我が道を往くいじめられっ子は人生を変えたい 作:名無しのなな
「ナイッシュー」
隣のクラスとの合同の体育のとき、菜々はバスケの授業でぎこちないながらもシュートをいれた隣のクラスの女子に声掛けするもののその子は菜々の姿を上から下までみた後に怪訝な表情をしてから菜々を見ながら長谷川に耳打ちする。
「あいつ、ナイッシューとかいわれたんだけど・・・まじきもいんだけど」
「あー、まじできもいね」
長谷川はその女子とともに菜々をあざけるように言う。
二人は菜々に聞こえる距離なのにわざと菜々にだけ聞こえるようにして言い放つ。
菜々はビクッと肩を跳ねさせるが聞こえないふりをすることにする。
なぜなら相手は自分よりも体格が良く運動神経もいい相手だからだ。勝てる見込みがないからだ。
菜々は目立たないようにしてやり過ごすことにした。
菜々は小学校からいじめにあっていたのでそういうのには慣れっこだったのだ。
それでも暴力を振るわれたり暴言を直接吐かれたりしたらやり返そうと思っていたが今のところその気配はない。菜々は内心ではびくびくしながら体育の時間を過ごしていた。
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学校帰りに個別指導のために予備校に行こうと歩いていて予備校前につくと菜々は唐突に
「どぉぉーーーーん!」
と言う掛け声とともに背中を押されて地面に突き飛ばされる。
菜々は何が起きたのかわからないといった表情でポカンと口を開けて混乱しているとそこに立っていたのは東京女子高校の制服姿の明枝成実(あきえだ・なるみ)だった。
菜々は痛みに耐えつつ身体を起こして立ち上がろうとするが膝や足首を痛めたようでうまく立ち上がれない。
「菜々ちゃんたらそれくらいで倒れるとか雑魚なのぉ~?弱すぎ~」
「成(なる)ちゃん・・・あぶないでしょう!いきなり突き飛ばすのやめてって言ったじゃん!」
明枝成実は菜々とは東京女子高校に通っていたときに仲良くしていたが明枝が承認欲求を満たす手段として菜々に怪我しない程度の暴力をふるってくることが多いが本人は遊び半分でやっているだけなのでそこまで罪悪感はないようである。
「菜々ちゃんが雑魚なのがいけないんだよぉ~?ざぁーこざこざこざぁこ~♥️」
明枝はアニメや漫画のキャラになりきったかのようなふざけた口調で名前を煽るように言った。
その顔はとても楽しそうであった。
菜々は内心呆れつつも言い返せずにいた。
下手に言い返せばまた暴力的なことをされるかもしれないからだ。
そんなことを考えているうちに明枝は満足そうに笑うとその場を立ち去ろうとした。
「じゃあね~!菜々ちゃんは努力してもいつまでたっても雑魚のままなんだからさぁ~、あきらめなよ~プププ」
嘲笑するような明枝の言葉に菜々は憤りを覚えたが明枝なんかともめる方が面倒だと思い何も言えなかった。
菜々はそのまま黙って立ち上がり手に持っていた肩掛けバックから突き飛ばされた際に地面に散らばったテキストを拾おうとしたとき目の前から声が聞こえてきた。
「あの、大丈夫ですか?」
「え?」
菜々の目の前に源光男子高校の制服を着た男子が手を差し出してきた。
差し伸べてくれた手を思わず握る。
その途端、ふわっと体が浮くような感覚に陥ったかと思うとそのまま引っ張られて立たされた。
支えてくれた人物を見上げると背の高い男子高校生が立っていた。男子にしては珍しい艶のある黒髪は短いが少し長めで後ろ髪は短く切り揃えられていた。二重まぶたでぱっちりとしたアーモンドアイの瞳が印象的な端正な顔立ちをした少年だった。背が高いせいかやや威圧感があるが柔らかな眼差しと優しそうな雰囲気が相まって人当たりの良さを感じさせる人物であった。
「あ、ありがとう・・・ございます」
菜々が礼をいうと少年は照れ臭そうにはにかみつつ首を横に振った。
「いえ・・・俺もこの予備校通ってるんです。東京女子高の人ですよね?俺、いま源光男子高校からお試し交換編入制度で東京女子高のほうに行ってるんです」
「えっ?!君、源光男子高校から交換編入してきた子なの?」
菜々の言葉に目の前の少年は苦笑する。
「はい。女子ばっかりの環境でちょっと居づらいんですけどなんとか頑張ってます。それより、大丈夫ですか?」
少年は眉を下げて心配そうに問いかけた。菜々は自分の怪我よりも彼が自分のことを気にかけてくれる方が気になっていた。
こんな紳士的に対応してくれる男子に会ったのは初めてだったからだ。
菜々は彼の優しさに触れてなんだか嬉しくなり心が温まるような気がした。
目の前にいる少年はとても優しくて紳士的だったので好感度が上がるばかりだ。
やはり、人間は外見ではなく内面を重視するべきだと感じた。
菜々は改めてこの少年は良い人なんだなと思いながら笑顔で言った。
「君みたいな子が東京女子高に一時的にでも来てくれたなら・・・長谷川さんもいないしいい方向に変化するのかもね・・・」
菜々はしみじみと言った。
――
彼の名前は荻原シゲヒロ。
源光男子高校1年生で源光男子高校からお試し編入制度で東京女子高に一時的ではあるが通っている人物であった。
年齢は菜々の一つ下だが名前にとって初めてのまともな男友達である。
菜々は自分がいなくなった後の東京女子高の様子を知りたくて予備校の談話室で荻原に尋ねてみた。
「編入してきた時は東京女子高の人たちも男子を受け入れられなかったみたいでよそよそしかったんですけど、そのうち一人ずつ話しかけて来るようになって今では結構仲いいんですよ」
菜々は話を聞きながら感心しつつ話を聞いていた。
荻原の話はどれも新鮮で興味深い内容ばかりだった。
荻原が言うには最初はほとんど無視されていたがある日を境に女子達が話しかけてくるようになり次第に打ち解けていったのだという。
「そっか。1年生のクラスはなんとか仲良くやってるのか・・・」
1年生ならクラスの雰囲気やグループが固定化されていないので荒れていてもある程度はまだ矯正可能だろう。
菜々が安心して息をつくと、今度は荻原が問いかけてきた。
「どうして、あの人は七海さんを突き飛ばしてきたんですか?冗談でもあんなことされると困りますよね・・・・・・」
荻原は真面目な顔をして怒った様子だった。
菜々は苦笑いをして言う。
「あ~・・・あの子、明枝成美(あきえだ・なるみ)ちゃんは私と同じ東京女子高の普通科の2年生だったんだけど、自分の思ってることを言語化するのが苦手で普段はおとなしいんだけど承認欲求が強くて、目立つための手段+私(菜々)と仲良しだけどいじめっ子側に仲間だから安心してね☆だからは私をのことはいじめないでねっていじめグループへのアピールとストレス発散のためにああやってふざけた態度で大怪我しない程度に唐突に突飛ばしてきたり暴力的な危険なことしてくるんだよ。今までは学校内でしかしてこなくて、外で突然、突き飛ばしてきたりされたのは今回が初めてだよ」
菜々の説明を聞き終えた後、しばし無言になったあと複雑な表情をしてため息をつくと再度話しだした。
「そういうことでしたか・・・・・・」
そう言って黙り込んだ荻原を見て菜々は思った。
(やっぱこの子、良い子だわぁ・・・・・・)
そして思う。こんな子に巡り会える機会はもうないかもしれないと。
「特進科や英語科は知らないけど、うちの普通科の2年生の2クラスはどっちも学級崩壊してるんだよね。みんなプライド高くて成績を気にしているからテストには力いれていい点とってマウントとって他人をバカにしあったりしてるけど、気が弱い先生の授業はわざとサボったり先生を無視して遊びだしたりする感じで、気にくわない人をターゲットにして聞こえるように悪口言ったりするのが日常茶飯事でそのことに、疑問も違和感も一切、感じていないみたい。私も頑張ってはみたものの聞く耳持たないから今、お試し編入制度利用して海常高校に通ってるんだよね」
菜々はため息をつきながら言った。
「私は女子高に行きたかったから東京女子高に入学したけど東京女子高は学校運営者から教師や生徒も全てが根腐れしているからこのままの流れで閉校してすべてなくなって生徒たちもすべて散り散りになったほうがいい方向にいくと思うんだよね~。荻原くんはできるだけうちの2年生の普通科の女生徒には近づかないように学校生活送るのがおすすめだよ~」
そう言うと荻原は戸惑った表情を見せた。そして考え込むように沈黙してしまった。
どうしたのだろうと思い声をかけようとすると彼は意を決したように口を開いた。
「七海さんが大変な思いをしているというのはわかりました。俺ができることは少ないですけど一緒に頑張りましょう」
菜々は荻原の優しい言葉に感動する。
それと同時に暖かいものがお腹付近に広がるような不思議な感覚があった。