まだ学生の女性と大人のお話

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ペトリコール

 

別れ

 

始まりは公園のベンチ。

夜の闇が濃くなってきた頃に偶然出会った。それだけ。

互いに話すこともなく、ただ空を見てた。

 

それが二回、三回と重なって、気づけばよく話すようになっていた。

互いの立場も何も知らない。それでも、多分向こうは社会人、私は高校生。大体そんな感じかなーって互いになんとなくだけ分かってた。

 

ずっと変化はないように思った。そう思うくらい、ゆっくりと関係性は変わってたんだと思う。

 

気づけば距離が近くて、気づけば互いにタメ口で。

互いに意識しないままそうなっていった。

私はそれに気づいてから、少しだけ恥ずかしくて、帰ってベッドで暴れた。

 

そんな関係性だったから、こうなるのも時間の問題だった。

 

いつも通り挨拶して、いつも通り話して、いつも通りに別れる時に、呼び止められた。

本当は挨拶した頃から少しだけ違和感は感じてた。段々理解して、それでも知らないふりを続けてた。

 

話がある。真剣な顔でそう言われる。

その内容は想像通り。別れの挨拶。いつも通りじゃない、もう会えないというそれ。

 

「私はもうここには来れない。……すまない。」

 

彼の顔を見ればわかる。私たちは想い合っていた。彼もわかっているんだろう。

それでも目を逸らしてた現実に目を向けなきゃダメで。私は子供、彼は大人だった。それだけの話。

 

きっと泣いて縋ればいつかを約束してくれるんだろう。でも、そんな不義理なことはできなかった。彼は今も血が出そうなくらいに手を握りしめて、大人らしくない泣きそうな顔で別れを切り出してくれた。

 

私たちはわかってる。このままいても、私たちはきっと良くない方に向かってしまう。互いにここで楽しく話す未来は思い浮かべれても、それ以外の場所で一緒にいられる未来は思い描けなかった。

普段話す内容も場当たり的なもので、互いの近況も何も話すことはなかった。

本当は心の奥ではわかってたんだ。私たちはずっと一緒にいられるような関係にないんだって。

 

私もきっと泣きそうな顔をしてる。それでもそう答えるしかなかった。

 

「わかった。」

 

たった一言を言うまでに何十分かけただろう。

本当は別れのハグでもしてやりたい気持ちがある。彼もそう思っているきがする。互いのことなんてもう手に取るようにわかってる。だからこのまま別れることにした。

傷ついた顔をしながら口を噛み締めて、それでも彼は感謝の言葉を吐き出した。

 

「さようなら。」

 

一言だけ呟いて、それから別れた。

どうか傷ついて欲しい。私を傷として残して欲しい。そんなバカな望みで清々しい別れを手放して、口惜しい別れを選んだ。

もっと言いたいことはあった。未来を約束して束縛してしまいたかった。

でも、そんなことをするには私は子供で、彼は大人だった。

 

私は彼を傷つけた。彼も私を傷つけた。私は彼の形の傷を、生涯思い続けるんだろう。彼もそうであったらいいなと思う。

 

重い足が止まって、俯いて、うずくまった。涙が止まるまで暫くこのままでいることにする。

 

きっと、2度と会うことはないのだろう。


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