朔夜とルキアが、ついに直接顔を合わせます。
翌朝。
「よう」
学校へ向かっていた黒崎一護は、電柱にもたれている少年を見つけて露骨に顔をしかめた。
「……何してんだ、お前」
「朝の散歩」
御門朔夜は平然と答えた。
「お前が?」
「健康的だろ」
「普段昼まで寝てる奴が言うな」
「偏見だ」
「事実だ!」
一護はため息をつく。
その横。
少し離れたところに、黒髪の少女がいた。
朽木ルキア。
昨夜、一護へ死神の力を譲渡した死神。
人間には見えないはずの状態で一護の後ろを歩いている。
そして――。
朔夜は普通にルキアを見た。
一秒。
二秒。
ルキアが足を止める。
朔夜も視線を逸らさない。
「……」
「……」
一護だけが首を傾げる。
「どうした?」
朔夜は再び一護を見る。
「一護」
「ん?」
「昨日、何かあったか?」
「!」
一護の肩が跳ねた。
あまりにも分かりやすい。
朔夜は半眼になる。
「その反応で全部言ってるぞ」
「な、何もねぇ!」
「へえ」
「何だその目は!」
ルキアが険しい目で朔夜を観察している。
見えている。
間違いない。
しかし。
ただ霊が見える人間とも違う。
気配の読み方。
立ち方。
何より。
――隙がない。
放課後。
ルキアは一護を捕まえた。
『あの男は何者だ』
「朔夜?」
『そうだ』
「ただの昔からの知り合いだよ」
『ただの人間ではない』
「まあ……変な奴ではあるけど」
『そういう意味ではない!』
そして夕方。
虚が出現した。
一護は死神となり現場へ向かう。
まだ戦い方など分からない。
刀の振り方も荒い。
ただ、圧倒的な霊力と本能だけで虚へ立ち向かっていく。
その戦いを。
近くの電柱の上から、一人の少年が眺めていた。
「脇が甘い」
「!?」
一護が振り返る。
「朔夜!?」
「前見ろ」
「うおっ!?」
虚の爪をギリギリで回避する。
「てめぇ、なんで俺が見えて――!」
「質問は後」
「じゃあ手伝え!」
朔夜は腕を組む。
「嫌だ」
「何でだよ!」
「お前の仕事だから」
「この野郎!」
怒鳴りながらも一護は戦う。
一撃。
二撃。
粗い。
無駄も多い。
だが恐ろしく成長が速い。
戦闘の中で、自分の間合いを掴み始めている。
やがて、一護の斬撃が虚を断ち切った。
霊子となって消えていく。
「……っしゃ!」
朔夜は小さく頷く。
「悪くない」
一護が振り返った。
「お前!」
「ん?」
「説明しろ!」
「何を?」
「全部だ!」
そこへ。
「騒がしい奴じゃのう」
黒猫が塀へ飛び乗った。
一護が固まる。
「……猫?」
「誰が猫じゃ」
「しゃべった!?」
一護が絶叫する。
朔夜は額を押さえた。
「そこに一番驚くのかよ」
夜一は一護を観察する。
「なるほど」
「何だよ」
「おぬしが黒崎一護か」
「俺を知ってんのか?」
「朔夜から時々聞いておる」
「余計なこと言ってないだろうな」
「幼い頃、川へ落ちて大泣きした話とか」
「夜一さん!」
「お前そんなこと話してんのか!?」
「違う! それ俺じゃない!」
その横で。
ルキアだけは笑っていなかった。
この黒猫。
そして御門朔夜。
明らかに何かがおかしい。
「貴様ら……何者だ?」
ルキアの声。
朔夜は彼女を見る。
しばらく黙った後。
「俺?」
腰の刀へ軽く触れる。
「今はただの居候だよ」
ルキアの目が見開かれた。
その仕草。
その刀。
間違えるはずがない。
「まさか……死神?」
朔夜は笑った。
「さてね」
答えを残さず。
その場から消える。
一護には。
その移動すら見えなかった。
「……消えた?」
夜一が笑う。
「まだまだじゃな、一護」
その日から、一護はようやく気づき始めた。
昔から隣にいた御門朔夜という少年が。
自分が思っていた以上に――。
得体の知れない存在であることに。
朔夜が死神らしい存在だと、一護とルキアにも少しずつ知られ始めました。
ただし本人はまだ、自分の過去を語る気はないようです。