白百合眼のユナリア 〜狂科学者の歪な揺り籠〜 作:いちご大福ニャンコ
むむむ…
そこは実験素材たちが悲鳴を上げ、肉体を削ぎ落とされる地獄。しかし、ユナリアスが与えられたのは、部屋の中央に鎮座する、透明な巨大な硝子の円筒の中だった。
「……ん」
ユナリアスは、硝子越しにザエルアポロを見つめていた。彼女の首や手首には、霊圧を拘束するための冷たい金属の枷が嵌められている。ザエルアポロは彼女を連れ帰ってからというもの、言葉を交わすこともなく、ただ狂ったようにモニターの数値を弄り、彼女の『真相視』のデータを引き出していた。
それは「保護」とは名ばかりの、完全な監禁だった。彼はユナリアスを外の連中に見せるつもりは毛頭なかった。自分の不完全さを見抜いたこの『眼』を、誰の目にも触れさせず、自分だけの秘密の部屋に閉じ込めておきたかったのだ。
「フン……。やはり君の眼の神経網は、脳の霊子構造そのものを変質させているね」
数日ぶりに、ザエルアポロが硝子の檻の前に歩み寄ってきた。その目は、珍しい標本を見るように冷酷で、しかしその奥には、彼女を二度とここから出さないというドロドロとした独占欲が渦巻いている。
「さて、実験を始めようか。今のままの君の仮面は実に不細工だ。私の研究室に置く以上、私の美意識にそぐわないものは許されない」
ザエルアポロが手元のスイッチを押すと、硝子の檻が開き、ユナリアスの身体が機械的に手術台へと固定された。彼が手にしたのは、霊子を極限まで硬質化させた、鋭利なメスだった。
「……いたいの?」ユナリアスは拘束されたまま、感情のない声で尋ねた。
「痛い? ハハ、当然だろう! 麻酔など使えば、君の脳の霊圧分泌が鈍る。私の手で、君の顔の仮面を『再構築』してあげるんだ。光栄に思うといい」
ザエルアポロのメスが、躊躇なくユナリアスの右顔面を覆う骨の仮面に突き立てられた。
パキィ、と鈍い音が響き、激痛がユウナの脳を走る。しかし、ユナリアスは叫ばなかった。ただ、痛みに耐えかねてわずかに身体を震わせながらも、その左目と、暴かれつつある右目で、ザエルアポロの胸の奥をじっと見つめ続けた。
彼の胸の奥。そこには、彼女の肉体を痛めつけていることへの加虐心だけではない、奇妙な色彩が混ざり始めていた。
(……きもちわるい、いろ。……でも、すごく、あったかい)
それは、彼自身も気づいていない、彼女という「最高傑作」を自分好みの形に作り変えることへの、狂気的な悦び——独自の「恋愛感情」の萌芽だった。
「くっ、くはは! 本当に気味の悪い子だ! この痛みの最中でさえ、君は私を『視て』いるのかい!」
ザエルアポロは狂ったように笑いながら、驚異的な精密さでメスを動かした。虫眼鏡のようだった粗悪な仮面の穴が、削られ、磨かれ、変形していく。
数時間に及ぶ凄惨な施術が終わった時、ユナリアスの顔には、ザエルアポロの眼鏡のデザインと美しく対になるような、洗練された「片眼鏡」の形をした仮面が完成していた。それは、彼女がザエルアポロの所有物になったことを示す、絶対的な刻印だった。
ザエルアポロは、血に塗れたユナリアスの顔を、愛おしそうに、しかし乱暴に指先で拭った。
「完璧だ……。これこそ私の部屋に相応しい。これからは君を、私の最高傑作の観測者——『ユナリア』と呼ぼう」
本名を奪い、自分だけの愛称を刻みつける。そのドロドロとした執着の色彩を、ユナリアスは新しいモノクルの奥から見つめ、小さく息を吐いた。
「……ゆなりあ。……ん。……すき」
「黙れ、実験素材が私を安易に好むな」とザエルアポロは冷たく突き放したが、彼の心臓は、これまでになく激しく不規則なリズムを刻んでいた。|
なんか、虚っぽくない名前だなと思い変えました
ルピ、これでいいのかな…?
追記:よっしゃできた!