魔力2では魔術師は厳しい。ヤミの邪神を魔力源にしてみたら 作:病みのジャシン
闇の邪神と呼ばれるソルンと契約し、一晩を過ごした。
朝目覚めた時、ソルンの姿はなかったからひょっとして昨日のことは夢だったのではないかと思った。
結果的にはそんなことはなく、どうやら霊体化して俺にぴったり重なっていただけのようだった。
帽子を探していたら自分が被っていた時のような気分を神様で体験できるとは思わなかった。
それから俺は朝の支度をして、村の近くの
目的はもちろん、昨夜、ソルンに教えを乞うた闇の能力の使い方を指導してもらうためだ。
『しゅごい……。レグル、もうこんなに私の力を理解して……』
「ソルンの教え方がうまいのだと思う」
実際のところ、ソルンの説明はとても分かりやすかった。
加えて、能力とは不思議なものでなんとなく昔からそれを持っていたかのような感覚になる。
魔術は体系化された理論とすると、能力は本能や直観で扱うもの、そんなところだろうか。
俺がサイクロプスとの戦いにおいて闇の能力を使わなかったのは、シンプルに使い慣れていないからだ。
戦闘においてそういった武器を使うのは本当に最後の賭け、要するに切り札というわけだ。
しかし、実際のところ神の能力が使えるならば使えるに越したことはない。実戦において選択肢が多いことはそのまま生存率に直結する。
それにしても、ソルンの能力は……悪意ある人物に渡っていたらとんでもないことになっていたかもしれないな。
「ソルン……」
『んー?』
「これまで俺以外の奴と契約しないでくれて、ありがとうな……」
『ふぇえ……』
ん……?
『う、うん……。こっちこそありがと……。レグルがそんなに独占したがりなんて……』
ん……? どういうこと……?
などと、ソルンの言葉の意図を一考しようと思っていた時だった。
人の気配を感じた。
「あれ? レグルくんじゃないか? おー、よかった、無事に戻ってこられたのだな」
……!
その赤髪の騎士風の女性の方を見て、少し驚いたが、ひとまずは普通に接することにする。
「どうもです」
と挨拶をすると、目の前に天地逆転したソルンの顔が降ってくる。
そして、逆さまに浮遊しながら、妙ににこやかな笑顔で尋ねる。
『えーと……、レグル、とりあえずあの女、消す?』
お、おい……、やっぱり邪神じゃねえか……!
「ダメだ」
『そうなのぉ……?』
しょげた様子でソルンは俺の背中に寄り添う。
「……?」
目の前の女性は首を傾げ、不思議そうな顔をしつつも語り掛けてくる。
「いやはや、君があの神殿に行くと聞いた時は驚いたが、何事もなく帰ってこられたようでよかったじゃないか」
「おかげさまで」
俺はひとまず目の前の騎士風の女性、ネフィアさんに対応することにする。
ネフィアさんはギルドで少し話したことのある等級Aの方だ。
ギルドで思い出したが、俺もそろそろまた行かないといけないな……。
金が底をつきそうだ。
あちこちを転々としていた俺の収入源はギルドの依頼をこなすこと。
魔術師の履歴書に魔力量の記載欄があるせいか、D級までの依頼しか受注できないが、細々とその日暮らしの生活ができる程度には稼げていた。
だが、ソルンと契約したことでこれからは……。
あ、いや、待てよ……。魔力量というのは本来、生まれ持った資質。突然、増えるものではない。
それが増えた理由が、邪神と契約したなどという特級セキュリティ情報は安易に履歴書には書けないぞ。
仮に依頼をこれまでよりも効率的にこなしたとしても、宿代が二倍になることを考えると……、まずいな……、特に生活レベル向上せずか……?
「おーい、レグルくん、大丈夫かー?」
「……! あ、すみません、少し考え事を……」
それにしても……、ネフィアさんが上位存在と契約しているというのは本当だったんだな。
ソルンが言っていたように、今の俺には見える。
ネフィアさんの後ろに、透明な翼の生えた小さな女の子が浮遊しているのを。
……あれは確か……
『あの女、一応、契約者なんだねー。ふーん』
上位存在には、神や悪魔の他に、精霊がいる。
精霊は神や悪魔に比べると数が多く、噂によると、一人で多数の精霊と契約するような人間もいるらしい。
もちろん俺も精霊との契約も検討した。
しかし他人から譲り受けた魔力を留めるためには一定の魔力が必要だ。
俺にはそのための魔力がないから、垂れ流しながら常に吸い続けるしかない。
そんなことができる莫大な魔力を持っていそうな上位存在となると、自ずと数は限られる。
「レグル、こんなところにいるということは君も鍛錬かな?」
「あ、はい。そうです」
「うむ、殊勝なことだ。君のような善良な人間が闇の邪神との契約などという
……。
『この女、私がレグルのものになったことに気付いていないみたいね』
そのようだ。
ソルンが俺のものになったというのは少しニュアンスが違う気もするが。
まぁ、契約者同士は本来、相手の契約した上位存在が視えるみたいだから、姿を隠蔽できるソルンの方がむしろ例外的なのだろう。そう考えるとネフィアさんが誤解するのも無理はないかと思う。
「私はそんな努力家のレグルくんが嫌いじゃないんだよ。それで……、もしよかったらだけど、私と共に、精霊を探しにいかないかい? 意気消沈しているであろう君の契約のためにだよ」
「いえ、結構です」
「…………びっくりしたなぁ。『いえ、結構です』と言ったのかと思ったよ」
「……実際、言いましたね」
「…………なんでぇえ!?」
ネフィアさんは存外に取り乱すように問い返してきた。
俺なんぞに断られるとは思っていなかったのかもしれない。
そう考えると、少し申し訳なくなってくるが……。
ただ、現状の俺は……そもそもソルンと契約できたこと自体が望外の幸運だった。
今は新たな精霊などと契約するよりもまず、ソルンの名に恥じぬようしっかりとその能力を制御できるようになることが先決だろう。
だから……、
「俺はソルン以外のことは考えられないので」
「……!」『……!』
「そ、そうなんだね……」
ネフィアさんは少し呆れているようにも見える。
『……でゅふふ』
ん……?
『……でゅふ……でゅふ……』
この神、様子がおかしいな。