死神と滅却師、そしてその騒動を少し離れたところから見ている朔夜です。
黒崎一護と石田雨竜。
死神。
滅却師。
互いの事情を知った二人が、素直に仲良くなれるはずもなかった。
ましてや。
「どちらが多く虚を倒せるか勝負しよう」
などという話になれば。
「馬鹿だろ」
浦原商店。
朔夜は真顔で言った。
浦原は楽しそうに扇子を振っている。
「若いっていいですねぇ」
「虚を大量に呼び寄せる餌を使うのが青春なら、俺は青春なんていらない」
夜一も呆れた声を漏らす。
「滅却師の小僧も随分と思い切ったことをする」
空座町の各地。
次々と虚の気配が現れ始める。
朔夜は立ち上がった。
「行ってくる」
「勝負に参加します?」
「したら可哀想だろ」
「誰が?」
「二人が」
言うなり。
朔夜の姿が消えた。
空座町。
一護と石田が競うように虚を倒している。
だが。
呼び寄せられた虚すべてが、都合よく二人の前へ現れるわけではない。
住宅街。
小さな子供を追う虚。
その眼前へ。
朔夜が降り立った。
「悪い」
虚が咆哮する。
「そっちは立入禁止だ」
斬魄刀を抜かない。
ただ。
指先を軽く動かした。
瞬間。
虚の仮面へ細い線が走った。
次の瞬間。
その巨体が真っ二つに割れる。
「一体」
霊子へ変わるのを確認する前に姿を消す。
別の場所。
「二体」
さらに。
「三体」
「四体」
戦いと呼べるものですらない。
ただ処理している。
そんな朔夜を、夜一が屋根の上から眺めていた。
「相変わらず妙な斬り方をする」
着地した朔夜が見上げる。
「刀抜くほどじゃないからな」
「そういう問題ではない」
夜一の金色の瞳が細くなる。
「精度がまた上がったな」
「夜一さんに殺されかけた回数のおかげだよ」
「人聞きが悪いのう」
その時。
空が――裂けた。
二人が同時に上を見る。
巨大な亀裂。
そして。
そこから覗く。
白い仮面。
巨大な身体。
「……メノスグランデ」
朔夜の声から軽さが消えた。
腰の斬魄刀へ手を掛ける。
「出るか?」
夜一が尋ねる。
朔夜は。
大虚の前に立つ一護を見た。
あまりにも小さい。
経験もない。
戦い方も知らない。
それでも。
退く気配がなかった。
「……」
夜一が言う。
「見ておれ」
「死んだら?」
「その前に動けばよい」
朔夜の手は柄から離れない。
いつでも斬れる。
いつでも一護を救える。
だが。
一護は自ら前へ出た。
巨大な攻撃を受け止め。
己の霊圧を斬魄刀へ叩き込み。
振り抜く。
轟音。
大虚が押し戻されていく。
朔夜は。
ゆっくりと柄から手を離した。
「……やっぱり化け物だな、あいつ」
夜一が横を見る。
「おぬしが言うのか?」
「俺は常識人だよ」
「今まで聞いた中で一番面白い冗談じゃ」
戦いが終わり。
一護と石田は互いに疲れ果てながらも、少しだけ相手を見る目を変えていた。
朔夜は二人の前へ降り立つ。
「終わった?」
「朔夜!」
一護が睨む。
「どこ行ってやがった!」
「町中に散った虚の掃除」
石田が眉を寄せる。
「掃除?」
「君たちの勝負に関係ないところで、人が死んだら寝覚めが悪いから」
石田の表情が固まった。
自分が撒いた餌。
その結果。
危険に晒された者がいた。
「……」
朔夜は責めなかった。
ただ。
「力を使うなら」
静かに言う。
「自分の手が届かないところで何が起きるかまで考えた方がいい」
石田は答えない。
朔夜はそれ以上何も言わなかった。
一護が頭を掻く。
「……なあ」
「何」
「お前、やっぱ強いのか?」
「そこそこ」
夜一が遠くから笑う。
朔夜は聞かなかったことにした。
石田登場回でした。
朔夜は二人の勝負に直接混ざるのではなく、二人では守り切れない場所を処理する役割にしています。
次回はチャドが中心です。