我が道を往くいじめられっ子は人生を変えたい 作:名無しのなな
海常高校の文化祭は盛況で特に体育館でやっているバスケ部の出し物は大好評だったようで客足が途絶えることはなかった。
バスケ部の出し物としてやっていたのはフリースローゲームで、料金を払った後にくじを引いてそこに番号が書いてあって指定された番号札のプレートをつけた海常高校バスケ部の部員を一人だけ助っ人として従えてゲームを有利にすることもできると言うシステムだった。ゲーム内容は強豪の海常高校のバスケ部の部員のプレイを間近で見られるということで毎年人気の出し物である。
今年はモデル業もやっているイケメンの黄瀬を助っ人として従えたい女子が大勢来ていて女子たちはガチャを引くように黄瀬とのプレイ権を引き当てようと必死だった。
「あははは、すごい人気だね~」
名前は黄瀬目当てにバスケ部主催のフリースローゲームの出し物に行列ができているのを苦笑しながら見ていた。
黄瀬はファンサービス旺盛で1人ずつに丁寧に対応してフリースローを決めていた。
菜々も列に並び順番を待つことにした。そして自分の番がやってきてくじを引くとそこには3という数字が書かれていた。
どうやら黄瀬とバスケができるようだ。
「あらレアなのひいちゃった~?あははは」
菜々はまさか多くの女子が組みたいであろう黄瀬とペアになるとは思いもよらず驚きつつも少し嬉しいような気もしていた。
黄瀬はそんな菜々を見て言った。
「よろしくッス!」
黄瀬は人懐っこい笑顔で菜々に言った。
菜々も笑顔で言った。
「よろしく~」
「くそっ!女子の客が来ても全員黄瀬目当てだなんて!」
「おえ(れ)らはずえ(れ)扱いで悲しいっす~」
「まぁまぁ、今年は黄瀬のおかげで売上5倍になってるからいいじゃん!」
森山と早川のぼやきに小堀がフォローするように言った。
「え、なに?!モテ格差社会?!」
菜々はこの光景を見て思わず叫んでしまった。
海常高校には黄瀬目当てで来た女子でいっぱいだったからだ。
菜々はまさかここまで人気だとは思わず驚いていたのだ。
そして、菜々の発言を聞いてさらにショックを受けている男子バスケ部のメンバーが数人いたとか・・・。
――
「いえぃっ!」
菜々はボールをゴールに入れようとするがボールはゴールにかすりもせず
そのまま地面に叩きつけられ跳ね返って菜々の顔面に激突した。
「ぶっ!」
菜々が顔面でボールを受け止めたのを見て黄瀬は思わず吹き出してしまった。
そして笑いを堪えながら言うのだった。
「七海さん、バスケあんまり得意じゃないんスね」
黄瀬は笑いながら言うと菜々は顔を赤くする。
そして言った。
「うぅ~ん。バスケの授業はいつも放置されてたからな~。もうちょっと積極的に参加したらよかったかも~」
菜々はバスケの授業の時に体力・脚力・腕力のなさや菜々本人が勝ち負けにこだわらず、他人の目を気にせずにいる性格からないものとして扱われていて本人も気にしてこなかったので、バスケの授業では対して期待されずに周囲から放置されていた
黄瀬はそんな菜々を見て言う。
「七海さんってあんまりバスケやったことないんスね。でも、俺教えるの得意だから教えてあげるッス!」
黄瀬は笑顔で言った。その笑顔に思わずドキッとしてしまったが菜々はすぐに切り替える。
(ドキってなによ!私もイケメンの屈託ない笑顔に弱のかな~)
「あはは~よろしく~」
菜々は顔を赤くしながらへらっと笑いながら平静を装うが内心ドキドキしていた。
黄瀬はそんな菜々の心境に気づくことなく笑顔で言った。
「七海さん、俺がバスケ教えるから一緒に優勝目指そうッス!」
「優勝?あ~最高得点ね~」
菜々はホワイトボードに書かれている現在のフリースローゲームの最高点のランキングを見て言った。
黄瀬はそんな菜々に言う。
「違うッスよ!フリースローゲームは最高得点じゃなくて最高点ッス!」
黄瀬が笑顔で言うと菜々は苦笑いしながら言う。
「あ、うん。最高点ね。できるかな~?」
菜々は黄瀬に笑顔でそう返す。
そんな風に黄瀬とやり取りしながらフリースローゲームをしていると体育館中に女子のヒステリックな大きな声が響き渡る。
「ちょっとぉ!黄瀬くんと組めないってどういうことよぉ!」
菜々が驚いてその女子を見るとそれは菜々が東京女子高にいた時に同じクラスだった島田友香だった。
友香とくじでペアになった海常バスケ部の部員や受付にいた小堀は黄瀬とペアになれないことでクレームをつける友香を必死に宥めていた。
菜々はそんな友香の姿を見て唖然としていた。
(あんなにヒステリックに騒いで、しかもくじで決まったペアに文句言うなんて・・・)
「あたし、5回も並んだのよ!それなのに黄瀬くんと一度もペアになれないなんておかしいじゃない!」
友香は足をダンダンして地団駄を踏みながら喚き散らしていた。
菜々はそんな友香を見て呆れていた。
(5回も並んだって・・・高校生にもなってこういうランダム形式のくじに文句言うなんて恥ずかしいよ~)
すると友香は黄瀬とペアになっていた菜々の姿を見て目を見開いてそのまま派手に足音を立てながら菜々に近づいてくる。
「なんであんたが黄瀬くんとペアになれてるのよ!絶対におかしい!何か不正でもしたんじゃないの?!」
「はぁ?私、不正なんてしてないよ~」
「あんたなんか黄瀬くんのこと大して好きじゃないでしょ!それに私と違って黄瀬くんと同じ海常に通ってて毎日黄瀬くんと会えるんだからこういう時は私に譲るのが当然でしょ!黄瀬くんはみんなの黄瀬くんなんだから!」
「はぁ・・・あのさ、友香。そういうの恥ずかしいからやめなって」
「私は間違ったこといってないし!フンッ!」
菜々が呆れながら言うと友香は頬を膨らませてそっぽを向く。
そんな友香の態度に菜々は深いため息をついた。
(はぁ・・・この子ってこんなに自己中だったんだ~)
菜々が東京女子高に通っていた頃、友香と同じクラスになって仲が良かった時期もあった。
だがその時から友香はヒステリックなところがあった。
1年のときは菜々や菜々が所属するグループにいてそれなりに仲良くしていたが、次第にキラキラJK生活をどうしても送りたくなったらしく菜々やその他の陰キャ認定したクラスメイトにきつくあたるようになった。
1軍のボスの長谷川やギャルっぽいグループにはホストやキャバ嬢のように接して仲間に入れてもらおうとしたらしいが、媚を売るだけで外見や内面を変えたりする努力をしなかったから仲間には入れてもらえずに菜々へのいじめに荷担することでキラキラJK生活を手に入れようとして、2年あたりからは理想のキラキラJK生活とはかけはなれた自分の現実が受け入れられず、頭の中の妄想の世界の住人になってしまい東京女子高の教室内では何かのキャラクターにになりきったような言動を繰り返して上の空でいることが多くなってしまっていたりした。
(黄瀬くんのファンになって推し活してるみたいだけど相変わらず自己中で客観性0なんだな~)
菜々がそう思って友香を見ていると黄瀬に声をかけらえた。
「七海さん、フリースローやった方がいいッスよ」
黄瀬は笑顔で言った。
「あー・・・そうだね~」
菜々はヒステリーを起こして絶賛恥ずかしい黒歴史を増産している友香のことなど気にせずにフリースローをする態勢をとっていると
「え~い☆どぉぉぉぉおぉぉん!」
「うわっ!」
という掛け声とともに何者かが菜々の背中を押して菜々はバランスを崩して倒れるが間一髪のところで前足を出してなんとかこけないように踏ん張った。
菜々が振り向くとそこにいたのは明枝成実(あきえだ・なるみ)だった。
「成(なる)ちゃん・・・突き飛ばし芸はまだ健在だったんだね。危ないからやめてって何度も言ったよね?」
「えぇ~☆私に気付かないでぼ~っとしてた菜々ちゃんが悪いんじゃないのぉ~?わたし悪くないもん☆」
明枝は悪びれもせずに笑顔で言う。
名前はそんな明枝を呆れた表情で見ていた。
「・・・邪魔するならあっち行ってね」
「ええ~~~?!」
明枝は不満そうな声を上げる。
すると黄瀬が明枝に言う。
「ゲームの邪魔するのはよくないッスよ」
その笑顔は成美の言動に引いていて、どこか引きつっているようにも見えた。
黄瀬の言葉に菜々も同意するように言う。
「そうだよ~」
すると明枝は頬を膨らませて言う。
「むうぅっ☆」
まるで幼児のような仕草であった。
その姿に菜々は呆れた表情をする。
するとそこへ新たに東京女子高の制服を着た女子が4人やってくる。
「成ちゃ~ん、なにしてるの~?これ、並ばないとできないよ~?」
「え?衣音?それにゆゆとふみとまどか・・・なんでここに?」
菜々に絡んでいた成美に声をかけたのは衣音だった。
そして、衣音はゆゆとふみとまどかを引き連れていた。
菜々は東京女子高にいた時のクラスで比較的仲良くしていた4人が成美とともに現れて驚いた。
すると、まどかが菜々の隣にいた黄瀬を見て言う。
「菜々と海常にお試し編入してから会えてなかったし、それと友香から黄瀬くんっていうかっこいい男の子がいるって聞いて来たんだよ~。え?てか、菜々ってば黄瀬くんとペアになったの?すご~い!いいな~!かっこいい~」
「えっ?もしかして菜々の隣にいるのが本物の黄瀬くん?!すご~い!」
ふみもまどかにつられて黄瀬の姿を見て言う。
まどかとふみは噂に聞いていてネットの画像や雑誌のスナップで見たことがあった黄瀬の姿を見て目を輝かせていた。
「あははは・・・・そうなんだよね~」
菜々は苦笑いしながらまどかとふみに対応する。その様子を友香はジトっとした目で菜々を睨みつけていた。
「じゃあ~、私フリースローやるから~」
そう言って菜々は黄瀬とペアフリースローをしようとすると
「やだぁっ!黄瀬くんっ!そんな最低女とフリースローなんてしないでっ!」
友香はそういうと黄瀬の腕を掴んで自分の方へ引き寄せようとする。
「おいおいおい・・・友香。それはまずいって・・・常識や良識から逸脱しすぎだし・・・」
「だってだってだって!黄瀬くんは私の王子様なんだもん!あんたなんか近づくなんて許さないんだからぁ!」
友香はヒステリックに泣き叫ぶと黄瀬の腕をグイグイ引っ張る。
「友香!黄瀬くんと両想いになりたいなら段階踏みなよ!友香の頭の中では黄瀬くんと知り合っていて関係が深くなってるかもしれないけどそうじゃないから!そうなってないから!」
菜々はそんな友香に呆れながら言うと、黄瀬は自身のファンである友香にきつく当たって炎上したりしたらまずいと思っているのか友香の言動にに戸惑っているのか困ったように笑うだけである。
菜々はそんな友香に頭をかかえながら言う。
「あぁ~~~・・・これはややこしいことになったなぁ」
(こうなったら友香って人の言うこと聞かないんだよなぁ・・・それに私のこと見下してるし)
菜々が困っていると
「島田さん!やめなさい!」
「え?尾坂先生?」
そこにいたのは名前が東京女子高にいた時の1年生の時の担任の尾坂美恵(おさか・みえ)だった。
「ほらっ!これ以上、他人に迷惑かけるようなことしたら海常の文化祭出禁になるわよ!」
「やぁ~だぁ~」
尾坂は友香を注意するが友香は耳を貸さずに黄瀬にしがみついている。
「あれ?もしかして島田さん?」
するとそこに菜々と同じクラスで文化祭実行委員会小川の彼女である草野美紀が友香を見て驚いたように言う。
「え?草野さん、友香と知り合いなの?」
「うん、同じ中学出身なんだけど・・・・島田さん、もしかして今度は黄瀬くんをターゲットにして付きまとってるの?」
「え?「今度は」って・・・?」
菜々は草野の言葉に引っかかった。
すると尾坂先生が説明するように言った。
「島田さん!あなた、中学時代にもこうして好きになった男の子にしつこく付きまとったせいでうちの女子高しか受験できなくなったこと忘れたの?!あなたこれ以上問題起こしたら卒業後の進路も全部なくなるわよ!」
尾坂の言葉に菜々は驚いた。
(え?友香ってそんなにやばいやつだったの・・・)
すると友香は表情を一変させて泣きそうな顔で言う。
「だって私は誰よりも優しくて健気でかわいいヒロインなのに・・・それなのに誰も私をチヤホヤしてくれなくてこんなのおかしいんだもん!私が主人公になれないなんてこんな世界全部嘘だもん!」
友香はそう言うとその場で泣き崩れる。そんな友香に尾坂先生はため息をついてから言う。
「島田さん、あなたもう高校生なのよ。そんな幼稚なこと言ってないで考えて行動しなさい!」
尾坂は友香に説教をする。
だが、友香は泣き続けて言う。
「だってぇ・・・だってぇ・・・」
友香は泣きながら言う。
「だってじゃないわよ~!ほらっ!行くわよ!お騒がせしてごめんなさいね~」
尾坂はそう言いながら友香を連れて体育館から出て行った。
そして友香は体育館から去るときに振り返って菜々を睨みつけて叫ぶように言う。
「あんたなんかに負けなんだからぁ!黄瀬くんと幸せになるのは私なんだからぁ!」
その様子を見て菜々はため息をついていた。
「なんで私が友香の幸せを邪魔する悪役なのよ・・・そんなことしてないし勝手に配役しないで・・・・」
(はぁ・・・やっと行った)
すると黄瀬が苦笑しながら言った。
「七海さんって変な人に好かれる体質なんスかね?」
黄瀬がそう言うと菜々は苦笑して言う。
「う~ん・・・・別に好かれてはないよ。むしろ悪役扱いされてるし」
菜々がそう言うとそこへ衣音とゆゆが現れて言う。
「ちょっと菜々・・・。友香に譲ってあげるくらいしてあげなよ~。あんなに友香を興奮させて泣かせて何とも思わないの?」
「そうだよ~。友香かわいそ~。でも菜々が友香に絡まれてトラブってるのは傍から見ててめっちゃ面白かったけどぉ~」
衣音は菜々に諭すように言って来てゆゆは友香にウザ絡みされていた菜々の不幸を面白がるように言う。
(うわぁ~相変わらず二人ともなんかずれてるなぁ~)
名前はそう思いながら二人を冷ややかに見る。
すると黄瀬が困ったように笑って言う。
「あはは・・・まぁ、とりあえずフリースロースやるッスか?」
「あぁ~。うん」
ひと騒動合ったが菜々はなんとか黄瀬とのペアフリースローを再開させた。
菜々は5本打って1本も入らなかったが黄瀬は全部入れていた。