BLEACH ―斬界の御厨子―   作:tunagi

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初投稿です。

BLEACHの世界にオリジナル主人公を加えた二次創作になります。

主人公はかなり強めですが、何でも一人で解決するのではなく、

黒崎一護たちの物語を大切にしながら進めていきます。

よろしくお願いします。


第一部 死神代行篇
第1話 浦原商店の居候


空座町。

 

東京から離れた、とある地方都市。

 

昼間だけを見れば、どこにでもありそうな町だ。

 

学校へ向かう学生。

 

仕事へ急ぐ会社員。

 

商店街から聞こえてくる呼び込みの声。

そんな、ごく普通の日常が流れている。

 

しかし。

 

その日常のすぐ隣には――普通の人間には見えない世界が存在していた。

 

死者の魂。

 

魂を喰らう怪物、虚。

 

そして虚を斬り、魂を尸魂界へと導く者。

 

死神。

 

そんな空座町の片隅に、一軒の古びた店がある。

 

浦原商店。

 

一見すれば、ただの駄菓子屋。

 

だがその縁側に寝転がっている少年もまた、決して普通ではなかった。

 

「……暇だ」

 

黒髪の少年――御門朔夜は、青空を見上げながら呟いた。

 

傍らには一本の刀。

 

だが本人には緊張感というものがまるでない。

縁側に仰向けになり、完全に休日を満喫している。

 

「朔夜サーン」

 

店の奥から間延びした声が聞こえてきた。

 

「暇なら店番してくれません?」

 

縞模様の帽子。

 

下駄。

 

杖。

 

何とも胡散臭い風貌の男――浦原喜助である。

 

朔夜は視線すら向けずに答えた。

 

「嫌だ」

 

「せめて一秒くらい考えません?」

 

「考えた結果だ」

 

「即答だったじゃないですか」

 

「判断が速いんだよ、俺は」

 

浦原は扇子を開いた。

 

「居候なんですから、少しくらい働いてくれてもいいと思うんスけどねぇ」

 

朔夜がようやく身体を起こす。

 

「喜助」

 

「はい?」

 

「居候と従業員は違う」

 

「胸を張って言われても困るんですが」

 

その時、

塀の上から一匹の黒猫が飛び降りた。

 

「喜助。諦めろ」

 

「夜一サン?」

 

黒猫は軽い足取りで縁側へ上がる。

 

そして朔夜を見上げた。

 

「こやつに店番など任せてみろ。売り物を勝手に食うか、昼寝して客を追い返すかのどちらかじゃ」

 

「失礼だな」

 

「違うのか?」

 

「……半分くらいは」

 

「ほれ見ろ」

 

黒猫――四楓院夜一が呆れたように尻尾を揺らした。

 

朔夜にとって。

 

浦原喜助と四楓院夜一。

 

この二人は恩人であり。

 

家族のような存在であり。

 

そして何より――。

 

「というかさ」

 

朔夜は深いため息をつく。

 

「人を何百回も半殺しにした奴らを、師匠って呼んでいいのか今でも疑問なんだけど」

 

浦原が首を傾げた。

 

「何のことでしょう?」

 

「とぼけんな」

 

夜一は楽しそうに笑う。

 

「死なんかったのだから問題なかろう」

 

「普通は死ぬんだよ!」

 

「おぬしは普通ではない」

 

「褒めてないだろ、それ」

 

そんな他愛のない会話。

 

朔夜にとっては、いつもの日常だった。

 

だからこそ。

 

――それが突然途切れた瞬間。

三人の表情は、ほぼ同時に変わった。

 

「……」

 

朔夜が顔を上げる。

 

浦原の扇子が止まる。

 

夜一の耳がぴくりと動いた。

 

遠くから感じる。

 

醜く。

 

濁り。

 

獣のように飢えた霊圧。

 

「虚か」

 

朔夜が立ち上がった。

 

「それなりに大きいですねぇ」

 

浦原の声から先ほどまでの軽さが僅かに消える。

 

しかし朔夜は腰の刀へ手を伸ばさなかった。

 

別の霊圧を感じたからだ。

 

「死神がいる」

 

「ほう」

 

夜一が目を細めた。

 

「ならば任せるか?」

 

「……いや」

 

朔夜は眉を寄せた。

 

もう一つ。

 

馴染みのある霊圧がそこに存在している。

 

人間。

 

だが普通の人間とは思えないほど強い魂。

 

何年も前から知っている。

 

「一護?」

 

黒崎一護。

 

昔から霊が見える少年。

 

口は悪い。

 

喧嘩っ早い。

 

しかし困っている者を見捨てられない。

 

朔夜はその性格を嫌というほど知っていた。

 

「行ってくる」

 

屋根へ飛び上がる。

 

夜一が声を掛ける。

「朔夜」

 

「何?」

 

「余計な手出しはするな」

 

朔夜は少し黙った。

 

「……分かってる」

 

そして消えた。

 

瞬歩。

 

空座町の屋根を、影のように駆け抜ける。

 

ほどなくして辿り着いたのは黒崎医院だった。

 

朔夜は少し離れた建物の屋根へ立つ。

 

中から激しい霊圧が漏れていた。

 

死神。

 

虚。

 

そして――。

 

「一護の家族が狙われてるのか」

 

すぐに状況を理解する。

 

飛び込めばいい。

 

虚程度なら、一瞬で終わる。

 

しかし。

 

朔夜は動かなかった。

 

黒崎医院の内部。

 

少女の死神が負傷する。

 

そして。

 

一護が彼女の前へ立つ。

 

「……」

 

朔夜の目が細くなる。

 

少女が持つ死神の力が、一護へと流れ込んでいく。

 

その瞬間。

 

ドン――ッ!

 

空気が震えた。

 

「……は?」

 

朔夜が思わず声を漏らす。

 

爆発するように膨れ上がった霊圧。

 

予想を遥かに超えている。

 

「おいおい」

 

次の瞬間。

 

虚の霊圧が消滅した。

 

一撃。

 

ただの人間だったはずの少年が。

 

初めて握った斬魄刀で。

 

虚を一刀のもとに斬り伏せた。

 

しばらくして。

 

朔夜は小さく笑った。

 

「やっぱり、お前は面白いな。一護」

 

背後に気配。

 

「どうでした?」

 

いつの間にか浦原が立っている。

 

朔夜は振り返らない。

 

黒崎医院を見つめたまま。

 

「始まったよ」

 

「何がです?」

 

風が吹く。

 

朔夜の黒髪が揺れる。

 

そして静かに答えた。

 

「アイツの戦いが」

この夜。

 

黒崎一護は死神となった。

 

そして。

 

止まっていた御門朔夜の運命もまた――。

 

静かに動き始めた。




第1話を読んでいただき、ありがとうございます。

まずは朔夜・浦原・夜一の関係と、一護が死神になる瞬間まででした。

朔夜がなぜ浦原商店にいるのか、なぜこれほど霊的な事情に詳しいのかについては、少しずつ明かしていきます。

次回、

第2話「死神になった少年」
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