BLEACH ―斬界の御厨子―   作:tunagi

59 / 69
空座町へ再び現れた破面たち。

一護の前には、藍染の命令すら気にせず戦いを求める男――グリムジョー・ジャガージャックが現れました。

一方、朔夜も自分を狙っていた破面との戦闘を開始。

修行中の「纏う斬撃」が、初めて実戦の中で試されます。

それでは、第58話「グリムジョー」です。



第58話 グリムジョー

 

「俺はグリムジョー・ジャガージャック。お前がどれだけ強ぇのか――見せてみろよ」

 

水色の髪を揺らしながら笑う男を前に、一護は斬月を握り直した。

 

離れた場所では、先ほどまで二人の前にいた破面が瓦礫の中から立ち上がっている。ルキアはそちらへ視線を向けたが、目の前にいるグリムジョーの霊圧は明らかに格が違っていた。

 

「一護、気をつけろ。こいつは先ほどの奴とは違う」

 

「言われなくても分かってる」

 

一護が答えた直後、グリムジョーの姿が消えた。

 

「っ!」

 

反射的に斬月を上げると、拳が刀身へ叩き込まれる。凄まじい衝撃に一護の身体が屋根の上を滑り、止まった時にはグリムジョーがすでに目の前まで追ってきていた。

 

「遅ぇぞ!」

 

蹴りをかわし、一護は斬月を振り上げる。だがグリムジョーは軽く身を捻って避け、そのまま一護の横を抜けた。

 

「悪くねぇ。でも、まだ足りねぇな」

 

「上から言ってんじゃねぇ!」

 

一護が追おうとした時、背後からルキアの声が飛ぶ。

 

「一護!」

 

振り返ると、もう一体の破面がルキアへ襲いかかっていた。

 

その僅かな隙に、グリムジョーの拳が一護の頬を捉える。

 

「余所見すんな」

 

一護の身体は屋根を突き破り、そのまま道路へ叩き落とされた。

 

ルキアは駆け寄ろうとしたが、破面が前へ立ちはだかる。

 

「人の心配をしている場合か?」

 

「退け」

 

ルキアは袖白雪を抜いた。

 

「初の舞――月白」

 

足元に白い円が広がり、次の瞬間には破面の身体が氷柱に包まれる。亀裂が走り、氷ごと身体が崩れ落ちた。

 

「一護!」

 

ルキアが振り返る。

 

その背後に、グリムジョーが立っていた。

 

「心配すんのは自分にしとけよ」

 

「――!」

 

ルキアが反応するより早く、グリムジョーの腕が腹部を貫いた。

 

「ルキア!」

 

一護の叫びが響く。

 

グリムジョーが腕を抜くと、ルキアはその場へ崩れ落ちた。

 

「……ルキア?」

 

返事はない。

 

一護の霊圧が一気に膨れ上がる。

 

「てめぇ……!」

 

グリムジョーは怒りを向けられても怯えず、むしろ嬉しそうに笑った。

 

「そうだ。その顔だよ」

 

一護は斬月を握り締める。

 

「卍解――天鎖斬月」

 

黒い霊圧が爆発し、巨大だった斬月が黒い刀へ変わる。

 

次の瞬間、一護の姿が消えた。

 

頭上から振り下ろされた天鎖斬月を、グリムジョーが腕で受ける。衝撃が周囲へ広がり、その霊圧は遠く離れた工業地区にまで届いた。

 

◇

 

工業地区で戦っていた朔夜も、一護の卍解を感じ取った。

 

「……始めたか」

 

そう呟いた直後、目の前の破面が刀を振るう。

 

朔夜は身をずらしてかわしながら右腕へ斬撃を纏わせ、そのまま刀身へ腕を当てた。

 

金属音とともに亀裂が走る。

 

破面はすぐに距離を取った。

 

「触れていないのに、刀が斬られた……その腕の周囲へ斬撃を置いているのか」

 

「分析早いね」

 

「藍染様から聞いた通りだ。お前の能力は単純な斬撃ではない」

 

その言葉で、朔夜の表情が変わった。

 

相手は勝つためだけに戦っているのではない。

 

自分の能力を見るために来ている。

 

「……なるほど」

 

朔夜は右腕の斬撃を消した。

 

「やめるのか」

 

「これ以上見せるの、嫌になった」

 

「今さら遅い」

 

破面が再び踏み込んでくる。

 

朔夜は刀を抜かずに数撃を避けたが、その途中で右腕に鋭い痛みが走った。

 

包帯の下から血が滲む。

 

斬撃を急に消したことで、制御が一瞬乱れていた。

 

破面がそれを見て笑う。

 

「未完成か」

 

「そこまで見られたか」

 

「十分な情報だ」

 

「……やられたな」

 

朔夜は素直に認めた。

 

実戦で新しい技を試すことばかり考え、相手の目的を読むのが遅れた。

 

その失敗を引きずる代わりに、朔夜は御厨子を抜いた。

 

「でも、ここから先は見せなくていい」

 

破面が刀を構える。

 

「終わらせるつもりか」

 

「うん」

 

朔夜が僅かに指を動かした。

 

「解」

 

破面の刀が根元から斬れ、その胸元にも浅い傷が走る。

 

さらにもう一つの斬撃が、首元へ届く寸前で止まった。

 

相手には見えない。

 

それでも朔夜の殺気を感じ取ったのか、破面は動きを止めた。

 

「帰って藍染に伝えて」

 

「……何をだ」

 

「俺の能力を調べたいなら、次はもう少し上手くやれって」

 

「殺さないのか?」

 

「伝言頼んでるからね」

 

朔夜の目が細くなる。

 

「ただし、次も同じことしたら帰さない」

 

その直後、遠くから巨大な霊圧がぶつかった。

 

一護とグリムジョーだ。

 

朔夜がそちらへ意識を向けた一瞬、破面の背後に黒腔が開く。

 

「十分だ。御門朔夜」

 

「待て!」

 

解を放つ。

 

だが斬撃が届く直前、黒腔が閉じた。

 

「……逃がした」

 

舌打ちしかけた朔夜だったが、すぐに別の異変へ気づく。

 

一護の近くにあるルキアの霊圧が、急激に弱くなっていた。

 

「……ルキア?」

 

表情が変わる。

 

次の瞬間、朔夜は瞬歩でその場から消えた。

 

◇

 

その頃、一護とグリムジョーの戦いは、一気に激しさを増していた。

 

卍解した一護は速度で食らいつき、天鎖斬月を何度も振るう。グリムジョーも正面から応じ、互いに一歩も退かないまま屋根から空中へ戦場を移していった。

 

「いいじゃねぇか!」

 

グリムジョーが笑う。

 

「これがてめぇの卍解か!」

 

「まだ終わってねぇ!」

 

一護は距離を取り、斬月へ霊圧を集めた。

 

「月牙天衝!」

 

黒い斬撃が夜空を走り、グリムジョーを正面から呑み込む。

 

爆発の煙が晴れる。

 

グリムジョーの身体には確かに傷があった。

 

それでも男は笑っている。

 

「最高じゃねぇか、黒崎一護」

 

「……まだ立つのかよ」

 

「その程度で終わると思ったか?」

 

再び二人が激突する。

 

しかし、今度は一護の動きが僅かに鈍った。

 

胸の奥から、聞き覚えのある声が響く。

 

――どうした?

 

「……っ」

 

――せっかく面白ぇ相手じゃねぇか。

 

「出てくんな……」

 

一護の集中が途切れた。

 

その瞬間、グリムジョーの拳が腹へめり込む。

 

「がっ!」

 

一護は地面へ叩き落とされ、瓦礫の中を転がった。

 

「何だよ」

 

グリムジョーが降りてくる。

 

「急に遅くなりやがって」

 

「うるせぇ……!」

 

一護は立ち上がろうとするが、内なる虚の声が頭から離れない。

 

仮面を使えばいい。

 

そのために修行してきた。

 

だが手を顔へ伸ばしても、白い欠片が僅かに現れるだけで崩れていく。

 

「くそっ……!」

 

グリムジョーの笑みが消えた。

 

「それだけか」

 

拳が振り上げられる。

 

その時、白い影が横から飛び込み、グリムジョーへ蹴りを叩き込んだ。

 

グリムジョーは腕で受けながら後退する。

 

一護が顔を上げた。

 

「……平子?」

 

そこに立っていたのは平子真子だった。

 

「何してんねん、一護」

 

「何で……お前が」

 

「修行途中で実戦出て、案の定ボコボコにされとる奴が言う台詞ちゃうやろ」

 

「うるせぇ……」

 

「それだけ言えるなら、まだ大丈夫やな」

 

グリムジョーが平子を睨む。

 

「何だ、お前」

 

「通りすがりの親切な高校生や」

 

「ふざけてんのか?」

 

「割と真面目やで」

 

平子は片手を顔へ上げた。

 

白い仮面が現れ、その顔を覆う。

 

死神の霊圧へ、濃密な虚の力が重なった。

 

グリムジョーの目が僅かに細くなる。

 

「……何だ、その霊圧」

 

仮面の奥から、平子が答える。

 

「一護に見せたやろ」

 

刀を構える。

 

「これが――俺らの力や」

 

二人の霊圧が正面からぶつかった。

 

その衝撃は、こちらへ向かっていた朔夜にもはっきり届いた。

 

「平子……」

 

朔夜は速度をさらに上げる。

 

一護の霊圧は弱っている。

 

ルキアも危険な状態だ。

 

急がなければならない。

 

そう思った、その時だった。

 

腰の御厨子が僅かに震える。

 

――ようやく、それに気づいたか。

 

「……?」

 

朔夜の足が一瞬だけ鈍った。

 

周囲に人影はない。

 

それでも声は確かに聞こえた。

 

低く、尊大で、こちらを嘲笑うような声だった。

 

朔夜は走りながら御厨子へ視線を落とす。

 

「……お前か?」

 

返事はない。

 

遠くで再び霊圧が爆発し、朔夜はすぐに前を向いた。

 

今は立ち止まれない。

 

それでも、御厨子の奥にいる何かが自分を見ている。

 

その感覚だけは、妙に鮮明に残っていた。




一護とグリムジョーが激突。

卍解で食らいついた一護でしたが、内なる虚への迷いによって戦いを続けられなくなり、平子が介入しました。

一方、朔夜は「纏う斬撃」を実戦で使用したものの、相手が能力確認を目的としていたことに気づくのが遅れ、情報を持ち帰られてしまいます。

そして一護たちのもとへ向かう途中、御厨子から聞こえた謎の声。

次回――
第59話「仮面」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。