遊陽が三社と一緒にハイドロキッズを遊ばせた次の日。
日曜日の昼間に、スタジアムは熱気に包まれていた。
企業対抗戦。
企業が代表でデュエリストを選出し、舞台で戦わせて、法人スコアを掛け合う戦い。
話題性のあるライダーが出てくる場合、チケットは毎度完売するイベント。
……その、ハイスコアシート。
板代積夜は、娘の美雪を連れていた。
デュエルディスクの蓄電池を開発し、レコックスと長期契約を結んでいる『世界的企業』でもあるボルトピアにとって、このシートを確保するのは容易いことである。
通常は取引先との接待に使われることもあるハイスコアシートだが、娘だけを連れてここに来ていた。
「こちらでございます。板代様」
「ああ、ありがとう」
案内役のスタッフが二人を連れたのは、ハイスコアシートの中でも、内容が一番見やすい場所だ。
「……美雪、あの三社の噂は聞いているか?」
ソファに座った積夜は、隣に座った美雪に聞いた。
青のハイネック・ノースリーブのワンピースを着た美雪は、少しだけ考えて……。
「エーサーバー・クリエイション、三隅開発、アトリエ・ルルリキッドのことですか?」
「ああ。噂なのだが、昨日、プレミアムスコア持ちに会っていたらしい」
ボルトピアの情報収集力は高い。
プレミアムスコアを持っている人間の情報まで好き勝手に集められるものではないが、逆に言えば、その周囲の情報を集めることはできる。
「その三社が集まったことなど、先週の対抗戦くらいのものだ」
「私もそう思います」
「ああ、お前がまとめて倒したあの戦い。あそこしか考えられん」
積夜は、部屋を見渡した。
「……ここは、一番いい部屋だな。デュエルを見やすい」
「そうですね」
「先週はここではなかった。二番目に見やすい部屋で、一部のスタッフの緊張感も確かなものだった」
積夜はボルトピアの社長。
こうしたスタジアムもよく利用しているし、構造はわかっている。
「ボルトピアの社長である私を差し置いて一番の席を与えるなら、プレミアム持ちとしか思えん。その人物が、デュエルを見た後で、あの三社に接触した可能性がある。勝った我々ではなく、負けたアイツらに」
積夜は少し、眉間にしわを寄せた。
「お前もわかっているだろうが、『上』の人間が負けた人間に接触するとき、動機は限られている」
「技術を安く買いたたくつもりなのか、プレミアムと接触できたという恩を売ろうとしているのか、それとも、勝ったボルトピアを避けているのか」
「そうだ」
積夜は部屋に用意されているドリンクを飲んだ。
「プレミアムスコアを持っている人間は、お前よりも美しい女に会うことも珍しくはない。それだけの特権を持っている。その美貌だけであいつらを釣れるとは思っていない」
17歳の高校二年生でありながら、20代半ばを思わせるような大人びた美貌を持つ美雪。
スタイルも抜群で、顔と腕しか肌を晒していない今も、その体の魅力は損なわれることはない。
そんな美雪だが……上には上がいる。
むしろ、『単純な美貌の質』で比べれば、美雪より上の女は多いだろう。
プレミアムスコアを持っている人間は、美雪よりも美しい女に簡単に会える。
だからこそ、その美貌だけで釣れるとは積夜も思っていない。
「だが、わざわざ『負けた奴ら』に接触する理由もない。プレミアムスコアを持っているだけで、レコックスが提供する最上品質に触れられる。使える。恩を売るまでもなく、買いたたくまでもなく、欲しいなら欲しいと言えばいい」
「はい」
「災害のような奴らだ。ボルトピアも、プレミアム特典のための最上位デュエルディスクに使う最高品質の蓄電池はいつでも求められているからな。ただ……乗りこなせば、それだけ大きい」
周囲の人間がプレミアムスコアに感じることは人それぞれだ。
特に、権力者にとっては、その感情も重いだろう。
贔屓への不平等に不満を漏らすもの。その特典にあやかろうと近づくもの。
ただいずれにせよ、『状況をコントロールできるのはプレミアムスコアを持っている本人だけで、周囲はそこを乗り切るしかない』ということだ。
「……ただ、お前の魅力は美貌だけではない。そのように育ててきた。何故、お前を求めないのか。毎度のことだが、アイツらのことはわからん」
積夜は少し、ため息をついた。
……もっとも。
その、美雪が倒した三社を呼んだプレミアムスコア持ちが『求めていたこと』が。
自分のデッキの子供たちと遊んでほしい。というものだったと知れば、積夜は何を思うだろうか。
それは、神のみぞ知ることである。
「話を本題に移すか。今日の対抗戦では、仮面ライダーソーラーが出る」
「そうですね」
「塔野建設の仮面ライダーネストとタッグを組んで出るとのことだが、映像を少し見る限り、お前と対戦カードを組まれたところでどうとでもなる相手だ。ソーラーをよく見ておけ」
積夜は資料を見る。
「コンバークル・デイドリーム。あの強馬渇明とのデュエルを公の場に晒したのだ。もはや隠す必要もない。出てくるはず。その挙動をよく見ておけ」
「はい」
バテリーはソーラーに負けた。
ただ、その時のソーラーは、コンバークルを使わず、シンクロ兵器ばかりを並べて戦っていた。
ここに加えて、今は、コンバークル・デイドリームという進化体がいる。
渇明との戦いは『デュエル』だったため、実際にライダーとして殴り合いに発展したわけではない。
この戦いは、何かを隠す必要がなくなった仮面ライダーの全力を見られるデュエルだ。
一挙手一投足を見て、分析し、次に戦った時は、勝てるようにしなければならない。
「社交界に出れば、ボルトピアはソーラーに負けたことを皮肉られる。それだけが、我が社の唯一の失態。ボルトピアの技術力とお前の鍛錬に間違いはない。ただ、根本的に、『ボルトピアが見つけていない何か』がある。それを見つけ出すことを優先しろ」
「……では、仮面ライダーネストは?」
「あんなものは眼中にない。放っておけ」
「……はい」
★
どれほど場数があっても、大きな舞台においては、全く緊張しない人間もいない。
どれだけ意識的には『今の自分は落ち着いている』と思っても、無意識では緊張していて、手汗がびっしょり、みたいなことは珍しくない。
とはいえ、それが程よい緊張感を生む。
その緊張感は、成功につながるだろう。
「すぴー……、すぴー……」
空閑ソーラーの専属ライダーにして社長令嬢、空閑歩佳は、控室で爆睡しているが。
「……おーい、そろそろ、俺たちの連携とか、考えた方がいいんじゃないのか? おーい」
そんな歩佳に呼びかけるのは、群堂炎示。
塔野建設の専属ライダーであり、『仮面ライダーネスト』に変身する14歳の中学二年生だ。
企業対抗戦は何度か出ているが、それでも『大きな舞台』であることに変わりはなく、彼も手汗はそこそこにある。
ただ、『タッグデュエル』として組む相手が、直前に爆睡しているのはいかがなものか。
準備運動不足で体が動かなかったら承知しねえぞコイツ。と三割くらい本気で思っている炎示だが、全然起きない。
「……炎示君。覚えておくといい。歩佳はこういう時、『緊張してきたときは寝てリセットする!』と言い出してよく寝る」
「緊張してたら寝付けるわけねえだろ……」
歩佳の友人である花宮青葉も控室にいる。
なお、『企業対抗戦なのに、その企業に直接関係ない人が控室にいるのはどうなのか』と言う点に関しては、意外と珍しくはない。
その企業に関わる人だけではなく、家族、親友、恋人など、いろんな人が控室に来るのだ。
別に社外秘が記された資料を持ってくる必要もない場所であり、『ライダーが勝てるかどうか』なので、モチベーションが重要として認められている。
「……そういえば、炎示君は、誰か呼ばないの?」
「もうすぐ来るはずなんだけどなぁ」
「前に言ってた彼女が来るの!?」
「いきなり起きるんじゃない」
爆睡していたはずの歩佳だが、炎示が『もうすぐ来る』といったためか、『彼女だ!』と想像して飛び起きた。
「だって、前に言ってたでしょ! 渇明先輩からボコボコにされた次の日に彼女が出来たって!」
「遠慮ってもんがねえのか……」
「まあまあいいじゃん! 私だって、エースが進化してもボッコボコにされたんだもん!」
「それはししょ……渇明さんがおかしいだけなのでは?」
それを聞いて、青葉は聞き逃さなかった。
「今、渇明先輩のこと、師匠って言おうとした?」
「俺にとっては心の師匠だから」
確信をもって言う炎示。
「ライダーである前に、デュエリストとして叩きなおしてくれたんだ。渇明先輩は、俺の師匠だよ」
「目が綺麗だね」
「子供らしい純粋な想いに加えて、確かな自信。敗北と恋愛がこの子をここまで強くしたのか」
「青春してるねぇ!」
「うるせえ!」
子ども扱いしてくる女子高生二人にブチ切れる男子中学生。
それもまた青春である。
と思ったら、ドアがノックされた。
「入りますよ~」
優しい声が響いて、誰かが中に入ってきた。
「……お、おお」
歩佳は思わず、目を輝かせた。
端的に言えば、すっごく、清楚な美少女だ。
ピンクブロンドの長髪は艶があってとても綺麗であり、儚い印象を与えるほっそりした体つき。
白いワンピースを着た姿は、とっても清楚である。
「かわいい! え、炎示君の彼女!?」
「フフッ、そうです。
儚く微笑む桃実。
「こ、この、いるだけで部屋に清涼感が溢れる感じ。すごい……」
「青葉ちゃんはどっちかっていうとマスコットだからね」
「ボディブローを入れてやろうか?」
「遠慮しておくよ!」
群青色のショートボブが良く似合う妹系ダウナー美少女の青葉だが、発する雰囲気は清涼感と言うと少し違うだろう。
あまり動き回るタイプでもないので、小動物と言うよりはマスコットだろう。
「遅くなってすみません。カードを探してたら遅くなっちゃって」
桃実は炎示に近づくと、彼の手を取って、一枚のカードを渡した。
「炎示君。頑張ってね♪」
「お、おう」
炎示は照れながらもカードを受け取って、それをデッキに入れた。
「ねえ青葉ちゃん」
「どうしたの?」
「私、彼氏が欲しくなってきた!」
「何故それを私に言うの?」
「青葉ちゃんが私の彼氏になってほしい!」
「人のことを男っぽいと思ってんの?」
「男と言っても違和感ないくらい胸がないからね。ごふっ!」
歩佳の腹にボディブローが叩き込まれた。
「あ、青葉ちゃん。割と本気で殴らなかった?」
「対抗戦の直前だからと言って遠慮はしない」
「ごめんなさい。真面目にやります……」
で、バカに制裁が加わったわけだが。
「今日の相手は強いって噂だけど、炎示君なら大丈夫。気合い入れてがんばって♪」
「ああ。絶対勝つから、よく見ててくれよ!」
そんなのフル無視して、炎示と桃実はイチャイチャしてた。
「写真撮っていいかな」
「やめておけ。そして確認を取れる程度に成長できたのは褒めてあげる」
「私、社長令嬢で、それ相応の教育は受けてるんですけど?」
なんだかすごく変な控室だが。
少なくとも、これからタッグを組むとは思えないほど、デッキの話をしていないのは事実である。
★
『お待たせいたしました!』
アナウンスの声が響いた。
『今回の戦いは2対2のタッグバトルになります!』
2対2のタッグによるアンティデュエルとなる。
『ライダーに登場していただきましょう! 株式会社イノムラーの専属、仮面ライダーデュオと、仮面ライダーツヴァイです!』
アナウンサーが紹介すると、スタジアムのゲートから、どこか似たような、スタイリッシュなライダーが2人現れた。
非常に似通ったデザインのスーツであり、ライダーカードはランダム生成のため、非常に珍しい。
すでに変身した状態でゲートから出てきている。
正体を公表しないということではあるが、ライダーカードは本人にしか使えないため、なりすましはあり得ない。
『イノムラーは主に、タッグデュエルやレイドデュエルなど、『協力プレイ』を可能とするカードを開発する会社です! デュオとツヴァイは、ここ数年、負けなしのタッグライダー! 今日はどんなテーマが飛び出すのか、乞うご期待!』
アナウンサーは、逆のゲートを指さした。
『次に、反対側のゲートからは、空閑ソーラー! ソーラーパネルメーカーとして業界にその名を響かせています! 専属ライダーは、空閑歩佳! 仮面ライダーソーラー!』
「私の出番だあああっ!」
歩佳が元気いっぱいに舞台に飛び出した。
『最後に、塔野建設! デュエル設備の建築事業を手掛ける建築会社です! 専属ライダーは、
「よろしくおねがいします」
炎示も舞台に顔を出した。
『それでは、空閑選手と群堂選手、変身をお願いします!』
そういわれて、二人はデュエルディスクを腕から外して、腰に付けた。
『『DUEL DRIVER』』
二人とも、スイッチを押す。
『『Your name is……』』
「「変身!」」
『KAMEN RIDER SOLAR!』
『KAMEN RIDER NEST!』
光と、炎の羽が集まる。
それぞれがアーマーを形成して、二人は仮面ライダーになる。
「さあ、不思議な宝石でバチッとする魔法を使っちゃうよ!」
歩佳は相手二人を指さして、ピシッと決めた。
『それでは、全ライダーは、第1ターンを開始してください!』
企業対抗戦は、企業によるアンティの掛け合い。
重要なのは『企業の技術力を見せること』であり、企業の技術力を頼っていなくてもライダーが強いから勝てるというのは本意ではない。
厳密に言えば、ここで誰かが殴り掛かったからと言って、ルール上は何も問題はない。
技術の見本市とするためにお互いに展開するのは、単なる『作法』に過ぎないのだ。
「よし、俺からだな」
炎示はホログラムの手札を使い、展開を始める。
「魔法カード、『ライズレギオン・マイグレーション』を発動。変身中なら、任意の『ライズレギオン』を5体、墓地に送る。俺はデッキから『ライズレギオン・ホーク』を2体。『ライズレギオン・ファルコ』を3体墓地に送る」
「一度に五枚か」
「墓地のファルコの効果で、このカード以外に、墓地にファルコが2体以上いるなら、墓地から特殊召喚できる!」
ライズレギオン・ファルコ ATK1700 ☆4
「墓地のホークの効果! 変身中なら、このカード以外にホークが1体以上いれば、墓地から特殊召喚できる!」
ライズレギオン・ホーク ATK1700 ☆4
「俺はレベル4のファルコとホークでオーバーレイ! 『ライズレギオン・デュアフレイム』!」
ライズレギオン・デュアフレイム ATK2200 ★4
炎示の両手に、炎の羽を模した双剣が出現する。
「デュアフレイムの効果で、素材を1つ使って、『ライズレギオン』魔法を手札に加えられる。俺は、『ライズレギオン・トリオ』を手札に加えて、発動! 変身中なら、デッキからライズレギオンを3枚墓地に送れる。俺はスワロウを3枚墓地に送って、墓地から1体を特殊召喚!」
ライズレギオン・スワロウ ATK1500 ☆4
『ピッ! ピピッ!』
「墓地のトリオを除外して効果発動! フィールドにいるライズレギオンと同名を墓地から蘇生できる。スワロウをもう1体特殊召喚!」
ライズレギオン・スワロウ ATK1500 ☆4
「2体でオーバーレイ! エクシーズ召喚! 『ライズレギオン・ファイヤーバード』!」
ライズレギオン・ファイヤーバード ATK2600 ★4
翼に炎を纏わせる鳥がフィールドに出現した。
「おおっ、『マイグレーション』にファルコとホーク、『デュアフレイム』にした後、『トリオ』でスワロウ2体を出してファイヤーバード。私も見たことがある展開だね」
「マイグレーションを引きさえすれば1枚でここまで来れる」
「ふむふむ、ちょっと調べたよ。確か、
「いやそこまでは知らん。俺はカードを2枚セットだ」
「なら次は私だ! 私のカードはこれだよ! 『サンライズ・バリケード』を特殊召喚!」
サンライズ・バリケード DEF1300 ☆1
「これは変身中なら手札から特殊召喚できるよ。さらにモンスター効果で、デッキから『サンライズ』フィールド魔法を手札に加える!」
「なんか前もそれを初手に持ってなかったか?」
「これが私の『象徴初動』ってことだね! デッキから『サンライズ・グラウンド』を手札に!」
良悟が作ったインチキカードが手札に加わった。
「そして、サンライズ・グラウンドを発動! 発動時の効果処理で、私のサンライズはレベルが上がるよ!」
サンライズ・バリケード ☆1→2
「さらに、『サンライズ・コンストラクション』を発動。デッキから『サンライズ』モンスター、『サンライズ・フェンス』を手札に加える。フェンスは、フィールド魔法が自分フィールドにあるなら、特殊召喚できる!」
サンライズ・フェンス DEF1900 ☆3
「フェンスの特殊召喚成功時、変身中なら、デッキから『サンライズ』フィールド魔法を1枚、手札に加える。私は『サンライズ・クリスタルヤード』を手札に」
フィールド魔法が手札に加わった。
「そして『サンライズ・グラウンド』の効果! フィールドのこのカードを、手札に戻す! そしてそのまま発動!」
サンライズ・バリケード ☆2→3
サンライズ・フェンス ☆3→4
「そして、手札に戻す効果は、自分フィールドにレベル8以上のサンライズがいないならいくらでも発動できる! 手札に戻して、また発動!」
サンライズ・バリケード ☆3→4
サンライズ・フェンス ☆4→5
「うわぁ……」
「で、サンライズ・グラウンドを手札に戻して……手札から、チューナーモンスター、『サンライズ・アサルトバリア』を召喚!」
サンライズ・アサルトバリア ATK1000 ☆1
「そして、『サンライズ・グラウンド』を再び発動!」
サンライズ・バリケード ☆4→5
サンライズ・フェンス ☆5→6
サンライズ・アサルトバリア ☆1→2
「サンライズ・グラウンドを手札に戻して、レベル6のフェンスに、レベル2のアサルトバリアをチューニング! シンクロ召喚! 『サンライズ・レールガンナー』!」
サンライズ・レールガンナー ATK2800 ☆8
「さらに、アサルトバリアは、『サンライズ』シンクロモンスターのシンクロ素材になったとき、墓地から特殊召喚できる!」
サンライズ・アサルトバリア ATK1000 ☆1
「手札に戻した『サンライズ・グラウンド』を発動!」
サンライズ・バリケード ☆5→6
サンライズ・アサルトバリア ☆1→2
サンライズ・レールガンナー ☆8→9
「レベル6のバリケードに、レベル2のアサルトバリアをチューニング! シンクロ召喚! 『サンライズ・コンバークル』!」
『きゅうっ!』
サンライズ・コンバークル ATK2600 ☆8
フィールドに出現したのは、1体の子ウサギ。
空閑歩佳、仮面ライダーソーラーの、エースモンスター。
「行くよコンちゃん!」
『きゅううっ!』
「続けて、魔法カード、『サンライズ・クロック』を発動。デッキからレベル1の通常モンスター1体を特殊召喚できる。チューナーモンスター、『リスト・クロック』を特殊召喚!」
リスト・クロック ATK400 ☆1
「レベル8のコンちゃんに、レベル1のリスト・クロックをチューニング! シンクロ召喚! 『サンライズ・コンバークル・デイドリーム』!」
サンライズ・コンバークル・デイドリーム ATK2900 ☆9
首に、止まった腕時計をかけている子ウサギが出現。
「デイドリームの効果! 『サンライズ・コンバークル』を素材にシンクロ召喚した場合、デッキから、『バスター・モード』1枚を、発動可能な状態でフィールドにセットする!」
デッキから、1枚のカードが排出される。
伏せられたそれを、即座に発動。
「そのまま発動! レールガンナーをリリース! デッキから、『サンライズ・レールガンナー
サンライズ・レールガンナー
「このモンスターの特殊召喚に成功した場合、デッキから任意のフィールド魔法を1枚手札に加える。変身中なら2枚だ! デッキから『サンライズ・ルーフトップ』と、『エレクトロフェザー・テリトリー』を手札に加える!」
「ん?」
炎示は首を傾げた。
「さらに、『サンライズ・グラウンド』の効果で、手札から『サンライズ』フィールド魔法を2枚捨てることで、デッキからカードを2枚ドローするか、任意の『サンライズ』カード1枚を手札に加えるか、どちらかを選べる! 私はクリスタルヤードとルーフトップをコストに、永続魔法『サンライズ・パルスガン』を手札に!」
デッキから排出されたカードをそのまま発動。
「『サンライズ・パルスガン』を発動!」
歩佳の手に、結晶を削ってできたような拳銃が出現する。
「最後に、サンライズ・グラウンドを墓地に送って、フィールド魔法張り替え! 『エレクトロフェザー・テリトリー』を発動。これで準備完了だよ!」
サンライズ・コンバークル・デイドリーム。
サンライズ・レールガンナー/バスター。
サンライズ・パルスガン。
歩佳の1ターンで、ライダー相手にする展開としては、ほぼ最善だろう。
「では、次は僕だ」
デュオが手札のカードを使い始めた。
「永続魔法、『メルトライン・リサーチ』を発動。発動時の効果処理で、デッキから『メルトライン』罠カードを1枚、手札に加える。『メルトライン・アイアンヴェイン』だ。これを、そのまま伏せる」
サーチしたカードだが、すぐに伏せられる。
「リサーチの効果により、変身中なら、僕は1ターンに1度、『メルトライン』永続罠を伏せたターンに発動できる」
「伏せたターンでも発動できる効果……」
「発動コストとして手札1枚を墓地に送り、永続罠『メルトライン・アイアンヴェイン』を発動。守備力2000の通常モンスターとして、フィールドに特殊召喚」
メルトライン・アイアンヴェイン DEF2000 ☆4
出現したのは、『鉱脈』そのものが人の形になったようなモンスターだ。
腕を重ねて防御態勢を取っている。
「メルトライン……って、何?」
歩佳は首を傾げた。
「聞いたことがある。エクフェが開発したテーマなんだけど、やたらとリソースを投入することが求められるテーマだって」
「そんなデッキを、企業対抗戦に持ってきてるってこと?」
「ただ……メルトラインの融合モンスターはどれも強力で、着地点が非常に強いから、一定のコアなファンがついてるみたい」
「ほう……」
歩佳と炎示はメルトラインの情報を共有している。
歩佳は知らなかったようだが、炎示は知っていたようだ。
「続けよう。魔法カード、『メルトライン・ボーリング』を発動。手札1枚をコストに、自分フィールドの罠カードとしても扱うモンスター1体をリリースすることで、『メルトライントークン』1体を特殊召喚する」
人型モンスターがフィールドから消えた。
そして現れたのは、鉄鉱石だけを取り出したようなモンスターだ。
鉱脈から功績を掘り当てた。と言ったところだろう。
メルトライントークン ATK0 ☆1
「トークンが出てきた!」
「でも、レベル1のトークン1体を出したのに、もう、残り手札1枚……」
「魔法カード『ハーモニー・リベンジ』を発動。墓地の『ハーモニー』魔法カード1枚を手札に加える。変身中なら2枚だ」
「ハーモニー?」
「イノムラーが作ってる協力プレイテーマだ」
「僕は手札コストにした『ハーモニー・トレード』と『ハーモニー・クロス』を手札に加える。ただし、相手がデッキからカードを2枚ドローする代わりに、自分は1枚、デッキからドローできる。僕はその『相手』に、ツヴァイを宣言する」
「おおっ!?」
「私は2枚ドロー」
「僕も1枚ドローだ」
これで、デュオの手札が3枚に。
「そして、『ハーモニー・トレード』を発動。手札の『ハーモニー』カード1枚を相手に渡すことで、デッキからカードを2枚ドローできる。僕は『ハーモニー・クロス』をツヴァイに渡して2枚ドローだが、変身中なら3枚ドローできる」
どんどんリソースを補充していく。
「魔法カード『メルトライン・メルティング』を発動。手札1枚を捨てて、自分フィールドの『メルトライントークン』1体をリリースすることで、デッキから『メルトライン』効果モンスターを特殊召喚する」
フィールドに溶鉱炉が出現。
トークンが投入されて、製錬されていく。
「『メルトライン・アイアン・モルテン』を特殊召喚」
メルトライン・アイアン・モルテン ATK2000 ☆4
フィールドに出てきたのは、溶けてドロドロになりながらも、人の形を保つモンスター。
「
「アイアン・モルテンは、通常召喚出来ず、『メルトライン・メルティング』の効果でのみ特殊召喚できるモンスターだ。さらに、『ハーモニー・ギフト』を発動。特殊召喚したアイアン・モルテンを、ツヴァイのフィールドに」
「えぇ!?」
「変身しているなら、追加効果でデッキから『ハーモニー』カードを1枚、手札に加える。僕は『ハーモニー・プロジェクト』を手札に加えて発動。カード名を宣言して発動するカードだ。『メルトラインフレーム・ゴーレムスペース』を宣言。相手がデッキに入れているなら、それを手札に加えて、僕自身はカードを1枚ドローできる」
「私のデッキには『メルトラインフレーム・ゴーレムスペース』がある。これを手札に」
「ふむ……僕は準備完了だ」
「完了してるように見えない……」
手札は2枚。
フィールドには、永続魔法『メルトライン・リサーチ』がある。
ただ、モンスターはいない。
しかし……。
「最後に私だ」
ツヴァイの番だ。
彼の手札は、初期手札5枚に加えて、『ハーモニー・リベンジ』の2枚ドロー、『ハーモニー・トレード』によって『ハーモニー・クロス』を渡されて、『ハーモニー・プロジェクト』によって『メルトラインフレーム・ゴーレムスペース』が手札に加わった。
合計、9枚。
「私は、私の『ハーモニー・クロス』を発動。これは他の『ハーモニー』カード1枚をコストに発動できるカードだ。私は、デュオからもらった『ハーモニー・クロス』を捨てることで発動する」
「えぇ!?」
「本来ならデッキから2枚ドローする効果だが、このカードを発動するために捨てた『ハーモニー』カードが相手の墓地に捨てられたなら、ドローできるカードは3枚になる」
「どういうこと?」
歩佳は首を傾げた。
「手札のカードを墓地に送る場合、もともとの持ち主の墓地に送られる。そのルールを利用した効果になってるってことか」
「なるほど!」
ツヴァイは3枚ドロー。
これで、手札10枚だ。
「私も『メルトライン・リサーチ』を発動だ。デッキから『メルトライン・アイアンヴェイン』を手札に加えて、これを伏せる。そのまま、手札1枚をコストに、発動」
メルトライン・アイアンヴェイン DEF2000 ☆4
「え……」
「続けて、『メルトライン・ボーリング』を発動。手札1枚をコストに、自分フィールドの罠カードとしても扱うモンスター1体をリリースすることで、『メルトライントークン』1体を特殊召喚する」
メルトライントークン ATK0 ☆1
「お、同じ?」
「『メルトライン・メルティング』を発動。手札1枚を捨てて、自分フィールドの『メルトライントークン』1体をリリースし、デッキから『メルトライン・アイアン・モルテン』を特殊召喚」
メルトライン・アイアン・モルテン ATK2000 ☆4
「こ、これで、フィールドに溶融鉄が2体……」
「手札2枚をコストに、フィールド魔法『メルトラインフレーム・ゴーレムスペース』を発動」
「フィールド魔法を発動するのに、手札を2枚も使うの!?」
何度もフィールド魔法を使いまくる歩佳からすると考えられない価値観だ。
ツヴァイの手札は10枚まで増えたのに、もう、彼は1枚しか持っていない。
「そして……『融合』を発動」
フィールドにフレームが出現する。
溶融鉄を流し込むためのフレームだろう。
「召喚条件は、『フィールドの、「メルトライン」効果モンスター2体』だ。フィールドの、『メルトライン・アイアン・モルテン』2体を素材とする」
フレームの中に、溶融鉄が流れていく。
「融合召喚! 現れろ、レベル8、『メルトライン・メガトンハンマー』!」
ツヴァイの手に、大槌が出現した。
メルトライン・メガトンハンマー ATK2800 ☆8
「こ……こんなに、リソースを使って出したモンスター……一体、どれくらい強いんだろう」
「わからん」
「しっかし、融合かぁ、手札融合とかできないのかな?」
「さっきチラッと言ってた気もするが、『メルトライン』融合モンスターは、『フィールドのメルトライン効果モンスター』を素材に指定する上に、『メルトラインフレーム』カードがフィールドに存在しないと出せないテキストになってる」
「うほぉ……」
「メルトライン効果モンスターはどれも通常召喚出来ない特殊召喚モンスター。メルトラインフレームは、あのフィールド魔法でしか用意できない名称だ」
「ズルはできないってことか。罠モンスターも『通常モンスターとしてフィールドに出てくる』っていうのが徹底してる」
歩佳は頷きつつ、パルスガンを構える。
「私の準備は終わりだ。始めようか」
ツヴァイが、ハンマーを構えなおした。
『全員、準備が終わりました! それでは、2対2のタッグバトル、スタートです!』
アナウンサーの宣言を聞いて、ツヴァイはハンマーを手に、炎示に向かって突撃した。
「……」
炎示はデュアフレイム……双剣を手に、自らも突進した。
彼のフィールドにいる『ライズレギオン・ファイヤーバード』は、自分フィールドのライズレギオンは『戦闘力』が上がる。
攻撃力でも守備力でもない、ライダーバトルの語彙だ。
ファイヤーバード自身もそうだが、双剣のデュアフレイムもライズレギオンのため、切れ味は上がる。
「おらっ!」
ツヴァイがハンマーを振り下ろす。
ネストはそれを避けて……。
「無駄だ!」
「えっ……がっ!?」
地面に振り下ろされたハンマー。
地面に叩き込まれた衝撃が反響(?)して、ネストに襲い掛かる。
そのまま、ネストは耐えられず、吹っ飛んでごろごろ転がった。
「んなっ!? ライダーから、当ててもない一撃でダウンを取った!?」
歩佳は驚愕した。
「ダウンだ。ドロー」
ツヴァイはドローする。
0枚だった手札が1枚になった。
「チッ……」
ネストは立ち上がる……が、少し、ふらついている。
「大丈夫。炎示君」
「衝撃で吹っ飛ばすだけじゃないな。なんかちょっと、スーツがおかしい」
それでも、ネストはしっかり、双剣を構える。
「ああいう武器って、当たらなければ意味がないってことが多いけど、当たらなくても影響があるんだねぇ」
「どうする? 追加で壁を出して、衝撃を遮断するって言うのは……」
「無理だと思うよ。私が出す壁は、あんな破壊力の敵を前提としてないからね」
どうしたものかなー、と思いながらも、歩佳はパルスガンを構える。
「とりあえず、戦いながら考えよっか」
歩佳はパルスガンを向けると、トリガーを引いて、電撃弾を放った。
ツヴァイの対応だが……ハンマーの柄頭で地面をトンッと叩くと、衝撃波が発生して、電撃弾が全て霧散した。
「ウッソだろオイ……」
炎示は呆れた。
「……コンちゃん!」
『きゅうっ!』
コンちゃんの頭の宝石が光った。
同時に、歩佳はトリガーを引く。
電撃弾が放たれて……ツヴァイは再度、柄頭でトンッと地面を叩いた。
同時に衝撃波が発生し、それにあたる前に、電撃弾が四方八方に分裂する。
そのまま追尾弾のように、ツヴァイの体に当たった。
「おおっ! ……えっ?」
炎示は命中して喜んだが……ツヴァイは、あまりにも自然体だ。
「あのハンマー、なんかオーラとかバリアとか出してるのかな。電撃が全然通らないね」
「じゃあどうするんだよ!」
「ライダーとして、攻撃力も防御力もトチ狂った状態ってことだよね。いやぁ、なんというか、あのハンマー一本あれば、ネジ怪人くらい勝てそうな気もする」
「上位怪人相手にアレ一本で勝てそうなのは確かに凄いけど、展開の途中で『激流葬』に流されて終わりだろ! 怪人との戦いでは待ってくれねえんだぞ!」
「……確かに!」
ただでさえ工程が長い。
しかも、リソースをかなり投じる必要があるので、展開以外のことをやっている暇がない。
ネジ怪人は『激流葬』を連打できる構築になっていると考えられるので、罠モンスター、トークン、効果モンスターといった展開の中で流されて終わりだ。
「まぁ、いろいろ試してみるしかないし、試してみたいこともあるけどね」
「ほう?」
「というか、あんまり襲ってこないんだね。ツヴァイさん」
「あのハンマーに自信があるだろうし、俺たちが作戦を考えても上から叩き潰せばいいからな」
「それはそうか。デュオさんも襲ってこないからねぇ」
「……そりゃそうだろ。デュオの方はほぼ丸腰でこっちは完全武装。ダウンを取れないんだから手札補充はできない。ツヴァイの方が俺たちからダウンを取って、『ハーモニー』カードでデュオの手札を補充してから戦闘に参加してくるはずだ」
「賢いね」
「アンタが共闘に関するノウハウが無さ過ぎるんだよ!」
「悪いか!?」
「悪い!」
「ごめん!」
「よろしい!」
炎示が大きく頷いた。
その様子は、控室のモニターからも見えていた。
「……あのバカ二人は一体何をやってるんだろう」
「フフッ、炎示君。楽しそうですね」
「あの、彼女として良いの? なんか歩佳と仲がよさそうだけど」
「他のカップルの常識は知りませんが、炎示君は私に一途なのは知ってます。それに、あんな感じの遠慮のない先輩が一人か二人いるくらいが、炎示君にとってもちょうどいいので」
「本当に14歳? なんかすごく、余裕がある」
「私はただ、パートナーの愛情を確信できるだけです」
「なるほど、世の中のカップルの常識を『知らん』と言い切れるわけだ」
青葉は呆れた。
「……しかし、歩佳と炎示はどうやって倒すんだろうか」
「想定より強いですねぇ。あのハンマー」
「まぁ……その、アレだよね」
「そう、アレです」
二人は頷いた。
「「勝つのは、ソーラーとネストだ」」
モニターの奥で、炎示がデュアフレイムを構えた。
「さて、とにかく俺はツッコんでくるよ。先輩は何か考えてて」
「わかった! 援護射撃は任せてね」
炎示はツヴァイに向かって突撃した。
「……先ほど吹き飛ばしたのに、また向かってこれるのは勇敢だな。本当に14歳か?」
「この戦い。控室で俺の彼女が見てるんだよ。カッコ悪いところは見せられねえからな!」
「そういうことか。いいだろう。ただ……それだけで勝てるほど、『メルトライン』は甘くない」
ツヴァイはハンマーを振りかぶった。
次の瞬間、炎示は左手の剣をハンマーに向かって投げる。
振りかぶったところに剣が投げられて、ツヴァイの体勢が少し崩れる。
「おらっ!」
そのまま急接近して、右手の剣で一閃。
ツヴァイにダメージを与えた。
「よしっ」
「ぐっ……っ!」
ツヴァイはそのまま、ハンマーを振り下ろす。
炎示は、ハンマーに弾かれて戻ってきた剣を左手で掴みつつ、すぐに離れた。
だが、ハンマーは振り下ろされ……。
「うおおっ!」
ツヴァイの目元に電撃弾がはじけた。
やはりオーラかバリアがあるのか、ダメージが完全に通っているわけではないようだ。
しかし、目元で電気がはじけるのには、本能的な恐怖を感じてしまうもの。
その隙に、炎示は横に飛んだ。
ツヴァイはムリヤリにハンマーを振り下ろしたが、ハズレ。
その後で発生した衝撃波も、どうやら前方に扇状で広がるタイプのようで、横に飛んだ炎示には当たらなかった。
「よし! いい感じだ!」
炎示は歩佳を見る。
とてもいいタイミングで射撃が飛んできたので礼を言おうとして……。
「えーと、メルトライン、倒し方、と」
右手でパルスガンを握って、左手でスマホを弄っている。
おまけに、コンちゃんは歩佳の肩に乗って、一緒にスマホを見ている。
「何スマホで検索してんだ!?」
「だって考えても勝ち方がわからないんだもん!」
「良い感じにさっき連携できてたじゃん!」
「あんなの有効打に入らないよ! ダウン取れてないし!」
「それはそうだけど!」
「あと検索したら、『出される前に勝て』としか書かれてなかったよ!」
「当たり前だ!」
グダグダである。
「はぁ……」
「フフッ、炎示君」
「なんだよ」
「……桃実ちゃんには、感謝するんだよ?」
デュエル前、桃実は炎示にカードを渡していた。
そして、炎示はデッキにそのまま入れていた。
「え、見てないよな」
「わざわざ持ってくるんだよ? 調べてから持ってきたと思わない?」
「いや、調べてもわからなかったんだけど。だって、イノムラーのデュオとツヴァイって、『ハーモニー』は共通してるけど、何に組み込むのかは毎回変えてるし」
「だよねー。私もそういう事情があるから完全に出たとこ勝負だと思ってた」
歩佳はパルスガンを構えなおす。
「さて、通常の電撃弾を拡散させたらダメだったけど、こっちはどうかな?」
パルスガンは、『自分フィールドのサンライズ兵器の武装情報を再現する』と言う効果がある。
レールガンナー/バスターが、砲身を光らせた。
「いくよ!」
パルスガンのトリガーを引く。
レールガンナーとリンクが確立し、高威力の電撃弾が放たれた。
「!」
ツヴァイは柄頭で地面を突く。
衝撃波が発生し……電撃弾が拡散したことで当たらない。
「なっ……」
拡散した高威力電撃弾が、そのまま追尾弾のようにツヴァイに襲い掛かる。
「ぐっ、おおっ……」
明らかに、ダメージが通っている。
「なるほど、流石にこの威力は無傷じゃないか」
メガトンハンマーを装備していることによって発生するオーラバリア。
通常弾はこのバリアで霧散して止まってしまう。
ただ、レールガンナー/バスターを再現した弾丸なら、単なるオーラバリアではダメージが入る。
「炎示君。何か思うことはある?」
「ハンマーを地面にたたきつけた時と、柄頭を地面に当てた時に衝撃波が発生してる。おそらく変身効果として、『オーラによるバリア』と、『ハンマーのどこかを地面に当てた時に衝撃波を発生させる』の二つがあると考えればいい」
「そうみたいだね」
「で、衝撃波さえ発生させなければ、歩佳さんの電撃弾は通る」
炎示は双剣を構えた。
「なら、俺の役目ははっきりした。あのハンマーが地面に接触しないように立ち回る。そこを、歩佳さんが後ろから射撃で攻撃を通す」
「よしよし、良い感じだね」
歩佳はパルスガンの銃口を、デュアフレイムに向けて、トリガーを引く。
電撃弾が放たれて、双剣に当たった。
「うおおっ! ……おっ?」
「『エレクトロフェザー・テリトリー』の効果だよ。変身中なら、鳥獣族モンスターに電撃を浴びせると、戦闘力が上がる」
炎が吹き荒れると同時に、バチバチと放電している。
「デュアフレイムは双剣だけど鳥獣族だからか。しかも、デイドリームと、レールガンナー/バスターの力が入ってるのか? フィールド魔法一枚の効果にしては戦闘力がスゲェ」
「そういうこと。それじゃ、行くよ」
「よし!」
炎示は双剣を構えて突撃した。
「……まさか。もう、ここまで解き明かすとはな」
「ああ、なかなかの洞察力だ。メガトンハンマーのテキストには、もっと抽象的なことが書かれているが、それを読み解くとは……」
ツヴァイが驚いて、デュオも頷いた。
「ただ、勝ちは譲らん」
ハンマーを構えなおす。
そのまま、横に薙ぎ払った。
「うおおっ!」
「振り下ろすだけがハンマーではない」
「それはそうだが、俺にばかり注目してるってことでもある!」
電撃弾が、ツヴァイに襲い掛かる。
ハンマーを横に振った状態から、即座に地面には当てられない。
「ぐっ、うおおっ」
「おらっ!」
炎示はツヴァイの腹に蹴りを叩き込んだ。
「ぐっ……」
ツヴァイは蹴り飛ばされて、地面を転がった。
「ダウンだ。ドロー!」
炎示は1枚ドロー。
「これで名称ターン1が復活する。俺はデュアフレイムの素材をもう一つ使って、ライズレギオン魔法、『ライズレギオン・アグリケイト』を手札に!」
「それが……」
「ああ、桃実から渡されたカードだ! ただ、先に……墓地のファルコとホークの効果発動! フィールドに特殊召喚!」
ライズレギオン・ファルコ ATK1700 ☆4
ライズレギオン・ホーク ATK1700 ☆4
「さらに、手札から『ライズレギオン・カナリー』を通常召喚!」
ライズレギオン・カナリー ATK1000 ☆4
「3体で、オーバーレイ! 現れろ。『ライズレギオン・ネストバード』!」
暖かい炎を纏った鳥が、炎示のフィールドに出現。
ライズレギオン・ネストバード ATK2500 ★4
「こ、これが……」
「俺のエースモンスターだ! ネストバードの効果! 墓地のライズレギオン1種類につき、相手モンスター1体の攻撃力を500下げる! ファルコとホークとスワロウだから、1500だ!」
ネストバードが鳴いた。
「ぐっ……」
相手モンスターの攻撃力を下げる効果。
ただし……。
「届かなければ、下げられない!」
柄頭を地面に突――
「させるか!」
炎示は左手の剣を投げて、柄頭と地面の間に滑り込ませた。
ガキンッ! と音がして、衝撃波は発生しない。
「なにっ!?」
メルトライン・メガトンハンマー ATK2800→1300
下がったのを見て、炎示は突撃。
ツヴァイはハンマーを振り上げて、そのまま振り下ろす。
炎示は地面の剣を拾いながらも、剣を交差させてハンマーを受け止めた。
「なっ……」
「格闘中は攻撃力なんて『ちょっとした目安』にしかならねえけど、無関係じゃない!」
そのままハンマーに競り勝って、はじき返した。
「ぐっ……うおおっ!」
そこに、歩佳が放った電撃弾が炸裂した。
「く、クソッ……メルトラインの融合モンスターを出して、ここまで……」
ツヴァイが怯んだ。
炎示は、ベルトのスイッチを押した。
その右足に、炎が集まっていく。
『LETHAL PHASE』
「お、炎示君、やる気だね!」
歩佳もベルトのスイッチを押す。
右足からバチバチと放電が始まった。
『LETHAL PHASE』
「く、クソッ……」
ふらついている間に、歩佳と炎示は飛んだ。
そのまま、足を向けてツヴァイに接近する。
「負けるかああああああっ!」
ツヴァイはスイッチを押す。
『LETHAL PHASE』
ハンマーが輝いて、地面に接触していないのに、衝撃波のようなものが発生している。
「うおおおおおっ!」
二人のライダーキックを撃墜させるために、ハンマーを振り上げる。
放たれた衝撃波が、二人のライダーキックと衝突した。
「うおおおおっ!」
「うぐぐ、足がもげそうなんだけど!?」
メルトライン・メガトンハンマーを使ったリーサルフェイズ。
普通に振っているだけでとても強かったのに、その『必殺技』だ。
弱いわけがない。
「というわけで、『ライズレギオン・アグリケイト』を発動!」
次の瞬間、デュアフレイム、ファイヤーバード、ネストバードの三体が炎となって、炎示の右足に集約されていく。
「コイツはリーサルフェイズ専用の変身効果を持ってるのさ!」
「ぐっ、おっ、な、なんだ、この威力は……」
ハンマーによる必殺の一撃を、押し込み始めた。
「いける! これはいけるよ!」
「おりゃああああああああああああああああっ!」
歩佳と炎示は叫んだ。
そして、二人のライダーキックは、メルトライン・メガトンハンマーに競り勝って、本人にライダーキックを叩き込んだ。
「ぐあああああああああああああああああああああああっ!」
ツヴァイが吹き飛んで、地面を転がった。
そのまま変身が解除されて、フードマントをかぶった男が姿を現す。
『ツヴァイ選手! 変身が解除されました!』
……さて。
「え、デュオさん。まだ戦いますか?」
「……」
デュオの場には、永続魔法『メルトライン・リサーチ』が1枚。
手札は2枚。
これで、歩佳たちからダウンを取れるなら、話は変わるが……。
「大人しく降参させていただこう。見事だ。若きライダーたち」
デュオがデッキに手を添えた。
『決着うううううううううううううっ! メルトラインの融合モンスターの圧倒的強さもさることながら、空閑選手と群堂選手は打ち破りましたああああああああああああああああっ!』
「よっしゃあああっ! 大勝利いいいいっ!」
「テンション高いなこの人」
勝者。
空閑ソーラー専属、仮面ライダーソーラー。
&
塔野建設専属、仮面ライダーネスト。
「おおおお! 炎示君かっこいいいいっ!」
控室でモニターを見ながら桃実が感激している。
「勝つだろうとは思ってたけど……なんていうか、炎示君、思ったより戦闘IQが高いね」
青葉は感心した。
特に、柄頭を地面に接触させないために、剣を柄頭と地面の間に投げて滑り込ませたのは良い手段だ。
「技術的な意味で出来るのもすごいけど、あの場で必要な判断ができるのが凄い。やっぱり才能あるね。あの子」
「そうでしょう! 私の炎示君はとっても強いんですよ!」
桃実はとてもうれしそうだ。
「それにしても、ハイスコアシート、あの一番試合がちゃんと見れそうなところ……なんか妙な視線を感じるね」
「そうですね。炎示君の良さが伝わっているか、ちょっと怪しい雰囲気を感じます」
青葉と桃実は、やれやれ、と言った感じで、ハイスコアシートにいる『誰かさん』に呆れた様子であった。
「……思ったより、いろいろ知ってるんだね。桃実」
「青葉さんもいろいろ知ってますね。でも、ハイスコアシートのことは推測ですよ? 板代積夜社長の『空閑ソーラーへの執着』は、単純に考えれば導き出せます」
「そうだねぇ……まっ、その隣にいるであろう女が、何を考えてるかはわからないけどね」
どのみち。
二人の感情が、『呆れ』であることは、間違いないらしい。