた。関を廃しただけでも、思い切りの良い家臣がいたのだと考えられたかもしれない。だが、それらが全て同じ方向を向いている。人を呼び、物を売り、銭を生み、その銭でさらに人や技術を集める。商いだけでは終わらず、最後には自分の家を守る力へ変えていく。三雲が持ち帰ったものは外から見える断片に過ぎない。それでも、並べれば何をしようとしているのかは見えてくる。偶然ではない。少なくとも、何も知らない幼子が周囲の大人に言われるまま当主の座に座っているだけではなかった。

 

 いる。俺以外にも、この時代を一度目の人生として生きていない人間がいる。その考えが浮かんだ瞬間、胸の奥が妙にざわついた。転生してから今日まで、俺は一度も前世のことを誰かに話していない。自分は本当は三十代半ばまで生きた数学教師で、目を覚ましたら六角家の嫡男になっていた。未来の日本を知り、父上たちの先に待つ歴史も知っている。そんなことを口にしたところで信じてもらえるとは思えなかったし、仮に信じられたとしても、それが良い結果を生むとも思えなかった。だから父上にも千代丸にも話さなかった。この世界で初めて出来た家族にも、初めて出来た家臣にも、前世の記憶だけはずっと俺一人のものだった。

 

 それが今、近江の北西に、自分と同じ秘密を抱えているかもしれない人間がいる。会ってみたい。最初に浮かんだのは、素直にその気持ちだった。同じ世界から来たのかもしれない。俺が知っているものを、相手も知っているかもしれない。誰にも言えなかったことを、唯一話せる相手になる可能性すらある。だが、その期待へすぐ別の感情が重なった。怖い。自分でも意外なほど、そう感じた。

 

 竹若丸はただの転生者ではない。俺が読んだ物語の主人公だ。前世で五十年以上を生き、この時代に生まれてからも幼い身で家を守り、その後は朽木を大きくしていく。俺はその先を知っている。朽木という小さな家から始めて、やがて近江だけでは収まらない存在になる男だ。もし本当に同じ竹若丸なら、気軽に「転生者仲間だ」と近付けるような相手ではない。それに、向こうから見れば俺は六角の嫡男だ。朽木にとって六角がどんな存在なのかを考えれば、こちらだけが親近感を持って会いに行ったところで、相手も同じように受け取るとは限らない。まして「お前が転生者だと知っている」などと口にすれば、何故それを知っていると警戒されて当然だ。会いたい。だが、まだ会うべきではない。その二つが胸の中で同時に存在していた。

 

「若様?」

 

 三雲の声で我に返った。どうやら少し長く黙っていたらしい。

 

「いや、何でもない。続けてくれ」

 

「は。もっとも、某どもが今回調べましたのは、あくまで外から見えることにございます。竹若丸殿が何を考えてこれらを始められたのかまでは分かりませぬ」

 

「それでよい」

 

 むしろ、それが当然だ。十日ほど調べただけで他家の当主の考えまで分かる方がおかしい。三雲の報告が終わると、父上は労をねぎらって下がらせた。部屋に残ったのは父上と俺だけになり、障子の向こうでは夏の蝉が絶え間なく鳴いている。朝から照り付けていた日は少し傾き始めていたが、部屋に籠もった熱はまだ抜けていなかった。

 

 俺は三雲が残していった書付を眺めた。三年。竹若丸が朽木の当主になってから三年。俺が評定へ出始め、本格的に六角のことを学ぶようになってからも、ほぼ同じだけの時間が流れている。自分はその三年間で何をしたのか。関銭について疑問を持ち、いきなり全てを無くすのではなく、一つの関で試した。商人の数を数え、荷駄を数え、前後の変化を比べ、市についても少しずつ手を入れた。上手くいったこともあれば、思ったようにならなかったこともある。三年前の俺と比べれば、六角という家がどう動いているのかも随分分かるようになったし、その三年間が無駄だったとは思わない。むしろ、俺には必要だった。

 

 それでも目の前の書付を見れば、どうしても比較してしまう。同じ三年で、竹若丸は澄み酒を作り、関を無くし、商人を呼び込み、商品を増やし、職人を集め、兵まで整え始めている。俺が試しに一つの関を弄り、その結果が本当に正しいのかと商人や荷駄の数を数えていた間に、あいつは自分の領地の関そのものを無くし、人が入ってくる仕組みを作っていた。

 

 胸の奥に重たいものが生まれた。悔しい。その感情を認めるまでには少し時間がかかった。竹若丸を嫌いになったわけではない。むしろ逆だ。前世で読んでいた時から好きな主人公だったし、実際に同じ世界で動いていると分かった今は、以前より興味が強くなっている。それでも、自分と同じように前世の記憶を持っているかもしれない人間が、同じ三年間で自分より遥かに目立つ成果を出していると知れば、何も感じないほど俺は出来た人間ではなかった。

 

「……随分と難しい顔をしておるな」

 

 父上の声に顔を上げると、こちらを見ていた。

 

「そうでしょうか」

 

「先ほどから書付を睨んでおる。穴でも開けるつもりか」

 

 言われて初めて、自分が随分長く同じ場所を見ていたことに気付いた。

 

「何が気に入らぬ?」

 

「気に入らぬわけではございませぬ」

 

「ならば何じゃ」

 

 誤魔化そうかとも思った。だが、父上の前で適当な言葉を並べても、すぐに見抜かれる気がした。

 

「……悔しゅうございます」

 

 口にすると、思っていた以上に素直に出た。父上が僅かに眉を上げる。

 

「何がじゃ」

 

「竹若丸が、でございます。同じ三年なのです」

 

 そこから先は、考えていたことをそのまま話した。俺も三年間何もしなかったわけではない。それでも竹若丸は、同じ時間で朽木をここまで変えている。自分が一つずつ確かめながら進んでいる間に、向こうはもっと先へ進んでいるように見える。父上は黙って聞いていたが、俺が話し終えてもすぐには何も言わなかった。

 

「では、亀松丸。そなたも朽木と同じことをすればよいと思うか?」

 

 予想していなかった問いだった。

 

「関を全て無くし、朽木と同じ物を作り、同じように商人を集めれば、竹若丸に追い付けると思うか?」

 

 反射的に答えそうになり、やめた。六角と朽木では何もかもが違う。朽木は小さい。だからこそ当主の意思も通りやすいのだろう。六角は大きく、多くの家臣がいて、寺社があり、商人がいて、それぞれが権利を持っている。一つの関で銭を少し変えただけでも、その影響は別の関や、それを収入としている者へ広がった。全ての関をいきなり無くせば反発する者が出るだろうし、失う銭も大きい。澄み酒だって、竹若丸が上手くやったからといって、自分が同じものを作れば同じだけ売れる保証などどこにもない。

 

「……いいえ」

 

 答えると、父上の口元が少し緩んだ。

 

「何故じゃ」

 

「朽木と六角では違います。朽木で出来たからといって、六角で同じことが出来るとは限りませぬ。大きさも違えば、関わる者の数も違います。それに、竹若丸が何を考えてそれをしたのか、私はまだ知りませぬ」

 

「ならば、それでよい」

 

「ですが、悔しいことに変わりはございませぬ」

 

 そう言うと、父上はとうとう笑った。

 

「それも良かろう。悔しいと思える相手がおるというのは、悪いことではない。ただし、悔しいからと相手の真似ばかりするな。そなたは竹若丸ではない。六角も朽木ではない」

 

 その言葉を聞きながら、以前父上に言われたことを思い出した。大きいということは、強いということと同じではない。あの時は六角家そのものについて教えられた言葉だったが、今ならもう少し違う意味でも分かる。俺には竹若丸にないものがある。大きな六角家があり、父上を始めとする多くの家臣がおり、近江には六角へ繋がる人と物と銭の流れが張り巡らされている。だが、それらは持っているだけで力になるわけではない。大きいからこそ動かしにくく、一つ変えれば別の場所へ影響が出る。その力をどう使うかを知らなければ、大きさはむしろ重さにもなる。

 

 竹若丸には竹若丸の戦い方がある。なら、俺には俺の戦い方が必要なのだ。書付へもう一度目を落とす。同じ三年。数字にすれば同じだが、その中で出来たことは違う。今のところ、竹若丸の方が先にいる。それは認めるしかない。だからといって、そのまま後ろを歩くつもりもなかった。悔しいなら学べばいい。違うなら、自分に合うやり方を探せばいい。そしていつか竹若丸本人と会った時に、前世の物語を知っているからではなく、今の俺自身の目であいつを見てみたい。

 

 その時、俺はどこまで進んでいるのだろう。

 

 三雲の残した書付を眺めながら、そんなことを考えていた。

 

 父上の部屋を辞した後も、頭の中から竹若丸のことは離れなかった。廊下を歩きながら考えていたのは、どうすれば追い付けるのかということだったが、何か一つ思い付くたびに、先ほど父上から言われた「そなたは竹若丸ではない」という言葉が浮かんできた。関を無くす。酒を作る。職人を集める。どれも既に竹若丸がやっていることで、それを六角へ持ち込んだところで、俺が竹若丸の後ろを歩くだけになる。それでは意味がない。それに、俺が本当にしたいのは竹若丸より多くの銭を稼ぐことでも、朽木より早く領地を豊かにすることでもなかった。父上を失いたくない。千代丸や家臣たちを、前世で知っている六角の衰退へ巻き込みたくない。この六角という家を、自分が生まれたことでかえって悪い方向へ進ませるようなことだけはしたくない。そのために必要なら竹若丸から学ぶし、使えるものなら前世の知識も使う。だが、目的と競争を取り違えてはいけない。そう考えているのに、同じ三年という言葉を思い浮かべると、やはり少し悔しかった。

 

 自室へ戻ると、千代丸が何を考え込んでいるのかと聞いてきた。朽木について調べてもらったことは知っていたので、竹若丸の話だとだけ答えると、千代丸は不思議そうな顔をした。千代丸にとって竹若丸は、近江の北西にいる幼い当主の一人でしかないのだろう。俺のように前世の物語を知っているわけではないのだから当然だ。その反応を見て、改めて奇妙な気分になった。俺の中では竹若丸という名前一つに、これから先の何十年分もの出来事が付いている。だが、この時代を生きる者たちにとって未来はまだ何も決まっていない。竹若丸がどれほど大きな存在になるのかも、六角がどうなるのかも、誰も知らない。そして今は、俺自身がその未来の中へ入り込んでいる。ならば、俺が知っている『淡海乃海』の先を、そのまま答えとして扱うことはもう出来ないのだろう。

 

 考えてみれば当然だった。俺が関銭へ手を入れ、市について父上へ意見を出した時点で、少なくとも六角の中には前世で読んだ物語には無かった出来事が生まれている。小さな変化かもしれない。歴史全体から見れば何の影響もない程度かもしれない。それでも俺が何かをするたび、少しずつ元の流れから離れていく可能性はある。前世の記憶があるから未来が分かるのではない。せいぜい、何も知らない者より少し先に起こり得ることを知っているだけで、それが本当に起きるのかは、その時々で確かめなければならない。

 

 つい先日、朽木について調べた時もそうだった。俺は前世の記憶から、竹若丸が家督を継いだ後に何をするのかを知っているつもりでいた。それでも、記憶だけを頼りに「そうなっているはずだ」と決めつけず、対馬守に今の朽木を調べてもらった。その結果として澄み酒があり、組屋源四郎がおり、関を廃して商人を呼び込んでいるという現実を一つずつ確かめたからこそ、ようやく自分の記憶を信じることが出来たのだ。なら、この先も同じようにすればいい。知っている未来を答えとして置くのではなく、あくまで仮の答えとして持っておき、目の前の現実と比べながら確かめていく。それを怠れば、いつか必ず「知っている」という思い込みに足を取られる。

 

 その意味では、竹若丸の存在は俺にとって随分ありがたいのかもしれないと思った。前世で知っていた物語の主人公が、今のところ記憶とほぼ同じように動いている。それはこの世界を知るための目印になる。同時に、竹若丸自身が動くことで、この先の流れが原作から変わることもあるだろう。ましてそこへ俺まで加わるのだ。二人の転生者が、それぞれ別の場所から同じ近江へ手を伸ばしていけば、いつまでも前世で読んだ通りに進むとは思えない。むしろ、今は記憶と一致しているからこそ、この先どこで違い始めるのかを見落としてはいけない。

 

 そこで、ふと三雲対馬守の顔が頭に浮かんだ。今回、俺は朽木について知りたいと思った。だが、自分で知る方法を持っていなかった。父上に尋ね、父上が対馬守を呼び、対馬守が人を使って調べ、それで初めて竹若丸の現在を知ることが出来た。十日ほどであれだけの情報を集めてきたのだから、対馬守の働きに不満があるわけではない。むしろ逆で、自分では何も出来なかったからこそ、その差がよく分かった。俺が観音寺城で帳面を眺めている間にも、近江の外では人が動き、物が動き、思惑が動いている。その全てを父上から教えてもらうまで待つのか。それとも、自分から知ろうとするのか。まだ答えは出ていなかったが、その違いだけは妙に気になった。

 

 前世では、調べようと思えば本を開けばよかった。分からない言葉があれば辞書を引き、後の時代ならインターネットで探すことも出来た。教師をしていた頃など、授業で使う数字一つを確かめるために複数の資料を見比べることも珍しくなかった。だが、この時代にはそれがない。知りたいと思っても、情報そのものが手元へ来なければ比較することすら出来ない。人の噂を聞くしかないこともあれば、商人が運んでくる話を待つしかないこともある。そして、その話が本当なのかどうかを確かめるにも、また別の人間が必要になる。俺がこの三年間やってきた「数える」「比べる」「確かめる」というやり方も、最初の材料がなければ始まらない。

 

 そこまで考えて、自分でも少し可笑しくなった。竹若丸との三年を比べて悔しがっていたはずなのに、結局考えているのは帳面に書く前の情報をどう集めるかという話だった。やはり俺はこういう考え方しか出来ないらしい。だが、それでいいとも思った。竹若丸には竹若丸のやり方がある。それなら、俺は俺が得意な形で六角を見ればいい。人を見て、物を見て、銭を見て、それらがどう動いたのかを残し、前と比べる。そのためには、観音寺城の中に座っているだけでは足りない。

 

 窓の外へ目を向けると、夕暮れの光の向こうに近江の山々が霞んで見えた。そのさらに向こうには浅井があり、高島があり、朽木がある。もっと先には美濃や京があり、俺がまだ名前しか知らない土地もいくらでもある。六角の嫡男として、いつかその全てと関わらなければならないのだろう。それなのに、今の俺が実際に知っている世界は驚くほど狭い。観音寺城で聞いた話と、父上から教えられたことと、自分が直接見た僅かなもの。それだけだ。

 

 竹若丸の三年を知ったことで、自分が遅れていると感じた。

 

 だが、本当に足りないものは、速さだけではないのかもしれない。

 

 そう思いながら、俺は暮れていく近江をしばらく眺めていた。

 

 

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