塩津浜城から観音寺城へ戻って数日が過ぎた。
十一月も半ばを越え、朝夕には火鉢が恋しくなるほど冷え込むようになっている。城内でも冬支度が進み、廊下を行き交う小姓たちは厚手の衣を重ね、軒下には薪が運び込れていた。庭の木々もすっかり葉を落とし、掃き集めたばかりの落葉が風に散らされている。
塩津の湖岸で弥五郎たちと釣り糸を垂らしていたのは、つい先日のことだというのに、観音寺へ戻れば以前と変わらぬ日々が待っていた。
書院の机には留守中に届いた書付が並び、その脇には確認を終えた帳面と、これから返事を出さなければならない文が分けて置かれている。
もっとも、俺が数日城を空けたことで、何かが滞っていたわけではない。
留守中の政務は父上や後藤但馬守たちが進めてくれており、坂田の年貢や寺社の所領、市の取り決めについても、差し迫った揉め事は起きていなかった。村ごとに長く続いてきた仕組みは一様ではなく、帳面を開けば確認を要するところはいくらでも出てくるが、今は旧来の扱いを大きく変えず、現地で判断に迷うことがあれば後藤から知らせてもらう方針となっている。
戻ってみれば、すでに処置を終えたものと、こちらの判断を待つものがきちんと分けられていた。以前なら留守中の報告を最初から全て読み直そうとしていただろうが、今は必要なところを確かめれば済む。自分がいなくとも仕事が進んでいることを、素直にありがたいと思えるようになっていた。
「若様。こちらは御覧いただかなくてもよろしい書付にございます。後藤様から、すでに処置を終えたとの知らせが添えられておりますので」
「分かった。ならば、今朝届いた分を先に見せてくれ」
弥太郎は俺の手元から一冊を取り、別の文箱を引き寄せた。
塩津にいる間は仕事を忘れろと散々言っていた男も、観音寺へ戻ってからは以前と変わらず手際よく書状を差し出してくる。ただし、夜になれば容赦なく文箱を閉じるようになった。小夜から何か言われたわけではないだろうが、休む時は休めと言い出すところなど、兄妹揃って妙なところが似ている。
先日も少し遅くまで帳面を読もうとしたところ、翌朝で十分にございますと筆を取り上げられたばかりだった。もう少し加減してほしいものだが、あの時も急ぎの仕事ではなかっただけに、強く言い返すことはできなかった。
帰城した日のうちに、父上への挨拶は済ませてある。
小夜が弥五郎と仲睦まじく暮らし、家中の者にもよく馴染んでいたことを伝えると、父上は食事の様子や普段の振る舞いまで尋ねてこられた。そこまで細かく聞かなくともよいのではないかと思ったが、あれほど気に掛けて嫁がせた娘なのだから当然なのだろう。
小夜が侍女たちへ自然に声を掛け、弥五郎にも遠慮なく物を言っていたことを話すと、父上は何度も頷いておられた。弥太郎も平井加賀守へ妹の近況を知らせたそうで、加賀守は随分安堵していたという。
塩津で小夜が楽しそうに笑っていた顔を思い出せば、訪ねてよかったと改めて思えた。
ただし、あの数日間には、まだ片付いていない話も残っている。
小夜の供として朽木へ来ていた奈津が、命じられた役目を越え、湊の船や積荷、兵の動きについて尋ねていた件である。
篠がその行動に気付き、俺へ報告してきたことが始まりだった。弥五郎へ事情を伝えると、向こうもすでに奈津の動きを把握していることが分かり、その場で本人からも話を聞くことになった。
奈津は三雲対馬守の役に立ちたい一心だったと説明していたが、他家の領内で勝手に調べを広げてよいことにはならない。対馬守から実際に何を命じられていたのか、その点については観音寺へ戻ってから確かめる必要があった。
弥五郎は奈津を捕らえることも、観音寺へ送り返すこともしなかった。
当面は小夜の身の回りの仕事に専念させ、湊や蔵へ勝手に近付かないよう申し付けている。対馬守へは塩津から文を出してあり、本人が何を命じたのか、その返事を待つことになっていた。
奈津の説明が全て正しいのか、これまで送られた文に実際何が記されていたのかについても、まだ確かなところまでは分かっていない。帰城した折には父上へ概要を伝えたものの、詳しい処置については対馬守の返書を待つことにした。
机の上に残っていた書付を一通読み終えた頃、弥太郎が新しい封を差し出した。
差出人を尋ねるより先に、塩津の件でございます、と告げられる。見れば三雲家からの文であり、俺は手にしていた帳面を閉じて弥太郎へ向き直った。
「対馬守様からの返書にございます。御屋形様にはすでに御覧いただいており、若様へも回すよう仰せつかりました」
「ああ、来たか。父上からは何か?」
「対馬守様をお呼びになり、若様とも御話をなさるおつもりだそうです。お急ぎではないものの、今日のうちに一度お越しくださればと」
俺は頷いて封を解いた。
書状には、奈津へ与えた役目が思っていたより詳しく記されていた。
小夜が嫁ぎ先で不自由なく暮らしているか。家中の者と折り合いよく過ごせているか。困っていることがあれば、その様子を知らせること。
それが対馬守の命じた仕事の全てであり、朽木の兵や船について調べさせたことは一度もないという。
奈津から届いた文には、湊の賑わいや見慣れない商人について書き添えられたものもあったが、対馬守は暮らしの周辺で見聞きした話として受け取り、さらに詳しく調べるよう求めたことはなかったらしい。
奈津が塩津で話していた内容と、大きく食い違うところはない。
ただ、対馬守は自分の命じ方にも曖昧なところがあったと認めていた。小夜の様子を知るには、身近な者だけでなく周囲との付き合いにも目を向ける必要がある。どこまで聞いてよいか、反対に何へ踏み込んではならないかを、細かく申し渡してはいなかったという。
対馬守ほど経験を積んだ者なら自然に引くところでも、奈津には境目が見えなかったのかもしれない。
もっとも、命じ方に曖昧なところがあったからといって、自分の判断で調べを広げた奈津の責任までなくなるわけではなかった。
「少なくとも、対馬守が朽木を探らせていたという話ではなさそうだな」
「はい。これまでに届いた文とも、奈津が塩津で申したことはおおむね合っているようにございます」
「だが、まだ全てを確かめたわけではない。実際に何を聞き、何を書き留めたのかまでは分からぬからな」
俺は書状を畳み、弥太郎へ渡した。
奈津を今すぐ観音寺へ呼び戻そうとは思わない。小夜に仕えている者を六角の都合だけで動かせば、弥五郎にも小夜にも迷惑を掛けることになる。
朽木へ嫁いだ小夜の身近に置かれている以上、その扱いを六角だけで決めるわけにはいかなかった。まずは対馬守から詳しく話を聞き、こちらで確かめられたことを弥五郎へ伝える。その上で奈津をどうするか相談すればよいだろう。
父上のもとへ向かうと、座敷にはすでに対馬守が控えていた。
俺が席に着くのを待ち、父上は机の上に置いていた書状を脇へ寄せられた。帰城した日に小夜のことを話した時とは違い、今は三雲家の当主を前にしている。父上も六角の当主としての顔に戻っておられ、私的な席で見せる柔らかさは薄れていた。対馬守も姿勢を正し、こちらが揃うのを静かに待っている。
「右衛門督。返書には目を通したな」
「はい。先ほど拝見いたしました」
「対馬守、そなたの口からも話してやれ。まず奈津へ何を命じておったのか、それを聞こう」
対馬守は父上へ一礼すると、奈津に命じたことを順に説明し始めた。
内容は書状に記されていたものと変わらない。小夜の暮らしについては以前から父上も気に掛けておられたため、表向きに届く文だけでなく、身近にいる者からも様子を聞いておきたかったのだという。
嫁ぎ先で不自由をしていないか。困ったことがあっても遠慮して口にできずにいないか。そうしたことを確かめるため、奈津には時折様子を知らせるよう命じていたらしい。
一方、湊へ出向いて船の数を数えたり、兵の動きを探ったりする仕事は一度も命じていないと明言した。
「御屋形様、右衛門督様。奈津の文に湊のことが記されていたのは事実にございます。ですが、詳しく調べよと返したことはございませぬ。受け取った文にも、兵の数や船の積荷を細かく記したものは見当たりませぬ」
「ならば、奈津が自分の判断で調べ始めたということか」
「そのように考えております。ただ、こちらの伝え方にも至らぬところがございました。小夜様のことを知らせよと命じる際、朽木の内情へ踏み込むなとは申し渡しておりませなんだ」
対馬守は言い訳を重ねることなく、静かに頭を下げた。
父上はすぐには返事をされず、俺へ目を向けられた。
塩津で直接奈津と話したのは俺たちである。そこで聞いたことと、対馬守の説明がどう重なるのかを確かめたいのだろう。
俺は奈津が自分の判断で調べを広げたと認めたこと、詳しい兵の数や船の積荷については文に書いて送っていないと話したことを伝えた。
小夜の近況だけでは対馬守の役に十分立てていないと考えたのか、湊で見聞きしたことまで覚えるようになり、そのうち船や兵についても尋ね始めたらしい。
ただし、それはあくまで奈津本人の説明であり、実際に何処まで調べていたのかが全て明らかになったわけではない。
「篠は奈津からそこまで聞いておりますが、持ち物や文を改めたわけではございません。朽木の八門も奈津の動きには気付いていたそうですが、全てを見聞きしていたわけではないようです」
「ふむ。では、分かっておることと、まだ確かめられておらぬことを混ぜてはならんな」
父上は机へ置いた書状を指先で揃えられた。
対馬守が何を命じたのかについては、本人の説明を聞くことができた。奈津からの文に何が記されていたのかも、対馬守の手元にあるものについては確かめられる。
しかし、奈津が朽木で実際にどれほどのことを聞き、何処まで情報を集めていたのかについては、依然として分からない部分が残っている。
そこを曖昧にしたまま、最初から六角に悪意がなかったのだから問題はないと片付けてしまえば、朽木の側も納得しにくいだろう。
父上も同じように考えておられたらしい。
対馬守へ向き直ると、奈津へ命じたことに偽りがないなら、その内容をきちんと朽木へ伝えるべきだと仰った。奈津の処遇についても、六角だけで決めるのではなく、まず弥五郎の考えを聞く。小夜の供として引き続き置くかどうかは、当の小夜にも関わる話だからだ。
「奈津は今も塩津におる。こちらの都合で呼び戻し、罰して済むというものでもあるまい。まして弥五郎殿が、まず事情を確かめる道を選んでくれたのじゃ。その厚意を軽んじてはならん」
「はっ。すぐに返書を整えまする」
「それと、奈津が自分の役目をどう受け取っていたかも、いずれ本人へ確かめよ。勝手をしたことは看過できぬが、命じ方に問題があったなら、そこも改めねばなるまい」
対馬守は承知したと答え、改めて頭を下げた。
話が一段落したところで、父上が俺にも考えを尋ねられた。
奈津の行動を許してよいとは思わないが、今すぐ罰を決める必要もないだろう。朽木へどこまで迷惑を掛けたのか、実際に何を観音寺へ知らせたのかを確かめないまま重い処置を下せば、後になって別の問題を残すことにもなりかねない。
少なくとも弥五郎が小夜の側へ置くことを認めている間は、その扱いを尊重したかった。
「今は処分を急ぐより、奈津が何をしていたのかを確かめる方が先だと考えております。それに弥五郎殿は、奈津だけを責めていたわけではございません。こちらや篠からも話を聞き、朽木で確認していたことと照らし合わせておられました。六角からも、確かなことを伝えておきたいと思います」
「うむ。それでよい。朽木と六角は縁を結んだが、別の家じゃ。こちらに悪意がなかったと言い張るだけでは、あちらも困るであろう」
父上の言葉に、対馬守も深く頷いた。
六角から嫁いだ小夜の供が起こした問題だからこそ、両家がどのように扱うのかを確かめなければならない。俺たちの間では小夜を大切に思う気持ちも、奈津が役に立とうとしていたらしいことも理解できる。しかし、それだけで弥五郎に何も気にするなと求めるわけにはいかなかった。
朽木の当主として、城内で起きたことについて判断を下すのは弥五郎なのだから。
父上は対馬守へ必要な文を整えるよう改めて命じられ、対馬守も持ち帰る書状をまとめ始めた。
俺もその方針に異存はない。そこで、以前から気に掛かっていたもう一つのことを伝えておこうと思った。
「父上。篠の働きについても、一つ申し上げてよろしいでしょうか」
「何じゃ、右衛門督」
「奈津の行動に気付いた時、篠は本人へ事情を尋ねただけで、勝手に調べを広げませんでした。朽木の者たちを疑うこともなく、まずこちらへ知らせてきたのです。そのおかげで、弥五郎殿とも直接話をすることができました」
父上は対馬守へ視線を向けられた。
対馬守も一呼吸置いてから、篠の判断は妥当だったと答えた。
奈津のしたことを確かめようとするあまり、六角の者が朽木の湊や蔵を探り始めていれば、向こうからどう見られたか分からない。奈津を疑っているのか、朽木の内情を調べようとしているのか、その区別さえ付かなくなる可能性がある。
命じられた範囲を守り、疑問があれば主人へ報告する。篠がそこで止まったことは評価してよいという。
「ならば、その働きはそなたから認めてやれ。奈津の扱いとは別の話じゃ。よく働いた者へ礼を言うのに、返書を待つ必要はなかろう」
「はい。後ほど篠を呼んで、直接伝えておきます」
対馬守が退出すると、父上は少し肩の力を抜き、火鉢へ手をかざされた。
先ほどまでの改まった空気が和らぎ、俺も茶を一口飲んで息をつく。
奈津の件はまだ片付いていないが、対馬守から直接話を聞き、朽木へ何を伝えるべきかも決まった。次の返事が届くまでは、今ここで考えても新しいことが分かるわけではないだろう。
「四郎。塩津では休めたか」
「はい。釣りもしましたし、小夜ともゆっくり話せました。弥五郎にも世話になりました」
「そうか。奈津のこともあったが、遊びに行った甲斐はあったようじゃな」
「ええ。もっとも、弥太郎と小夜には何度も仕事をするなと釘を刺されましたが」
父上は声を立てて笑われた。
俺が少し不満そうな顔をすると、ますます面白そうにしておられる。先ほどまで奈津の件について慎重に言葉を選んでいたのと同じ人物とは思えないほどだったが、こんな顔を見られるのも、人払いをした後の父子の席だからなのだろう。
やがて笑いを収めた父上は、机の端から別の帳面を引き寄せられた。
表紙には坂田の村々の名が並び、その間には道筋を記した紙も挟まれているらしい。
「さて、休んだところで一つだけ。留守の間に坂田から報せが来ておる。年貢と市の扱いは後藤に任せてあるが、東へ通じる道について、少し気になる話があってな」
「美濃へ向かう道でございますか」
「うむ。商人の話じゃ。まずはこれを読んでみよ」
父上は帳面に挟まれていた一通の書状を抜き、俺の前へ滑らせた。
書状は坂田の役人を通じて届けられたもので、東へ向かう商人たちが近頃の道中で見聞きしたことが記されていた。
折り目を開いて目を通すと、以前から使われている街道を避け、多少遠回りになっても別の道を選ぶ者が出ているという。もっとも、道が崩れたわけでも、通行を禁じられたわけでもない。従来通りの道で荷を運んでいる者もおり、話を聞いた商人によって事情が異なっているらしい。
似たような話なら、以前から弥七や宗兵衛の報告にもあった。
夏の終わりには実際に坂田へ足を運び、道の状態や市の様子を確かめたこともある。しかし、その時点では商人が経路を変える理由まで掴めなかった。
取引相手の都合なのか、道中で求められる銭が変わったのか、それとも美濃の国人たちの間で何かが起きているのか。幾つかの可能性は考えられたが、どれか一つを裏付けるだけの話は揃っていなかった。
今回の書状も、そこから大きく進んだものではなさそうだった。
ただ、送り主の役人は自分で確かめたことと、商人から聞いた話を分けて記している。誰がどの道を避けているのか、以前と変わらず往来している者はいるのか。その点を丁寧に書き残してくれているのはありがたかった。
俺は書状にある地名を確かめながら、父上の机に広げられた坂田の地図へ目を向けた。
東へ進めば美濃へ入る道が幾つかあり、その先には不破郡が広がっている。坂田を六角が受け取ったことで、美濃の情勢は以前より身近な問題になった。
商人にとって重要なのは、どの道を使えば無事に荷を運べるのか、途中でどれほど銭を払わなければならないのかということだろう。今のところ六角の領内で大きな混乱が起きているわけではないが、その先で何か変化が生じているのなら、こちらも事情を知っておく必要があった。
「父上。このような話は、他にも届いているのでしょうか」
「似たようなものは幾つかある。ただ、同じ商人から広まった話かもしれぬ。後藤にも確かめさせておるが、まだ詳しいことは分かっておらん」
「道を変える理由についても、はっきりしていないのですか」
「うむ。道中で銭を求められるようになったとも聞くが、何処の誰が取っておるのかも分からぬ。商人同士の都合ということもあろう。今のところは何とも言えんな」
父上はそう仰ると、地図の東側を指先でなぞられた。
坂田から不破へ通じる道は一つではなく、途中には村や市もある。商人が何処から来て、何処へ荷を運ぼうとしているのかによっても選ぶ道は違うだろう。
父上はそのうちの一つを指し、以前から荷馬が往来している街道だと教えてくださったが、そこで何か事件が起きたという確かな知らせまでは届いていないらしい。
通行に銭を求められるようになったという話にしても、それが以前からの取り決めによるものなのか、新たに誰かが徴収を始めたのかさえ分からなかった。
美濃の西に位置する不破は、近江から東へ向かう上で重要な土地である。
前世の知識から思い浮かぶ人物や出来事もあるが、今の美濃で何が起きているかを、それだけで判断するつもりはない。浅井が滅び、坂田の領主が六角へ替わったことで、周辺の国人たちも以前とは異なる考えを持つようになっているかもしれなかった。
そもそも俺の知る歴史と今の状況はすでに違っている。名前を知っているからといって、その人物が今どのような立場にあり、何を考えているのかまで分かるわけではないのだ。
以前から篠には不破の国人たちについて調べさせているが、その後の動きも改めて確かめておいた方がよいだろう。
商人たちの経路が変わり始めた時期と、向こうの国人同士の関係に何か変化があった時期が重なるのかどうか。そこまで分かれば、今より判断しやすくなるかもしれない。ただし、最初から二つに関係があると決め付けるのは避けるべきだった。
「もう少し詳しく調べてもよろしいでしょうか。まずは坂田から不破へ通じる道と、そこを使っている商人たちの様子を、改めて確かめたいと考えております」
「構わぬ。だが、調べることと向こうの国人へ手を伸ばすことは別じゃぞ。美濃の様子を知ろうとして、余計な疑いを招くことは避けねばならん」
「承知しております。こちらから誰かへ働き掛けるつもりはございません。商人から聞ける話を集め、道の様子を確かめるところから始めます」
父上は頷かれた。
今のところ、不破の国人たちへこちらから近付く理由はない。六角が坂田を得たことを快く思わない者がいるかもしれないし、反対に何らかの思惑から六角との繋がりを求める者が現れる可能性もある。
しかし、相手がどのような立場にあり、誰と関係を持っているのかも分からないうちに働き掛ければ、必要のない争いへ巻き込まれることにもなりかねなかった。
まずは分かっていることを整理し、その上で今後の動きを考えればよいだろう。
「そういえば四郎。先日、兵を動かした時のことは覚えておろうな」
「もちろんです。何かございましたか?」
「いや、あの時にそなたが確かめておったことを思い出したのじゃ。兵を集めることができても、道が悪くて荷駄が通れねば先へ進めぬ。坂田から美濃へ通じる道についても、商人の話だけでなく、実際にどの程度の荷を運べるのか見ておくとよい」
俺は頷いた。
先日の訓練では、兵が集まるまでの時間だけでなく、兵糧や荷駄の支度、集合してからの行軍についても確かめている。
思っていた以上に家ごとの違いが大きく、兵だけなら難なく通れる道でも、荷馬が続けば途中で詰まることがあった。特に橋や道幅の狭い場所では、先頭の兵が順調に進んでいても、後続の荷駄が足止めされることがある。
今回の目的は商人の往来を調べることだが、道の広さや川の位置、荷車が通る際に不便な場所を確かめておけば、今後の判断にも役立つだろう。
「弥七には道の状態を改めて見てもらおうと思います。宗兵衛には普段から付き合いのある商人へ話を聞いてもらい、篠には不破の国人たちの最近の関係について調べてもらうつもりです」
「それぞれ役目を分けるのか」
「はい。同じ話を幾度も聞くだけでは仕方ありませんので。ただ、報告が重なることもあるでしょうから、誰から聞いた話なのかは分けて知らせるようにいたします」
「それでよかろう。後藤にも話を通しておけ。坂田の中で動く以上、現地を預かる者が何も知らぬというわけにはいくまい」
「承知いたしました」
俺は書状を畳み、机の脇へ置いた。
後藤は坂田の統治だけでも忙しいはずだから、今回の調べのために余計な人手を求めるつもりはない。ただ、六角の者が領内で何かを調べていることを現地の役人たちが知らず、不審に思うようなことは避けたかった。
道についても、今すぐ普請を始めようという話ではない。必要になった時に何を改めるべきか判断できるよう、現状を確かめておけば十分だった。
話が一段落すると、父上は坂田の年貢や寺社との取り決めについても幾つか尋ねられた。
俺が留守中に届いた帳面を読んだ範囲で答えると、父上は後藤たちからも同じ報告を受けていると仰った。新しく得た土地だけに確認することは多いものの、今すぐ大きく手を入れなければならないところはないらしい。村々から申し出のあったことも、現地で調べを進めている途中のものが多く、結論を急ぐ必要はなさそうだった。
最後に父上は、朽木から持ち帰った土産についても尋ねられた。
小夜が用意してくれたものだと答えると、少し嬉しそうにされる。奈津の件で険しい話が続いた後だけに、小夜が変わらず周囲へ気を配りながら暮らしていることを、改めて確かめたかったのかもしれない。
「小夜も随分と気が利くようになったものじゃな。塩津では、そなたたちの世話を焼いておったのであろう?」
「はい。弥太郎と一緒になって、こちらが休まずに仕事を始めないかと見張っておりました」
「ははは。それはよいことじゃ。小夜も嫁ぎ先で元気にしておるようだし、弥太郎も役目を果たしておるな」
「父上までそのようなことを仰るのですか」
思わず言い返すと、父上は楽しそうに笑われた。
俺としては塩津では十分に休んでいたつもりなのだが、どうも周囲の者たちにはそう見えていなかったらしい。
弥五郎と法について少し話したくらいで、後は釣りをしたり、小夜や弥太郎と昔の話をしたりしていたのだから、普段よりは遥かに仕事から離れていたはずだ。
もっとも、ここで反論すれば、では何故法について話を始めたのかと尋ねられかねない。
俺が黙って茶を飲むと、父上はもう一度笑われた後、今日はこれでよいと仰った。
坂田の帳面については明日以降に改めて確かめることとなり、俺は書状を受け取って座敷を辞した。
廊下へ出ると、先ほどまで曇っていた空から少し陽が差していた。
庭では小姓が落葉を掃き集めており、その向こうでは薪を運ぶ者たちが忙しく動いている。歩いているうちに冷たい風が袖口から入り込み、俺は思わず襟元を合わせた。
観音寺の山もすっかり冬の近付く景色になっている。塩津へ向かった時にも朝の冷え込みを感じたが、戻ってから僅か数日で、また一段と季節が進んだようだった。
自室へ戻る途中で弥太郎へ使いを出し、篠を呼んでもらうことにした。
奈津の件については父上と対馬守から話を聞き、今後の扱いを相談するための文を朽木へ送ることになっている。
篠へ改めて調べさせるつもりはないが、塩津での働きについては本人へ直接伝えておきたかった。
*
篠が部屋へ来たのは、それからしばらくしてのことだった。
俺が机の上に置いていた書付を片付けていると、廊下から取り次ぎの声が聞こえ、篠が静かに姿を現した。塩津から戻った後は別の用向きを片付けていたらしいが、旅の疲れを残している様子はない。俺の前へ進み出ると、いつものように姿勢を正して頭を下げた。
「右衛門督様。お呼びと伺いました」
「ああ。忙しいところ悪いな。塩津でのことについて、少し話しておきたかった」
篠は頷き、勧めた場所へ腰を下ろした。
奈津の件だと思ったのだろう。表情に大きな変化はなかったが、何を尋ねられるのかと身構えている様子もない。こちらが話し始めるのを静かに待っている。
「対馬守から返事が届いた。奈津へ命じていたのは小夜の近況を知らせることで、朽木の兵や船について調べさせるつもりはなかったそうだ。これから弥五郎殿とも相談することになるが、ひとまずこちらで確認できたことは伝えておく」
「承知いたしました。奈津について、私の方で改めて確かめることはございますか?」
「いや、今のところはない。奈津は塩津にいるし、向こうでも様子を見てくれている。必要があれば改めて頼むが、こちらから調べを広げるつもりはない」
篠は短く返事をした。
自分から追加の調べを申し出ることもなく、こちらの話を静かに聞いている。塩津で奈津へ声を掛けた時も、恐らく同じような態度だったのだろう。
篠なら、奈津が何を見聞きしていたのか、さらに詳しく確かめる手立てを考えられたかもしれない。しかし実際には、本人へ与えられた役目を尋ね、そこで得た話を俺へ知らせるところで止まっている。
その判断について、今回はきちんと伝えておきたかった。
「それと、今回の働きについては礼を言っておきたい。奈津の様子がおかしいと気付いた時、勝手に調べを広げず、先に知らせてくれたのは助かった。おかげで弥五郎殿とも直接話をすることができたからな」
「恐れ入ります。ただ、私が確かめられたのは奈津の話までにございます。実際に何を見聞きしていたのか、全てを知ることができたわけではございませぬ」
「それでよい。あの場で奈津の持ち物まで調べたり、朽木の者へ話を聞き回ったりしていたら、余計に面倒なことになっていたかもしれぬ。何処までを自分の役目と考えるのか、その判断が大切だったのだと思う」
篠は少し意外そうに俺を見た。
恐らく本人にしてみれば、十分に調べられなかったことの方が気になっていたのだろう。甲賀の者として情報を集める役目を負っている以上、分からないことを残したまま報告するのは、あまり気持ちのよいものではないのかもしれない。
しかし今回は、相手が同じ六角に関わる者であり、しかも場所は朽木の領内だった。確かなことを増やそうとして勝手に動けば、それ自体が新たな疑いを招く可能性もあった。
篠は一度考えるように視線を落とし、やがて小さく頷いた。
「右衛門督様から命じられたのは、道中の様子を確かめ、御身の安全に気を配ることにございました。奈津の行動は気に掛かりましたが、朽木の領内で勝手に調べを進めれば、かえって御迷惑をお掛けすることになります。まず御報告するのがよいと考えました」
「その判断で間違っていなかったと思う。父上も、よく働いた者にはきちんと伝えてやれと仰っていた。だから、改めて礼を言っておきたかった」
「ありがたき御言葉にございます」
篠はそう言って深く頭を下げた。
普段からあまり表情を変えない女だが、顔を上げた時には僅かに口元が和らいでいた。俺としては、それだけでも直接話した甲斐があったと思う。
何かを調べ上げ、大きな成果を持ち帰った時だけが評価すべき働きとは限らない。今回は踏み込まなかったことによって、朽木との間に余計な問題を生まずに済んだのだから、その点は本人にも分かっていてもらいたかった。
もっとも、篠へ伝えておきたいことは、それだけではなかった。
先ほど父上から聞いた、美濃へ通じる道についての話である。
俺は机の端へ置いていた書状を取り、篠の前へ差し出した。奈津の件とは別の用向きだと分かったのか、篠は姿勢を正し直し、書状へ目を向けた。
「それから、近いうちに別の仕事を頼みたい。不破の国人たちについて、改めて調べてほしいのだ」
「不破でございますか」
「ああ。坂田から美濃へ通じる道で、商人たちの動きが少し変わっているらしい。ただ、何が原因なのかは分かっていない。弥七と宗兵衛にもそれぞれ確かめてもらうつもりだが、篠には不破の国人同士の関係について調べてほしい」
篠は書状に記された地名を確かめながら話を聞き、途中で幾つか質問をした。
調べる範囲は何処までか。どの程度のことを知る必要があるのか。以前から集めている国人たちの所領や縁組についての情報を、どこまで改めて確かめるべきかということも尋ねられた。
俺は今のところ国人たちへ直接接触する必要はなく、所領や縁組、家同士の付き合いについて分かる範囲で確かめてほしいと伝えた。
以前の報告から関係が変わっているところがあれば知りたいが、それを理由に相手へ働き掛ける必要はない。噂があれば知らせてもらいたいものの、実際に確かめられたこととは分けて報告してもらうつもりだった。
商人たちの経路が変わった理由と、不破の国人同士の関係に生じた変化が、必ずしも繋がるとは限らない。今の段階でその二つを結び付けてしまえば、報告を受ける側まで同じ見方に引きずられてしまうだろう。
篠には篠の目で向こうの動きを確かめてもらい、弥七や宗兵衛から届く話とは、後で照らし合わせればよかった。
「承知いたしました。まずは、これまでに知られている国人たちの所領や縁組から確かめ、その後に最近の動きを調べることにいたします」
「それで頼む。分からないことがあれば、無理に調べを進めなくてもよい。誰から聞いた話なのかを分けて知らせてくれれば十分だ」
篠は頷いた後、書状をもう一度確かめた。
塩津でのことがあったため、今回の命については普段より少し詳しく説明したつもりだったが、篠がそれを気にしている様子はない。むしろ必要なことを確かめ終えると、これ以上の説明は要らないというように紙を畳んだ。
どの道を使い、誰から話を聞くかまで俺が決める必要はない。何を求めているのかを伝えた以上、その先は篠へ任せればよいだろう。
篠が静かに頭を下げて退出すると、俺は机に残った書状を取り上げた。
不破について分からないことはまだ多い。しかし、以前から調べている事柄へ今回の報告を重ねていけば、今よりは事情が見えてくるはずだった。
商人たちが何を避けているのかについても、弥七や宗兵衛の話と照らし合わせれば、少しずつ理由を絞れるかもしれない。
少なくとも、今ここで俺が一人考え続けるより、確かな話が届くのを待つ方がよいだろう。
*
夕刻になると、弥太郎が留守中の書付をまとめて持ってきた。
坂田から届いた帳面や領内の普請に関する報告、父上の判断を待っている案件などが、用向きごとに分けられている。
俺が出掛けていた間も仕事が滞らなかったのは、後藤たちだけでなく、弥太郎や小姓たちがこうして書付を整理してくれていたからだろう。
帰城してから数日が過ぎた今も、すでに処置を終えたものを除き、必要なものだけを俺のところへ回してくれている。
俺は礼を言って帳面を受け取ったが、弥太郎は机へ置くなり、すぐにその一部を別の文箱へ戻してしまった。
「若様。こちらは明日以降で構いませぬ。御屋形様からも、今日はお休みになるよう仰せつかっております」
「分かっている。少し中を確かめようと思っただけだ」
「その少しが、いつも長くなるのでございます」
「そなたは塩津へ行ってから、ますます小夜に似てきたな」
「小夜が某に似たのでございましょう。何しろ、兄は某なのですから」
平然と答えられ、俺は思わず笑ってしまった。
確かに兄が弥太郎で妹が小夜なのだから、言っていることは間違っていない。しかし、どちらが似たのかはともかく、二人が揃って俺へ休めと言い始めるところなどは、何とも厄介だった。
塩津では小夜も加わって、少し仕事の話を始めただけで顔を見合わせて笑っていたし、帰城してからは弥太郎一人でも十分に目を光らせている。
もっとも、今夜急いで読む必要のない帳面まで広げようとしていたのだから、弥太郎の言い分にも一理はある。今日のうちに処理しなければならないものが残っていないのなら、わざわざ仕事を増やすこともないだろう。
「それで、明日見るものだけは分けておいてくれたか?」
「はい。坂田の帳面と、美濃へ通じる道についての報告はこちらにございます。それ以外は急ぎのものではありませんので、後からでもよろしいかと」
「ああ、それでよい。美濃の件は弥七と宗兵衛にも話を通しておきたい。後藤には、坂田で改めて調べを進めることを知らせておいてくれ」
「承知いたしました。ただし、今夜は書状を増やさないでいただきとうございます」
「……まだ何も書いておらぬだろう」
「だからこそ、先に申し上げているのでございます」
弥太郎はそう言って文箱の蓋を閉じた。
そこまで言われてしまえば、今から書付へ手を伸ばすのも気が引ける。
弥七と宗兵衛への指図については、すでに何を確かめたいのか決まっている。後藤へ知らせる文も、急ぎでなければ明朝で十分だろう。
今から書き始めれば、道の状態や商人の往来について気になることが次々と浮かび、結局は別の帳面まで開くことになるかもしれない。
俺は仕方なく筆を置き、運ばれてきた茶を飲むことにした。
障子の向こうでは、夕暮れが近付くにつれて庭の影が長くなっていた。落葉を掃き集めていた者たちも仕事を終えたらしく、廊下を行き交う足音が次第に少なくなる。代わりに台所の方から夕餉の支度をする音が聞こえ、時折、膳を運ぶ者たちの声が届いていた。
火鉢には新しい炭が足されており、部屋の中も随分と暖かくなっている。
こうして机の上から書付を片付けると、塩津で過ごした数日間のことが自然と思い出された。
湖岸で弥五郎や弥太郎と釣り糸を垂らし、小夜がその様子を楽しそうに眺めていたこと。夕餉の席で昔の釣り勝負について持ち出され、三人から散々からかわれたこと。弥五郎と分国法について少し話しただけで、小夜から夜更かしをしないよう釘を刺されたこと。
奈津の件では思いがけず真面目な話をすることになったが、それを除けば、久しぶりに仕事のことを忘れて過ごせたように思う。
次に弥五郎たちと顔を合わせるのは、年が明けてからになるだろう。
塩津を発つ時にも、新年の挨拶の折にはまた会おうと約束している。小夜も観音寺へ戻ることを楽しみにしていたようだし、弥太郎や加賀守たちにとっても嬉しい正月になりそうだった。
朽木へ嫁いでから初めての里帰りとなるのだから、小夜自身も話したいことが幾つもあるに違いない。
「若様、どうかなさいましたか?」
弥太郎に声を掛けられ、俺は顔を上げた。
どうやら、しばらく茶碗を手にしたまま考え事をしていたらしい。弥太郎は机の端へ文箱を寄せながら、こちらの返事を待っている。
「いや、年が明ければ弥五郎と小夜が来るだろうと思ってな」
「そうでございますな。小夜も久しぶりの観音寺ですから、きっと楽しみにしていることでしょう」
「そなたも楽しみなのだろう?」
「もちろんでございます。妹が元気に暮らしていると聞くのは嬉しゅうございますが、やはり顔を見て話せるのが一番ですからな」
弥太郎はそう答えて、少し照れたように笑った。
普段は何かと俺をからかってくる男だが、妹のことになると素直なところもあるらしい。塩津でも小夜の姿を見付けた時には、随分と安心したような顔をしていた。
本人は何も言わなかったものの、食事の席で小夜と昔の話をしている様子を見れば、久しぶりに顔を合わせられたことが嬉しかったのは明らかだった。
もっとも、新年になって小夜が観音寺へ来れば、今度は文の返事が遅いことについて、また言い合うことになるのかもしれない。
その光景を想像すると、少し可笑しくなった。今度は俺が間に入ってやろうかとも思ったが、下手に口を挟めば兄妹揃ってこちらへ矛先を向けてくる可能性もある。やはり、傍で眺めているのが一番だろう。
俺は茶碗を置き、残っていた書付へ目を向けた。
机の端には明日確かめるべきものが揃えられ、それ以外はすでに文箱へ収められている。弥太郎がそこまで支度を整えてくれたのだから、今夜は素直に従っておいた方がよさそうだった。
その夜は夕餉を済ませると、早めに休むことにした。
父上からも弥太郎からも休むよう言われていたし、明日になればまた仕事が待っている。美濃や不破のことは気に掛かるが、篠たちへ命じた調べがすぐに終わるわけでもない。
坂田の報告についても、今夜中に判断しなければならないものは残っていなかった。必要なことはそれぞれの者へ任せてあるのだから、今は返事を待てばよいだろう。
寝所へ入る頃には、外の風も幾分弱まっていた。
灯明を消す前、机の脇へ積まれた書付が少し気になったものの、今夜は手を伸ばさないことにした。
塩津で散々休むよう言われたことを思い出し、誰も見ていないところで苦笑する。せっかく休み方を覚え始めたのだから、観音寺へ戻った途端、以前と同じことを繰り返す必要もない。
横になると、道中の疲れがまだ少し残っていたのか、思いのほか早く眠気が訪れた。庭の方から乾いた葉が風に転がる音が聞こえ、時折、廊下を歩く者の足音が遠くに響く。
火鉢の温もりが残る部屋で目を閉じると、それらの音も次第に気にならなくなった。
俺はそのまま、静かに眠りに落ちた。
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