BLEACH ―斬界の御厨子―   作:tunagi

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三日間の修行、その二日目。

一護は斬月だけでなく、自分自身の力を信じることの意味へ近づき始めました。

一方の朔夜も、御厨子を抜いたからといって無闇に振るうのではなく、必要な時に必要な力だけを選ぶ感覚を取り戻しつつあります。

残された時間は、あと一日。

しかし、一護たちが知らないところで、ルキアの処刑を巡る状況はさらに厳しいものへ変わろうとしていました。

そして、その知らせを知った一人の死神もまた、動き始めます。

それでは、第32話「最後の一日」です。



第32話 最後の一日

 

地下修行場に、激しい金属音が響いた。

 

一護と斬月の刀が正面からぶつかり、互いの霊圧が周囲へ広がっていく。

 

昨日までと比べれば、一護の動きは明らかに良くなっていた。

 

ただ速く振るうのではない。

 

斬月の動きを見て、次の攻撃を予測し、自分が踏み込むべき時と退くべき時を考えている。

 

斬月が刀を横薙ぎに振るった。

 

一護は後ろへ逃げるのではなく、半歩だけ下がって刃をかわす。そのまま間合いへ入り込んだ。

 

「そこだ!」

 

一護が刀を振り下ろす。

 

斬月は受け止めたが、一護はそこで無理に押し切ろうとはしなかった。

 

刃を滑らせるように外し、角度を変えて二撃目へつなげる。

 

斬月が僅かに後退した。

 

一護の口元が上がる。

 

「今のは悪くなかっただろ」

 

「自分で言うものではない」

 

「ちょっとくらい褒めろよ!」

 

「まだ足りない」

 

「やっぱムカつく!」

 

一護は悪態をつきながらも、すぐに斬月へ向かって踏み込んだ。

 

以前のような焦りはない。

 

だが、時間がないことを忘れたわけでもなかった。

 

残された時間は、あと一日。

 

その事実は、一護の頭の片隅から一度も消えていない。

 

だからこそ、焦って崩れるわけにはいかなかった。

 

今ここで斬月と向き合うことこそが、白哉へ届くための一番の近道なのだと、一護自身も理解し始めていた。

 

◇

 

少し離れた場所では、朔夜も夜一との修行を続けていた。

 

御厨子は腰に差してある。

 

今日は最初から抜刀も許可されているが、始解は禁止されたままだ。

 

夜一が複数の石を蹴り上げた。

 

その間を縫うように、自らも朔夜へ向かってくる。

 

「右上!」

 

「解!」

 

指定された岩だけが斬れる。

 

「次、左!」

 

朔夜は指を向けかけたが、途中で止めた。

 

左から飛んできた石は、自分の身体から外れている。

 

わざわざ斬る必要はない。

 

朔夜はそのまま無視した。

 

夜一が笑う。

 

「よし」

 

直後、拳が飛んでくる。

 

朔夜は御厨子の鞘で受け流した。

 

「褒めながら殴るのやめない?」

 

「修行中に油断する方が悪い」

 

「油断してないって」

 

「なら避けろ」

 

「言うと思ったよ!」

 

朔夜は苦笑しながら瞬歩で距離を取る。

 

夜一もすぐに追う。

 

今度は朔夜から踏み込んだ。

 

抜いた御厨子を振るう。

 

ただし、斬るためではない。

 

夜一の拳へ刀の腹を当て、軌道だけを逸らす。

 

続く蹴りは身体をずらしてかわし、そのまま夜一の横へ回り込んだ。

 

その気になれば、ここで解を放てる。

 

捌でもいい。

 

だが、必要はない。

 

朔夜は刀を鞘へ戻し、そのまま白打で夜一の肩を狙った。

 

夜一が掌で受け止める。

 

「今、何故刀を使わなかった?」

 

「白打で十分だったから」

 

「それだけか?」

 

朔夜は少し考えた。

 

「それに、夜一さん相手に刀を使うと、もっとやりたくなりそうだから」

 

夜一の眉が僅かに上がる。

 

「自覚しておるのか」

 

「ああ」

 

朔夜は拳を引いた。

 

「だから使わない。今はそれでいい」

 

夜一は満足そうに笑う。

 

「ようやく、自分で選ぶようになってきたのう」

 

「褒めてる?」

 

「今のところはな」

 

「今のところって何」

 

「すぐ調子に乗るからじゃ」

 

「扱いが雑だなぁ」

 

朔夜がそう言った頃、地下修行場とは別の場所でも、一人の男が決断を迫られていた。

 

◇

 

六番隊の拘禁区画。

 

阿散井恋次は、壁へ背を預けたまま座っていた。

 

一護との戦いで負った傷は、まだ完全には塞がっていない。

 

身体を動かせば痛む。

 

それでも、もっと痛む場所が別にあった。

 

自分は一護に負けた。

 

その一護へ、ルキアを助けてくれと頼んだ。

 

自分では何もできなかったから。

 

自分の隊長へ逆らうことすらできず、ルキアが処刑されると知りながら、ずっと立ち止まっていた。

 

「……情けねぇな」

 

恋次が小さく呟く。

 

その時、牢の外から複数の足音が聞こえてきた。

 

隊士たちの会話が、僅かに耳へ届く。

 

「処刑、本当に繰り上げるのか?」

 

「命令だ。明日の正午だってよ」

 

恋次の顔が上がった。

 

「……何?」

 

聞き間違いではない。

 

明日。

 

正午。

 

恋次は立ち上がった。

 

身体中の傷が一斉に痛む。

 

だが、今はどうでもよかった。

 

予定より早い。

 

一護たちがどこまで進んでいるのかは知らない。

 

だが、もし間に合わなければ。

 

ルキアは死ぬ。

 

恋次の脳裏に、一護との戦いが蘇る。

 

――朽木白哉を倒すには、こんなんじゃ全然足りねぇ!

 

その言葉に腹を立てた。

 

無茶だと思った。

 

だが、本当に無茶なのは何だ。

 

勝てないと決めつけたまま、何もしないことではないのか。

 

「……クソッ」

 

恋次は拳を握った。

 

自分は一護へルキアを頼んだ。

 

だからといって、自分まで何もしなくていい理由にはならない。

 

「一護に全部押しつけたまま終われるかよ」

 

恋次は牢の外を見た。

 

見張りはいる。

 

だが、重罪人として厳重に封じられているわけではない。

 

副隊長でありながら旅禍に敗れたため、負傷した身体を治療された上での拘束だった。

 

恋次はゆっくりと斬魄刀へ手を伸ばす。

 

「悪ぃな」

 

外にいる隊士が振り返った。

 

「阿散井副隊長?」

 

「後でいくらでも怒られてやる」

 

恋次の霊圧が膨れ上がった。

 

◇

 

地下修行場。

 

一護と斬月の刀が激突した、その瞬間。

 

夜一の表情が変わった。

 

朔夜も同時に顔を上げる。

 

「誰か来る」

 

「ああ」

 

夜一も入口へ意識を向ける。

 

一護も数秒遅れて気づき、斬月との間合いを取った。

 

霊圧を知っている。

 

しかも、かなり急いでいる。

 

「これ……」

 

足音が地下へ近づいてくる。

 

朔夜が僅かに眉を上げた。

 

「恋次?」

 

次の瞬間。

 

「一護!!」

 

大きな声が修行場へ響いた。

 

一護が目を見開く。

 

「恋次!?」

 

地下へ続く通路から、阿散井恋次が姿を現した。

 

死覇装は乱れ、身体には一護との戦いで負った傷がまだ残っている。

 

途中で無理をしてきたのか、呼吸も荒かった。

 

それでも、その目には迷いがない。

 

一護は刀を下ろした。

 

「お前、何でここにいるんだよ! 捕まってたんじゃねぇのか?」

 

「抜けてきた」

 

「さらっと言うなよ!」

 

「そんなこと説明してる場合じゃねぇ!」

 

恋次は肩で息をしながら、一護たちの前まで歩いてきた。

 

その途中で朔夜の姿に気づき、足を止める。

 

「……何で御門までいやがる」

 

朔夜が軽く手を上げた。

 

「俺も修行中」

 

「何のだよ」

 

「色々」

 

一護が横から口を挟む。

 

「こいつ、更木剣八とやり合ったせいで夜一さんにしごかれてんだよ」

 

「おい、一護」

 

恋次の顔が引きつった。

 

「……噂、本当だったのか」

 

「噂広がるの早いなぁ」

 

「更木隊長と戦っておいて、そこ気にするのかよ!」

 

夜一が呆れたように口を挟む。

 

「恋次。わざわざ傷だらけでここまで来たのは、その話をするためではあるまい」

 

恋次の表情から軽さが消えた。

 

「ああ」

 

一護もすぐに真剣な表情へ戻る。

 

「何があった」

 

恋次は一度息を整える。

 

そして、はっきり告げた。

 

「ルキアの処刑が繰り上げられた」

 

一護の表情が止まった。

 

朔夜も黙る。

 

「……何だと?」

 

一護の声が低くなる。

 

恋次は続けた。

 

「明日の正午だ」

 

地下修行場から、一瞬だけすべての音が消えたように感じられた。

 

一護の手が強く斬月を握る。

 

「明日……?」

 

三日あるはずだった。

 

その時間さえ奪われた。

 

一護は一度目を閉じた。

 

そしてすぐに開く。

 

「だったら、今日中に終わらせる」

 

夜一が一護を見る。

 

「一護」

 

「やるしかねぇだろ」

 

一護は夜一へ顔を向けた。

 

「明日の正午なら、今日中に卍解を覚える」

 

焦りがないわけではない。

 

しかし、以前の一護なら、その焦りだけで斬月へ突っ込んでいたかもしれない。

 

今は違う。

 

斬月を見失わない。

 

自分自身を見失わない。

 

その上で、今日中に終わらせる。

 

一護の目を見て、夜一もそれ以上止めなかった。

 

「そうじゃな」

 

恋次がその会話を聞きながら、斬月と転神体を見る。

 

「やっぱり、卍解の修行だったのか」

 

一護が振り返る。

 

「やっぱり?」

 

「お前の霊圧を追ってきた」

 

恋次は地下修行場を見回した。

 

「拘束を抜けてから、一護の霊圧を探した。瀞霊廷中でこれだけ妙な霊圧を出してりゃ嫌でも分かる」

 

「妙って何だよ」

 

「普通の死神が、斬魄刀を具象化させながらこんな霊圧出すか!」

 

一護は言い返そうとしたが、やめた。

 

確かに普通ではない。

 

恋次は夜一を見る。

 

「四楓院夜一。俺にもここを使わせてくれ」

 

夜一の目が僅かに細くなる。

 

「何をするつもりじゃ」

 

恋次は迷わなかった。

 

「俺も卍解を会得する」

 

一護が恋次を見る。

 

「お前も?」

 

「ああ」

 

恋次は自分の斬魄刀へ手を置いた。

 

「俺はずっと、隊長には勝てねぇと思ってた」

 

その声からは、普段の勢いが少し消えていた。

 

「隊長と副隊長。朽木家当主と流魂街上がり。どれだけ追いつこうとしても無理だって、自分で勝手に決めてた」

 

恋次は拳を握る。

 

「そのせいで、ルキアが連れ戻されても何もできなかった。処刑されるって聞いても、隊長に逆らう覚悟すら持てなかった」

 

一護は何も言わずに聞いている。

 

「それでお前に負けて、ルキアを頼んだ」

 

恋次は一護を見る。

 

「でも、牢の中で考えた。お前に頼んだからって、俺まで何もしなくていいわけじゃねぇ」

 

一護の口元が僅かに上がった。

 

恋次も続ける。

 

「無理かどうかは、全部やってから決める」

 

「やっと分かったか」

 

「うるせぇ」

 

「俺が教えてやったみたいなもんだろ」

 

「調子に乗るな!」

 

一瞬だけ、二人の間にいつもの空気が戻る。

 

だが恋次はすぐに蛇尾丸へ視線を落とした。

 

「俺も隊長を越える」

 

その言葉に、一護の表情が変わった。

 

「ルキアを助けるためにな」

 

夜一が尋ねる。

 

「蛇尾丸の具象化はできるのか?」

 

「ああ」

 

「なら一護とは違って、既にそこまでは到達しておるわけじゃな」

 

恋次が頷く。

 

「足りないのは、その先だ」

 

夜一はしばらく恋次を見つめた。

 

傷だらけの身体。

 

処刑繰り上げを知って、拘束を抜けてきた。

 

今さら止めても聞かない顔をしている。

 

夜一は小さく息を吐いた。

 

「好きにせい」

 

恋次が少し驚く。

 

「いいのか?」

 

「駄目と言えば帰るのか?」

 

「帰らねぇ」

 

「なら聞くな」

 

朔夜が横から笑う。

 

「俺の時より優しくない?」

 

夜一が朔夜を見る。

 

「おぬしは事情が違う」

 

「どう違うの?」

 

「反省も兼ねておる」

 

「やっぱ俺だけ罰じゃん」

 

一護が笑う。

 

「俺が言った通りだな」

 

「一護、後で覚えてろよ」

 

恋次が呆れた顔で二人を見る。

 

「お前ら、本当にこんな時まで変わらねぇな……」

 

それでも、恋次の顔にも僅かに笑みが戻っていた。

 

◇

 

修行はすぐに再開された。

 

一護は斬月と。

 

恋次は蛇尾丸と。

 

そして朔夜は夜一と。

 

同じ地下修行場で、三つの異なる修行が始まる。

 

恋次の前へ、具象化された蛇尾丸が姿を現した。

 

その霊圧を感じた一護が横目で見る。

 

恋次も、本気だ。

 

一護はすぐに斬月へ意識を戻した。

 

「悪いな。少し急がなくちゃならなくなった」

 

斬月は静かに一護を見る。

 

「焦るのか」

 

「焦ってる」

 

一護は素直に答えた。

 

「でも、焦ってお前を見失うつもりはねぇ」

 

斬月の目が僅かに細くなる。

 

一護は刀を構えた。

 

「今日中に終わらせる。でも、適当に終わらせるつもりもねぇ」

 

斬月の口元に、僅かな笑みが浮かんだ。

 

「ならば来い」

 

一護も笑う。

 

「ああ!」

 

二人が踏み込む。

 

刃がぶつかる。

 

そのすぐ向こうでは、恋次の声が響いた。

 

「蛇尾丸!」

 

何度倒されても立ち上がる。

 

今度こそ、自分の意思でルキアを救うために。

 

一護が一瞬だけ恋次へ声を飛ばした。

 

「負けんなよ、恋次!」

 

「お前に言われたくねぇ!」

 

恋次が叫び返す。

 

一護は笑い、すぐに斬月へ意識を戻した。

 

◇

 

朔夜は二人を少し離れた場所から見ていた。

 

「二人とも凄いな」

 

夜一が隣へ立つ。

 

「気になるか?」

 

「そりゃね」

 

一護も恋次も、明日、同じ目的のために戦う。

 

ルキアを助ける。

 

ただそれだけのために、自分の限界を越えようとしている。

 

夜一が朔夜を見る。

 

「おぬしも人のことばかり見ておれんぞ」

 

「分かってる」

 

朔夜は御厨子へ手を掛けた。

 

「俺も今日で終わらせる」

 

「ほう」

 

「一護と恋次だけ死ぬ気でやってるのに、俺だけのんびりしてられないだろ」

 

夜一の目が僅かに細くなる。

 

「張り合っておるのか?」

 

朔夜は少し考え、首を振った。

 

「違う」

 

刀から手を離す。

 

「俺がやるって決めただけ」

 

夜一が笑う。

 

「なら、最後の課題へ進むか」

 

朔夜の表情が変わった。

 

「最後?」

 

「ああ」

 

夜一は修行場を見渡す。

 

一護。

 

恋次。

 

具象化された二振りの斬魄刀。

 

周囲には岩壁がある。

 

決して狭い場所ではないが、朔夜が何も考えず力を振るえるほど広くはない。

 

「今からおぬしには、わしと本気に近いところまで戦ってもらう」

 

朔夜の目が細くなる。

 

「始解は?」

 

「禁止じゃ」

 

「だと思った」

 

「じゃが、解も捌も、白打も瞬歩も全て使ってよい」

 

夜一は続ける。

 

「ただし条件がある」

 

朔夜は一護と恋次を見る。

 

もう、おおよその内容は分かった。

 

「二人には絶対に当てるな?」

 

「それだけではない」

 

夜一は周囲を指差す。

 

「一護と恋次の修行を一切邪魔するな。二人の斬魄刀にも手を出すな。周囲を不必要に壊すな。そして」

 

夜一は自分自身を指差した。

 

「わしを本気で止めろ」

 

朔夜が少しだけ笑う。

 

「かなり無茶言うな」

 

「今までやってきたことを全部使え」

 

夜一の声が真剣になる。

 

「強く戦え。じゃが、斬り過ぎるな。必要なら力を使え。必要でないなら使うな。戦いを楽しんでもよい。じゃが、目的を見失うな」

 

朔夜の表情から笑みが消え、その代わりに静かな集中が生まれる。

 

「……了解」

 

夜一も構える。

 

「来い、朔夜」

 

朔夜は御厨子を抜いた。

 

だが、始解はしない。

 

鞘から抜かれた刃を静かに構える。

 

一護が斬月と戦っている。

 

恋次が蛇尾丸と戦っている。

 

そのすぐ近くで、朔夜は自分の師匠と向き合った。

 

以前なら、強い相手を前にすればもっと先へ進みたくなった。

 

もっと強い技を試したくなった。

 

今は違う。

 

自分が持つ力の中から、必要なものだけを選ぶ。

 

「行くよ、夜一さん」

 

「来い」

 

二人の姿が同時に消えた。

 

◇

 

一護は斬月の刀を受け止めた。

 

今まで以上に重い。

 

それでも、足は下がらない。

 

「明日の正午だ」

 

一護が言う。

 

斬月は答えない。

 

「ルキアの処刑」

 

一護は斬月の刃を押し返した。

 

「だから今日中に終わらせる」

 

斬月が刀を振るう。

 

一護が受ける。

 

「できると思うか」

 

一護は一瞬だけ黙った。

 

以前なら、「やってみなきゃ分からねぇ」と答えていたかもしれない。

 

だが、今は違う。

 

一護は斬月の目を見る。

 

「できる」

 

斬月の動きが僅かに止まる。

 

「俺がやる」

 

一護はさらに踏み込む。

 

「俺は卍解を身につける」

 

刀を振るう。

 

斬月が受ける。

 

「白哉に勝つ」

 

もう一撃。

 

「ルキアを助ける」

 

一護の霊圧が大きくなる。

 

斬月も応じるように霊圧を高める。

 

二人の刃が激しくぶつかった。

 

その隣では、恋次もまた自分の斬魄刀へ向かって叫んでいた。

 

「俺はもう逃げねぇ!」

 

地下修行場へ、三人の霊圧が広がっていく。

 

一護。

 

恋次。

 

朔夜。

 

強さも、立っている場所も、目指しているものも違う。

 

それでも、三人が見ている先には同じ一人の少女がいた。

 

朽木ルキア。

 

明日の正午。

 

処刑。

 

ならば今日中に、自分たちがやるべきことを終わらせる。

 

一護は斬月へ。

 

恋次は蛇尾丸へ。

 

朔夜は夜一へ。

 

それぞれが再び踏み込んだ。

 

最後の一日が、始まった。




最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

恋次は白哉に対して、

「俺はずっと、隊長には勝てねぇと思ってた」

と語っています。

また、

「俺も隊長を越える」

と、自分から白哉を越える覚悟を決めました。

恋次にとって白哉は、長い間「絶対に届かない存在」でした。

だからこそ、一護に敗れたことをきっかけに、最初から諦めていた自分自身を変えようとする流れを大切にしています。

ここから一護、恋次、朔夜の三人は、それぞれ違う形で最後の修行へ挑みます。

次回――

第33話「限界の先」

よろしくお願いします。
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