『プリンプリン物語』×『白鯨伝説』で『グノーシア』パロ 作:つるみ鎌太朗
3、
議論が終わってから、アルトコ出身の四人組とモンキーとで娯楽室を訪れた。
船の持ち主の趣味なのかレトロな筐体が多い。『わくわく! 人間牧場』を見つけたボンボンが目を輝かせてプレイしている。
プリンプリンはゲームには疎く、よくわからなかったが楽しそうにしているのを見て心が落ち着いた。
飲み物をもらおうと思い、自販機前までおもむく。
すると先客がルーレットの結果を待っているところだった。
クルクルと当たり外れの枠でライトが点滅し、最後に『はずれ』で止まる。
「キングクーロンでも当たった試しがないんだよな〜」
アトレがジュースの缶を取り出しつつボヤいていた。
先に買っていたのか、ラッキーも取り出し口に手を突っ込む。
「オレも、こういうのてんでダメで……」
二人のかたわらに手ぶらのデュウが控えている。
三人が自販機を後にしようと方向転換すると、ちょうどプリンプリンと向き合った。
「ワッ! びっくりした!」
アトレがコーラ缶を思わず落としそうになるのを、プリンプリンは受け取ってやろうとする。
だが先にヒラリと大きな手が伸び、流れる動作でキャッチされた。
「さんきゅ、デュウ」
受け取りつつ礼を述べるアトレ。
「プリンプリンさんたちも遊びにきたの?」
ラッキーが質問してきた。手にはオレンジジュースの缶。
かわいらしい選択にプリンプリンは思わず笑をこぼす。
「ええ。今日はすこし疲れてしまって……」
「わかる〜。きれいな女の子には、特にハードだったよな〜」
そう言って、あっという間に距離を詰めてきたのはアトレ。
プリンプリンが『え?』と言っていたら、横にいたモンキーがア押し返した。
「ナンだ、このサル! じゃまするな!」
喚くアトレを脇に追いやり、ラッキーが頭を下げてくる。
「ああ、気にしないで。いつもこうなんだ……」
「わたしなら大丈夫。
モンキーもいつまでもケンカしてないで、行きましょう」
プリンプリンが自販機前まで歩いていくと、なぜだかアトレがついてくる。
必然的にラッキーがお目付け役として後を追い、さらにデュウがしんがりを務めた。
結果として四人と一匹でジュース購入後のルーレットの行方を見届けることに。
先の二人と同じく、ルーレットの光が回転し、やがて速度をゆるめる。
そして……。
ピンピロンピッピー♪
軽快な音楽に合わせ、『もう一本』というパネルが景気よく点滅した。
「うわ〜、めちゃくちゃ運がいいな。
お姫さま! プリンセスさま!」
アトレがはしゃぎ、ついでに抱きつこうとするのをやはりモンキーが阻止する。
プリンプリンは紅茶缶を取り出すと、もう一本を何にするか『ウーン』と悩んだ。
ボンボンか、オサゲ。カセイジンに飲み物を選んであげてもいいけれど。
三人だから後の二人がかわいそうかな?
まだ遊んでいるみんなを振り返ろうとして、ふとデュウの手もとが目に入る。
あ、と思い、すぐにボタンを押した。
無難にお茶。出てきたボトルを掴んで、
「どうぞ」
とデュウへ手渡そうとする。
だが彼はふしぎそうにボトルを見下ろすだけで、一向に手を出そうとしない。
まさかお茶は苦手だったのか?
しかしラッキーが横から説明してくれた。
「あ、あの。デュウは飲みものは、飲まないんだ」
「え?」
よくわからずに首をかしげていたら、ニコニコ顔のアトレが間に入ってくる。
「機械だから、飲んだら調子が悪くなっちまうンだ。食べものもいらない」
そして勝手にボトルを横取りしていった。
虚しく差し出した手を見つめながら、プリンプリンは理解する。
「わたし、知らなくて。ごめんなさい」
謝ったがデュウからはただ視線を逸らされただけだった。
気まずい空気を読んで、ラッキーが部屋の隅にある飲食用テーブルを薦めてくる。
「アッ、あのさ! チョットお話しでもしようよ。せっかく議論じゃないところで顔合わせたし……」
そうして四人で着席した。
モンキーがテーブルの上で毛づくろいをしていると、ラッキーがその背を撫でる。
「噛まないんだ。えらいね」
「モンキーは、超能力者なの。とても賢いのよ。車だって運転できるんだから」
「えっ? サルなのに?」
アトレがモンキーの赤いお鼻をつついた。
嫌だったのか、モンキーが歯を剥き出しにして威嚇する。
「さっきから失礼なことばかりするからだよ」
ラッキーから軽く叱られるも肝心の本人は口をへの字にした。
「だって、ルゥアンからこっち、ドタバタだったじゃん。おれにも息抜きが必要なワケ。
きれいなおねいさまのアロマは疲れに効果がある」
「しょうがないなー」
ラッキーが肩をすくめる。
二人がキャッキャするのをプリンプリンは微笑ましく眺めていたが、その間、デュウはただモンキーをじーっと見ていただけだった。
本当に何も言わないし動かないので、ひとまず声をかけてみる。
「……触ります?」
返事がない。
困っているとモンキーが無邪気なフリをしてデュウの腕をかけのぼり、その肩に乗った。
「キキッキ」
顔を寄せる。
デュウの目線だけが向けられた。
「ナンでデュウには自分から行くんだよ」
モンキーのしっぽをアトレが触ろうとするが、直前でフイと方向を変えられる。
アトレは面白くなさそうにした。
プリンプリンが優しく聞いてやる。
「あのオウムさんは?」
「ルーシーは船長のところにいるよ」
ラッキーが答えてくれた。
「そうなのね」
プリンプリンは相づちを打ち、再びデュウへ目を向けた。
モンキーに両肩を陣取られ、ぴったりとくっつかれている。
改めて近くで見ると本当にきれいな顔立ちをしていた。
アンドロイドだから造り物だとしても、皮膚も人間とそう変わりがないし、すみれ色の瞳は潤んですらいるし、長いまつ毛も自然。
モンキーが丁寧に毛づくろいをしてやっている髪も絹のように柔らかそうで……。
(まるで美術館に置いてある彫刻が生きているみたいだわ)
しかし、そんな美しさとは裏腹に今日の議論ではトントンへ疑惑を吹っかけた。
その後は沈黙したものの、エイハブとの同盟締結……。
(あれが目的だったとしたら、とんでもない策士だけど……)
振り返っていたらアトレから指摘された。
「プリンプリンさん、デュウばっか見てる。ソイツ、色恋にキョーミゼロだぜ」
「えっ?」
声のしたほうをパッと向く。
そんなに見ていたのか。相手があまりにも反応しないから、つい無遠慮に鑑賞してしまっていた。
「そういうんじゃないわ……」
先ほど失礼をした手前、まさか『今日の議論の立ち振る舞いは意図的か?』と考え込んでいたなんて言えるハズもない。
いちおう否定はしてみるがアトレは『やれやれ』とばかりに頭の後ろで手を組んだ。
「顔がきれいだから街中歩いていても、おねいさんに声をかけられたりするんだけど、脅威のスルースキルでぜーんぶ跳ねのけるんだよなぁ」
普段からこういう態度なのはよくわかった。
プリンプリンが珍しく気圧されていると、モンキーがいきなりデュウの髪をくいっと引っ張る。
さすがにデュウも丁寧にその手を外した。
慌ててモンキーを引き離す。
「ごめんなさい。普段はこんなことしないんだけど……」
しょんぼりしていると、聞き馴染みのない声をかけられた。
「……問題ないよ」
驚いて顔を上げればデュウが引っ張られた髪を撫でつけている。
栗色のくせっ毛がきれいにほどけていくのを、プリンプリンが見つめていると後ろから呼びかけられた。
「プリンプリン! そいつと何してるんだ?」
ボンボンだった。
振り向けば怒って仁王立ちしている。
その両隣にオサゲ、カセイジンもいた。
「こんにちは!」
オサゲが元気よく挨拶する。
男三人組がやってくるとアトレはあからさまに態度が変わった。
「オス」
それだけ返して口を閉ざす。
ラッキーだけが、
「こんにちは」
と言った。
デュウは変わらず無言だった。
ピリついた空気に誰もが気づいている。
ボンボンがプリンプリンの隣に来ると、デュウへまっすぐに向かい合った。
「やいやいやいやいやいッ、プリンプリンに色目使ってるんじゃないぞ。
ちょっとカオが良いからってスカしちゃってさ! プリンプリンはおれの恋人なんだからな!!」
普段どおりの口上にオサゲも決まり文句を返す。
「ボンボン、言いすぎ」
ズッコケつつもめげないボンボン。
「〜〜ッ、でも親友として心配だッ!
ホラ、近づかないほうがいいよ。プリンプリン!
男はオオカミって昔の曲でも唄ってるじゃない!?」
めちゃくちゃな言い分に文字どおり立ち上がったのはこの男。
赤毛を逆立て、アトレがピシャリと言いつけた。
「さっきから好き勝手言ってくれちゃって。
グーゼン会ってからコッチ、デュウはひと言しか喋ってない。濡れ衣着せるなよな!
オオカミなのはソッチ……いや、弱い犬ほどよく吠えるって言うか。
おねいさん困らせてるのは、ポメラニアンのオマエだー!」
突然の小型犬扱いにボンボンが吠える。
「うるさいな! 子どもは引っ込んでろ!」
「いーや。そもそもおねいさんと良い仲になってたのはお・れ。
そっちこそ相手にされてないんだから潔く去りな!」
「な、なななな……」
ボンボンは言葉を詰まらせたが、次の瞬間、風船が弾けたかのようにまくし立てた。
「プリンプリンが、お前さんみたいな子どもを相手にするワケねえだろ!!
まったく、マセやがって! これだから最近の子どもは」
「オマエも子どもだろ!」
「お前さんよか大人だよ!」
「図体がデカいだけのお子ちゃま!」
「なにィィィィ~~、やるかァ!?」
「相手してやンよ!」
「よっしゃ、表出ろ!!」
カセイジンが仲裁に入った。
「ハイハイ、落ち着いてください。
ボーリョクはLeviから叱られますよ」
船を牛耳る擬知体の名前で脅され、ボンボンとアトレはわずかにトーンダウンした。
拳に代わる勝負案をボンボンが挙げる。
「ンじゃァ、『ニンボク』でショーブだ!」
「望むところだ!」
「ルールわかるか?」
ボンボンの理性の一声に、アトレが決めポーズで応じた。
「鯨捕り漁場付近のゲーセンで、並いる『ニンボク』プレイヤーを圧倒した『ゲームセンターあらし』たァ、おれのことよ!」
好敵手に対峙したかのごとく不敵に笑うボンボン。
「相手にとって不足ナシ、か……来いよ!」
そして何故か『わくわく! 人間牧場』の筐体のもとへ集う一同。
ボンボンの周りにはオサゲとカセイジン。アトレのそばにはラッキー。
卓上の立体映像で小さな人型のシルエットがゾロゾロと増えていく。
ボンボンと周りやアトレはキャッキャ言っているが、ラッキーは『へー』程度に見守っているだけのようだった。
そんな彼を見ながら自分だけ離れたベンチに腰かけていると、子守りを任せたようで忍びない。
……だが、それ以上に。
本当に何気なく座っただけなのだが。
(デュウと同じベンチに来てしまった……)
たまたま筐体の近くにあったのが、このベンチだった。プリンプリンは膝の上にモンキーを鎮座させている。
デュウはネズミ算式に増える人型を目で追い、いちおうは勝負の行く末を見守っているようだ。
コチラのことは特に気にしていない様子。
(何か話しかけてみようかしら……?)
しかしながら話題が浮かばない。
整った横顔と、投げ出された脚をチラチラ見比べていると、腰に何かが引っかかっているのを見つける。
今朝方吹いていた——。
「その笛、変わってますね」
当たり障りのない話のつもりだが、もし誰かの形見とかだったらどうしよう。
先ほどからことごとく失敗しているため心配になる。
だが思ったよりもアッサリ返事が返ってきた。
「元々の船……『レディウィスカー』の積荷から加工して作った」
「自作ですか?」
デュウが笛を見せてくれる。
吹き口とは反対側がそれぞれ長さの違う筒状になっており、これで音階を調節するようだ。
音孔は熱で溶かしたように黒っぽく変色している。
プリンプリンはモンキーと一緒に感心した。
「音楽はお好き?」
デュウは視線を若干巡らせたあと、
「そこまで詳しくはない。
ただ、笛を吹くと塞いだ気持ちが軽くなる気がする」
と答えてくれる。
これまで会話が続かなかったので、すこし嬉しくなった。
笛の輪郭を撫でる。
「わたしも、歌を唄うと励まされるわ。
祖国に届く気がするから……」
「祖国?」
尋ねられ、プリンプリンはとび色の瞳で彼の視線を受けとめた。
「わたしは生まれた国を知りません。赤ん坊の時に海でモンキーと拾われて……。
だから祖国を求めて旅をしていたの」
プリンプリンにとっては当たり前のことだった。
自分が何者なのか知りたい。そのために、生まれた場所を知りたい。
父や母に逢いたい。
だから自然と口に出た。
しかし、デュウはなぜだか驚いたようにプリンプリンを凝視している。
そんなに変なことを言っただろうか?
ゲームのBGMと、ボンボンたちがレバーをガチャガチャ動かす音が遠く聞こえる。
騒がしい周囲をよそに、デュウは視線を前方にゆっくりと戻し、小声で言った。
「……見つかとると、いいな……」
「ありがとう」
笛から手を離す。
ただ、まだその感触が手に残っていた。
手のひらを見つめながらねだる。
「ねえ、デュウ。笛を聴かせてもらえませんか?」
笛をしまおうとした手をデュウが止めた。
目は前を向けたまま、しばし考え込む素振りを見せてから——、
「……場所を移そう」
笛を持ち直して立ち上がる。
プリンプリンも腰を上げ、デュウに着いていった。
『ニンボク』の台からそう遠くない娯楽室の隅。
彼は立ち止まると背を壁にもたれさせ、笛に唇をそっと寄せた。
今朝とは別の曲。
さびしげな音色だが、そよ風のような優しさを感じた。
プリンプリンはじっと聴き入り、まぶたを閉じる。
モンキーも足元でお利口に大きな耳をピクピク動かしていた。
初めて聴いた曲なのに奇妙な親近感を覚える。
今朝も思っていた。彼の笛の音を聴くと、胸の奥の柔らかいところに触れられたような気がする。
ゲームの電子音が遠のき、ゆっくりと意識が笛の音色のみに溶けていく……。
だが力強く肩を引く手がプリンプリンを現実に引き戻した。
目を開ける。デュウも演奏をやめている。
「ふ・た・り・き・り・で……何してるンだよ!?」
すぐ後ろでボンボンが碧の目を吊り上げていた。
彼はプリンプリンを背に隠すとデュウへ拳を振り上げる。
「コラ! お前、やっぱりプリンプリンを狙ってたんだな……コソコソとロマンチックに笛なんか聴かせちゃって!
……それはおれの専売特許なのにィ!」
今にもデュウに掴みかかろうとするので、プリンプリンは慌ててボンボンのベストの裾を引っ張った。
「待って。わたしたち、そんなんじゃないのよ。
笛を吹いてほしいと頼んだのはわたしだし……」
「ナンだってェ!? おれだってギターを弾けるのに!?」
「そういう問題じゃないでしょうよ」
追いついたカセイジンがツッコミを入れる。
そばにアトレとラッキーも立っていた。
みんなが見ている中、ボンボンがデュウへ啖呵を切る。
「決闘だ、決闘! 勝負しろ!」
その言葉に慌てて飛び出してきたのはラッキー。
「やめなよ! デュウは戦闘もできるんだよ?」
「どゆこと?」
オサゲが疑問を口にすると、アトレから教えられる。
「ガキじゃ敵わないくらい、戦いに関してはプロってこと」
「わ、ボンボーン! ストップ、ストップ!」
オサゲもボンボンの前へ駆け出した。
ラッキーと一緒になだめ、拳は引っ込めさせたものの。
「じゃあ、『ニンボク』でどうだ!
ルールは教えてやる!」
なぜそうなる?
ポカンと口を開けていたら、デュウが壁から離れて姿勢を正す。
「……いい。先ほど見て、だいたいは理解した」
「えっ……」
言われてボンボンが目に見えてたじろいだ。
だがケンカを売った手前、後に引けないのか、
「……じゃ、じゃあ、一戦やるか!?
後で『知らなかった』なんて言っても聞かねえからな!」
威勢よく背を向ける。
デュウは一歩踏み出し、その背に続いた。
みんなで『ニンボク』の筐体まで戻る最中、アトレがデュウヘ一言。
「おれの仇をオマエに託す!」
おそらく今のボンボンは有頂天になっているに違いない。
今度はプリンプリンもボンボンの席のそばで見届けることにした。
最初こそ、なぜか気合いが入っていたボンボン。
だがゲームが進むうちにひたいに冷や汗が伝った。
ルールも知らないプリンプリンはとりあえずオサゲに聞いてみる。
「これ、今どうなっているの?」
「静かに! 今、ボンボンのほうも遺伝子改変がかなり進んでるんだ!」
「い、遺伝子?」
大仰な単語に戸惑っているとカセイジンがハッと息を飲むのが聞こえた。
「待ってください、デュウのほうに大きな異変が!」
「何ィ!?」
ボンボンがレバーを力任せに引くも、デュウの側では何やら巨大な円盤が浮いている。
カセイジンが悲痛な声をあげた。
「ああッ、来てしまいます……『気象衛星トリカブト』——!」
「何、それ?」
プリンプリンが何もわからぬまま卓上は更地になり、どうやら決着が着いたらしい。
ボンボンの拳が台に叩きつけられる。
「お、おれの……『超人類の拳』が……!」
向こう側ではアトレがデュウにしがみついていた。
♢
「見たか、これが鯨捕りの力だぜ!」
「いや、絶対に関係ない……」
アトレの得意げな宣言をラッキーが即座に否定した。
娯楽室を出て、通路で向き合う七人と一匹。
ボンボンはまだショックを引きずっているようだった。
「クソ……これで勝ったと思うなよ!」
「勝ったじゃないですか。デュウが」
「そういうことじゃねえ! ナンか、もっと、大事なことだよ!」
カセイジンの呆れ顔にボンボンが怒鳴りつける。
プリンプリンは困り果ててデュウの表情を窺った。
すこしだけ心を開いてくれたと思ったのに、また無表情に戻ってしまっている。
「ばいばーい! また明日ね!」
「キキッキャ」
オサゲとモンキーが手を振った。
ラッキーがにこやかに振り返し、アトレも手のひらをひらひらさせる。
明日になれば、またあの重苦しい議論が待っている。
プリンプリンは名残惜しくデュウの背中を見ていた。
すると……視線に気づいたのか顔だけを振り向かせる。
すみれ色の瞳は、どこか寂しげに揺れていた。
「プリンプリン」
呼ばれて足を止める。
二人の視線が完全に重なる。
デュウが目を細め、ぼそりと呟いた。
「……おれも、自分の故郷を知らない」
それだけ言い残し、また歩き出す。
だがプリンプリンはしばらく立ち止まったままだった。
だからなのかアルトコの三人組も周囲で右往左往している。
ボンボンがイライラしたように呟いた。
「何だよ。アンドロイドって、ロボットなんだろ?
そりゃ故郷も祖国もあったモンじゃないよ」
それは確かにそうだが。
プリンプリンはかぶりを降る。
「いいえ。きっと、デュウにもあるんだわ。
機械だとか、そんなこと関係なく……帰る場所があるはずなのよ……」
まばゆい灯りに照らされた廊下に彼らの背中はすでにない。
だがプリンプリンは、白々しいほどに続く通路をいつまでも見つめていた。
【Day2 Finish】
【コールドスリープ:ホワイトハット】
【残り11人】
【Who is the Gnosia?】
☆プリンプリンの航海日誌☆
【犠牲者】
ムッツ
……守護天使の護衛がつかなかったのか、初日に人間確定の留守番枠が襲われた。
これにより今回のグノーシアは確実に人間を減らす、堅実なタイプと思われる。
【ドクター診断】
・ワット
……グノーシア確定。
そのため、残りグノーシアは3体。
【エンジニア カミングアウト】
・デュウ
……診断を一度でも確実に成功させるため初日は沈黙したと説明。
『トントンはグノーシア』と主張。
・トントン
……デュウからグノーシア判定を受け、カウンターでカミングアウト。
『エイハブはグノーシア』と主張。
ただしカミングアウトが後手に回ったこと、またグノーシアだと指摘された後だったためにホワイトハットから『典型的な大嘘つきのパターン』と追及されてしまう。
⚠️どちらかが本物で、もう片方はモチロン偽者。
デュウが本物である場合、トントンは確実にグノーシア。
トントンが本物である場合、デュウはグノーシアかAC主義者。そしてトントンの診断相手であるエイハブが確実にグノーシアとなる。
【船員たち】
この中に、2〜3人グノーシアがいる。
守護天使も残っているかもしれない。
AC主義者はデュウの正体次第。
——プリンプリンside——
・ボンボン
……議論中はあまり目立たなかったが、娯楽室で大暴れした。
プリンプリンを守りたい気持ちは人一倍。
・カセイジン
……トントンばかりが責められる中、デュウに疑いを向けたがエイハブ一家の結束の前に屈した。
・オサゲ
……留守番枠なので人間確定。
カセイジンにかこつけ、『デュウは黙ってばかりで心配』と言ったものの、エイハブ一家の擁護の嵐でつい謝ってしまった。
・マイホーム
……ワットを失った哀しみからなのか議論前半は沈黙していたが、後半は普段の調子を取り戻した。
ホワイトハットにちょいちょい構う。
——白鯨side——
・エイハブ
……トントンにグノーシア判定を受けるもあまり動じず。デュウに疑いが向いた時、擁護のついでに協力関係を築いた。
・ラッキー
……トントンがエイハブにグノーシア判定を出した時に理由を求める。
デュウに疑いが向けられた際はアトレと一緒に擁護した。
・アトレ
……ムッツを失ったあと塞ぎ込んでいたが、デュウが疑われた時に擁護。
またマイホームが決まってホワイトハットに噛みつくのに不信感を覚える。
・ドク
……無口なデュウの代弁をしたり、場を荒らすホワイトハットをなだめるなど、初日同様に議論を円滑に進めるべくアシスト。
アトレと同じようにマイホームに疑念を抱く。
【コールドスリープ】
・ホワイトハット
……エイハブがグノーシア判定を受けた際、動揺。
その後、エンジニアの片割れであるトントンを厳しく責め立て、凍ったのは自身でありながらも一票差にまで追い込んだ。
【Tips】
『協力しよう』
……誰かと手を組みたい時に議論中に打診できるスキル。
受け入れてもらえれば共同戦線を張れる。状況と好感度によっては断られることもある。
ちなみに『グノーシア』本編ではプレイヤーは議論後に協力を申し出ることはできない。