Fate/sn×銀英伝クロスを考えてみた   作:白詰草

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35:食卓に英雄譚

 凛も、どこかでそれを感じていたのかもしれない。並べられた色とりどりの料理は、豪語に恥じぬ出来栄えだった。

 

 泡立てられた卵白が、朧ろに浮かぶコーンスープ。ホタテの貝柱と花形の人参が添えられた白菜の豆乳クリーム煮。翡翠色の青梗菜の炒め物を添えられた海老のチリソース煮は、紅橙色が目に鮮やかに、香味野菜の効いたソースが嗅覚をも魅了する。

 

 これらを引き立てて調和させる、圧力鍋で炊いた純白のご飯は、艶やかな光沢を甘い香りの湯気が飾っていた。

 

「うわあ、これは素晴らしいご馳走だね。いただきます」

 

 一礼すると、アーチャーは食事に手をつけ、漆黒の目を丸くした。

 

「本当にとっても美味しいなあ! マダム・キャゼルヌに匹敵するよ。 

 すごいよ、ミス・パーフェクトってのも頷ける……」

 

 賞賛の言葉に、凛は誇らしげに笑った。

 

「わたしが本気を出したら、もっと凄いんだから。

 士郎じゃないけど、今日は時間のかからないメニューだもの」

 

「いや、君はお嬢様だから、てっきりこういうことは苦手だと思ってたんだ。

 私の妻も、あんまり得意じゃなくてね。……挟む物以外は。

 あ、失敗するだけで、まずいわけじゃないんだよ、うん。

 習ったら、ちゃんと上達したんだ。

 達人になるには、ちょっと時間が足りなかったけど」

 

 妻への弁護を忘れない、心優しい夫だった。

 

「アーチャーの奥さんってお嬢様だったんだ?」

 

「一応、上官のお嬢さんということになるのかな。

 最初に会ったのは、彼女が14歳の頃のようだが、私はさっぱり覚えてないんだ。

 軍務でそれどころじゃなくって」

 

「すっごく、興味があるけど、食べてからにしましょ。

 中華って冷めると不味くなるんだから」

 

 ヤンは異論なく頷き、せっせと料理に箸を伸ばした。箸の使い方までとは、聖杯の加護はすごいものがある。それよりも、この料理の数々、これが魔法じゃないだろうか。

確実に人を幸せにしてくれる。

 

 たしか、この時代の人の言葉ではなかったか。『本当の正義の味方は、みんなのお腹を一杯にしてくれる人だ』これこそが真理にして至言だ。

 

 皿の上がほぼ綺麗になるまで料理を堪能し、満足の笑みとともに、アーチャーは再びマスターを褒め称えた。

 

「でも、料理ができる人というのはすごい。尊敬するよ」

 

 彩りよく、季節の野菜を使って、味と栄養バランスも完璧だった。

 

「今日はあんたもいるしね。わたし一人だと、海鮮類が一回で使い切れないのよ。

 長持ちしないから、次の日も使うでしょ?

 料理を変えても、素材が一緒だと飽きちゃうのよね」

 

「自炊してるとは偉いなあ。私なんて独身の頃は外食ばっかりだった」

 

 ヤンの独身生活のルームメイトは、被保護者が揶揄したようにカビと埃だった。外食ばかりしていたので、生ゴミの類は出ないということだ。せいぜいが紅茶のティーバッグ。ゴミ出しするなら寝ていたかった。艦隊勤務が多くて、出撃すれば二、三か月は地上に帰らないという事情を加味しても、弁解の余地なく駄目な生活態度だった。

 

「男の人ってそうよね。女の子はカロリーや栄養を気にするの。

 珍しいのは士郎よ。よっぽど、おとうさんが何にもやらない人だったのね」

 

 黒い瞳が宙をさまよった。

 

「まことに面目ない」

 

「やっぱり、あんたも駄目な大人なのね……」

 

 アーチャーは、コーンスープを啜って表情を誤魔化した。

 

「それを言われると反論のしようもないんだが、

 私の父はまっとうな家庭人じゃなかったからなあ。

 人間、経験のないことはできないんだよ。

 衛宮切嗣という人も、当たり前の生活を知らない人に思える。

 一方、士郎君の中には、実のご両親が与えてくれた

 家庭生活がちゃんと生きているんだ。 

 凛のお母さんも、とても優しい、料理と家事の達人だったんだろう?」

 

 不意打ちだった。目頭が熱くなり、凛は眉間に力を入れて堪えた。

 

「や、やだ、急に何を言い出すのよ」

 

「私の母は、私が五歳の時に亡くなって、ほとんど覚えていない。

 父は再婚しなかった。男所帯の宇宙船暮らしじゃ、家事の出番はない。

 士官学校に入学して、寮生活のおかげで最低限はできるようになった。

 でも私は、挟む物さえ満足に作れないんだよ」

 

 言いさして、今度はジャスミンティーで口を潤す。  

 

「しかし、君や士郎君は違う。

 愛されて、充分に母の手を掛けられて、育った子だとすぐにわかる。

 そちらだって、大事な遺産なんだ。

 身に染みこんでいるから、自分ではわからない。

 でも、ちゃんと現れるんだよ。士郎君もわかってくれるといいんだが」

 

 遠く、懐かしむような眼差しだった。

 

「士郎のことを、ずいぶん気にするのね」

 

「士郎君はちょっと私の里子に似てるんだ。

 だが、私が気になるのは、養父の方だ。

 私が知る人物に、非常に方向性が似てる」

 

 凛の箸が止まった。とはいえ、二人とも皿の上はほとんど片付いている。

 

「誰よ」

 

「新銀河帝国皇帝、ラインハルト・フォン・ローエングラム」

 

 凛は息を飲み込んだ。

 

「士郎やイリヤのおとうさんと、あんたの敵だったっていう戦争の天才が!?

 いったいどこが似てるっていうのよ!」

 

「スケールは全く違うし、

 皇帝ラインハルトの方がまだしも現実的な手法を選んだがね」

 

「宇宙で戦争するほうが現実的ですって?」

 

 収まりの悪い黒髪が頷いた。

 

「ああ、私はそう思うよ。だが、長い話になる。ここを片付けてからにしよう。

 君の体力と魔力の回復のために、今日は早く休んだほうがいいからね」

 

 とても続きが気になるところなのだが。

 

「じゃあ、あんたもお皿を運ぶのぐらい手伝ってちょうだい。

 洗わなくていいから。今夜のお皿、景徳鎮なの。骨董じゃないけどね」

 

「……聞かなきゃよかったよ。緊張してきた」

 

 ヤンは細心の注意を払って、盆の上に皿を載せていった。これだと、一揃いで何万ディナールになることか。この世界で、2029年に全面核戦争が起きることはなさそうだが、千六百年先までまったき平和が続くとも思えない。でも、こうした文化遺産が灰燼と化すことがないように祈る。

 

 皿洗いと台所の片づけを済ませ、さらに入浴もしてから凛はベッドに座り込んだ。ナイトテーブルには凛用のハーブティーと、紅茶入りブランデーが一つずつ。アーチャーの話は、寝るばかりの状況で聞こうというわけである。

 

「さて、それでは、最初に私の敵国であった銀河帝国に、

 新王朝を打ち立てた、ラインハルト・フォン・ローエングラムの話をしよう」

 

 そう前置きして始まったのは、超巨星の物語。何度か語られた絶世の美青年が、至尊の座を占めるまでの道程である。

 

 かの青年は、白磁の肌に豪奢な金髪、蒼氷色の瞳をしていた。彼には、五歳上の姉がいた。肌と髪は弟と同じく、瞳の色は最上級のサファイアブルー。幼くして母を失くした彼にとって、姉であり、母である最愛の存在だったことだろう。

 

「お姉さんもやっぱり絶世の美人?」

 

「映像で見た限りだがね。

 専制国家で過ぎたる美貌は、女性に幸福をもたらさない。

 彼女が十五歳の時に、皇帝の寵姫として、後宮に入れられることになってしまった」

 

 彼ら姉弟の父は、妻を亡くしてから気力を失い、酒に溺れる毎日を送っていた。貴族といえども名ばかり、生活は苦しかったことだろう。だが、金を貰おうと貰うまいと、皇帝の命に逆らうことなどできないのだ。

 

「皇帝に逆らったら一族郎党処刑台だよ。

 父娘に選択の余地なんてない。

 だが、ただ一人、叛逆を胸に抱いたのがその弟だ。

 幸か不幸か、彼は天才だった。

 彼の幼馴染の親友は、その天才に追随できる才能があった。

 彼は親友と二人、軍に身を投じ、めきめきと出世した。

 姉の寵愛の余慶はあったにしろ、二十歳で上級大将まで達したんだからね」

 

 アーチャーが語ったのは、まさしく英雄譚と呼ぶにふさわしいものだった。

 

「すごい英雄じゃないの。その皇帝とますます似ているとは思えないんだけど」

 

「彼との攻防で、滅んだ母国のことを考えなきゃ、実に輝かしい人物だよ。

 だが、同時代に敵として生きるには、こんなに嫌な相手はいない。

 その為人(ひととなり)、戦いを嗜む。

 とても苛烈で美しい、青白い炎のような青年だった」

 

 しかし、アーチャーの口ぶりからは、嫌悪の念は感じられなかった。敵ではあったけれど、ヤン・ウェンリーは彼を心から憎むことはできなかった。数世紀に一人の、歴史上に輝く奇蹟のような存在に、畏敬の念さえ抱いたものだ。敵国の軍人として、正しくない考えなのだろうけれども。

 

 しかし、ラインハルトは専制国家で軍事の実権を握った者にふさわしく、 ヤン・ウェンリーには絶対にできない戦略の数々を行った。例えば、同盟軍の帝国領逆進攻の際の焦土作戦。

 

「こちらの進軍ルート上の、辺境惑星の物資を引き上げての焦土作戦をやられた。 

 専制政治からの解放を謳っている手前、食料を放出しないわけにはいかなかった。

 そして飢えたところで逆襲された」

 

 三千万人が出撃し、二千万人が還らなかったと 淡々と語るアーチャーに凛は言葉を失った。ぼろぼろになったアーチャーの国の軍。さらに、帝国の旧王朝の皇帝が病死した。

 

 死去したフリードリヒ四世は後継者を定めなかった。彼と、ある侯爵が男子の孫を、別の大貴族二人が皇帝の孫にあたる彼らの娘二人を立てて、後継者争いの内乱に突入した。

 

「それに先駆けて、互いの捕虜の交換を行ったんだがね。

 その帰還者の一人を彼の操り人形に仕立てて、

 同盟で軍事クーデターを起こすように画策した。

 警戒していたが、予測よりあちらさんの手回しがよくて、

 見事に起こされてしまった。

 唯一、無傷だった第十一艦隊がクーデターに与したもんだから、

 私たちの艦隊が鎮定しなくちゃならなかった。

 私は二千万人を助けられず、百五十万人の同僚をこの手で殺した人間なんだよ」

 

 それはまた、宇宙を燃やす烈火への、凄絶な抵抗の物語でもあった。一千万人の敵を殺していると言うヤン・ウェンリーは、その主人公だったのだ。凛は言葉を失う。

 

「まあ、私のことは置いといてくれ。似てないか?

 言峰神父が語った衛宮切嗣の手法に」

 

 他のマスターを除くためにビルごと爆破し、婚約者を人質に取って、騙まし討ち同然に殺したと。

 

「衛宮切嗣の戦い方には、彼に重なる部分がある。そして能力もだ」

 

 年少から戦いに身を投じ、それに高い才覚を現す。半面、一般的な生活や感情の機微に疎い。

 

「皇帝ラインハルトは学校教育を受け、軍隊で生活もした。

 親友だったキルヒアイス元帥が、非常にできた人物なのも大きい。

 だが、切嗣氏はどうだろうか。

 士郎君やイリヤ君への対応を見ると疑わしいんだ」

 

「士郎に何にも言わず、アインツベルンにも門前払いを食わされていたように?」

 

 凛の問い掛けに、アーチャーは頷いた。

 

「私が門前払いを食わされたのなら、アインツベルンに書状を送ったり、

 仲介人になれそうな相手を探す。敗戦の記録は重要なんだ。

 歴史の第一資料が、時の政権の公文書だというのは、

 敗者の記録が残るのは稀だからだよ」

 

「ああ、そうよね。うちだってそうだもの。

 お父様がどうしていたかもわからない」

 

 敗者の多くは死に至る。負けても生き残り、記録を残せるのは稀な幸運だ。黒髪の主従は、苦い思いをそれぞれの飲み物で流し込んだ。アーチャーは、紅茶の残るカップを置くと続けた。

 

「彼が把握していることを説明し、次回の改善策を提供するといえば、

 接触ぐらいはできるだろうに。

 イリヤ君のことを士郎君には言いにくいとか、

 理解が難しいと判断すれば、遺言状を残しておく。

 明日の話し合いで、そいつが見つかれば万々歳なんだがね」

 

「でも、士郎が十二歳の時のことよ。ちゃんと話せばある程度はわかるでしょう」

 

「士郎君の内面は、きっともっと幼いよ。

 君とは違うというか、この勝負では男は女に勝てない」

 

 それは凛も感じていたことだった。普通の男子高校生なら父親を愛称の『じいさん』とは呼ばない。せいぜい親父ぐらいのものだろう。

 

「だから藤村先生も心配してるんだわ。ご飯をたかるのは感心できないけど」

 

 これにヤンは苦笑して首を振った。

 

「でも、あのぐらい積極的に交流を強要されないと、

 サバイバーズ・ギルトの人間は負い目に思ってしまうよ。

 一般的には非常識だが、士郎君にとっては正解なんだ。

 迷惑だけど藤ねえだから仕方がない、って思えるぐらいでちょうどいいのさ。

 計算なくやっているのが、彼女のすごいところだよ」

 

「あんたはずいぶん高く評価してるけど、藤村先生のあれは素よ。

 学校でもあんな調子で、問題教員だもの」

 

 凛の言葉に、ヤンは苦笑を深くした。

 

「少年少女とうまくやれる大人ってのは、貴重な才能なんだよ。

 才能の有無と生活態度には、直接の関係はないのさ。私の部下にもいたもんだ。

 それ以上に、人間同士のそりがあうかどうかってのが重要でね。

 解毒剤が効くのは、一種類の毒だけだろう?」

 

「あんまり褒め言葉になってないんだけど、わかりやすいからまあいいわ。

 でも、ほんとによく知ってるわね」

 

「そんなことないさ。私自身、学生時代はずいぶんと助けられたよ。

 佐官になってからは、そういう勉強をさせられたけどね」

 

 凛は溜息をついた。戦時国家に生まれ、望まずとも軍人の道を歩んだ彼だから、士郎の精神的な問題を見抜き、穏やかな対応ができたのだ。彼の忠告によらず、士郎の異常性を指弾していたらどうなったことか。きっと、ムキになったに違いないのだ。ランサーにもライダーにも、ことによったらキャスターにも、突撃したかもしれない。

 

「だが、それでも限界があるんだ。

 君だって、近所の小学生に母親のように世話を焼いたりできないだろう」

 

「そりゃそうね。それを考えたら、たしかに大したものかもしれないわ。

 士郎と藤村先生のおかげで、桜も笑うようになったんだもの」

 

 中学校までの桜は表情が硬く、いかにも小心な様子で仲間はずれにされることも多かった。間桐慎二が、威張っている反動を受けていたせいもあるのだろうけれど。

 

「しかし、士郎君を見てると、切嗣氏の孤独な人物像が浮かんでくる。

 誰も信じられず、一人で全てを背負おうとしているかのようなね。

 皇帝ラインハルトでも、そんな無茶はやっていない。

 彼は戦略の天才だ。多勢の力を知っている人間だからだよ」

 

「教会のランサー戦みたいに?」

 

 頷いて、ヤンは紅茶入りブランデーを啜った。

 

「誰をも切り捨てず、全てを救う正義の味方になる夢よりも、

 腐敗した王朝を打倒し、敵国を征服し、宇宙の統一を目指すほうがずっと具体的だ。

 彼にはその才能と能力があったし、

 有能な将帥が揃った精強の軍という道具も揃ってる。

 衛宮切嗣の戦力は全体の七分の一。

 帝国軍と同盟軍の勢力比は、彼の巧みな戦略によって、最終的には十対三。

 さて、君ならどっちが勝つと踏む?」

 

「……皇帝ラインハルトだわ」

 

「そのとおりだ。君には確かに戦略のセンスがあるね。

 凛は、切嗣氏の行動から何を思うかな」

 

「『魔術師殺し』の暗殺者には、頼れる人間がいなかったってこと……?」

 

「あるいは、それを失ってしまったのか。

 皇帝ラインハルトが同盟征服に乗り出したのは、親友の死後のことだ。

 キルヒアイス元帥の死後まもない頃の作戦は、滅茶苦茶だったよ。

 懐の痛まない手段で、同盟軍を割った謀略の主とは思えない作戦を取ったりした」

 

 イリヤの母、アイリスフィール・フォン・アインツベルンは、優美で高貴な姫君のような女性だったとは、セイバーの証言である。徹底してセイバーを無視する夫との緩衝材として、随分と骨を折ってくれたそうだ。

 

 そんな妻を失い、愛娘を取り上げられた人間がどうなるか。アーチャーが示したのは、皇帝ラインハルトの父セバスティアンのことだった。彼は、娘が後宮入りしてすぐ、酒浸りが激しくなって死去したという。

 

「イリヤが入る予定だったアインツベルンの城は、ものすごい結界の工房なのよ。

 本国のアインツベルンはもっと厳重でしょう。

 そこに命を削るようにして、何度も行こうとしたのかしら」

 

「一方で、医者にかかった様子もないだろう。

 彼の絶望を感じると同時に、世俗の事に疎い人なのかなとも思うんだよ。

 士郎君のことを頼む、と依頼されれば後見人にはなれる。

 だがねえ、いくら近所の知り合いで、個人的にはいい人だからといって、

 私なら老齢のやくざの親分には頼まないよ。

 君のお父さんのように、社会的にきちんとした人に頼むさ」

 

 翡翠の瞳が丸くなった。

 

「うっそでしょ、だから、あの根性捻じ曲がった綺礼を!?」

 

「聖職者だし、自分よりも若い。

 君のお母さんとどうこうなる心配も低い。

 逆に、君が成人するまで健在な確率は高い。

 そして、遠坂の魔術を知っている。考えうる限り、最適な人選だと思うがね。

 お父さんは、君とお母さんのことも、充分に案じていたんだろう。

 当主が亡くなって、遺族が貧乏しないって、とっても大したことなんだよ」

 

「うー……うん……」

 

 遠坂時臣は、普通の父らしい父ではなかった。遊園地に連れて行ってくれたり、いっしょに公園で遊んだ記憶はない。

 

 戦いに赴く際、頭を撫でられたのが、覚えている限りでは最初で最後のスキンシップ。だが、それを恨んだことなどない。父は遠坂凛の誇りだった。

 

 そして、これからも。貴族的で、生粋の魔術師としての行動だが、あの日の凛には、根底にある自分への想いを感じ取れたから、父の言葉を守ってきた。

 

 凛はこれからも魔道を往くことだろう。経済的には間違ってると言われても、父の道を歩みたいと思う凛の考えは、間違いなんかじゃないのだから。


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