【完結】我が道を往くいじめられっ子は人生を変えたい   作:名無しのなな

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今回で最終回です。


第40話 総括 (完)

赤司はそういうタブレットを取り出した。

「これは今日発売された週刊誌の電子版だ。この号にはとある人気男性アイドルの熱愛記事が載っている」

そういいながら赤司はタブレットの画面に表示した週刊誌の記事を見えやすいように拡大した。

【山本幹久(18)熱愛発覚!お相手は某人気インフルエンサーの女性】

 

「アイドルの熱愛?それが長谷川さんに何の関係があるんスか?」

黄瀬が不思議そうに言うと赤司は続ける。

 

「この熱愛スキャンダルが出た男性アイドルの山本幹久の付き合っていた相手の女性が長谷川佐保なんだよ」

「え?そうなんスか?!」

驚く黄瀬やその他の面々に対して赤司は続ける。

 

「記事の中では相手の女性の実名は伏せられているが、この記事の写真に写っている長谷川佐保の服装と場所と、長谷川佐保のSNSの過去の投稿が照らし合わせられてネット上ではすでに熱愛の相手が長谷川佐保だと特定されて拡散されている。長谷川佐保が付き合っていた山本幹久の所属する男性タレント専門事務所のユーアイプロダクション、通称ユープロは異性との交際に関しては厳しい事務所で、所属しているタレントが特定の女性と結婚するには事務所を退所するか、あるいは40歳を過ぎて人気が落ち着いてからでなければ許されないと言われるほどだ。ファンの熱量も高く、タレント側も人気や多額の稼ぎ得られる代償として、自身のプライベートや人生をファンのために捧げるプロフェッショナルぶりを生涯求められ続けれられるという構造なんだ」

赤司がそう説明すると、荻原が言う。

「じゃあ、そのユープロのアイドルと交際が発覚した女性のほうは・・・」

「ユープロのアイドルと結婚するとなれば、女性側が芸能関係者ならば表舞台から完全に引退することになる。それが暗黙の了解だ。それに、結婚どころか交際がスクープされただけでも――たとえ証拠がなくて噂の段階でも、女性側が有名人であろうと一般人であろうと関係ない。相手のタレントの人気が高ければ高いほど、結婚したとしても別れたとしても厄介なファンから執念深く動向を追われることになるんだ」

赤司の説明に、その場にいた全員が息を呑む。

「そ、そんな・・・・」

「長谷川さん、インフルエンサー活動再開のために必死に頑張ってたのに、よりによってそんな相手と付き合っちゃったんスか・・・」

黄瀬が呆然として言う。

すると火神が言う。

「なんだよ。その、ユープロって?」

「火神っち、ユープロ知らないんスか?」

「知らねぇよ。アメリカでの生活が長かったし、日本のそういうアイドルとか芸能人とか興味ねぇし」

火神がそう言うと、黒子が補足する。

「ユーアイプロダクションとは日本で最大手の男性タレント専門の芸能事務所です。所属している多くのタレントの人気が非常に高く、その端整な容姿が代名詞になっているため、いつしか『ユープロにいそうなくらい格好いい』という意味で『ユープロ系』『ユープロ顔』という言葉が褒め言葉として一般に定着したくらい日本では影響力があるんです」

「へぇ・・・そんな言葉あったのか」

火神は納得したように頷く。

「『ユープロ系』とか『ユープロ顔』とかって、俺も小学生とか中学生の時に言われたことあるッス」

黄瀬は黒子の話に捕捉するように少し自慢げに言う。

すると、赤司が続ける。

「山本幹久はそんなユープロの中でも非常に人気が高いアイドルだ。その彼と熱愛が発覚した相手が、ネットでの炎上を利用して知名度を上げていインフルエンサー活動をしている長谷川佐保だと判明したからファンの怒りは相当なものだよ」

「じゃあ、長谷川さんは……」

菜々がそういうと赤司は言う。

「本人にどこまでの覚悟があったのかはわからないが、少なくとも今回の件で、彼女がこれまで築いてきたモデルやインフルエンサーとしての立場は完全に失われるだろう。長谷川佐保が所属していたモデル事務所もすでに契約解除の方向で動いていると聞いている」

赤司が淡々と言う。

黄瀬は驚いたように赤司を見る。

「え……それ、本当なんスか?」

「ほぼ確実だよ。ユープロの男性アイドルと交際が表沙汰になったことで、彼女はもう表舞台に立つ資格を失った。今後は影に隠れて生きるしかないだろうね」

赤司の言葉に、その場にいた全員が息を呑む。

「そんな……長谷川さん、一体何してんスか……」

黄瀬が呆然として呟く。

「長谷川佐保は山本幹久のファンからの監視やSNSでの誹謗中傷が続く中で、仕事も人間関係も徐々に狭まっていくだろう。今回の熱愛発覚は、彼女にとって致命的な打撃になるはずだ。そしてこれから先の人生でも、山本幹久と別れてから一般人として生活しようとしても熱愛報道は全国報道されていて、山本幹久のファンや他のユープロ所属のタレントのファンは日本全国各地どこにでもいるからこれからは生きづらい人生になるだろう」

 

赤司の言葉に、その場にいた全員が息を呑む。

 

「なんか、可哀想っていうか・・・自業自得っていうか・・・複雑な気持ちッス」

黄瀬がそう言うと、荻原も頷く。

「整形バレした時よりも、もっと後戻りできない感じがするな・・・」

「でも、なんで長谷川さんはよりによってユープロのアイドルとなんて付き合ったんスかね・・・」

黄瀬が呟くと、菜々が言う。

「あ~、それは、たぶん長谷川さんが老け顔っていうか、面長コンプレックスがあったからだね」

「え?どういうことですか?」

黒子が聞き返す。

「長谷川さんは高校生だけど学校の制服を着ていないと大学生とか成人済みの社会人とかに間違われやすくて最初はそれが自慢だったんだけど、世の中の顔の流行がだんだん顎が短くて中顔短縮顔って言って、まぶたから上唇までの距離が短くて顔の縦の余白が少ない顔立ちがいいっていう流行に変わって、それでだんだん自分の大人っぽく見える顔がコンプレックスになって整形したんだよ」

 

菜々が目の下と上唇の幅を親指と人差し指で測るように指しながら説明すると、荻原が驚いたように言う。

「えっ?!そんな理由で?!」

菜々は荻原の言葉に頷く。

 

「うん。ユープロのアイドルって山本幹久もそうだけど童顔気味で中顔面が短い、いわゆる童顔系の顔立ちの子が多いじゃない?だから、そういう相手と一緒になることで自分の面長コンプレックスを打ち消したい、みたいな心理があったんじゃないかな~って」

菜々がそう分析すると、その場の全員が納得したように頷く。

「……なるほどな。結局、自分の見た目への不安を埋めるために、ああいう選択をしたってことか」

荻原が呟く。

「それと、赤司くんを狙ってたのも、赤司くんもどちらかというと童顔系というか中顔面短いタイプの美形の顔立ちじゃない?自分の理想の顔立ちで権威もあって、付き合えたら自慢になるし、もしも結婚して子供が生まれたら自分のコンプレックスである面長遺伝子が赤司くんの中顔面短縮顔遺伝子と結合することで中和されてちょうどいいいい感じの容姿子供が生まれる可能性があると予想して、すべてを手に入れられる相手として赤司くんに近づこうとしてたんだよ。まぁ、海常の文化祭で公衆の面前で醜態さらして赤司くんにも厳しいこと言われたから赤司くんに近づくことはやめて、他の男に行こうってことで次に選んで近づいた相手が人気アイドルの山本幹久でこんなことになるとはね~」

 

菜々がそう言うと、その場の全員が納得したように頷く。

「でも、結局どっちつかずの中途半端なまま終わったんスね……」

黄瀬が呟くと、赤司が続ける。

「そうなるだろうね。彼女がこれからどこに向かうのかは、彼女自身の選択次第だ」

赤司の言葉に、全員が息を呑む。

そして、沈黙が流れた後……

 

「なんか、聞けば聞くほど長谷川さんのやることって全部同じところから来てるんスね・・・」

黄瀬がぽつりと呟く。

「そうですね。老け顔――ひいては面長であることへのコンプレックスが、七海さんへのいじめにも、整形にも、交際相手の選び方にも、一貫して根っこにあったということになります」

黒子が冷静に言う。

「僕を利用しようとしていたのも、その延長だったというわけか」

赤司がそう言うと、荻原が少し気まずそうに言う。

「赤司は何も悪くないけど・・・なんか、長谷川さんが赤司のこと『権威と顔立ちを兼ね備えたコンプレックス解消アイテム』みたいに見てたって考えると、俺、赤司に同情するよ」

「別に構わないよ。僕にとっては痛くも痒くもない話だ。ただ、一貫して自分のコンプレックスから目をそらし続けて、それを他人にぶつけることでしか自分を保てなかった人間なんだな、というのがよくわかったよ」

赤司は淡々と言う。

その冷静な言葉に、黄瀬は複雑な表情を浮かべる。

「……まあ、確かにそうかもしれないッスけど。でも、なんか複雑ッスね」

「あはは、それはそうかもね~」

菜々が苦笑する。

「因果応報ってこういうことを言うんスかねぇ……」

黄瀬が呟くと、菜々は言う。

「まあ、何にせよ長谷川さんが自分で蒔いた種ってことだね~」

「因果応報っていうか、自業自得って感じだよな」

荻原もそう言うと、赤司は続ける。

「いずれにせよ、彼女の道は完全に閉ざされたも同然だろう。これから彼女がどのように立ち直るのか……いや、そもそも立ち直ることができるのかも含めて、すべては彼女次第だ。少なくとも、社会や周囲が彼女に対して慈悲をかけることはない」

赤司の言葉に、その場にいた全員が静かに頷いた。

 

(長谷川さんってば東京女子高にいたときは私を仲間内で私を監視して私の様子をネタにして笑いものにする系のいじめしてたけど・・・。まさか、長谷川さん自身が複数の人に監視される人生になるとはな~。自分にしたことは返ってくるのかな?)

 

「う~ん。なんか、色々あって・・・・一番強そうな強敵の長谷川さんが自滅してくれてもう関わってこなさそうならよかった~。これで私も、揉め事の台風の目とか言われるの卒業できそうだし・・・。みんなありがとうね~。騒動に巻き込まれても縁切らないでいてくれて~」

 

菜々はあらためて海常高校バスケ部のメンバーやビデオ通話していた黒子と火神と赤司と虹村に感謝の気持ちを伝えた。

全員頷き、森山はにこやかに微笑む。

「お前が変な奴に絡まれるたびにこっちの寿命が縮む思いなんだからな」

笠松は腕を組んでそう言うと、小堀が笑いながら補足する。

「文化祭のヒーローショーの一件からずっとだよな。七海さんが首突っ込んでるところに俺らが巻き込まれるパターン」

「巻き込んでるつもりはないんだけどな~。向こうから来るんだもん」

菜々がそう言い訳すると、早川が声を張る。

「そうだお(ろ)!でもまた何かあっても、俺あ(ら)が絶対助けう(る)から安心しう(ろ)!」

「早川くんありがとう!心強いよ~」

菜々が笑顔で答えると、スマホの画面越しに火神が言う。

「俺らも誠凛からいつでも駆け付けるからな!なんかあったらすぐ呼べよ!」

「え?!誠凛から海常まで結構距離あるよ?!」

菜々が火神に突っ込むと、黒子が真顔で言う。

「電車を乗り継げば1時間半ほどで着きます」

「そういうことじゃなくて・・・!」

その場にいた全員が笑う。

「まあな。でも、これからも気をつけろよ。今回みたいに、長鞭とか変な武器持ち出すのはほどほどにしとけよ」

笠松が改めて釘を刺すように言う。

「あはは!そうします!」

菜々はそう答えながらも、心の中では

(まぁ、また何かあったら護身用に持っておこうかな~)

と思っていることは誰にも言わなかった。

みんなは菜々が笑っているのを見てつられて笑った。

 

菜々の高校生活は東京女子高にいたままでいた場合、いじめられつづけて苦い思い出のまま高校生活を終えてそのまま人生を歩んでいたかもしれない。

だが、予備校前で長谷川佐保の安否を知りたくて声をかけてきた森山との出会いから、東京女子高から海常への編入試験を受けることを視野に入れて行動して、海常に同じく編入して来た長谷川佐保の刺客からの嫌がらせにも屈せずに過ごして、ひょんなことから海常に編入することとなった荻原と仲良くなり、海常バスケ部の面々や誠凛の黒子や火神、そして赤司や紫原や緑間と青峰や桃井その他の関係者と繋がっていくにつれて菜々の人生は大きく変わった。

菜々は逆境に負けずに人生を変えて、人間関係を変化させて最悪に終わるはずだった高校生活を最高のものにするためにこれからもがんばって、みんなと仲良く過ごすつもりである。

菜々の高校生活も菜々の人生もまだ始まったばかりなのだ。

 

我が道を行くいじめられっ子は人生を変えたい 

END





あとがき

ここまで読んでいただきありがとうございます。

「我が道を往くいじめられっ子は人生を変えたい」ではオリ主である七海菜々が海常高校バスケ部のメンバーや荻原シゲヒロ、黒子、火神、その他の黒バスキャラと知り合って仲良くなるまでの過程を描きました。

次回作では七海菜々はまた別の事件に巻き込まれたり、過去の因縁と決別するかもしれません。

興味のある方は次回作もどうぞよろしくお願いします。
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