我が道を往くいじめられっ子は人生を変えたい   作:名無しのなな

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第4話 海常高校へのお試し編入

翌日。東京女子高校の教室では朝からとある話題でもちきりだった。

「なにかあったの~?」

「あ、菜々!やっぱり噂は本当だったんだよ!うちの学校の閉校が来年度に早まるから何人か3つの高校にそれぞれお試し編入する生徒を選抜するらしくてその試験のお知らせがされたんだよ!」

ゆゆが興奮気味に教室に来たかと思えば嬉しそうに報告してきた。

「2学期からうちの学校にも源光男子高から男子がくるんだよね~!ちょう、たのしみぃ~!息苦しい女だけの生活から解放されるのよぉ~!」

島田友香がうっとりしながら嬉しそうに語った。

それを聞いて菜々は心の中で毒づいた。

(はいはい。あんたは男子がいてもまた差別意識マシマシな態度で自己中爆発させて孤立するよ)

島田友香は客観的に自分をみることができず、理想と現実の差を埋める努力が全くできず長谷川がいる派手なグループに入りたがったが長谷川たちのグループに入るためにおしゃれをしたり会話について行くための情報収集も、かと言ってメンバーの話を聞くことも一切せずにホストやキャバに来た客のようなお姫様扱いや王様扱いを求め続けた結果、長谷川たちのグループのメンバーからも距離を置かれるようになったりと自業自得な部分があるがそれでも努力をせず他人任せのまま変えようとしない姿勢に菜々は他人事ながら苛立ちを感じていた。

そして、その長谷川たちのグループへのアピールのために名前が美間と乗山にありったけの誹謗中傷をされた後に

「うっわぁ~!悲惨~!でも、自業自得だよね~!ププッ!私は菜々みたいな人間に生まれれなくて良かったぁ~!」

という風に傷口に塩を塗り込むかのように菜々のことをバカにしてくるので、菜々は嫌いだった。

(交換編入してきた源光男子高の子にも失礼なことしまくるんだろうな~)

菜々は内心でそんなことを思いながら期待に胸膨らませる島田友香の様子を横目で見ていた。

どうやら島田友香はこのチャンスを逃したくないと考えているようだ。

その証拠に目が血走っている。

 

「あたし、絶対リア充グループに入って幸せになるの!地味陰キャのあんたらとは違うキラキラした学校生活送ってやるんだからぁ☆」

 

友香はアニメキャラになりきったようなわざとらしい口調で菜々とゆゆとまどかとふみにウィンクしながらキメ顔で言った。

それに対して名前は乾いた笑みを浮かべただけだった。

(うわぁ・・・痛さ満点だわぁ・・・)

クラス内では3つのうちのどこの高校に編入するか友達同士で話し合っていて教室内は盛り上がっていた。

「え~?あたしどこの高校にしようかな~?丘の上女子高とか名前の通り山の上にあって毎日登山みたいな感じになるんでしょ~?ま、あたしの本来のレベルなら海常か源光かな~」

クラス内で大声で川並弥巴子(かわなみ・やはこ)が言う。

「本当は偏差値70超えの高校受けたんだけど2点足りなかっただけで、受験当日体調悪くて実力発揮できなくて落ちて仕方なく東女(東京女子高)に入学しただけだったし~。あ~あ、これで本来いるべき場所に行けるわ~」

川並は得意気にいう。しかし、クラスメイトたちは弥巴子の話を苦笑いする。

(川並さんまた盛ってるな~)

名前は川並の発言を訝しむ。

「え~!すごいね!菜々!川並さん、源光や海常みたいな偏差値高い高校に行こうとするなんてやっぱり川並さんって東女(東京女子高)の中ではトップクラスで頭いいんだね!」

しかし、クラス内で村田ふみだけは川並が語る実績や実力を素直に信じているようでキラキラした瞳で川並を見る。

「ふみ・・川並さんの言うこと信じてるの?」

「え?なんで?だって川並さんって英語で100点取ったことあるじゃん?」

「あのね、川並さんは確かに英語のテストで100点取ったことあってそのときに1年の英語の大島先生からほめられてたけどさ~。でもその後のテストでは特に高い点数とってるとか言われてないじゃん?」

菜々はふみに言う。

「そうなの?でも、川並さんはいつもテストの後に「簡単すぎて今回も余裕だった」みたいなこと言ってたよ?」

「それが具体的に本当なのかどうかはわからないじゃない?1年の時の英語のテストは当時の英語の大島先生がみんなの前でテスト返却するときに川並さんのことをほめていたからそれは本当のことなんだろうと思う。でも、偏差値70超えの高校を第一志望で受験してたなら、もし、落ちたとしても偏差値70超えとはいかなくてもそれよりもちょっと下のうちよりも偏差値高い高校とか、うちの学校に入学するにしても東女(東京女子高)の偏差値低いうちの普通科じゃなくてうちの学科よりも偏差値が高い特別進学科に入ってるはずじゃない?」

「でも・・・・もしかしたらあえて授業数が少ないうちの普通科を選んだかもしれないし・・・」

「あえて選ぶにしてもレベル落としすぎでしょ?川並さんのいうこと全部真に受けないほうがいいよ。クラスの大半の人は川並さんは言うことかなり盛ってるって気づいて流してるんだからふみもそうしたほうがいいよ」

名前はふみに諭すように言う。しかしふみは不服そうに言う。

「なんで・・・川並さんが嘘ついてるとか・・・私、菜々の言うことなんて信じないから!」

ふみは名前の言葉に激昂する。

「へ~?なんで?」

名前は感情的になったふみに圧倒されそうになるが優秀な川並を信じると言い切るふみに問う。

「だって、川並さんは成績いいんだよ?!そんな人が嘘つくはずないよ!」

「ふみは、川並さんが学校の成績が良いから嘘つかないって思うんだ?私の言うことよりも成績が良い川並さんの言うことを信じるんだ?」

「成績悪くて皆から信用されてない菜々よりも川並さんを信じるなんて当たり前でしょ!」

「へ~。ふみはよく話してる私よりも成績がいい川並さんを信じるんだ~。ショックだな~」

菜々はわざと傷ついたようなそぶりをしてふみに言う。そんな菜々の反応にふみは動揺する。

「はっ・・えっ・・・違う・・・そうじゃなくて・・・・」

ふみはしどろもどろになりながら菜々に説明しようとする。だけど菜々からの指摘に脳が許容量オーバーになってしまったようで説明出来ず思考がまとまらないようだ。

「あ・・・う・・・・うぇぇぇぇぇん!!!!そんなこと言われてもわたしわかんないもぉぉぉぉぉん!!!!うわぁぁぁぁぁぁぁん!うぇぇぇぇぇん!!!」

ふみはその場で発狂するように泣きだす。

「ちょっと~、菜々~、ふみのこと泣かせたらダメじゃないか~。お~、ふみ~、よ~しよ~し」

小塚衣音はふみを慰めるようにして抱きしめる。するとふみは「衣音~」と言いなが衣音の胸に顔を埋めてしゃくり上げる。

広井まどかもふみのことを心配しながら見る。

(え?これって私が悪いのか?)

「あの・・・・」

菜々がふみに謝罪したほうがいいのかと思って声をかけようとした時、

「ふみにまで信じてもらえないとかかわいそ~!でもしょうがないよね~!だって菜々って成績悪いし、長谷川さんからいじめられててみんなから信用されてないし~!あはは!」

ゆゆはあざ笑うように言った。

(なんでここまで言われないといけないの?!)

(でも、ここで今、感情的になったらさらにバカにされたりクラスの輪を乱したとか言われていじめのネタにされる。だから我慢しなきゃ・・・・!)

菜々は感情を抑えるようにこぶしを握り締める。そしてある程度、落ち着いてから呟くように言う。

「お試し交換編入制度か・・・」

菜々は別の学校に編入できるなら、自分を攻撃する人間がいて自分が信用されていない環境から離れられるならこの制度を利用しない手はないなと思い始めていた。

(私はこの学校の環境がもう合ってないんだ。いじめてくる人の言葉通りになるかもしれないけど私、ここから居なくなりたい。いや、私はここから出るんだ!)

 

**

「他校への編入?いいんじゃないかな」

菜々は個別指導の担当である女性講師の葉月恵子にお試し交換編入制度のことを話すと金岡は菜々の発言に驚いていたようだが菜々が必死で熱弁したことで納得してくれた。

「丘の上女子高は遠いし、源光男子高に行くにしても今の源光男子高は女子トイレや女子更衣室みたいな施設がないから少人数しか受け入れないから・・・。どうしても違う学校に行く形がいいから消去法で海常高校がいいと思っているんです」

菜々がそういうとか葉月はうなずいて口を開いた。

「そうなのね~。海常高校は偏差値65くらいであなたがいま在籍している東京女子高校の普通科の偏差値より10~15は上だけど、頑張り次第で十分受かれると思うわ。頑張りましょう」

葉月はにこやかに応援してくれた。

「ありがとうございます!わたし、がんばります!」

こうして菜々は海常へのお試し編入制度の選抜試験に向けて頑張ることにした。

 

**

それから菜々は猛勉強してお試し編入選抜試験に合格した。

(やった~~~!これでこの環境から抜け出せる!)

職員室で学年主任から合格の書類を受け取って職員室から出た菜々は高揚していてその足取りは軽かった。

スキップしたい衝動にかられながらも菜々は自分のクラスの扉の前に辿り着くと、試験に合格した喜びを隠すようにいったん立ち止まって無表情になる。

(だめだめ・・・・海常高校の編入試験に合格した事を知られたらどんな目に遭うかわからないんだから・・・・編入するまで隠し通さないと!)

菜々は海常高校のお試し編入制度の選抜試験に合格したことをクラス内で大々的に大声で言いたい気分だったが、もしもそれをしたら菜々や菜々の親のふりをした第三者が合格取り消しの連絡をしたり、海常高校に悪評を流したりするかもしれないからだ。

それに、グループ内では良心的な存在の寂しがり屋のまどかから「行かないで」と引き留められるかもしれない。

ゆゆと衣音からは裏切り者扱いされるかもしれない。

ふみは成績が悪いと言われていじめられていてる菜々が東京女子高よりも偏差値が高い海常高校に編入が決まったことを知ったら脳がまたオーバーヒートして発狂してまた菜々が悪人扱いされる可能性がある。

(絶対にバレないようにしないと・・・いつも通りいつも通り・・・・)

菜々は海常の編入試験に合格したことにより高揚感を落ち着かせるようにゆっくり呼吸する。

 

「だからさ~。略奪された方は黙ってを引くべきなんだよ~!」

すると教室に入ろうとした菜々にゆゆの声が聞こえる。

「え・・・・?なんでそんな風に思うの?奪われた方が悪いの・・・・?」

広井まどかはゆゆの独特な考えに戸惑う。

「だってさ~!略奪された時点で関係は壊れてるし男の心は既に新しい女のものになってるじゃん?だから元から付き合ってた恋人とか妻は二人のお邪魔虫じゃん!だから二人の幸せのためにいなくなるべきだよね!他の女に奪われた時点で負けてるんだから奪われた法は潔く身を引くべきだよ!」

「そ、そうなのかな・・・・・でも好きな人とかでも・・・付き合ってる人とか旦那さんを奪われた悲しいし・・・可哀想だよ」

まどかはゆゆの圧に負けそうになるものの反論する。

「ゆゆは人とは違う考え方してるな~!まぁ、みんな違ってみんないいよね!あははは」

衣音はゆゆの考えに賛成はしないけど笑いながら言う。

ふみはゆゆの発言をまともに聞いていないのか、それとも聞こえないふりをしているのかよくわからないが張り付いたような笑顔で衣音の腕に抱き着いていた。ふみにとってはグループに所属して友達と会話していると言う体裁が整っていればそれで問題ないようだ。

さらにはグループの中で影響力が合って慕われている衣音が肯定しているならゆゆが何を言おうが内容はどうでもよくてその場の空気が壊れなけれなそれでいいらしい。

 

(ふみって学力・成績至上主義というよりも権威に弱いんだよね~。その場の空気至上主義っていうのかな?長谷川さんには心酔しないけど、単に衣音が私をハブらないから仲良くしてるだけで私個人のことはきっと信用も信頼もしてないんだよな)

(やっぱり・・・・私が言うのもなんだけどあの子たちの関係ってなんか独特だよな~)

(私みたいな変人でも受け入れてくれて懐深いな~とか自由だな~とか思ってたけちょっと違うのかも・・・なんていうかゆるい?のかも)

 

菜々は今まで仲良くしていたグループの子達はレズビアンなことを隠さずにオープンにしている小塚衣音を偏見を持たずに友達として受け入れてグループのリーダーとして慕っていて、食田ゆゆの普段は大人しいのに会話してみると女子ながら一人称が僕で他人の不幸が大好きでマウント気質を露骨に隠さなくなってきていることに関して誰もツッコまずに流しているのは全員が細かいことを気にしないおおらかな性質だからなのだと思っていた。

だけど、このグループは実はクラスに他に居場所がないから集まっているだけで、ただなんとなく互いの話も大して聞いていなくて仲良しの友達のSNSのどんな投稿にもいいねするような感覚でもモヤることや傷つくことや、アレ?と思うことがあっても波風立てないように聞き流しているだけなのかもしれないと思い始めていた。

 

(何が正しいとか間違ってるとかじゃなくて・・・私が真面目過ぎるだけかもしれないし・・・私だけが変化して合わなくなっただけだけ?)

(まぁ、いいや。私がいなくなってもこの子達はこの子達で楽しく過ごすでしょ。それにしても、いじめのターゲットである私がいなくなったらこのクラス・・・・東女(東京女子高)の普通科2年の全体の雰囲気はどうなるんだろう?私がいなくなることで本当に平和になるのかな?)

 

**

それから菜々は誰にも海常高校への編入試験に合格したことを言わずに海常高校編有初日を迎えた。

「ふふっ♪こんな感じかな~」

菜々は海常の女子トイレの鏡の前で前髪を直していた。

 

(私が海常に編入したことを担任から聞かされた東女(東京女子高)のみんなはどんな反応したんだろうな~?あ~気になる~)

名前は結局、今日まで海常に編入することを家族以外に言わずに過ごして迎えた。

 

(きっと騒然としただろうな~!だって、成績悪いっていじめられていた私が海常のお試し編入制度の試験に合格しただもん!)

 

菜々は自分が遂に不登校になったのかと盛り上がっていたかもしれない東京女子高の同じクラス内にいたいじめっ子たちが菜々が海常のお試し編入試験に合格したことを担任から聞かされて驚愕しているであろう様子を想像してにやける。

 

(私が海常のお試し編入試験に合格したことを知ったいじめっ子やクラスメイト達の反応見たかったな~。でも立つ鳥跡を濁さずだよね~。何も言わずに立ち去ったほうが潔くてかっこいいよね!)

 

制服はお試し編入ということで、菜々は東京女子高校のままだが新しい環境になるということでメガネをやめて髪型も折角なので東京女子高の制服がキャラの通う中学校のモデルとなった魔法少女アニメのキャラのような高い位置のツインテールにして軽くメイクもしてイメチェンをしていた。リップを塗って、ツインテールの毛先をコームで梳かして鏡の前で身だしなみの最終チェックをしてから鏡に向かって笑う。

(何事も初めが肝心だからね~)

「わぁ~!七海さん、そのカッコ・・・」

すると同じくお試し編入制度で海常に来た女子バスケ部の島倉美香子が女子トイレの個室から出て来て手を洗いながらイメチェンした菜々を見て反応する。

(どうしよう・・・なんか変だった?なんか言われちゃうのかな?)

「七海さん、超かわいくなったね!すっごく似合ってるよ!写真撮ってもいい?」

予想外な反応をされて菜々はきょとんとした表情を浮かべた。

予想に反した好意的な言葉に名前は戸惑いながらも照れ笑いを浮かべてOKサインを出した。

(そうだ・・・島倉さんは東京女子高で私の噂を信じずに私にたいしてひどい態度とってこないほがらかな人だったわ・・・)

菜々は東京女子高校にいたときのことを思い出していた。

「それじゃあ、東京女子高校から来た生徒を紹介するぞ~。じゃあ、教室入ってこ~い」

女子高にはいなかった粗野な話し方をするタイプの男性教師に呼ばれて配属された2年A組の教室に菜々が入る。

菜々は同じ編入生の女子たち5人と一緒に教壇に立たされ自己紹介をする流れとなっていた。

身長が低くて東京女子高のセーラー服を着てツインテールをした菜々のようなタイプは海常には珍しいらしくなんだか自分が注目を集めているような気がして緊張してしまう。

(ちがうちがう!自分が思うほど誰も私を見ていないから!これから楽しい学校生活送るんだからしっかりしなきゃ!)

「七海菜々です。えーっと・・・おしゃれとお絵描きが好きです。みんなよろしくね~」

菜々は新しいクラスメイトたちに笑顔で小さく手を振るようにして挨拶した。

緊張してはいたが人見知りを発揮しすぎて挙動不審になったり、つっかえることなく言えたことに安心して内心ホッと胸をなでおろした。

自己紹介を終えて席に着くと隣の席に座るポニーテールの少女が微笑んで話しかけて来た。

「七海さん、よろしくね」

少女は爽やかな笑顔であいさつをしてきたので菜々も釣られて笑顔を作る。

「わたし、吉沢華乃実。よろしくね」

「うん!よろしくね~」

菜々は新しく仲良くなった吉沢に笑顔を見せた。

 

**

「なぁなぁ、B組に東京女子高校からお試し編入で来た子がすごい美人らしいぞ!女優の石原景子激似だって!」

「まじで!見に行こうぜ!」

クラスの男子生徒達がそう言いながら隣のクラスに行く。

(石原景子に似てる?もしかして長谷川さんも海常にお試し編入で来たの?)

菜々はそう思うとなんだか胸が苦しくなるような気がした。

(また、いじめられたらどうしよう・・・)

菜々は自分をいじめていた長谷川佐保が同じ学校いると考えると憂鬱だった。

またあのような辛い思いをする日々を過ごすことを考えると身体が震えるような感覚に陥る。

しかしここで逃げ出すわけにもいかないので頑張らねばならないという気持ちでいっぱいだった。

 

**

「黄瀬くぅ~ん!」

「えっ・・・佐・・じゃなくて長谷川さん?」

黄瀬は突然現れた長谷川に声をかけられて驚いて過去に付き合っていた時の呼び方で長谷川を呼びそうになる。

長谷川佐保は元カレの黄瀬に昔のような距離感で笑顔で腕を絡ませようとするが黄瀬に距離を取られてやんわり避けられる。

腕を絡ませようとして黄瀬に避けられた長谷川は一瞬、不機嫌な表情になるがすぐに笑顔を浮かべて何事もなかったかのように振る舞う。

「黄瀬くん、久しぶりだね・・・。昔はわがままで振り回しちゃってごめんね・・・。わたしやり直したいなんて思ってないから・・・ただ、黄瀬くんと友達として仲良くできたらなぁって思ってて・・・これ、よかったら・・・わたしのインスタのアカウント!良かったらフォローしてくれるかな・・・・・?」

長谷川が上目遣いで甘えるような声で言うが黄瀬は困惑気味に曖昧な笑みを浮かべるだけで返答はしない。

すると、通りがかった早川と中村が長谷川の存在に気づく。

「おい!長谷川!どうした?!」

早川が長谷川に話しかける。

早川と中村はお試し編入で来た長谷川と同じクラスで長谷川佐保のことを知っていた。

長谷川は暑苦しい上に圧が強い早川が苦手なようで露骨に引いた表情を見せた。

「うっわ、早川…そ、それじゃあね!黄瀬くん!」

長谷川は足早に去っていった。

そして早川は黄瀬を見た。黄瀬はどこか遠くを見るような目で長谷川を見つめていた。

早川は心配そうに眉をひそめて黄瀬に声をかけた。

「黄瀬、なんかあったか~?」

黄瀬はハッと我に帰ると誤魔化すように作り笑いを浮かべた。

「何でもないッス・・・・・」

「そうかぁ?」

早川は腑に落ちないような顔をするもののこれ以上聞いても無駄なような気がして口をつぐんだ。

 

**

「校内に他校のセーラー服の女子がたくさんいるなんて変な感じだよな~」

小堀は着替えながら今日、お試し編入制度で各クラスに編入してきた東京女子高校の女生徒たちについて感想を述べた。

確かに海常全体の女子の比率が増えててちょっと異様な雰囲気であった。

「まぁ、彼女たちにとってはいい刺激になるだろうし海常としても人数増えたらいいんじゃないかな?」

「小堀センパイの言う通りッス!俺もそう思うッス!あと女の子がいっぱい増えて華やかになって楽しみッスね!」

黄瀬は元カノの長谷川が海常に編入して来たことに思うところはあるものの、他校からの大量の女子の編入生がいるという環境の変化の刺激の方が勝るのか、海常バスケ部のメンバーとの何気ない会話で安心して気が紛れたのか目をキラキラ輝かせながら言った。

その様子を見て小堀は思わず苦笑した。

その一方で小堀は先程見た海常の制服を着た女の子たちの姿を思い返していた。

「なんか、東京女子高の制服ってどこかでみたことあるような気がするよな~」

「東京女子高のセーラー服は有名なアニメの主人公が通う学校の制服のモデルになったくらい有名らしいですよ」

中村は小堀の疑問に答えた。

「へぇ~。そうなんだ」

小堀は感心するように返事をした。

「そんなに制服が有名な学校でも閉校になるなんて少子化の影響ってすごいんだな」

「そうだな。あの学校に関してはそれもあるけどここ1、2年で問題勃発してたらしいから無理もないことだ」

笠松はため息をつきながら同情するように言った。

過去には東京女子高は名門校と呼ばれていたが少子化により受験者数減少と問題を起こす生徒が増えたことから治安が悪化するとともに荒れていき、部活動もまともに運営できなくなり生徒数の減少で廃校寸前にまで陥ってしまった。

卒業生と在校生たちが署名活動を行い東京女子高の存続のための請願活動をするが結果は虚しく受理されず、とうとう閉校が決まってしまったのである。

「前に森山さんが助けた女の子もその女の子を怒鳴り散らしてトラブってた女の子もどっちも東京女子高の子じゃなかったッスか?」

黄瀬はそう言いながら制服に着替えると笠松達に言った。

黄瀬の言葉に森山もうなずく。

「あぁ、あの時に俺が止めなかったらもっと大変なことになっていたかもしれないからな・・・・・」

森山は菜々のことを思い出して複雑な気持ちになっているのか俯いて拳を握り締めたまま黙り込んでしまっていた。

まだ森山は菜々が今回、海常にお試し編入してきた生徒の一人であることを知らなかった。

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